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よりよい決断をしたい人の参考になるTEDの動画を紹介します。
タイトルは、Guiding difficult decisions from “monkey brain” to “wise mind” 「サルの脳(モンキーブレイン)を賢明な思考(ワイズマインド)へ導き、難しい決断をさせること」です。
モンキーブレインは、感情的な反応、賢い思考は、理性的な考え方のことです。
プレゼンターは、不動産の仲介業者の指導にあたっているLance Pendleton(ランス・ペンドルトン)さん。
感情的な反応に終始して、理性的に判断できない顧客に、いかに、賢明で自分のためになる決断をしてもらうか、その方法を語っています。
セールスマンだけでなく、日々の意思決定に役立つ内容です。
サルの脳から賢明な思考へ:TEDの説明
For most families, buying or selling a home is the largest and most emotional transaction of a lifetime. In this talk, he discusses the ways a talented broker can guide an client through the process to make a decision they will be happy with, using principles from Buddhism.
たいていの家庭にとって、家の売り買いは人生でも、最も大きなできごとであり、感情がゆれる行為です。
このプレゼンで、ランスは、訓練を受けた仲介業者が、どうやったら、顧客が満足できる決断をできるように促せるか、語ります。仏教の原則に基づく方法です。
収録は2018年の6月。動画の長さは8分16秒。英語字幕あり。動画のあとに抄訳を書きます。
販売に役立つ2つのスキルとは?
20年に渡って、私はフォーチュン500企業や、ハイエンドの専門家のために、販売戦略を開発したり、販売を助けたりすることに従事してきました。
販売に本当に役立つスキルは2つあり、1つは、人間性仏教(humanistic Buddhism)で、もう1つは、セールス心理学です。
この2つを融合すれば、誰かにイエス/ノーと言わせる最良の方法が見つかります。それは、相手とどんな関係をもつかにかかっています。
どんな人間関係も、相手が何を考えているのか理解することから始まります。きょうは、その1つの例を紹介しますね。
私達の心はモンキーマインド
まず、思い描くことから始めましょう。どこかに旅行すると想像してください。連休にでかけます、とても楽しみです。
けれども、誰かを留守番に残していかなければなりません。
ジョージに留守番させることにしました。家に戻ったとき、どんな状態でしょうか?
ティーンエイジャーをお持ちなら、どんなことになるかおわかりでしょう。家の中はくしゃくしゃになっているはずです。
これが私達の心なのです。
私達の心の中で、いつもおこっています。先のことを思い、過去を振り返り、分析し、考える。こうやって私達は自分を守っています。
仏教徒はこの活発なエネルギーを、「モンキーマインド」と呼びます。ジョージです。
このプロセスにおいて、私達は2つの違うエリアのどちらかにいます。
1つはエモーショナルマインド(感情的な思考)で、もう1つはリーズナブルマインド(理詰めの思考)です。
この2つがどういうものなのか、紹介します。
理詰めの思考と感情的な思考がある
まずリーズナブルマインドから。
理詰めの思考の持ち主とはどんな人でしょう?
筋のとおった思考をしたいと考える人達です。クロスワードパズルや数独みたいに、システマティックな考え方をすることを好みます。
そうすることが快適なのです。
次に感情的な思考の持ち主にいきましょう。私はこちらのタイプです。
感情的な思考をする人は、幸せ、喜び、怒り、不満、不安といったものから、快適さを得ています。
理想は賢明な思考すること
この2つのエリアのどちらにいる人にも、意識的で健全な決断をさせることは難しいです。
なぜなら、中心にいないからです。
最良の決断をするためには、真ん中にいるべきなのです。この領域を仏教徒は「賢いマインド(wide mind)」と呼んでいます。「洞察(intuition)」ともいいます。
この説明を現実の場面にあてはめてみましょう。
モハメド・アリとスチュワーデスのやりとり
実話を紹介します。みなさん、モハメド・アリをご存知ですよね。彼は感情的な人としても知られていました。
アリは、挑戦的な態度で有名です。
ある日、試合に行くために、アリは飛行機に乗りました。スチュワーデスが再三、注意してもシートベルトをしめようとしませんでした。
ベルトを締めるように4回言われましたが、アリはまったく意に介しません。
5回目に頼む時、いいかげんうんざりしたスチュワーデスが、「アリさん、今すぐシートベルトをしめてください」と言いました。
アリは、彼女を見上げて、「ベイビー、スーパーマンにはシートベルトなんていらないのさ」とうそぶきました。
「失礼ですが、アリさん、スーパーマンなら飛行機なんて必要ありませんわ。いいから、さっさとベルトをしめてください。そうすれば出発できるんですから」。
感情的なマインドと論理が融合した瞬間です。
理詰めの人と話しているときに起こること
出かける予定なのに、パートナーがなかなか帰ってこず、遅刻しそうでイライラしているとします。
ようやく帰ってきた相手に、「遅刻しちゃうわ。どうして遅れたの?」と聞いたとしましょう。
「ちゃんと帰ってこようとしたよ。駐車場で青い車の後ろに停めた。フォードフォーカスだけどね。
出発しようとしたら、信号が変わってさ。スミス・ストリートだったけど。
右折しようと思ったら、売り出し中の家があって、そんな家があったかなあとか思っていたら、突然母から電話があって…」
こういう話をする人には、「そうなの。よくわかったわ。でも、私達が遅刻したら、どんな気持ちになると思う?」と聞き返せば、相手の思考を変えることができます。
感情的な思考の持ち主の考えを変えるには?
