絵を描く手元

TEDの動画

絵を描くことは、ものごとをよく見ること。(TED)

紙に絵を描くと、周囲にある物や、まわりにいる人をじっくり見ることができ、相手と深いコミュニケーションが取れると伝えるTEDトークを紹介します。

タイトルは、The art of paying attention (注意を向ける技術)、イラストレーターで、グラフィック・ジャーナリストのWendy MacNaughton(ウエンディ・マクノートン)さんの講演です。

日本語のタイトルは、「ものごとをよく見る技術」



注意を向ける技術:TEDの説明

In an invitation to slow down and look at the world around you, graphic journalist Wendy MacNaughton illustrates how drawing can spark deeply human, authentic connections. Ready to try? Grab a pencil and join MacNaughton for this delightful talk. “Drawing is looking, and looking is loving,” she says.

スピードを落とし、周囲の世界を見ることをすすめながら、グラフィック・ジャーナリストのウエンディ・マクノートンは、絵を描くことがどんなふうに人間らしい本物のつながりをもたらすか伝えます。

用意はいいですか? 鉛筆をもってマクノートンの楽しいトークに参加しましょう。

「絵を描くことは見ること、そして見ることは愛することです」と彼女は言います。

収録は2021年の7月。動画の長さは、13分23秒。日本語字幕もありますが、発話とタイミングがずれています。動画のあとに抄訳を書きます。

☆トランスクリプションはこちら⇒Wendy MacNaughton: The art of paying attention | TED Talk

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

明るいエネルギーに満ちた講演ですね。





私たちはしっかり物を見ていない

ここにいる皆さんは全員、子供のころ、絵を描いたことがありますよね?

4歳か5歳のころ、絵を描いていたら大人がやってきて、「それは何?」と聞いたでしょう。

「顔だよ」とこたえると、大人は、「それは顔じゃないよ。顔はこんなふうだ」と言って、丸に、アーモンドのような目を2つ描いて、7を逆さにしたのを描いて、これが顔だと言ったんじゃないですか?

顔のアイコン

でも、これは本当の顔ではありません。これはアイコンで、視覚的な速記です。

でも、私たちは、今日、こんなふうに世界を見ているんです。

あまりに情報がたくさんありすぎるので、脳の処理が追いつかないから、世界はパターンで満ちています。

私たちが見ているのは、単に、自分がそうだろう、と思っているものです。

ちゃんと物事を見られる方法をお伝えします。

物をしっかり見る方法

お手元の封筒を開けてください。鉛筆と紙が入っています。

隣の人とペアになって、お互いの絵を描きます。

大丈夫ですよ。うまく描く必要はありません。

これからするのは見ることです。

みんな下手くそな絵を描きますから大丈夫。

まず、紙の上に鉛筆をあてたら、紙からあげないでください。一続きの絵を描きます。決して鉛筆をあげないこと。

それから、決して紙を見ないでください。

描いている相手の顔を見続けてください。

では紙の真ん中に鉛筆をあてて、パートナーのどちらかの目を見て、深呼吸をして、描き始めましょう。

目に見えるものを描いていきましょう。カーブや線、まつげ、ゆっくり描きましょう。

下を向かない、描き続けます。

[みんな絵を描いている]

はい。できた傑作をパートナーに見せてください。いい感じでしょ? 私も見たいので、見せてください。

すばらしいできばえです。

もちろん、ひどいできだけど、すばらしいんです。

なぜ、すばらしいのか?

皆さんは、顔の絵を描いたからです。

目に見えたものを描きました。

顔はこういうふうだと思いこんでいたものを描いたのではありません。

皆さんは、人々がめったにしないことをしたのです。

とても親しいアイコンタクトをし、恥ずかしがることなくお互いの顔と顔を見ていました。

絵を描くことで、スローダウンできたのです。

注意を払い、誰かをしっかり見て、相手にも自分をしっかり見せました。

よくできました。

絵を描くと親密な関係を持てる

今やってもらったように絵を描くことは、どんなことより、親密な関係を築けると気づきました。

私は自分のことを、イラストレーターで兼グラフィックジャーナリストと呼んでいます。

絵を描いて、物語を語ります。

人々を見て、その人たちの話に耳をかたむけます。

相手の言う言葉を、絵にまとめあげます。実物の絵です。今、皆さんがしたように。

このように絵を描くことは、写真ではできないことです。

誰かにカメラを向けられると、少しばかり、物になった気がしませんか?

