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最近いろいろついてなくて、落ち込みぎみの人に勇気を与えてくれるTEDの動画を紹介します。
タイトルは、How to find meaning when reality hits you (現実に足元をすくわれたとき、いかに意味を見出すか?)。プレゼンターはインドの女優(生まれはネパール)、マニーシャ・コイララ(Manisha Koirala)さんです。
コイララさんは、1970年生まれ。1990年代にたくさんのボリウッドムービーに出演し人気を博していたインドを代表する女優です。政治家をたくさん出している家の生まれですが、デリーに留学中にスカウトされて映画界入りしました。
不運に見舞われたとき、どうやって意味を見出すか?
コイララさん、売れていたときはこの世の春みたいだったのです。が、その後、不運なことが続き、卵巣がんにもかかり、コイララさんは死を覚悟しました。
不幸続きの人生にどんな意味があるのか、このプレゼンで教えてくれます。
収録は2017年2月、インドのジャイプルにて。動画は13分です。
ネパールの人なので多少英語にアクセントがあります。しかしゆっくり話していますので、その点はわかりやすいと思います。日本語字幕はないので、動画のあとに抄訳を書きます。
絶好調の人生から失意のどん底へ
こんな名言があります。
Life is what happens to us while we are busy making other plans.
人生以外のことを考えるのに忙しいとき、人生は進んでいく。
先がどうなるかわからないところが、人生をとてもあやういものにし、また美しいものにしています。
20年から25年前、私は多くの人が夢見ていた人生を送っていました。
ずっと著名なアーチストになりたいと思っていました。
私はネパール生まれですが、インドの映画界で人気女優の地位を築きました。80以上の映画に出演し、5つの言語の映画に出演し、数々の賞も受賞しました。正直にいうと、質のよかった映画は少しですが。
自分が夢見てきたこと以上のことが起こったのです。ですが、すばらしい生活をしているあいだに、自分の人生は別のプランを用意していることに気づいていませんでした。
私を嵐の中に放り込むような人生を。
それは少しずつ始まっていたのです。
まず、ろくでもない映画に出演する契約を結んでしまいました。映画は失敗し、評判はさんざん。その次の映画も同じようにだめ、その次もその次も。
でも気にしませんでした。私の出演を望んで待っていてくれる優秀な監督たちがいたからです。だから、すぐにもとの地位にカムバックできると思っていました。でもできなかったのです。
生活が乱れ、よくない人たちとつきあうようになりました。まずい人間関係から、別のまずい間関係へ渡り歩き、むちゃくちゃな暮らしをしていました。
離婚するときになったとき、失意のどん底に落ち、その後すぐにガンの宣告を受けました。
死を覚悟した時
病気はかなり深刻で、治療はとても大変でした。
化学療法のせいで髪、まつげ、眉毛が抜け、いかにも病人の悲しい姿になりました。魅力的な美人女優からガン患者の姿になったのです。
けれども、私が一番恐怖を感じたのは自分の見た目ではありません。
怖かったのは、手術同意書に署名したとき。
一生心臓や耳の機能が損なわれるかもしれない、神経に障害が出て、今後ずっと手が震えるかもしれない、そんなことが書かれていました。
私は本当に怖かった。
もう生きられないのかもしれない、これまで考えたこともない、得体の知れない死を迎えるのかもしれない。
そう思いました。
もし、これが自分の人生の最後なら、これまで自分は何をしてきたんだろう。充分生きてきたのかしら? 何か誇れることをした?
もちろん違います。
私は自分の人生を台無しにしていたのですから。健康に気遣うことなく、自分の仕事や自分を気にかけてくれる人のことも、ろくに考えていなかったのです。
ガンにかかって決意したこと
私はもう4年半、ガンの再発がありません。神も人生も私にやさしくしてくれました。
死を覚悟したとき、自分で自分にした約束を忘れたことは1日たりともありません。私は3つのことを、最優先に考えることにしたのです。これを「健康がくれた贈り物」と呼んでいます。
まず自分の健康。できるだけ健康でいられるようにあらゆることをしています。
次は人間関係。家族との関係を大事にするようにしました。家族は私が生まれてから最後の日を迎えるまで支えてくれる唯一の存在です。
友情に対する考えも改めました。以前はたくさん友だちがいましたが、今は本当に意味のある関係を結んでいる少数の友だちを大事にしています。
次に自分の仕事。私は根っからのアーティストだと気づいたので、アーティストとして成長できる仕事をすることにし、出演する作品を注意深く選ぶようにしました。
もう1つ贈り物がありました。世の中に貢献することが大事だと気づいたことです。
入院中、あまりお見舞いにくる人はいなかったのですが、日曜になると必ずいっしょにいてくれる人がいました。
ニューヨークのコーネル大学に勤務していた病理の先生、ナブニート・ナルラ先生です。
病院の座り心地の悪い椅子に座って、1日過ごしてくれました。とても忙しい先生なのに。ある時、先生に質問しました。
「どうして来てくれるんですか? 前からの友だちでもないし、私のファンでもないのに」
「いつかあなたも、誰か別の人に同じことをしてくれるといいなと思っているんです」。
先生の答えはこれでした。とてもシンプルだけど深い言葉です。このとき、もしもう1度チャンスを与えられたら、人の役に立とうと決めました。
大きなことでも小さなことでも関係ありません。
