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クリスマスプレゼントの起源についてお話しします。クリスマスはキリストの誕生日ということになっていますが、なぜわれわれ一般人までプレゼントをもらってしまうのでしょうか?
キリストは12月25日に生まれたわけではない
クリスマスはイエス・キリストの誕生日だと思っている人が多いです。しかし、キリストが実際にいつ生まれたかについては、キリスト教の宗派によって微妙に考え方が違います。春生まれという説もあります。
Christmasは日本語で「キリスト降誕祭」。この日はあくまでも、降誕(生まれたこと)を記念してお祝いする日で、この日がキリストの誕生日というわけではありません。
12月25日が降誕祭になったのは、4世紀の中頃だと考えられています。それ以前から、キリスト教とは関係ない信仰で、冬至に太陽を拝むお祭りをする祝日がありました。12月21日から少しずつ日が長くなるので、「太陽の誕生」なのです。
キリスト教の幹部が、この日をキリスト教の誕生と結びつけて記念日にしたのではないかと考えられています。キリスト教は、古くからある土着や異教徒(彼らの側から見て)のさまざまなお祭りや行事をキリスト教にからめて、「記念日」にしてきました。
クリスマスもそういう日の1つだと言えます。しかし、あまりに昔のことなので、今やクリスマスと言えば、キリストの誕生日なのです。
クリスマスのプレゼントの由来は?
一般に人々がクリスマスに贈り物をするのは、キリストが生まれたとき、東方の三賢人が、異国から贈り物を持ってやってきたことに由来する、と言われています。
カスパール、メルキオール、バルタザールというこの3人は占星術を研究していた人たちで、星を見ていたら、ベツレヘムでユダヤの王さまが生まれたとわかったのです。
この3人の名前は、それぞれ本人が持参した贈り物から来ています。
メルキオール(Melchior)は、黄金を、バルタザール(Balthasar)は乳香を、カスパール(Caspar)は没薬を持ってきました。
乳香も没薬も木からとった樹脂で、古代エジプトの時代から使われていたいい匂いのする薫香料です。乳香はフランキンセンス、没薬はミルラです。
この3人のギフトが、現代のギフトにつながっているらしいのです。
キリスト教では、「クリスマスそのものが神から与えられた贈り物なのだ」と考えています。2000年前に、神さまがとても人間を愛していたので、自分の息子を地球上に送り、この息子を信じるなら、永遠の命を与えよう、と言った、というようなことが聖書に書かれています。
よって、クリスマスは「愛の日」でもあります
昔の贈り物はごく質素だった
11月の終わりから、クリスマスが来るまでの期間を、アドベントと言います。これは教会の暦の1つで、キリストの降誕祭を待ち望み、準備をする期間です。
この時期、カソリックの敬虔な信者は祈りと断食をしますが、ドイツではシュトーレンという甘いパンを毎日1切れずつ食べます。シュトーレンの形は、赤ん坊のキリストを包んだおくるみの形に似ている、などとも言われます。
降誕祭が設定されてしばらくは、アドベントの時期にシンプルな贈り物を交換していたようです。ごく簡素なものです。手作りの手芸品とか木のおもちゃ、手作りのお菓子など。
今、世界中でもっとも盛大にプレゼントを贈り合っているのはアメリカ人だと思います。しかし、16世紀にこの国にヨーロッパからやってきた開拓者たちは、ピューリタン(プレテスタント)だったので、「クリスマスに贈り物を交換するなんてけしからん」と思っていました。
実際、17世紀の一時期、アメリカではクリスマスのお祝いが禁止されていたぐらいです。
今のようにクリスマスにプレゼントを贈り合うようになったのは18世紀になってから。それでも最初はこじんまりとしたものを贈っていました。
私が体験したシンプルな贈り物
もう10年以上前のことですが、娘が幼稚園のとき、フィールドトリップで私が住んでいる州の初代の州知事のお屋敷に行ったことがあります。
