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人生の転換期に、まるで霧の中にいるように先が見えなくなることがあります。
今回は、そんな「移行期の霧」をどう乗り越えるかを教えてくれるTEDトークを紹介します。
タイトルは、Navigating Transition Fog(移行期の霧を乗り越える)。スピーカーは、変化と不確実性の時代の生き方をテーマに活動しているコンサルタントのBrenda Reynolds(ブレンダ・レイノルズ)さんです。
人生で思いがけない変化が起きたとき、どうしていいかわからなくなったとき、どう対処すればいいのか? 実体験をもとに語ってくれます。
移行期の霧を乗り越える
収録は2017年11月、長さは約10分。日本語字幕はありませんが、ゆっくりした語り口で聞き取りやすいです。動画のあとに、要点を私の言葉でまとめます。
◆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
シンプルな構成と語彙を使った聞き取りやすいトークです。
移行期の霧とは
人生がうまくいっていると思っていたのに、予期せぬ出来事が起きて、先が見えなくなる。
レイノルズさんは、この状態を「移行期の霧(Transition Fog)」と呼んでいます。
霧が発生するきっかけはさまざまです。
昇進のようなポジティブな変化もあれば、失業や病気のような予期せぬ出来事もあります。出産、子どもの独立、別れ、新しい役割を引き受けること。どれも霧を生み出します。
霧の中にいるとき、私たちは「かつての自分」と「これからの自分」の間にいます。
次に何が起こるかわからない。コントロールできない。その不確実さが、不安や恐れを生み出し、視界をさらに曇らせます。
レイノルズさん自身、2008年に予期せずシングルマザーになり、この霧を経験しました。
2人の幼い息子を抱え、収入の保証もない。完璧だと思っていた人生プランの上に、濃い霧が立ち込めました。どうやって乗り越えればいいのかわからなかったそうです。
霧の中を進む3つの直感
レイノルズさんは、実際の霧の中で車を運転するときの直感が、人生の転換期にも使えると気づきました。
1. スローダウンする
霧の中では、スピードを落とすのが自然な反応です。
早く霧を抜けたいと思っても、焦って進むと危険です。
興味深いのは、霧の中では実際より速く進んでいることが多いという点です。周囲が見えないので、自分がどれだけ進んでいるか気づきにくい。
人生の変化でも同じです。
「全然進んでいない」と感じていても、実は思っているより前に進んでいます。大事なのは、「どこまで行くか」ではなく「どこまで来たか」に注目することです。
レイノルズさんは、毎日の帰り道に、その日の小さな前進を思い出して「よくやったわ」と自分に言い聞かせていました。
2. ロービーム(下向きライト)を使う
霧の中でハイビーム(上向きライト)を使うと、光が霧に反射して、かえって見えなくなります。
ロービームなら、目の前の約100メートルを照らせるので、進行するには十分です。
人生の転換期も、遠くを見ようとしすぎると不安が増します。
「次の一手」だけに集中すれば、一歩ずつ進んでいけます。すべてを見通す必要はありません。
3. 路肩に停車する
霧があまりにも濃いときは、無理に進まず、路肩に停車して霧が晴れるのを待つのが安全です。
人生でも、大きな決断の前に立ち止まることが必要なときがあります。
情報を集めたり、気持ちを整理したりする時間を取る。一時停止は、逃げではなく、賢明な選択です。
避けるべき3つの落とし穴
レイノルズさんが霧の中で経験した落とし穴が3つあります。
1.他人と比較すること
霧の中にいると、他人の人生は問題がないように見えます。でも、誰も霧のない人生は送っていません。自分の内側で起きていることと、他人の外側を比べるのは危険です。
2.ネガティブなセルフトーク
霧の中にいるとき、「もっと早く進むべきだ」「もう乗り越えているべきだ」「どうすればいいかわかっているべきだ」と自分を責める声が聞こえます。
この声に耳を傾けてしまうと、霧が濃くなります。
3.焦り
