電車の中でスマホを見る人

TEDの動画

最終更新日: 2019.03.20

スマホは人の思考をどんなふうに変えるか(TED)

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スマホに依存しすぎない方法を教えてくれるTEDの動画を紹介します。

タイトルは、How Smartphones Change The Way You Think(スマホはどんなふうに人の思考を変えるか)。プレゼンターは、ジェフ・バトラー(Jeff Butler)さん。

ジェフはソフトウエアのエンジニアですが、心理学も学んでいて、近年は、スマホなどに気を散らされず、うまく仕事をする方法を人々に伝える会社を運営しています。



スマホはどんなふうに人の考え方を変えるか? TEDの説明

Have you ever wondered why it’s so hard to put down your phone?

There are hidden psychological effects that smartphones are having on our brains. Studies show that smartphone users are developing serious problems, like real addictions, and losing the ability to focus.

Mobile technology isn’t going anywhere, so we must become aware of these effects so we can better use technology- instead of letting it use us.

どうして、すぐにスマホを見てしまうのか、考えたことがありますか?

スマホは、人の脳に、心理的影響を与えています。リサーチによれば、スマホユーザーは、深刻な問題をかかえつつあります。たとえば、本格的な依存症になったり、集中力を失ってしまうのです。

モバイルテクノロジーは、消えたりはしません。私たちは、その影響を知り、うまく技術を使うべきです。スマホに使われるのではなく。

収録は2016年の8月です。動画の長さは11分54秒です。

字幕はありませんが、そんなに英語は難しくないです。ただ、彼はちょっと早口というか、あまりはっきり発音していないところがあります。きっとあがっていたのでしょう。

動画のあとに抄訳を書きます。

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

スマホに夢中になった母親に起きたこと

中国の荊州市(けいしゅうし)にようこそ。

見どころがたくさんある振興都市です。いくらかスモッグはありますが、よい天気。車がたくさん走っています。

ある女性が2歳の息子と手をつないで歩いていました。女性は週末のショッピングを前に、わくわくしています。

2人はバス停に座り、バスが来るのを待っています。時間をつぶすために、母親はスマホを取り出し、ゲームを始めました。

しばらくして、大きな音に目を上げた母親は、子供がいないことに気づきます。

音のした方を見ると、息子が白いバンの下で血まみれになって倒れていました。母親が見ていなかったすきに、子どもは道路に走り出たのです。

息子は病院に運ばれましたが、亡くなりました。母親は道路で泣き崩れました。

上海の新聞にのっていた本当にあったできごとです。

こんなことがあったから、私はきょう皆さんにお話をしようと思いました。

なぜ、私たちは、こんなにスマホに夢中になってしまうのか?

この講演は3つのパートに分かれています。

パート1は、なぜ私がスマホの使い方を研究するようになったか。

パート2は、なぜ人は、スマホに夢中になってしまうのか?

パート3は、スマホと、もっと主体的で効果的な関係を持つコツ





私がスマホの研究を始めた理由

スマホを手放さない人を見つけるのはごく簡単ですね。周囲は目に入らず、歩きながらゲームをしている人の姿はすっかりおなじみです。

ポケモンGOをやっていたりして。

みなさん、笑いますが、自分の人生でこんなことが起こっていたら、話は違います。

数年前、私は仕事をやめ、起業することにしましたが、うまく運びませんでした。

すぐにお金を使ってしまい、人間関係もこわれました、お金が出ていけばいくほど、そして、人とうまくいかなくなればなるほど、私はスマホに時間を使うようになりました。

現実を忘れるために。

自分が誰であるのか忘れるために、何日もスマホに夢中になりました。

こんなことがあったので、スマホの使い方について学ぶことにしたのです。

世界中でスマホ依存になる人が増えている

多くの人はスマホに病みつきになっています。これは「依存症である」という専門家もいます。

世界で一番スマホの使用率が高い国は、韓国です。2015年において、人口の88%がスマホユーザーです。

さらに、子供については、10人に1人がスマホ依存です。

全米アルコール乱用・依存症研究所(National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism、NIAAA)によれば、アメリカ人12人のうち1人がアルコール依存症です。

韓国の子供がスマホ依存である比率より低いですね。

スマホ依存はこんな状態

スマホ依存症とはなんでしょうか?

専門家によれば、こんな症状があれば、スマホ依存です。スマホの使いすぎの悪影響を無視する、慢性的に不安をかかえている、衝動を抑えることができない。

ここにいる皆さんの多くが、ポケットやバッグにスマホを入れていると思います。

講演中に、しょっちゅうスマホをチェックしてるなら、それが、衝動をコントロールできていない、ということです。

アメリカでもスマホの使用は増えていて、数年後には70%に到達すると予想されています。ですから、ほかの国で、なぜ依存する人がたくさんいるのか、注意を向けるべきですね。

ほかの国から学ばなければ、同じ道を歩んでしまうでしょう。

なぜ、私たちはスマホを使いすぎてしまうのでしょうか?