だから、ネパールで地震があったとき、すぐに出向いて、UNFPA(国際連合人口基金)の協力を得て、Dignity First(ディグニティ・ファースト)というキャンペーンをしました。
今後も、農村部に行き、少女たちに、幼いうちに結婚してはいけないと説明する運動をするつもりです。
ガンから回復した者として、今この病気にかかっている人に、ガンは死の宣告ではないと伝えることもやっています。
不幸なできごとの意味すること
ジェットコースターのようにアップダウンのあった私の物語で大事なのはできごとそのものではありません。それぞれのできごとの意味を見つけることが大事なのです。
私は、自分の身の上に起こったこと、目の前で起きていたことに意味を見出さなければなりませんでした。
そのとき、こんな単純で基本的な原則を見つけました。あまりに簡単なことだから、みんな当たり前だと思って見過ごしていることです。
1.人生は贈り物である
言い古された言葉だとはわかっています。でも、人生は贈り物なのです。
この身体も、人生の中で出会う人々も。贈り物だから大事にしなければなりません。
2.内省の大切さ
自分自身を深く見つめて、自分の真実の姿を見つけ、自分らしく生きなければなりません。
時間は限られているのだから、無駄にはできないのです。他人の人生を生きることはできないですよね。誰か別の人の考える人生を生きてはいけません。
何がいいとか悪いとか。
自分を見つめて、自分を突き動かすものを見つけなければ。そうすれば、毎日、明快に情熱をもって生きられます。
3.人生に思わぬできごとはつきもの
どんなに前もって準備をしようとがんばっても、人生には必ず思わぬできごとが起こります。突然、試練が訪れるのです。
ですが、私たちは選択することができます。
その試練に飲み込まれて被害者になってしまうか、それを自分の成長のチャンスに変えるか。
というのも、試練にはメッセージがあるのです。どんな問題にも、教訓が隠されています。最悪の事態を勝利に導くことができます。
私たちには知恵と勇気があるのですから。
//// 抄訳ここまで ////
補足:ビューティフル・ボーイ
Life is what happens to us while we are busy making other plans.
この言葉は、ジョン・レノンの Beautiful Boy (Darling Boy)という歌詞の一節です。
1980年秋に発売された、「ダブル・ファンタジー」というアルバムに収録されています。ジョンが、当時、5歳だった息子、ショーンのために書いた曲です。
きみが大きくなるのが待ち遠しいけど、それまでまだまだ時間があるね、今のところは横断舗道を渡るときは、パパと手をつなごうね、と歌う愛情あふれた歌です。
「ダブル・ファンタジー」は、5年ぐらい主夫としてずっと家にいたジョンが、妻のヨーコと作ったアルバム。発売当初はそんなに反応がよくなかったのですが、翌月12月に、ジョンが暗殺されたので、その後、ぐーんとセールスが伸びました。
これまでに紹介した女優のTEDのプレゼンなど
両方ともおすすめのプレゼンです。
アメリカの女優、ジェーン・フォンダの講演⇒60歳以降は可能性に満ちている「人生の第3幕」(TED)
イギリスの女優、タンディ・ニュートンの講演⇒他人を大事にすること、自分を大事にすること(TED)
不運続きに嘆く人に見てもらいたい別のプレゼン⇒強い心を持つ3つの方法。考え方の悪習慣を手放せばメンタルを強くできる(TED)
終わりを思い浮かべるすすめ
世界的なスター女優として君臨していたのに、どんどん落ち目になって、生活も荒れ、派手な結婚式をしたのにすぐに離婚をし(結婚生活は2年です)、おまけに重いガンにかかって死の淵を見た。
コイララさんみたいな人生を歩む人はそんなに多くないかもしれません。
ですが、思わぬできごとに足をすくわれ、思うように暮らせなくなる、というのは誰にでもあることです。
不運続きのとき、お祓いをしてもらうとか、パワーストーンを買うとかするのもいいかと思います。が、そんな他力本願的なことをするより、そこに前向きな意味を見つけて、先に進むのが大事ではないでしょうか。
圧倒的な不幸や不運にはたして意味があるのかどうかは別にして、自分なりに意味を見つけようとするその行動が重要なのです。
自分が意味を見つけなかったら、人生なんて最初から最後まで何の意味もありません。
ところが、動画にもあるように、内省を重ねて、自分なりに何か意味を見つけて行動すれば、よいことが起きます。
他人の役に立てて、充実感を感じたり、これまでどうでもいいと思っていたことにありがたみを見つけたり、人のやさしさに気づいたりできて、前より幸せを感じられるようになります。
ポイントは終わりを思い浮かべて、自分の心の中を見つめて、ほんとうに大事だと思うことを見つけることです。
人は、いつか終わりが来ることを身をもって感じないと、自分の命や家族のありがたさに気づけません。
しかし、終わりを思い浮かべることができれば、人がいいという人生ではなく、自分の望む人生を生きたい、と思えるようです。
スティーブ・ジョブズもそう言っています⇒スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学卒業式のスピーチからミニマリストが学んだこと
毎日あわただしくて、どんどん汚部屋になっていく人や、家族が断捨離の邪魔をしてカリカリしている人、コスメを買うのが止まらないと嘆いている人は、一度自分の終わりを思い浮かべてみてはどうでしょうか?
ちょっと視点を向ける先を変えるだけです。
すると、今日一日の行動が変わります。
まあ、またすぐに、終わりがあることを忘れて、感情的に反応する日々に戻ることでしょう。
そうなったら、また終わりを思い浮かべればいいのです。そうやって何回もやっているうちに、別にまだ終わりが来ていないけど、終わりを意識した生き方ができると思います。