私はスケッチブックを下のほうで持ち、絵を描いている人と自分の間のチャンネルをオープンにしておきます。

私が絵を描いていると、たいてい誰かが興味をもってそばにやってきます。そのとき、本物の会話が始まります。

例をあげましょう。

お年寄りにとっての公立図書館の役割

少し前に、公立図書館がどんなふうにお年寄りの役にたっているか、絵にしたいと思いました。

でも、数日間、スケッチブックを持って図書館の中をうろうろし、お年寄りに、何を読んでいるのかたずねても、物語を引き出せませんでした。

リアに出会うまでは。彼女は、図書館を担当している、最初の、そして当時は唯一の常勤のソーシャルワーカーでした。

彼女のおかげで、公立図書館は、お年寄りにとってとても役立っているとわかりました。

図書館は街の社会福祉事業の中心地でもあるのです。

これはチャールズです。彼は、リアと働いていました。チャールズは、図書館でホームレスの人々に手を差しのべています。

チャールズが案内してくれたので、私は、見たものすべてをスケッチブックに描きました。彼は、私がこれまで見たのとはずいぶん違う図書館を見せてくれました。

パソコンは、本を借りるときやメールを見るのに使うものだと思っていましたが、仕事や住まいを探している人々の命綱でした。

トイレのシンクを、路上で寝ている人たちは、洗濯や、身体を洗うのに使っていました。

図書館は、安全で静かで、誰もがリソースを見つけられる場所、そして、無料で休憩できる場所だったのです。

自分が見たい、見つけるだろうと思っていた物語を探すのをやめたとたん、全く新しい、豊かな真実が現れたわけです。

このことは、私が描いたすべての物や人にあてはまります。

私は、実物を見て、絵に描きます。車の後ろに、移動スタジオをもうけました。どこにでも行って、好きな時に描きたい人の絵を描き、眠ることもできるスタジオです。

靴職人、ドンの物語

ユタで、人々の絵を描いているとき、Bootmaker(靴職人)という手書きの看板を見つけ、行ってみました。

カウボーイシャツを着た、長身で、カイゼルひげをたくわえた白人男性がドアを開けました。彼が見たのは、つなぎを着てスケッチブックをかかえた、都会的でリベラルなレズビアンが、手をふりながら笑っている姿です。

彼の背後にある壁に、クーガーの剥製がかかっているのを見たとき、ベジタリアンである私は、靴職人のドンが、どんな人間なのかわかった気がしました。

でも、すでに中に入っていたので、私は、彼に、「作品をちょっと見せてほしい」と頼みました。

彼は承諾しました。

そして、私たちは、結局、その日1日、一緒に過ごしたのです。

私はドンの絵を描き、ドンは、愛する妻が突然死んでしまったことや、深い悲しみにくれている話をしました。

彼は、今、計画している狩猟の旅のことや、その旅に息子を連れていくことをとても楽しみにしている話もしました。

工房にあるツールには皆、物語がありました。それに興味を示す人間に、その物語を語ることを、ドンはとても楽しんでいました。

その日に終わりに、ドンと私はお互いを全く違う目で見ることになりました。

彼と工房を描いた絵は、ニューヨーク・タイムズの私のコラムにのりました。

ドンは、この新聞を「ファイクニュースのメディア」と呼びますが、この絵を額に入れて、狩りの戦利品を集めた部屋に飾っています。

子どもたちに絵を教えた

パンデミックが起きたとき、ちょうど私は、新しい物語の絵を描く準備をしていました。

でも、多くの人と同じように、いきなり、仕事ができなくなりました。

母は、子供に絵を描くことを教えるように勧めてくれました。

子どもたちは、日常のルーティンがなくなり、家にこもる生活になります。子供に絵を教えれば、親御さんたちは、つかの間でも、休憩できます。

私はソーシャルワーカーになる教育は受けていますが、子供に教えたことは一度もありませんでした。

でも、サンフランシスコで学校が閉まる前の晩に、インスタグラムで、明日の朝10時に、DrawTogether(ドロー・トゥゲザー いっしょに描く)プロジェクトをやると告知しました。