2つ、理由をお伝えします。

スマホに夢中になる社会的な理由:ピヤ・プレッシャー

1つ目は社会的な理由です。すなわちピヤ・プレッシャーです。

テキストメッセージの返事がすぐに返ってこないから、イライラしたことがある人、何人いますか?

みんなそうですよね。

すぐに返事を送ることができるのだから、皆、それを期待してしまうのです。

テキストを受け取った人は、よき配偶者、パートナー、同僚でありたいと思うので、いつも返事を送れるように待ち構えるようになります。

スマホをいつもチェックできるようにしていると、それがあたりまえになり、1日24時間、1週間7日間、返事をするという義務に従おうとするのです。

職場でよくあることですね。上司は部下をスマホで縛ります。即やりとりができて便利ですから。

その結果、部下は、仕事を家に持ち帰り、9時にEメールをチェックしたりすることになるのです。

こんな状況をやめさせようとしている国もあります。フランスでは、50人以上従業員のいる会社に、週末、仕事のEメールのやりとりを禁止する法律を作りました。

フランス政府は、「人々には接続を切る権利がある」と言っているのです。アメリカ人にも、接続を切る権利がある、というわけです。

神経にかかわる理由:ドーパミン

スマホは脳にどんな影響を与えるのでしょうが? 実はいろいろな影響があるのですが、きょうは1つだけ紹介します。

通知機能(ノーティフィケーション notification)にかかわるものです。

そう、メールを受信したと連絡したり、気温が1度変わったと教えてくれたりする機能のことです。

こうした通知を受けると、人は気分がよくなります。

遠方の恋人から返事があったり、ようやく宅急便が自宅に届いたことがわかったりするわけですから。

幸せな気分はドーパミンの分泌のせいで起こります。すぐに、通知とドーパミンにつながりが生まれます。

これはニューロ・アソシエーション(neuro-associations)と呼ばれるものです。

ドーパミンを出したいときに、通知を見るようになるのです。しかも、通知⇒ドーパミン、通知⇒ドーパミンと続けているうちに、幸福感を次第に感じにくなってきます。

5回、10回、15回の通知では足りなくなり、20回、50回、100回の通知が必要になるんです。

通知を通じて、ドーパミンのトレッドミルの上を走っているようなものです。

朝、スマホを見て、ドーパミンをあげること(dopamine hit ドーパミン・ヒット)がそんなに深刻なことなのか、と思うかもしれませんね。

皆さんにお聞きします。このプレゼン中に、私に向けていた意識が、数秒、あるいは、数分間それた人は何人いますか?

よくあることですね。

退屈な会議で、誰かが発言しているとき、スマホを取り出してチェックしたりしませんか。これはドーパミンを出したいからです。

ドーパミンを出したい間隔にはリズムがあります。このリズムに私の講演が追いつかないと、人は、私から意識をそらします。

ふだん、スマホからひんぱんに通知という刺激を受けていると、読書や、ライティング、友達との会話ですら、難しくなります。

デジタル時代のいま、人の注意が持続する時間(アテンション・スパン attention span)は8秒まで下がりました。

みなさんのアテンション・スパンは、金魚より短いのです。マイクロソフトによれば。

ウィリアム・パワーズ(William Powers)は、著書、Hamlet’s BlackBerry(ハムレットのブラックベリー)で、こうした事態に注意を促しています。

パワーズはこう書いています。

「歴史上の偉大な思索家たち、天才と呼ばれた人たちは、思考力を深く集中させ、新しいアイデアを思いついた。集中力や、深く振り下げる力があれば、人生はより豊かになる。知的面も、感情面も、意味あるものとしても」

確かに、スマホは私たちの日常生活をとても便利なものにしてくれました。

ですが、その代わり、人々の思考が浅くなったのです。

デジタルの時代では、むしろデジタルではない世界において、情報を分析し、解釈し、より深い意味を見いだすことが重要なのです。

残念ながら、常に、通知という刺激を受ける生活になったせいで、私たちは集中しにくくなっています。

スマホ依存にならない3つの方法

自分の注意力の持続時間が、金魚より短いなんて、怖いですよね。

では、どうしたらいいのでしょうか?

スマホに使われない方法を3つ紹介します。

1.)スマホを使いすぎる理由を書く

心理療法士のように、なぜ自分はそんなにスマホばかり使っているのか、その理由を書き出してみます。

恋人からメッセージをもらうのがうれしいから? 上司からのメッセージを無視するのは罪悪感があるから? 何かから逃避したいから?