今は美術館になっているこの家は、1900年代はじめの様式の建物です。ちょうどクリスマスの時期だったので、みんなでジングルベルを歌ったり、部屋にあった蓄音機で、ディズニーの「白雪姫」に使われている「ホワイトクリスマス」を聞きました。
蓄音機の原型が発明されたのは19世紀の半ば。20世紀の始めには、州知事のようなお金持ちの家にはあったのですね。
そのあと、この州知事さんの書斎で、当時のクリスマスプレゼントについて話を聞き、ダイニングテーブルを見学、キッチンでクッキーを作り、最後にクリスマスの工作をしました。
説明をしてくれる女性は、この当時の服を着ていました。「大草原の家のローラ」のお母さんみたいな格好です。
この家ではツリーは飾らず、クリスマスカクタスと呼ばれるサボテンの大きな鉢を飾り、プレゼントはクリスマスパイと呼ばれるかごのようなものに入れてテーブルの上に置いていたそうです。
説明係さんが当時の子供たちがもらう典型的なプレゼントを、実際に毛糸で編まれた靴下(赤と白の毛糸で編んだハイソックスふう)から、1つずつ取り出して見せてくれました。
まず毛糸の手袋(もちろん手編み)、次に木のけん玉のようなおもちゃ、それからキャンディ、最後はとっておきのクリスマスオレンジ。
クリスマスオレンジは日本の温州みかんです。当時は輸送手段が限られていたので、1年に1回、クリスマスにたった1つだけ食べるこのみかんが、とてもぜいたくな贈り物だったのです。
薄暗い部屋の中でこの説明を聞いたとき、じーんとしました。みかんをうれしそうに食べている子供たちの姿が目に浮かんできましたよ。
商業主義にまみれていったクリスマス
カナダへ最初にやってきたヨーロッパ人はフランス人のカルティエです。1534年のことです。この日から19世紀の終わりぐらいまで、カナダではクリスマスの贈り物は元旦に贈っていたそうです。
しかし、プレゼントを売る企業が、「新年に交換する贈り物の一部をクリスマスにあげましょう」と宣伝するようになり、次第に12月25日がプレゼント交換の日になって行きました。
売り手側は、クリスマスをセールスが伸ばせる絶好の機会だと思っていたのです。実際その通りになったのですが。
家では作ることのできない自転車や調理器具などの製造が一般的になり、庶民にも手に入りやすくなったので、クリスマスにこういうものを贈るのも人気でした。
1920年までには、クリスマスプレゼントと言えば、店で買ってきた工業生産されたものになりました。第二次世界大戦以降、この贈り物がどんどん増えていったのは今さら説明するまでもありませんね。
贈り物をしない人たちも少しずつ増えている
モノ余りの現代、あえてプレゼントを贈らない人も少しずつですが増えています。最近、「アメリカ人の10人に1人はプレゼントの交換をしない」という記事を読みました。
なぜプレゼントの交換をしないのかというと
●お金がかかる
●買い物が大変でストレスになる
●あげたところで、それを使う人はおらず無駄になる
●商業主義や物質至上主義に反対だから
こんな理由からです。
1番の理由はお金がかかることです。プレゼントだけでなく、七面鳥買ったり、クリスマスのお菓子焼いたり、ツリーやツリーの飾り付けを用意するのは、トータルで見ると馬鹿になりません。
このような理由から、全くクリスマスをやらない人、お祝いはするけれど、贈り物の規模を縮小する人などが年々増えているのです。私もその1人です。
☆シンプルクリスマスのすすめ⇒お金をかけず、物を増やさず、シンプルにクリスマスを祝う方法
クリスマスはしない人も、この時期、会社や学校は休みですから、代わりに旅行したり、家で「サウンド・オブ・ミュージック」(クリスマスに見る映画の定番)を見てのんびりします。ミニマリストとしては、こっちのほうがいいと思います。
イギリスでも、半分以上の人がクリスマスにもらった贈り物を別の人に贈る、という統計があります。
みんないらない物を「そういう習慣だから」という理由で、贈り合っているのですよね。
もともとクリスマスは愛の日なのですから、ストレスでいっぱいになったり、無駄なものを人にあげないほうがいいと思います。今年は、原点に立ち返り、もう少し静かに暖かい気持ちで過ごしてみては?