ミーティング

TEDの動画

複雑な仕事環境をシンプルにする6つのルール(TED)

システムを複雑にしすぎると生産性が落ちる、もっとシンプルにして、相互の協力を促そう、と伝えるTEDの動画を紹介します。

タイトルは、As work gets more complex, 6 rules to simplify(仕事がどんどん複雑になったときには、シンプルにする6つのルールを)

邦題は、「複雑化する企業環境、6つのスマート・ルールでシンプルに」

講演者は、企業改革の専門家の、Yves Morieux(イヴ・モリュー)さんです。

職場環境の話ですが、日常生活にも応用できる考え方です。



シンプルにするための6つのルール・TEDの説明

Why do people feel so miserable and disengaged at work? Because today’s businesses are increasingly and dizzyingly complex — and traditional pillars of management are obsolete, says Yves Morieux. So, he says, it falls to individual employees to navigate the rabbit’s warren of interdependencies. In this energetic talk, Morieux offers six rules for “smart simplicity.” (Rule one: Understand what your colleagues actually do.)

なぜ人々は、職場で、みじめでやる気がないのでしょうか?

なぜなら、今日の仕事は、目がくらくらするほど、どんどん複雑になっているからです。伝統的なマネジメントの柱はもう時代遅れです。

こう、イヴ・モリューはいいます。

それぞれの従業員が、ウサギの穴のようなたくさんの相互依存関係の中で、動かなければなりません。

この情熱的なトークで、モリューは、スマート・シンプリシティという6つのルールを提案します。

1番目のルールは、自分の同僚が本当は何をしているのか、理解することです。

収録は2013年の10月、動画の長さは12分。日本語字幕もあります。動画のあとに、抄訳を書きます。

☆トランスクリプトはこちら⇒Yves Morieux: As work gets more complex, 6 rules to simplify | TED Talk

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

シンプル化を訴えているだけあって、わかりやすい構成のプレゼンです。





2つの謎

もう何年も、2つの謎を解こうと努力しています。

謎その1:パソコンやテレコミュニケーション、インターネットなど、これほど技術が進歩したのに、なぜ、私が働いている会社の生産性が落ちているのか? これまで、500社以上と仕事をしました。

謎その2:なぜ、職場で皆、やる気がないか? みな、みじめな気持ちでいて、積極的に会社のためにならないことをする人すらいます。

親睦会や、祝賀会、交流会、リーダーシップの育成会など、やる気を出すためのイベントが、たくさんあるのに、同僚の邪魔をして、企業の意図に反した行動をします。

はじめは、これはニワトリと卵の関係なのかと思っていました。

やる気がないから生産性が落ちる、生産性が落ちるからやる気がでない。こんなふうに。

しかし、分析をすすめるうちに、2つの謎の原因が見えてきました。

経営の2つの柱は時代遅れ

経営は2つの柱をもとに行われています。ハードとソフトの柱です。

ハード面:構造、プロセス、システムなど。

ソフト面:感情、人間関係、性格など。

企業が再編成をするとき、この2つの柱をさわります。洗練したり、組み合わせたり。

実は、この2本の柱はもう時代遅れなのです。

ハードのアプローチをすると複雑になる

いまの、複雑化したビジネスにこの柱を使うとどうなるでしょう?

ハードのアプローチでは、戦略、必要条件、構造、プロセス、システム、KPI、スコアカード、委員会、司令部、メトリックス、インセンティブ、などなどいろいろなものがあります。