早く霧を抜けたい、不安を消したい、また笑えるようになりたい。霧の中にいるとつい焦ってしまいますが、焦りは霧を晴らしてくれません。
霧は成長の機会
霧には、思いがけない恵みがあるとレイノルズさんは言います。
変化が起きたおかげで、「今のままでいいのか」と問い直すきっかけになるかもしれません。
迂回して進むと、思いがけない可能性に満ちた場所に出るかもしれません。
他者の不確実性に共感する力が育つかもしれません。
レイノルズさん自身、2008年の経験がなければ、本を書くことも、TEDで話すこともなかったと言います。
彼女はFOG(霧)を「Freaking Opportunity for Growth(成長のためのとんでもない機会)」と言い換えています。
霧の中にいるときは気づきにくいけれど、振り返ったとき、霧がどれだけ自分を成長させてくれたのかわかります。
トークの最後に、作家ジョセフ・コンラッドの言葉が紹介されます。
“It isn’t the clear-sighted who rule the world. Great achievements are accomplished in a blessed warm fog.”「世界を動かすのは、物事をはっきり見通せる人々ではない。偉大な成果というものは、祝福されたあたたかな霧の中で成し遂げられるのだ」。
暗闇を恐れる必要はありません。そして、霧を恐れる必要もないのです。
人生の転換期に関するほかのプレゼン
同じテーマが気になる方は、以下の記事もごらんください。
なぜ変化はこんなに怖いのか? どうしたら変化から可能性を引き出せるか?(TED)
危機を乗り越える人(レジリアントな人)の3つの秘密(TED)
※ここからは、このトークを見た私の個人的な感想です。
霧の中で「次の一手だけ」に集中する
このトークで印象に残ったのは、「ロービームで十分」という考え方でした。
霧の中にいると、先が見えない不安から、なんとか遠くまで見通そうとします。
でも、ハイビームを使うと、光が霧に反射して、かえって視界が悪くなります。
ロービームで目の前だけ照らしながら、少しずつ進むことが霧を抜ける秘訣です。
これは、人生で行き詰まるたびに使える方法です。
全体像が見えなくても、次にすることがわかれば、一歩ずつ進んでいけます。
焦っていろいろやろうとするとかえって失敗します。小さなことを1つずつ確実にやることが重要です。
もう1つ心に残ったのは、思っているより前に進んでいるという指摘です。
霧の中では周囲が見えないので、自分がどれだけ進んだか実感しにくい。
でも実際には、思っているより前進しています。
だから、「どこまで行くか」ではなく「どこまで来たか」に注目したほうがいいのです。
これは、たっぷりあるマインドの考え方です⇒たっぷりあるマインドになるおすすめの練習法6つ~もう十分ある、と考える。
たっぷりあるマインドは、すでに持っているものやできていることに目を向けます。
私自身、子どもを授かったとき、濃い霧の中にいたと思います。
あの頃は、今とはマインドセットがかなり違っていたので、むやみにストレスを増やすことをしたと思います。でも、あの霧があったから、今の自分がいます。
霧の中にいるときは気づいていませんでしたが、確実に前に進んでいました。
50代・60代は霧が多い時期
50代、60代は、人生の転換期が集中する時期です。
退職や仕事の変化、子どもの独立、親の介護、配偶者との関係の変化、自分自身の健康問題。
どれも、霧を作る可能性がありますよね。
「この先どうなるんだろう」「自分はこれからどう生きていけばいいんだろう」
そんな不安を感じている方もいるかもしれません。
私がお伝えしたいのは、霧の中にいること自体は悪いことではない、ということです。
人生はずっと晴れではなく、霧の日や雨の日も多いですよね。
でも、そうした悪天候の日があるから、人生が豊かになると思います。
ずっと晴れで続くなら、もはやそれは「晴れ」ではなく、いつものあたりまえの天候です。
雨を知って初めて晴れの日の素晴らしさがわかります。
それに、人を成長させてくれるのは悪天候の日です。
レイノルズさんが言うように、霧や雨は自分にとって大きなチャンスなのです。














































