ナラの木

TEDの動画

ルーティン:習慣、練習、儀式の思いがけないパワー(TED)

もっと意図的な暮らしをしたい、やりたいことがやれる人生を送りたいと思っている人の参考になるTEDの動画を紹介します。

タイトルは Routines: The Unexpected Power of Habits, Practices, and Rituals (ルーティン:習慣、練習、儀式の意外なパワー)。プレゼンターはジャン・スタンリー(Jan Stanley)さん。

スタンリーさんは、ライフコーチです。



ルーティンのパワー、TEDの説明

Beloit native Jan Stanley is a writer, coach and strategist who has developed a powerful framework for using habits and rituals to increase well-being and meet both individual and organizational goals.

ベロワ(ウィスコンシン州)出身のジャン・スタンリーは、作家、コーチ、ストラテジストです。彼女は、習慣と儀式を使って、幸福度(ウエルビーイング)をあげ、個人や企業がゴールを達成できる仕組みを開発しました。

プレゼンの長さは13分48秒。収録は2015年の8月。字幕はありません。動画のあとに抄訳を書きます。

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

いかにルーティンをうまく使って、自分の人生を充実させるか、これがこのプレゼンのテーマです。





最良の追悼文とは?

私は人々の追悼文を書き、それを読み上げています。また、ほかの人に追悼文の書き方やその伝え方を教えることもしています。

最良の追悼文とは、亡くなった人をたたえ、その人を知っている人たちにとっての真実を伝え、よりよい人生を送ろうと思わせるものです。

私は、何がその人の人生を意味あるものにしたのか、何がその人の人生を喜びで満たしたのか、よく考えます。そして、あることに、気づきました。

もっとも充実した人生を送った人々とは、自分にとって何が大事なのかわかっていて、その大事なものを中心にすえて、人生を構築した人々です。

その大事なものを優先して人生を送ったのです。

私は、ウエルビーイング(幸福度)に関する科学や心理学を研究し、生きているとき、その人の人生をすばらしいものに関する最新のリサーチにも通じています。

きょうお話しするのはこうした知識をすべて合わせたものです。

充実した人生をもたらすもの

私たちはみな、木から地面に落ちた小さなどんぐりの実で、腰をすえるやわらかい場所が見つかるまでころがり続けます。

アリストテレスによれば、そこで、私たちは、美しく、豊かなナラの木(oak tree オークツリー)になるために生きていきます。

みなさんは、大きくて美しいナラの木になるには、毎日、どんなふうに生きればいいのだろう、ととまどうでしょう。

その答えは簡単です。小さなことから始めるのです。

意味のある充実した人生を送るためにもっともパワフルなツールは、ルーティンである、と言ったら、みなさんはどう思うでしょうか?

私の強みは創造性で、何をするにも、自分のオリジナリティーを発揮したいと強く願っています。だから自分にはルーティンなんて関係ないと思っていました。

ですが、ルーティンはすばらしいものであり、役立つものであり、戦略と行動を結びつけるものです。途方もない夢と、目覚めてからする行動のあいだの橋渡しをします。

「私にはルーティンはない」と思う人がいるかもしれません。でも、学校や職場についてから、歯を磨くのを忘れたと、がくぜんとしたことがありますか?

みな、モーニングルーティンをもっています。緊急なことやもっとおもしろいことに邪魔されると、歯磨きをするという軌道からはずれます。

ルーティンの威力

問題は、このパワフルなルーティンのちからをどう使うかです。ルーティンを使うといろいろなことができます。

選択を制限する

ルーティンはいい方向に選択を制限します。選択肢の数をへらすので、私たちた行きたい道に向かうのを助けてくれます。

行動をうながす

選択を制限することによって、前進することを後押しします。

首尾一貫性をもたらす

ルーティンがあると、軸がぶれません。ルーティンのおかげで、首尾一貫した行動がとれ、それが、人生に意味を与える、とリサーチでわかっています。

もちろん、人生には単純なルーティンをすること以外にも意味があります。

けれども、「私の人生の目的はなんだろう」という大きな質問の答えを追い求めるかわりに、大事なことを1つ見つけて、それをルーティンにしてはどうでしょうか? そうすることで、人生に意味が生まれます。

