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毎日忙しいわりには、今ひとつ、やりたいことができない人、今年も汚部屋で終わりそうな人の参考になるTEDの動画を紹介します。
タイトルは、How to declutter your mind — keep a journal (心の中を片付ける方法、ジャーナルをつけなさい)です。
プレゼンターは、デジタルプロダクトデザイナーであり、Bullet Journal (ブレット・ジャーナル、バレット・ジャーナル)を考案した、ライダー・キャロル(Ryder Carrol)さんです。
keep a journal は「日記をつける」という意味ですが、どちらかというと、日誌を書く、ログをとる、紙に書き出す、というニュアンスです。
この講演は、手帳の書き方の話ではなく、頭の中にあるごちゃごちゃを紙に書き出すと、自分のゴールに向かって、時間やエネルギーを有効に使うことができる、という内容です。
心の片付け方、TEDの説明
Being busy doesn’t always mean being productive. Ryder Carroll shares the story of how a system he developed to manage his childhood attention deficit disorder now helps people worldwide achieve their goals with greater efficiency and satisfaction.
忙しいからといって必ずしも生産的であるとは言えません。
ライダー・キャロルは、幼年時代のADD(注意欠陥多動性障害)に対処するために生み出したシステムについて語ります。
その方法は、いまや世界中の人々のゴールを達成する助けになっています。より効率よく、また満足度も高い方法です。
プレゼンの長さは12分50秒です。収録は2016年の10月15日。
イエール大学で行われた”How to Lead an Intentional Life”(意図的な人生を生きる方法)というテーマのTEDのイベントでの講演です。
英語字幕あり。日本語の字幕はありません。動画のあとに抄訳を書きます。
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
喜びを生み出すのは自分次第
自分の人生における喜びのときを作り出すのは自分自身です。
日の出が美しいかどうかは、自分ではどうすることもできません。けれども、その日の出を見に行くという行動は自分でおこせます。
その瞬間を体験しようと決めることは、自分の功績です。朝早く家を出るとか、ハイキングをすると決めることは。
けれども、よい決断をするのは、とてもむずかしいでねす。私もこれまでの人生でずっと苦労していました。
ADDに対処する方法を自分で考えた
若いとき、ADDだと診断されました。当時は、この病気について、ろくに情報がありませんでした。もちろんインターネットもありません。
そんな中で、私が見つけた、いくつかの対処法は、とても厳しすぎるか、複雑すぎて、私の役にはたちませんでした。
ADDに関する大きな誤解の1つに、「ADDの人は集中できない」とういうものがあります。
私は集中できました。ただ、一度に、たくさんのことに集中していたのです。
その後25年かけて、自分自身に役立つ方法を作り、そのうちADDを脱しました。自分で考えた方法は、助けになると思ったので、友人たちにも、教えてあげました。
すると、彼らにも効果がありました。
自分のためだけに考えたことですが、ほかの人の役にもたったのです。そこで、3年前にウェブサイトや動画を作り、このシステムをほかの人に教えることにしました。
私はこのシステムをザ・ブレット・ジャーナル(The Bullet Journal)と名付けました。
大勢の人が使っているブレット・ジャーナル
YouTubeやインスタグラムで、「ブレット・ジャーナル」で検索すると、暮らしにブレット・ジャーナルを取り入れて、さまざまなチャレンジに対応する助けにしている人々の例が何千、何百と出てきます。
ブレット・ジャーナルの作り方を説明するチュートリアルビデオは500万回以上見られています。驚くべきことです。
子供のとき、この方法を知っていたらなあ、と思います。だからこそ、きょう、みなさんに、私が学んだことををシェアできて、とてもうれしく思います。
きょうは、心の中を整理し、好奇心を育み、集中力をキープする方法をお伝えします。
気が散る一方の暮らしから、意図をもった生き方に変える助けになります。すべては、よく考えること(reflection)から始まります。
選択するたびにエネルギーと時間を取られる
リサーチによれば、私たちは、1日、50万の考えごとをします。私が子供のとき、大変だったのは、一度に、あまりにもたくさんのことにフォーカスしていたからです。
みなさんも見に覚えがありませんか?
