陸奥A子のメモ帳

私が捨てたもの

最終更新日: 2017.08.3

くさらない物も賞味期限を過ぎればガラクタ~もったいなくてシールが捨てられなかった愚か者の独白

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私が長らく患っていた「もったいない病」と、その病気を治してくれた娘の話をします。

今はミニマリストなんて言ってますが、昔はいろんな物を使えない筆子でした。

「もったいない病」にかかっていたのです。おそらく、この病気に冒されたのは、物心ついたころ。完全に完治したのが、40歳のころ。

ずいぶん長いこと患っていました。

この病気を治してくれたのは、何を隠そう、今やほっとくと汚部屋の住人になってしまう高校2年の娘です。

持つべきものは娘ですね。



もったいない病、私の症状はこんなふうだった

雑誌『りぼん』との出会い

子供のころ集英社から出ている『りぼん』という少女マンガ雑誌を愛読していました。今もこの雑誌、ありますね。

あまり娯楽のない、昭和40年代に小学生だった筆子にとって、かわいい付録のついている『りぼん』は夢のような雑誌でした。

1番最初に母に買ってもらったのは、まだ小学校にあがるかあがらないかの頃。付録に内藤洋子と舟木一夫の「声の年賀状」がついていました。

昭和40年頃でしょうか?

お正月特大号だったのです。声を届けてくれたのは赤いソノシート。ソノシートはレコードに似ていますが、もっと薄くてやわらかい、半透明の赤くて丸い物体です。

家にはプレイヤーがなく、いとこの家で、2人の声を聞きました。いとこは私より、3つぐらい年上。そのお正月、私は『りぼん』、いとこは『なかよし』を買ってもらったのです。

2人とも晴れ着を着ていたことを覚えています。

この『りぼん』には、赤いベロアのような毛羽立った材質で作った小さなクラッチバッグもついていました。

私はこのバッグに、もらったお年玉やお小遣いをためていました。考えてみると、今よりお金を持っていたと言えます。

ある程度まとまった額になったとき、母に頼んで郵便局で貯金してもらいました。金利は今よりずっとよく、筆子の定額預金は8%でした。

何年かたって、お金がなくなり全額おろしてしまったのですけどね。

付録やシールをためていた

私がためていたのは、この雑誌の付録。クラッチバッグやソノシートは使いましたが、このときは従姉妹と一緒だったからです。

自分1人だと、もったいなくてどんな付録も使えないのです。当時は紙石鹸なんてのもついていましたが、1度も使ったことがありません。

また、細々とした文房具もためていました。

父が商事会社に勤めていたので、名古屋の円頓寺(えんどうじ)の文房具屋さんと取引がありました。父は働きもので、土曜日も日曜日も仕事をしていました。

昔の会社は土曜日は出勤だったのかもしれません。週末の午後、父は私をライトバンに乗せて、この文具店に、品物をおろしに行っていました。

そのとき、文房具屋のおじさんから、シールやちょっとした文具をちょこちょこいただいていたのです。

また、父からも、シールをたくさんもらっていました。当時のシールは今思うと、輸入物に似ていて、1枚のシートに同じ絵柄が、3種類ぐらいの大きさでたくさんついていました。

すべて同じデザインなのに、私、このシールが1枚も使えなかったのです。お宝はどんどんたまっていきました。

どれも色がきれいで、かわいいのですごく気に入っていました。ときどき取り出して眺めていました。

なぜ1枚もシールを使うことができなかったのでしょうか?

きっと「使ったら2度と手に入らない」と思っていたのかもしれません。似たようなシールをたくさん持っていたのに。

失うのが怖かったのか、単に欲が深かったのか。

その時の気持ちは、あとになってこんなふうに分析しました⇒人はなぜ物を集めたがるのか?~私はこうして収集癖を断捨離しました

付録は10年後に断捨離

27歳のとき、発作的に大量の物を断捨離。付録のほとんどを捨てました。さすがに、この年になったら、『りぼん』の付録は使えません。

昔は輝いていたメモ帳も、茶色い斑点がついて汚くなっていました。

ところが、シールは捨てられなくて、残してしまいました。この期に及んでも、「いつか使うかもしれない」と思っていたのです。

この時、それまで箱や袋に分けて収納していたシールを1つににまとめました。ベッドのシーツやクッションが入っているような大ぶりのビニールケースにどさっと入れたのです。

シールはこのケースに入れられたまま、わたしの部屋の片隅に置かれ続けました。何年も何年も。





ためこんだシールを処分してくれた人は?

たくさんあったシールを使ってくれたのは、39歳のときに出産した娘です。

小さな子供はシールが好きです。娘も3、4歳のころからシールをノートや紙にペタペタ貼って遊び始めました。

シールをあてがっておくと、静かに遊んでいてくれます。最初は、スーパーで購入していましたが、シールの値段もバカになりません。

「そういえば、私シールをいっぱい持っていたっけ」。

大昔から持っていたシールのことを思い出し、わざわざ母に頼んで袋ごと送ってもらいました。

シートを1枚、また1枚と娘にあげました。

彼女、なんのためらいもなく、もらったシールをお絵かき用のノートや、部屋の壁にぺたぺた貼っていきます。

それはそれは楽しそうに。

1シートの消費時間、1分未満。

私が6,7年かけて集めた大量のシールは、わずか数週間でなくなりました。

この時、私は悟ったのです。

「もし、娘にシールを使ってもらわなかったら、私はあのシールを一生使わなかっただろう」と。実家に置いたままで、ほとんどその存在を忘れていたのですから。

使うべきときに使わないなんて、そっちのほうがよっぽどもったいなかったな、と痛感しました。

小さな子供は「今」を生きています。後先のことなど考えず、目の前のことに夢中になれるって素晴らしいと思いました。

私も、まだきれいで輝いていたときにシールを使えばよかったのです。気に入りすぎて使わないなんて、なんという皮肉でしょうか?

気に入っているものこそ使うべきなのに。

それに最初は、「きれいで可愛いからとっておこう」と思ったとしても、そのうち、可愛かろうが、可愛くなかろうが、習慣でどんどんためてしまうのです。

ためこみグセがつくと、自分の好きなものを、旬の時に使えなくなってしまいます。

これは、おいしい果物をくさらせるのと同じこと。

「自分の好きなものだけに囲まれて心楽しく暮らしたい」と思ったとしても、好きなものを使えないのなら、そんな生活はいつまでたってもできないでしょう。

たとえ腐らないものでも、物には「輝いているとき」「使える時」があり、その時期を逃してしまうと、ガラクタになってしまう。

この時から、私は自分の好きなものは、今、この時に使うようになりました。





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