埠頭に座る女性

TEDの動画

意識を向けること、そしてマインドフルネスの大切さ(TED)

すぐに気が散ってしまう人におすすめのTEDトークを紹介します。

タイトルは、Paying Attention & Mindfulness (意識を向けることとマインドフルネス)。

瞑想を教えているSam Chase (サム・チェイス)さんのプレゼンです。



意識を向けること、TEDの説明

Sam Chase asks you to pay attention during his opening talk at TEDxNYU, deftly exploring what it means to be truly mindful and how every one of us can incorporate the practice into our lives.

サム・チェイスは、TEDXNYUのトークのはじめで、あなたに意識を向けるよう頼みます。そこから彼はたくみに、真にマインドフルであることがどういうことなのか、そして、それをどんなふうに生活に取り入れたらいいのか、伝えます。

収録は2018年の4月、長さは16分。自動生成される英語の字幕あり。

マインドフルネスについて、とてもわかりやすく説明しています。





マインドワンダリング

私の名前はサム・チェイスです。これからの15分、皆さんが私に注目してくれることを切に願っています。

でも、そこまで期待はしていません。私は瞑想を教えることが仕事で、意識的注意(conscious attention)について学んでいます。

だから、人の心の中で起こりがちなことを知っています。2010年に、ハーバード大学の研究者グループが、80カ国以上から集まった5000人以上の人の、日々の思考を調査しました。

その調査からわかったことは、人は、全体の時間のうち、47%の時間は、意識がさまよっていて、関係ないことを考えています(mind-wandering、マインドワンダリング)。

皆さんのうちの半分が、今、私に注目しているなら、私はその確率よりちょっと勝っているわけです。

今、ここに意識がないと幸福度が下がる

さらに重要なことに、私たちの心がさまよっているときは、今起きていることに集中しているときより、幸福度が下がります。

マインドワンダリングにはメリットがたくさんあります。創造的な思考や計画することには、マインドワンダリングが大きな役割を果たします。

時間が経過しても、自分が誰であるのか一貫した認識を持てるのも、マインドワンダリングのおかげです。

しかし、幸福は、「今、ここ」で起きているようです。そして、今、ここで起きていることを扱うのはとても難しいのです。

1人で15分過ごす実験

2014年の研究ですが、何百人もの人たちが、誰もいない部屋で1人になって、15分間、自分の考えと向き合うように言われました。

15分後、ほとんどの人たちが、その時間を、「すごく退屈で不快だった」と評価しました。

その後、どのぐらい退屈で不快だったのか調べるために、内容を少し変えた実験が行われました。

1人で部屋に入ってもらう前に、被験者に痛みのある電気ショックを与えたのです。当然、この電気ショックを好きな人はおらず、みな、嫌いました。

研究に参加した多くの人は、2度とそんな経験をしないために、かなりのお金を払う気になったと報告されています。

被験者が、誰もいない部屋に入ったとき、研究者は、こんな指示を出しました。

「これから15分間、1人で自分と向き合ってもらいます。テーブルにはボタンがあります。このボタンを押せば、先ほどと同じ電気ショックを感じます。

あなたが、お金を払ってでも避けたいと言った電気ショックです。

このボタンを押す必要はありません。押したからといって、15分は短くなりません。押すかどうかは、あなた次第です」。

15分後、女性の25%、男性の66%が、最低1回はこのボタンを押しました。複数回、押した人がたくさんいました。

ある男性は、15分に190回も押しました。5秒に1回です。

なぜ、ボタンを押すのでしょう? 理由はわかりません。

退屈や不安のせいかもしれないし、思考するより、痛みを感じるほうが、楽だと感じたのかもしれません。

わかっていることは、私たちの多くが、自分の心の風景に解き放たれると、そこはジャングルみたいだと感じることです。そして、そこから抜け出すために、何でもしてしまうのです。

哲学者のブレーズ・パスカルは、「人類のすべての問題は、部屋で1人で静かに座っていることができないから起きる」と言いました。

1人でいるとき、ボタンを押したくなるような瞬間を何度も経験しているなら、あなたも彼の言葉に同意するでしょう。

意識的な注意は有限のリソース

しかし、私たちの意識的な注意は、貴重な天然資源のようなものです。

すべての天然資源と同じく、その意識は有限です。

人の脳がどれだけの情報を処理できるかを計算する方法はありません。

でも、ある試算によると、すべての感覚器官(聴覚、味覚、触覚、嗅覚)から受け取っている情報を合計すると、1秒間に、脳にはおよそ1100万ビットの情報が届いているのです。

あなたの意識が処理できる情報は60ビットです。今、周囲で起きていることや、あなたの中で起こっていることに関する、99.9994%の情報は、無意識の部分で処理されているわけです。

届いた情報のすべてが、顕在意識に反映されることはないでしょう。

この現象をどうすればいいのでしょうか?