大人は、この状態を「忙しい」と言います。忙しいからといって、生産的であるとは言えません。多くの場合、忙しいのは、単に、「機能的に圧倒された(functionally-overwhelmed)状態」です。
なぜ圧倒されてしまうかといえば、決めなければならないことに対して、あまりにも選択肢があるからです。
選択の自由は、ありがたいことですが、一方で支払うべき代償もあります。というのも、何かを選択するたびに、決断をしなければならないからです。
決断するたびに、集中しなければなりません。そして、集中するには、私たちにとってももっとも貴重な2つのリソースである、エネルギーと時間を要します。
選択肢が多すぎて決められないことがストレスを生む
自分のエネルギーと時間をどうやって使おうか考えるのは、とてもストレスです。「人生において何をなすべきか?」なんて考えることは。
当惑しますね。それはまるで、ものすごくおなかがすいているけど、何を食べたいかわからないとき、買い物に行くようなものです。
こんな経験ないですか? 店に入ったら、何万もの選択肢があり、決められず、そのへんにあるジャンクフードをつかんでしまう、なんてことが。
そうしたジャンクフードの大半は、「残念なパントリー(pantry of shame)」行きです。ほかのものは、冷蔵庫の中でくさります。
無駄になってしまうのです。
次はちゃんとした物を買おうと思っても、ピザのデリバリーを頼んだりします。
決断疲れは、ほんとうにあります。人は、決断するのに疲れて、決めることそのものを放棄します。
さまざまな決めごとを、考えようとするかわりに、心のパントリーの奥のほうに押し込んでしまいます。
詰め込みすぎて、もはや、まともにものを考えるスペースがなくなってしまうまで。
すると、心配ごとやストレスが生まれます。自分のことなのに自分で制御できていない、と感じるからです。
私たちは当惑しています。考えたり、集中したりするスペースが必要です。
心の棚卸し(メンタルインベントリー)をしよう
では、どうやったらこのスペースを作ることができるでしょうか?
パントリーを掃除するときと同じように、すべてを取り出すことから始めます。心の整理をするために、自分の思考を外に出すのです。
私が考えた方法は、心の棚卸し(mental inventory メンタルインベントリー)をすることです。紙とペンを取り出して、やるべきこと、やっていなければならないこと、やりたいことを書き出すのです。
頭の中に、思考をためておくことは、水をつかもうとするようなもので、不可能です。紙に書き出せば、自分の考えていることを明確につかむことができるので、あとで、処理すできます。
なぜ、こんなことしているの? と自分に聞く
こうやって心の棚卸しをしすると、自分がどんなことに時間とエネルギーを投資しているかわかります。
次のステップは、「なぜ?」と自問することです。
「なぜ私はこういうことをやっているのかな?」
シンプルな質問です。ここで、存在意義を問うようなむずかしいことを考える必要はありません。
単に、「これは重要なことなのかな? それとも、自分の負担になっているのかな?」と問いかけてください。
私たちは、やらなくてもいいことをかかえこみがちです。やるべきこと、やれることに気を取られすぎて、「なぜ、これをしているのか? そもそもやりたいことなのか?」と問いかけるのを忘れてしまいます。
ですが、心の棚卸しをすれば、理由を考える余裕が生まれます。
棚卸ししたら2つの質問をする
棚卸ししたすべてのことに対して、2つの問いかけをしてください。
1)これは不可欠なことなのか?
これは生きるのに不可欠か、この仕事はどうしてもはずせないのか? 家賃や税金など。
2)これは自分にとって重要なことなのか?