逃避のために、スマホを見るのは、やめたほうがいいですよ。依存症にまっしぐらです。

2.)1日のあいだで、スマホを切る時間をもうける

ありきたりなアドバイスですが、スマホを切る時間をもうけてください。朝一番、夜寝る直前など。

スマホは、睡眠のサイクルを妨げるとわかっています。

スマホを切って、深く考えたり、集中できる時間を作ったり、友達と集う時間や、子供と食事する時間をもうけてください。

3.)スマホの通知の数を減らす

スマホで受ける通知の数を減らしてください。

確かに、友達の前で、どんどん通知の音がすると、セレブになったみたいでいい気分かもしれません。ですが他の人は全く気にしていませんよ。

通知の数を減らせば、より集中できることに気づくでしょう。

中国の荊州市(けいしゅうし)の話に戻りましょう。息子が死んでしまって泣いている女性の話です。

泣いている母親ではなく、今度は両手がふさがっている母親をイメージしてください。

片手にはスマホ、もう一方の手には息子の手。こんなとき、スマホを手放すべきなのです。

スマホはとても便利ですが、その裏で、支払っている代償があります。依存症のような行動や、注意力が続かないこと。

払う代償の大きさは人様々です。

ですが、過去に、新しいテクノロジーが到来したときのように、この新しい技術をうまく使うことを学べば、私たちは、よりすばらしいことを達成できるのです。

/// 抄訳ここまで ////

単語の説明など

get pulled into  引き込まれる、巻き込まれる

scout out  ~を探す、~を見つけようとする

yellow brick road  幸せや成功への道、出世街道 ☆「オズの魔法使い」に出てくるyellow brick road から来ています。この道は、Ozへ行く道です。

韓国の子供の10人に1人がスマホ依存。この箇所、ジェフは10人と言ってませんが、このニュース記事によれば、10人に1人です⇒Internet-addicted South Korean children sent to digital detox boot camp – ABC News (Australian Broadcasting Corporation)

have … on a leash   ~を束縛する、意のままにする。 ☆もともとっは、犬をひもにつなぐことです。

caveat  警告、注意

segue  切れ目なく続くこと。☆もとは音楽用語で、次の楽曲や楽章を、そのまま切れ目なく演奏すること。

ウィリアム・パワーズの本。

タイトルを訳すと、「ハムレットのブラックべりー:デジタル時代によい人生を築くこと」となります。

テクノロジーのおかげで、外界と常につながることができますが、その裏で、失われてしまうものもあります。そのバランスをいかにとっていくか、ということが書かれた本です。

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目先の刺激を取るか、人間らしい生活を取るか

私もスマホを持っていますが、やはりアテンション・スパンが短くなったと思います。

仕事中は、スマホは見ないようにしていますが、夜、ぼーっと、動画を見ているときに、ふと、スマホを見たりすることがあるのです。

これって、どちらにも集中していないということですね。

以前も書きましたが、子供のときは、テレビ番組の放映はそれ1回こっきりなので(再放送されるかどうかはわからない)、私はとても集中して見ていました。

ところが、今は、ストリーミングで見るわけですから、必要なら何回も繰り返して閲覧できます。よって、べつに見なくていいものまで、だらだらと見てしまうことがあります。

見なくてもいいものなので、そんなに真剣に、緊張感を持って見てはいません。すると、ふと退屈になって、スマホを見たりするわけです。

このような生活を続けていると、だんだん、集中できず、物ごとをしっかり考えられない脳になっていくのです。

人生の質をあげたい、と思うなら、スマホの使い方には慎重になるべきだと思います。

ところで、ジェフさんの言っていた、スマホに使われない3つのコツは、ほかの悪習慣を改めたいときにも使えますね。

たとえば、買物しすぎるのをやめたいときはこんな具合です。

1)なぜ買物してしまうのか、理由を書き出す

2)買物しない時間・期間をもうける⇒誰でもできる『買わない挑戦』の始め方。自分ルールで楽しく実践。

3)店から届くメルマガの配信を減らす、雑誌の広告を見る頻度を減らす、買物情報を提供しているサイトを見る回数を減らす。

買物に依存気味の人は、買物という刺激によって、ドーパミンを出して、ハッピーになっています⇒買い物で気分があがるのはドーパミンのせい。この仕組みを知って無駄遣いを防ぐ。

この状態を、ジェフさんは、ドーパミン・ヒット(dopamine hit)と呼んでいました。

ヒットは「打つ」ということですが、タバコの一服とか、お酒ぐいっと飲むとか、麻薬を吸ったり、麻薬の注射を打つことも、ヒットです。

朝、コーヒーを飲んで目を覚ますことを、カフェイン・ヒットと呼ぶこともあります。

最初はヒット1回で、ハッピーになれるのですが、何回も続けていると、だんだん効かなくなってきます。

これは麻薬も、買物も、スマホも皆、同じですね。

SNSの「いいね!」マークが増えるのを見て喜ぶのもドーパミン・ヒットです。

こくした、お手軽な目先の刺激だけを追い続けていると、結果的に、みじめな人生になります。たまには、ヒットを得ることから距離を起き、深く考える時間を作ったほうがいいですね。





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