感情的な思考の持ち主と話すのは、よくあることです。たとえば、子供が相手のとき。
「ティミー、だめよ。あめを離しなさい」
「だって、あめがほしいだもん!」
こんなとき、うんざりしますよね。けれども、こんなふうに、言ったらどうでしょうか?
「ティミー、ねえ、2足す2はいくつ?」
「2足す2なんていらないよ。あめがほしいんだもん」
「ティミー、いいから、2足す2はいくつ?」
「わかんない。4? でも、あめがほしいんだけど」
「そのとおりよ。4よ。4足す1はどう? わかるはずよ」
「わかんない。5?」
「そのとおり、あなた天才よ。5引く1は?」
「6?」
こうやって、感情的になっていた思考から一歩進ませることができます。
家を売ることをすすめるときの会話
これは、現実にできることです。人間関係において、とくに、何かをセールスされているときは、ストレスが多く、誰しも、どちらかの思考に偏りがちだからです。
家を売ることをすすめると、たいていの人はひどく感情的になるものです。
誰だって、自分の家を愛していますから。そこに何年も住んでいたし、あちこち、手入れしてきたし、キッチンだって改装しました。
その家で子供が生まれ、はじめての歯が生え変わり、なんてことを思うものです。
そんなとき、この人がどんな気持ちでいるのか考え、ずばっと質問してください。
「よくわかります。本当にそうですよね。ですが、少し、質問させてください。
いま、毎月、電気代をいくら払っていますか? ここにちょっと書いておきたいんです。庭の手入れ代や石油代はどうでしょう?」
こんなふうに問いかければ、感情的になっていた人も、「えーと、300ドルか400ドルです」と答えます。
そして、「待てよ。もし自分の家を買うのに最適な人が見つかるまでずっと待ち続けていると、ものすごくお金がかかるな」と気づくのです。
こうしてこの人は、賢いマインドに入り、洞察して、自分にとって最良の決断をするわけです。
最良の決断をさせることでつながりが深まる
このとき、私たちは顧客と、とてもよい関係を結ぶことができ、満足感を得ます。
その人がどんな気持ちでいるのか知ることは、その人を助けることになる、ということに、私達は気づいていません。
いま何が起きていて、自分はどうやってその瞬間とかかわるべきか考え、相手を真ん中に導いて、より健全な決定をしてもらうようにすること。
これが、その人と自分をより深い部分で結びつけ、これまでとは全く違う関係を持つことになるのです。
相手と深い関係を持てれば、私も気分がいいです。私の気分がよければ、その関係はますます深まります。
すると、相手の信頼も得られます。
もし、誰かが私をより信頼し、相手のために仕事をする能力があると私を信用してくれ、私が、相手のマインドセットをより真ん中にシフトさせることができれば、2人にとってどんなことが起きるでしょうか?
ジョージ(モンキーマインド、つまり人の考え)も満足なのです。
相手と、全く違うレベルで関係をもち、モンキーマインドを静かにさせ、より健全な決断をしてもらいましょう。
//// 抄訳ここまで ////
単語の意味など
where A comes from Aがどこから来ているか⇒何を考えているか
frenetic 熱狂した、逆上した、とても活発な
bravado 虚勢、からいばり
exude 発する
決断に関するべつのプレゼン
決断する力をアップする。自分で決められない理由とうまく決める方法(TED)
よりよい決断をするには?シーナ・アイエンガーの選択術(TED)
決断に悩むときこそ大きなチャンス。重要な選択をする方法(TED)
我々は本当に自分で決めているのか?ダン・アリエリーに学ぶ、選択のミス(TED)
選択をしやすくするには~シーナ・アイエンガー(TED)。選択肢の海の中で生きる技術。
バリー・シュワルツに学ぶ『選択のパラドックス』(TED)~所持品をミニマムにすると生きやすくなる理由とは?
賢明な思考をして最良の決断をしよう
このプレゼンは何かをセールスしたい人、誰かからイエス(あるいはノー)を引き出したい人に役立つものです。
ですが、最良の決断をしたいと願っている人にも参考になります。
自分で自分の心持ちがどこにあるのか見極め、まんなかの、よりバランスのとれた考え方をもとに、決断することを促せばいいのですから。
きのう、「売ればお金になるから」と考えて、なかなか汚部屋を片付けられない人のメールを紹介しました⇒古くなった実家の解体にさいし、仏壇の処理をめぐって母と大げんかに。
こんなふうに思うとき、自分は理詰め思考をしているのか、感情的に反応しているのか、それともバランスのとれた真ん中にいるのか、ちょっと考えてみてください。
理詰めで考えるのは、よいことにも思えますが、その論理が破綻している可能性もあります。
特に、人は、いったん手に入れたものは、「絶対手放したくない」、と反応しがちなので、不用品なのに、手放さなくてもいい後付けの理由を巧妙に作り上げます。
たとえば、
「そのうちいるかもしれないから」
「まだきれいだから」
「子供や孫が使うかもしれないから」
「何かに使えそうだから」
「売ればお金になるから」
「捨てて、あとで必要になったとき、買うお金がもったいないから」
「捨てると後悔しそうだから」
といった具合です。
このような理由から、捨てない決断をしようとするとき、それは賢明な思考による洞察のうえで導き出したベストの決定なのか、もう1度考えてみてください。
そうやって賢い決断を重ねていけば、満足感が高まるし、自分への信頼も増します。つまり自信が生まれるわけです。
もちろん、部屋はスッキリして暮しやすくなります。