安定性と可変性

ルーティンがあると、安定します。同時に、環境や私たちの行動が変わったら、ルーティンもそれに合わせて変えることができます。

ルーティンに対する考え方を変える

ルーティンは、自分のオリジナリティーと創造性を使って作ることができます。みなさんに、「ルーティン」について考え直してほしいのです。

ルーティンと聞くと、退屈で、単調なもの、ロボットのように同じことを何度もやることだ、と思うでしょう。

そう考えるのではなく、ルーティンをうまく使って、選択肢を減らし、行動をうながすにはどうしたらいいか、どんなふうにルーティンを人生にいかすか、そこを考えてほしいのです。

人生の終わりに、自分は、意味のある大事なことをしてこなかったと気づくとしたら、それはうまくルーティンを使ってこなかったからかもしれません。

人生は、日々の要約と言えます。作家のアニー・ディラード (Annie Dillard) は 日々をどう生きるかは、人生をどう生きるかだ(How we spend our days is how we spend our lives)と言っています。

日々を賢く生きて、豊かで意味のある人生になるように、1つずつ積み重ねていってはどうでしょう?

ルーティンに必要なのは時間のかたまり

ルーティンとは、ある一定の時間のかたまりです。モーニング・ルーティン、イブニング・ルーティンなどがあります。

その時間のかたまりに、一定のパターンの行動をします。そうした行動が生活のリズムを作ります。

私たちは、ある程度、このリズムをコントロールできます。速度をあげることもできるし、ゆっくり進むこともできます。くりかえしは、曼荼羅のように、気持ちを落ち着かせてくれます。

これはルーティンのいいところのひとつです。

ルーティンの3つの要素

ルーティンには3つの要素があります。習慣、練習、儀式です。どれも少しずつ違います。ウィリアム・ジェームズ(William James)は、習慣を「人生のはずみ車」と呼びました。

つまり、いったん行動を自動化すると、そうしてしまうのです。

過去数年間、軍隊の軍曹(drill sergeant)とともに仕事をしています。ブートキャンプの初日、バスが新人の兵士を連れてきますが、兵士にはさまざまな境遇の人がいます。

その多くが、安定した家や環境がなかった人たちです。自分のベッドやたんすを持っていなかった人もいます。

軍曹にとって、こうした兵士に習慣を教え込むのはひじょうに重要な仕事です。制服の着方、しまい方、朝どこに並ぶか、どこで昼食をとるか。

軍隊に入ったことがない人は、軍曹たちのしつけ方を疑問に思うかもしれません。

ですが、私が会った軍曹はみな、とても心が広いのです。「私は、数週間足らずで、この兵士たちの人生を救わなければなりません」。感極まった表情で、こう言った軍曹の顔を覚えています。

習慣は生死を分けるものにもなりうるのです。

芸術家にも習慣は必要

軍隊には習慣がいるだろうが、芸術家にはそんなものは関係ない、と思うかもしれません。ですが、多作で、著名な芸術家の多くは、習慣のちからを使って仕事をしてきたと、たくさんの研究からわかっています。

マヤ・アンジェロウ(Maya Angelou)は、ホテルに部屋を借り、かざってある写真も、本もテレビも全部取り去り、毎朝7時前にやってきて、執筆にいそしみました。

芸術家も、習慣のすごさに気づいているのです。

芸術家にとって習慣は、兵士にとっての習慣とは違うかもしれません。

しかし、心の中に歌うべき歌があるのに、それを形にする方法を知らずに死んでしまうことを考えてください。長い目で見ると、芸術家にとっても、習慣は生死を決める重要なものなのです。