それは自分や、自分が愛する人々にとって重要なのか、関係があるのか。
もし、答えが2つとも「ノー」なら、それは、気を散らすもの(distraction ディストラクション)です。線をひっぱって消してください。
消していけばいくほど、気をそがれなくなります。
やりたいことを細分化
棚卸しをしたものから、やらなければならないことを見つけることができました。残りはたぶん、やりたいことだと思います。ゴールです。
ゴール設定で大事なのは、自分の成功につながるゴールにするということです。
ゴールに到達するベストの方法は、小さな、実現可能なプロジェクトに細分化することです。
もし料理ができるようになりたいなら、複雑な料理を6人分作ることから始めてはだめです。
大失敗をまぬがれたとしても、不快な経験をしてしまい、料理に対する好奇心をなくしてしまうかもしれません。
自然にわきおこる好奇心はとても大事なものです。それは、本物ですから。
小さなプロジェクトは、人の好奇心を育み、成長することを助けます。その好奇心は大きな情熱に変わるかもしれません。
少なくとも、自分をもっと知ることができますね。何をやりたいのかわかります。
小さなプロジェクトを決めるときの注意
以下のようなプロジェクトにしてください。
1)すぐにできる(参入障壁がない)
誰かや何かの助けを待つ必要がなく、自分一人でいますぐできることです。
2)具体的なアクションやタスクである
3)1ヶ月以内に終わる
もし1ヶ月以上かかるプロジェクトなら、さらに2つの小さいプロジェクトに分けます。
こうしたプロジェクトは、壮大なゴールの一部である必要はありません。それ自体に意味のある小さなプロジェクトです。
大事なのは、自分の好奇心を大切にすること。小さな規模で始めて、自分向きかどうか確かめるのです。そうすれば、時間が無駄になりません。
時間というリソースは再生できません。時間を作ることはできません。にできるのは時間をつかうことだけです。
興味のあることを見つけ、それを追求することに時間をつかうのは、自分の責任です。
さまざまなプロジェクトを行い、ゴールを達成していくうちに、自分が食べたいものがわかり、必要なスキルもわかるのです。
小さなゴールから大きなゴールに向かいます。時間がかかりますし、身を尽くさなければなりません。
心の棚卸しをして人生の地図を作る
時間は流れ、人は新しいことを学んでいきます。環境も変わります。同じ人間でいることはできません。
心の棚卸しをすることは、地図を得ることです。いかに人生を生きていくか示す地図です。
だから、新しいことを見つけるたびに、この地図を最新にする(アップデートする)必要があります。
そうしないと、不正確な地図になってしまい、道からそれて、漂うことになります。ふと気づくと、たくさんの邪魔ものが、生活に戻っています。
たとえ1日5分でも、メンタルインベントリーをアップデートしてください。アップデートするスキルを身につけたり、実際にアップデートすれば、時間がたつうちに、自分に関するデータがたくさんできます。
このデータがあれば、自分の人生について、深く洞察できます。何をやってみたのか、何をやらなかったのか、何をもっとやるべきか、何がうまくいったか、何がうまくいかなかったか、など。
私はこの作業をもう何年も行っています。その結果、自分には、自分の人生を形作る力がずいぶんある、とわかりました。
ADDで悩んでいた子供が、このステージに立つまでになりました。
意図的に暮らすとパワーが生まれる
では、最後にまとめます。
1)reflect 振り返る、考える
心の断捨離をして、メンタルインベントリーを作ります。
重要じゃやないことはすべて捨てます。
2)ideate 考え出す
興味のあることを追求する方法を考え、小さなプロジェクトを用意します。
3) dedicate 献身する
自分に関係ないことに時間を費やすのをやめます。そうすれば、関係のあること、重要なことに集中するための時間とエネルギーが生まれます。
すると、忙しい暮らしから、意図的な暮らしに変わります。
意図的な暮らしとは、自分が生きたい人生であり、耐える人生ではありません。美しい日の出をたくさん見るパワーが生まれる暮らしです。
///// 抄訳ここまで ////
単語の意味など
take credit for 自分の手柄にする
Attention Deficit Disorder (ADD) 注意欠陥多動性障害。詳しくはこちら⇒ADHD(注意欠陥他動性障害)の原因と行動の特徴は?汚部屋に関係あるの?
decision fatigue 決断疲れ⇒決断疲れを回避する方法。ミニマリストになるのが1番です
existential 存在の、実存の
reflect 反射する、映す、もたらす、よく考える、思い出す
vital 命の、生命に関する、生命を保つのに必要な、きわめて重要な、
distraction 気を散らすもの、迷惑なもの、邪魔するもの、混乱のもと
ideate 想像する
ライダー・キャロルさんの本、The Bullet Journal Method です。リンク先は日本のアマゾンです。
キンドル版、オーディブル版もあります。
時間に対する考え方が変わるほかのプレゼン
時間がないんじゃなくてやる気がないだけ。大事なことに時間を使う方法(TED)
暮らしにマインドフルネスを取り入れてより自由になる(TED)
ミニマリズム~何もしない時間、何もないスペースを作ってより充実した人生を
バリー・シュワルツに学ぶ『選択のパラドックス』(TED)~所持品をミニマムにすると生きやすくなる理由とは?