日常生活の質の多くは、貴重な「意識的注意」を、どうやって投資し、管理するかにかかっていますからね。

技術の発展のおかげで、運転しながら、右にスワイプしながら、食事を注文しながら、スカイプしながら、ドラマのストリーミング放送をを見ながら、メッセージを送れる現代は、かつてないほどたくさんのことが、この貴重な60ビットの帯域幅を奪い合っています。

だから、私たちはマルチタスクをしようとします。何も見逃さないために、ほんの少ししかない、意識的な注意を、いろいろなことに分散させるんです。

マルチタスクはできない

しかし、私たちはマルチタスクが下手です。

今説明したようなマルチタスクは、実際には存在しません。

これは、認知の錯覚です。

映画を見ていると、すべては、静止画の連続なのに、実際に動いているように感じるのと同じです。

マルチタスクをしているとき、脳内で実際に起こっているのは、意識的な注意を、1つのものから別のものへと、何度も行き来させていることです。

自分では気づくことができないほど、速いスピードで行っています。

これを心理学者は、タスクスイッチングと呼んでいます。

タスクスイッチングをすると、何をやるのもうまくいきません。

私たちは、よりたくさんのことを、より速く行おうとして、マルチタスクをしますが、たいてい、よけいに時間がかかり、パフォーマンスも悪くなります。

人々の行動を1日中調査したある研究によれば、途中でタスクを中断されると、もとの集中状態に戻るまで、平均で23分、もしくはそれ以上かかります。

マルチタスクしようとするとストレスが増える

私は、こんな話をいつも人にしていますから、会場にいる人のうち、少なくとも1人は、反論をするとわかっています。

「ちょっと待って、僕はいつもマルチタスクしているし、すごく得意なんだ。他の人はできないかもしれないが、自分は大丈夫だ」と。

そんな人のための研究もありますよ。

この手のマルチタスクをして、「自分はすごくうまくやっている」と思っている人が、一番まずいパフォーマンスをしているとわかっています。

さらに、マルチタスクには、気がかりな副作用があります。

やることがたくさんありすぎるストレスに対処するために、私たちは、マルチタスクをしますが、マルチタスクをすると、ますますストレスレベルがあがるのです。

血中にあるコルチゾールというストレスホルモンのレベルが上昇します。

マルチタスクと、衝動性や自制心のなさには、大きな相関関係があります。

マルチタスクをしながら、私たちは、心(マインド)を大きく広げる訓練ではなく、気が散る訓練をしているのです。

でも、マルチタスクをやめろと言うつもりはありません。そんなことは、できないし、やる気もないでしょうから。

意識的な注意をうまく使う

皆さんにやってほしいことは、「意識的な注意」という貴重なリソースを、どうやって管理し、守るか考えることです。

神経科学から、意識的な注意のおかげで、3つの基本的なスキルが向上するとわかっています。

意識を向けることは、新しい情報を探すのに役立ちます。

私たちの集中を奪い合っているたくさんの情報をソートすることにも役立ちます。

さらに、重要だと思うことから、気を逸らさないことも助けます。

ニューヨークにいるだけで、情報を探したり、ソートしたりする練習はいくらでもできますよね。

しかし、私たちが苦労し、つまづいてしまうのは、自分にとって大切なことにとどまっていることです。

とても大事な人と会話をしているとき、意味もなくスマホに手を伸ばしたことがある人なら、それがどんなにむずかしいことなのかわかっていただけるでしょう。

マインドフルネスとは?

ありがたいことに、意識をとどまらせるための練習法は山のようにあります。私のお気に入りの1つで、おそらく、もっとも古いのは、マインドフルネスの実践です。

マインドフルネスは、今、ポップカルチャーで流行っています。

雑誌の表紙、スーパーボウルのCM、大企業の役員室、ありとあらゆるところで、この言葉を見かけますね。

しかし、マインドフルネスは神秘的なものではありません。

僧侶や富豪でなくても、実践できます。

ごく簡単に言うと、マインドフルネスは、今という瞬間に、判断を加えることなく、意識的に注意を向けることです。

マインドフルネスで、今に意識を向けるのは、そこでたくさんの幸せなことが起きているとわかっているからです。

意識的に、その瞬間に注意を向けると、状況に左右されない、自分で選択できる生き物に変わっていきます。

注意を向けるだけでジャッジはしない

ジャッジせず、今に注意を向けると、本当に特別なことが起きます。

意識的な注意を向けることが、自然にできない理由の1つは、それができると、素早く判断して、すぐに次のことに飛びついてしまうからです。

いいね、次は何? これは嫌いだ、次は何? こんな感じです。

次は何、次は何、と思ってしまうんです。

そうしている間に、心は、優れたストーリーテラーになり、自分自身のストーリーに絡め取られてしまいます。

しかし、マインドフルネスの実践では、今という瞬間が何を語っているかに興味をもち、私たちがそれについて語りたいことにはとらわれなくなります。

すると、自分自身のストーリーのまわりに、少しスペースができます。それは、他の人のストーリーのためのスペースになるのです。

マインドフルネスや瞑想の研究によれば、マインドフルネスの練習をする人は、社会的なつながりの感覚が磨かれ、思いやりをもち、利他的な行動を取るようになります。

最近の研究からわかったことですが、マインドフルネスや瞑想を実践すると、暗黙の偏見や差別的な行動が減ります。よりオープンになり、世界のために何かしようとするのです。