練習とは学ぶこと

習慣になっていることを、自動的に、何も考えずそのまま繰り返すのは退屈な人生です。そこで、ルーティンの2つ目の要素である、練習が登場します。

練習とは、自分をよくしていくことです。

習慣は学ぶことではありません。自動的に繰り返すことです。繰り返すことによって、利益を得ます。

練習は、発見、好奇心にかかわることです。どうしたら、もっと向上できるか、どうしたらもっとうまくやれるか、そこを考えます。

私はハイテック産業のリーダーたちと仕事をしています。とてもめまぐるしい環境にいる人たちです。

彼らは、いつも、どうしたらもっとうまく時間とエネルギーを使えるか、貪欲に練習しています。

行動を助ける儀式

最後に儀式です。儀式といっても、近代的で個人的なものです。

儀式にはいろいろありますが、どれも私たちが、行いたい活動を実際にできるように助けてくれます。

ボブの場合をお話しします。ボブは仕事も家族も愛している若い男性で、この2つの切り替えに苦労していました。

そこで、仕事が終わったらうまく気持ちを入れ替えることができるように、仕事の完了を表すシグナルとして儀式を使うことにしました。

ボブはスポーツマンで、高校のとき、コーチは、いつも練習をいい気分で終わらせてくれた、という話をしました。

つまり、ミスショットをして練習を終わるのではなく、シュートを決めて、そこで終わりにするのです。

そこで、私たちは、いい気分で仕事を終われる儀式(good note ritual グッドノートリチュアル)について話し合いました。どんなことをすると、1日をいい気分で終えられるでしょうか?

メールチェックはだめです。後を引きますから。

しばらくして、ボブに会ったら、以前よりかなり、自分で仕事の時間と家族と過ごす時間をうまく切り替えることができていると言いました。

仕事が終わってto-do リストを破ってゴミ箱に捨てると、「きょうの仕事は終わり!」と思えるというのです。

ボブは、仕事で、習慣、練習、儀式の3つをうまく使っています。

習慣は、毎日To-doリストを書くことで、1日の終わりには、いい気分で終われる仕事を持ってきます。

練習しているのは、目の前のことに集中するためのマインドフルネスです。

儀式は、仕事の終わりに、To-do リストを破って、ゴミ箱に捨てることです。

大事なものを中心にして日々をデザインする

さて、これまで、何が人生を充実させるかお話ししてきました。

まず、優先したいものを知り、それを中心にして、日々の活動をデザインします。

アリストテレスのモデルの話もしました。小さなどんぐりとして生まれた私たちは、人生の目的を持つことで成長します。

その方法は、習慣、練習、儀式を使って、ルーティンを作り、1日1日を積み重ねることです。

大事なことを見つけることができたら、それを中心に、1日の過ごし方をデザインしてください。

日々を積み重ねていくと、その時が来た時、そして、その時は必ず来ますが、みなさんの追悼文を書くのはずいぶん容易になるでしょう。

しかも、その追悼文は、多くの人の心に強く訴えかけます。

それだけでなく、皆さんは、自分でも思いもよらなかったちからを発揮し、美しく、堂々としたナラの木になるのです。

//// 抄訳ここまで ////

単語の意味など

eulogy   追悼文。詳しくはこちら⇒なぜ人は自分が本当に求めている物を追求しないのか?(TED)

mutability   可変性、変わることができる性質

compendium   要約

flywheel はずみ車

all walks of life いろいろな職業や地位

end of a good note 気持ちよく終わる

習慣に関するほかのプレゼン

習慣のループを知れば、どんな習慣も変えることができる(TED)

大々的に変えようとしないこと。小さな習慣から始めよう(TED)

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習慣を見直せば生活は変わる

私は習慣付けに関するTEDを定期的に紹介しています。

汚部屋にするのも、買い物グセも、甘い物ばかり食べるのも、浪費するのも、すべて、ふだん自分が無意識で行っている行動、つまり習慣だからです。

本当は自分はそんなことをしたいとは思っていないはずです。気を散らすものから距離をおき、じっくり自分の心と向き合うと、本当は、べつのことをしたいと願っていることがわかるでしょう。

人生は、買い物したり、おいしいものを食べるためだけにあるのでしょうか? 誰でも、もっとほかに大事なことがあるはずだ、と感じているはずです。

スタンリーさんの言葉を借りれば、自分だけにしか歌えない歌が自分の中にはあるのです。

日々のルーティンは、そうした歌を歌うことを可能にしてくれます。

******
グッドーノートリチュアル(good note ritual)、というのはこのプレゼンで初めて聞いたと思います。

練習や仕事、そして1日を気分よく終えられるように、ルーティンをデザインするのはいいアイデアですね。

そこを意識して、タスクの見直せば、もっと毎日が楽しくなると思います。眠りの質もよくなるでしょう。





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