要するに、複雑になるのです。ビジネスが複雑化します。

自動車メーカーの例

例をあげましょう。

ある自動車のメーカーの技術部門には、5つの母体があります。1つの母体を開けてみると、そこには、20の母体があります。

騒音担当、ガソリンの消費担当、衝突防止担当、など。

新しい要件が発生するたびに、その技術を担当するシステムを作ります。

数年前、保証の長さに関する問題が市場で取り沙汰されるようになりました。

より修理しやすい車を作ることが求められたのです。

ライトを修理するのに、アクセスを取り外さないといけないなら、2時間ですむ修理が1週間かかります。

すると保証の予算がふくれあがります。

この問題をハードアプローチで解決しようとすると、「修理のしやすさ」が新しい要求となり、それを担当する部署が生まれます。

この部署は、従来のやり方にしたがって、新しいKPIを25作ります。

修理のしやすさを担当する人々が新たに得る報酬(変動報酬)は、多くても20%。これを26のKPIで割ると、違いは0.8%です。

彼らの選択がもたらすインパクトはゼロです。ゼロの違いのために、さまざまなシステムを作り仕事をします。

必要なのは相互の協力

新しい複雑さをもつビジネスの解決策は、箱の絵を書いたり、線をひっぱったりすることではありません。

それは、相互に影響しあうことです。

それぞれの部門がどんなふうに一緒に仕事をするか、つながって、変化をもたらすかが重要です。

空っぽの箱ではなく、柔軟性と知性をもった神経のつながりが求められます。

これを協力と呼んでもいいでしょう。

人々が協力すれば、使うリソースは少しですみます。

修理のしやすさの問題は、企業全体の問題です。

車をデザインするとき、売れた後に、修理する必要がある、と考えてデザインするべきです。

協力しないとコストがかかる

協力しないと、よけいに時間がかかり、より道具やシステム、チームを要します。よけいなストック、棚卸し、運転資金が発生します。

誰が、その分のお金を払うのでしょうか?

株主? 顧客? いいえ、彼らは払いません。

従業員が支払うのです。協力がないから、個人的にすごくがんばって、ストレスをかかえ、燃え尽き、苦しみ、事故という代償を払います。

やる気がなくなるのも無理ありませんね。

銀行の例

銀行でハードの柱を使うと、営業と経理のあいだで問題があったとき、間に、ミドルオフィスを置きます。

すると、1年後、これまで、営業と経理の間に1つだけあった問題が2つに増えます。

営業とミドルオフィスの問題、経理とミドルオフィスの問題です。しかも、ミドルオフィスの従業員に給料を支払わなければなりません。

ハードのアプローチは企業を成長させません。新しい箱を作るだけです。骸骨の新しい骨を付け加えるだけなのです。

ソフトのアプローチも時代遅れ

ソフトアプローチでは、人々を協力させるために、お互いに、好意を持たせようとします。仲が良ければよいほど協力する、というのです。

これは、大間違いです。

お互いに好意をもたせるのは、半生産的ですらあります。

我が家にはテレビが2つあります。

なぜか?

妻と協力しないためです。

妻と取引(トレードオフ)をしないですむように。

取引を避けているのは、妻を愛しているからです。

もし妻を愛していなかったら、テレビは1台で十分です。

「私の好きなフットボールの試合を見たくないだって。いやなら、本を読むか、家を出ていけば?」と言うでしょう。

お互いに好きであればあるほど、取引を押し付けて、関係を悪化させるような協力は避けるものです。

だから、もう1台テレビを買います。そうしないと離婚です。

お互いに仲良くさせるというソフトのアプローチも時代遅れなのです。

スマート・シンプリシティ・アプローチとは?