私は自宅のスタジオのドローイングテーブルに座り、妻が、iPhoneで、その様子を録画し始めました。

子供が100人来るだろうと思っていたのですが、なんと12000人も集まりました。

皆、熱心に犬の絵を描きました。

翌日は、14000人の子供がやってきて、木の絵を書きました。それから、先ほど皆さんにもやってもらった絵を描く練習もしました。

絵の教室は1回、5分で5日間だけやるつもりでしたが、週に5つ、1回30分というスケジュールで何ヶ月も続けました。

もちろん線や形、遠近感、光や影の話もしましたが、実際にやっていたのは、みなと一緒に、世界的な災難を見ることでした。

絵を描いて見逃しているものを見る

絵を描けばスピードを落とせます。

手を動かしながら、ふだんは見逃しているものに注意を向けることができます。

リサーチによれば、絵を描くことは、子どもたちが感情を処理するのにもっとも効果的な方法の1つです。

その感情にはトラウマも含まれます。

絵を描くことは、話しにくいことを話す助けになるのです。

一緒に絵を描けば、語り合えるです。嘘みたいに思うかもしれませんが、本当です。

絵を描くことは見ることで、見ることは愛することです。

自分や世界を好きになるために

適切な環境を与えれば、絵を描くことは、完璧主義や失敗を恐れることから、子どもたちを解放します。

私や皆さんみたいにはならないのです。

「ちょっと絵を描きましょう」と聞いただけで、おたおたしたりする人にはなりません。

子供のうちに、自分で自分を厳しくジャッジすることをやめられるので、大人になってから、苦労してそうしなくてもすみます。

全員に絵描きになれとは言っていません。でも、誰もが、子どもたち、大人にかかわらず、もっとしっかり見ることができるようになるのです。

だって、これは顔じゃありませんから。

顔のアイコン

この絵のように、物事を見ていたら、この世界や、周囲の人の、奥深さや詳細を見過ごしてしまいます。

スピードを落とせば、注意深くしっかり見ることができます。すると、また、世界のことや、その世界にいる人々のことをまた好きになるでしょう。

パンデミックが起きてしばらくした今、私たちはみな、お互いや自分自身のことをしっかり見て、自分が見ているものが本当に語っていることを知りたいと思っているはずです。

//// 抄訳ここまで ////

単語の意味など

go out on a limb  リスクを取る、あてずっぽうに言う

handlebar mustache  天神ひげ、カイゼルひげ(自転車のハンドルのように、両端が少し上に曲がったひげ)

hockey  感傷的すぎる、冗談の、でっちあげの

絵を描くことに関するほかのプレゼン

制限があるからこそ素晴らしい物が生まれる:震えを受け入れる(TED)

絵を描くことは、物ごとを考える助けになる(TED)

自分の創造性を解放しよう:イーサン・ホーク(TED)

問題を解決するために、まずはトーストの作り方を描いてみる(TED)

絵を描いてスローダウンする

絵を描いていると対象をしっかり見るようになる、というのは本当だと思います。

私はインターネットで知り合った人に、たまに塗り絵を見てもらっています。

出された課題を仕上げるために、検索して見つけた画像を参考にしながら、塗っていると、今まで、見ていたようで見ていなかった物をたくさん見ることになります。

ネズミの身体つきや、きりんの模様など。

犬や猫など身近な動物でも、なんとなくイメージで捉えていただけで、しっかり観察したことはなかったとわかります。

動物や木など自然にある物を観察してみると、どれもとても美しいと感じます。

実物ではなく、写真でも、しっかり観察しながら塗り絵を1枚しあげると、その動物に対する親近感がわきます。

人間の絵を描いているときも、同じことが起きる思います。

気持ちが落ち込んだり、イライラするときは、身近な人や、そのへんにある物を絵に描いてみてください。

すると、これまで見てなかったものが見えてくるので、イライラを感じていた世界とは違う世界を体験できます。

しかも、絵に描く作業は、わりと楽しいので、(うまく描こうとするとストレスが生まれますが)、気持ちも満たされます。

買い物が癖になっている人は、買い物したくなったら、すぐに買うのではなく、買いたい物の絵を描いてみるといいかもしれません。





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