呼吸に意識を向ける練習

そこで、残りの時間で、実際にやってみましょう。

椅子の上でくつろいでください。リラックスしながらも、注意深くいられるポジションを取ってください。目を閉じるか、どこかに視線を落ち着かせましょう。

大きく息を吸って、吐きましょう。もう1回やります。大きく息を吸って、吐きます。

できるだけ、呼吸の自由にさせましょう。体はやり方を知っているから、細かくコントロールする必要はありません。

ただ、呼吸がするようにまかせて、その呼吸に意識を向けます。説明したり、分析したり、覚えたりする必要はありません。

ただ呼吸を感じてください。すると、そのうち、心がさまよい始めます。そうなってもかまいません。実はここが、練習しがいのあるところで、練習の恩恵を得られる部分です。

心がさまよったら、呼吸の感覚に戻ってくるよう、頼んでください。

1分間に15回呼吸すると、1日では2万回呼吸することになりますから、「今している呼吸はたいしたことじゃない」と思うかもしれませんね。

でも、今、ここで起きている呼吸に意識を戻し続けることができると、以前は見えなかったものに、気づき始めるかもしれません。感覚の背後にある感覚です。

もし助けになるなら、こう考えてみましょう。息を吸って吐く時、空気は肺に入り、あなたの中に、折りたたまれているもの(肺のこと)の表面にふれます。

肺を全部広げると、その表面積は、オリンピックのテニスコートの約半分の大きさになるでしょう。それを折りたたんだものが、今、あなたの中にあり、そこに息が入っていくのです。

息を吸うたびに、吸い込んだ酸素は、とても複雑で大きな血管のネットワークに入ります。

血管を1本のひもにすると、長さ6万マイルで、それは地球を2周半する長さです。それが今、あなたの中に入っているのです。

息を吸うたびに、37兆個の細胞が必要なものを取り込みます。息を吐くたびに、同じ細胞が、もういらないものを吐き出すのです。

理解するのは不可能ですが、それがどんな感じなのかはわかりますよね。

こんな感じです。息を吸って、息を吐いて、息を吸って、息を吐いて。

深く息を吸って、吐いて。はい、目を開けてください。意識を向けてくださり、ありがとうございます。

//// 抄訳ここまで ////

チェイスさんの著書です。

マインドフルネスや集中に関するTEDトーク

たくさんありますが、7つだけ紹介します。

落ち着いて、注意を向けて、ありがとうと言う、その方法(TED)

幸せになる秘訣は目の前のことに集中すること(TED)

マルチタスキングはやめてモノタスキングをしよう(TED)

瞑想 – 今日もっとも重要なたったひとつのスキル(TED)

『必要なのは10分間の瞑想だけ』~物より心が大切です(TED)

暮らしにマインドフルネスを取り入れてより自由になる(TED)

集中できる人の脳とできない人の脳は何が違うのか?(TED)

マルチタスクはやめておこう

現代は、気をそぐものが周囲にあふれているので、チェイスさんの言うように、「自分の持っている意識的な注意というリソースををどんなふうに使うか」が、生活や人生の質を決めると思います。

集中したいときに、集中できるようになるために、どうしても必要な時以外は、マルチタスクはしないほうがいいでしょう。

マルチタスクが脳に負担をかけ仕事の効率を落とす理由。1つのことに集中しよう

マルチタスクをしていると、ますます、集中できない脳になってしまいますから。

瞑想もおすすめですが、毎日瞑想をしながら、仕事中はマルチタスクをしていたら、たいして意味がないと思います。

もう1つ、大きくものを言うのがスマホの使い方です。

スマホに使われるのではなく、主体的に使うようにすると、「意識」という資源をうまく使うことができるようになるでしょう。

身の回りをきれいに片付けて、関係ないものを視界の外に出してしまうと、集中しやすくなりますが、スマホも視界の外に出したほうがいいですよ。

見ると、さわりたくなってしまいますから。

****

片付けに必要なのは(片付けに限りませんが)、集中と決断だと私は思っています。

この2つがうまくできないと、不用品を捨てることができません。

だから、ふだん、余計なものに気を散らさない練習をするのはとても大切です。

くれぐれも注意してスマホを使ってください。

クレジットカードやスマホは、まずい使い方をすると、人生を棒にふってしまうほどの破壊力があると思います。





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