複雑化に対応し、神経のつながりを強化するために、スマートシンプリシティアプローチというのを作りました。シンプルなルールを使います。

ルール1:ほかの人が何をしているか理解する

ほかの従業員がどんな仕事をしているのか把握します。

箱や、仕事の説明など、表面的なことを越えた理解が必要です。

箱の見かけではなく、中身を知りましょう。。

デザイナーが、ワイヤをここに置くと、ライトを修理するために、エンジンを取り除くことになる、とわかっているべきです。

ルール2:まとめ役の強化

まとめ役(integretors)を強化します。まとめ役は、ミドルオフィスではなく、マネジャーです。

既存のマネジャーの権限を強くして、ほかの人を協力させることができるようにします。

マネジャーをまとめ役にするために、間にある階層(layer)を取ります。

階層がありすぎると、行動できなくなり、だから、KPIやらマトリックスみたいなものが必要になるのです。

すると現実を把握できません。

現実を知らず、よけいなものを作って、複雑にします。

ルールをなくしましょう。

それが大きなルールであればあるほど、まとめ役が必要になります。

ルールが少なければ少ないほど、まとめ役のちからが強くなりますが、いまは逆をやっているので、百科事典並にたくさんのルールがあるわけです。

ルール3:人々にもっと権限を与える

それぞれの権限を大きくして、それぞれが自分の知性にもとずいて、決定できるようにします。

ルール4:将来の影を濃くする

フィードバックを受け取れるようにし、みなに、自分の行動の結果がわかるようにします。

修理しやすさを考える担当者が、事業になんの影響も与えていないのがわかったとき、車のメーカーがこれを始めました。

デザインの担当者に、3年後、その車が市場に出たとき、アフターセールの保証の予算の担当になってもらう、採算がとれなかったら、きみの首が飛ぶよ、と言ったのです。

報酬が0.8%変わるより、ずっと強力です。

ルール5:相互関係を深める

自己完結で終わらないように、間にあるもの(緩衝エリア)を取り除いて、相互関係を深めます。

ダイレクトに互いの仕事がつながっているとがわかるようにすれば、協力しあいます。

2台目のテレビを排除しましょう。職場には、価値を生み出さず、機能不全の自己満足だけをもたらす2台目のテレビがたくさんあります。

ルール6:協力している者に報酬を与え、しない者を責める

レゴグループのCEOは、この精神を発揮しています。彼は、失敗を責めるのではなく、助けなかったことや、助けを求めなかったことを責めるように言っています。

この考え方はすべてを変えます。失敗しても責められず、助け合わなかったら責められるのですから、自分の弱みを見せることが、苦になりません。

以上ができれば、企業は大きく変わります。すると、パフォーマンスも満足度もあがります。この2つを妨げている原因を取り除けるのですから。

複雑にしないことは、自分との戦いです。競争者との戦いは本当の戦いではありません。真の戦いは、自分自身とするもの。煩雑な手続きや、複雑な状況と戦えるのは、自分だけです。

//// 抄訳ここまで ////

単語の意味など

rabbit warren  ウサギの繁殖地、ウサギの飼育場

KPI Key Performance Indicator  重要業績評価指標

front office  営業など顧客と直接関わる業務。業種によっては、経営陣を意味することもある。

back office  顧客と直接やりとりしない部門(経理、人事など)

middle office  フロントとバックの橋渡し的な部署。リスクマネジメントなどを行う。

イヴ・モリューさんの共著です。

仕事に関するTEDトーク

人生を変えたい人がするべき3つのこと(TED) シンプルが鍵。

言い訳を作り出してしまう私たち:あなたに夢の仕事ができない理由(TED)

なぜ職場で仕事ができないのか?(TED)邪魔な物を排除するとうまくいく

仕事の失敗でいちいち落ち込まない方法。親切で、優しい成功哲学(TED)

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逆境はチャンス。最高の人材の履歴書が必ずしも理想的でない理由(TED)

「チーム自分」を意識する

それぞれの従業員が、責任をもって、主体的に仕事にかかわれば、生産性も満足度もあがるので、そうなるように、よけいな仕組みは取っ払おう、という内容ですね。

職場環境に関するプレゼンですが、ぜひ、汚部屋改善にも応用してください。

自分の部屋にある物や所持品は、すべて、「自分の生活をよくする」という1つのゴールのためにそこにある、「チーム自分」の一員なのだ、と考えてみるのです。

実際、購入するときは、そういう意図があったはずです。

しかし、いつのまにか、プレゼンにも出てきた、「何の価値も生み出さず、個人的な充足にとどまるだけの状態」の物が、増えています。

そういうものがあると、「自分の生活の質をあげる」というゴールから遠ざかります。

1つひとつは、かわいかったり、きれいだったりして、なんとなく価値があるように見えても、何の役割を果たさず、ほかの物と、相互に協力できなければ意味がありません。

食器棚や押入れに入っているだけでは、コストがかかる一方なのです。

企業において、従来のハードの解決に使われていた実態のない新しい箱(部署やシステム)は、片付けでいえば、収納グッズや家具です。

こうしたものを増やすと、片付けている気になるだけで、実際は、何も片付いていません。

物は、命も感情もないので、燃え尽きたり、ストレスで病気になったりはしません。

しかし、全体の足をしっかり引っ張ります。

それぞれの物をバラバラに捉えるのではなく、

すべては、自分が望みたい生活をできるよう、協力して助けてくれる物である

こう考えて、部屋にある物を見ると、もう捨てたほうがいい物がよくわかるでしょう。

協力しない物はもう捨てましょう。

相手が従業員だと、簡単に首を切ることはできません。

しかし、対象は物なので、組織改編が、さくさく進むのではないでしょうか?





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