思考も片付けないと不本意な人生になる
自宅に物理的な物がたまりすぎると、人間らしい活動をするスペースがなくなるように、たいして重要じゃない考えごとや心配ごと、恐れ、やっかみ、焦りなどで、頭の中がいっぱいになると、ほんとうに重要なことを考える余裕がなくなります。
しかも、楽しいときに、楽しいと感じられないし、うれしいときもうれしくない。
感性がにぶってしまうというか、感覚がまひします。
思考の場合、形がないので、いくらでも取り込める気がしますが、形がないからこそ、より問題は深刻です。
なかなか、外に出そうという気にはなりませんから。そういうものが、自分の行く手を邪魔していることにも気づきません。
自分を邪魔するものの正体⇒心の中にいる自分を妨害するものに気づけ(シャザド・チャミン):TED
プレゼンの中で、人は1日に50万回、選択をしている、と言っていましたが、すごい量ですね。
(なんて変な言い方ですが)のは、一瞬のことですから、ぽっぽっぽっといろいろな考えごとが頭に浮かんでくるから、思いのほか、たくさんの決断をしているのでしょう。
思考をためこみすぎると、集中したいときも、リラックスしたいときも、どうでもいい考えごとや決めごとを考えることになって疲れてしまいます。
だから、人間は日々のルーティンは、ほとんど自動的にこなすようになります(省エネモード)。
ルーティンになると、その行動に疑問を感じないため、たとえ、その行動が、いまの自分のためになっていなくても、自分の目的地からそれる行動だとしても、そのまま毎日行ってしまうのです。
すると、本当にしたいことや、夢の実現に向かって行動することができません。
気づくと、なんとなく違和感を感じ、しっくりこないわけです。
そこで、頭の中にあるものをいったんすべて紙の上に出して、どうでもいいものを捨てて、大事なことにだけリソースを使う、しかも、それを毎日やって、頭の中の掃除をしておくといいよ、というのがキャロルさんの言いたいことです。
べつにブレットジャーナルを作る必要はなく(作ってもいいですが)、紙に書き出すだけで、かなり視界がクリアになります。
紙に考えていることを書き出したことがない人は、やってみてください。
尚、キャロルさんのプレゼンはこころの断捨離の仕方を教えるものですが、これはそのまま物の片付けにも使えます。
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ブレットジャーナルは日本でもはやっていますね。
手帳やノートの画像を見ると、これって「手帳をカラフルにかわいくカスタマイズすること?」と思ってしまいますが、キャロルさんはそんなことは言っていません。
頭の中にあるものをすべて、紙に書き出し、要不要を見極め、どうでもいいことは捨てて(ここ重要)、大事なことに自分の時間とエネルギーを使うシステム。これがブレット・ジャーナルです。
なので、手帳を可愛くすることがその人の最重要事項(生きるのに不可欠で、重要なこと)の1つならいいのですが、そうでないなら、あまり装飾にこだわらないほうがいいと思います。
そうしないと、手帳選びや描き方を考えることにリソースをとられて、自分が本当にしたいことに使う時間がなくなります。
しかも、手帳やノート、カラーペンやらを買いすぎて、あとで断捨離するはめになります。
ところで、日本ではブレットジャーナルはバレットジャーナルと言うようです。
多くの外来語がそうであるように、英語しかわからない人に、バレットジャーナルと言うと、たぶん通じません。
bullet は弾丸のことで、小さな丸を意味します。それぞれの項目を書き出すとき、まず bullet(●)を打つから、bullet journalです。