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心理学の「ノーチョイスオプション(選ばないオプション)」という考え方をヒントに、買わない選択を視野に入れて、ネットでの無駄遣い防止法を紹介します。
ショッピングするとき、私たちは「どれを買うか」ばかり考えがちですが、そもそも買わない選択肢もあります。
しかし、そんな選択肢があることを、店側はわざわざ教えてくれません。
私たちはいつのまにか、「AかBか、どちらかを買わなければならない」という枠組みに閉じ込められてしまうのです。
「これとこれ、どっちがいい?」と聞かれると、人は自然に、どちらかを選ばなきゃと思ってしまう。でも、「どちらも選ばない」という選択だって、あります。
このことを知っておくだけで、余計なものを買わずにすみます。
買うことを選ばない、つまり買わない選択が、自分にとっていちばん正しい選択になることもよくあります。
ノーチョイスオプションとは?
ノーチョイスオプション(no choice option)は、「選ばなくてもいい」という選択肢があると、人の意思決定や行動が変わるという心理効果のことです。
たとえば、「AとB、どちらかのカメラを選んでください」と言われたら、なんとかしてどちらかに決めようとしますよね。
でも、そこに「どちらも選ばない」という選択肢が加わると、多くの人は急に慎重になり、「今回はやめておこう」と保留にする傾向が強くなります。
なぜ、そんなふうに変わるのかというと──
・「選ばなければ」というプレッシャーがなくなる
・「失敗したらどうしよう」という不安がやわらぐ
・そもそも、これって必要?と選択の意味を見直すきっかけになる
つまり、「買わなくてもいい」「決めなくてもいい」と思えるだけで、気持ちに余裕が生まれ、本当に必要かどうか落ち着いて考えられるようになるのです。
ネットショッピングでは、「今すぐ決めなきゃ」と思ってしまうものですが、ノーチョイスオプションを意識すると、「やっぱり買わなくていいかも」と思えることが増えます。
ネットショッピングには選ばないオプションがない
ネットで何かを買おうとするとき、「今すぐ買う」ボタンはあっても、「買わない」ボタンはありません。
つまり、選ばないオプションは、用意されていません。
商品ページには「カートに入れる」「今すぐ購入」などの選択肢はありますが、「あとで考える」「今回は見送る」といったボタンはありません。
それどころか、私たちを急がせるような仕掛けがいくつも使われています。
・「あと○時間でセール終了!」というタイマー表示
・「残り1点」「○人が今この商品を見ています」といった数字
・サイトから離れようとすると出てくる「今だけ10%オフ!」というポップアップ
こうした演出はすべて、「今すぐ決めなきゃ」という気持ちをあおるためのものです。
その結果、「まだ迷っているけど、買ってしまおうかな」と購入ボタンを押してしまうことが多いのではないでしょうか?
もし画面のどこかに「今回はやめておく」「あとで検討する」というボタンがあったら、あなたはどうするでしょう?
もしかしたら、一晩寝かせて、それでも欲しかったら買おうと思えたかもしれません。
つまり、ネットの買いもの環境は、ノーチョイスオプションをわざと消していると言えます。
だから、私たちのほうで、選ばないオプションを意識しておけば、買ってしまうことが減ります。
ネットショップでの無駄遣いをやめるために、頭の中の片付けに取り組もう。
自分で買わないオプションをつくる方法
ネットの買いもの画面には、「今は買わない」という選択肢は用意されていません。
しかし、現実には、「買わない選択」があれば、「買う選択」もあります。
そこで、買う側のほうで、買わないオプションを作っておけば、買う方向にばかり進むことを阻止できます。
ここでは、ノーチョイスオプションを活用するために、できそうなことを紹介します。
買わない選択肢があることを意識する
一番大事なのは、買う選択だけでなく、買わない選択もあるとごく自然に考えられるようにすることです。
ネットの決済画面を見たら、脳内で「今は買わないボタン」をイメージしましょう。
決済画面や登録ページを見たら、いったん閉じる
商品をカートに入れて「レジに進む」ボタンが出てくる場面。
サブスクの登録画面で「今すぐスタート」と大きく表示されているページ。
こうした環境では、「今すぐ選んで」と促されています。
このように買うことだけを選ばされる世界に入ったら、いったん画面を閉じて距離を置きましょう。
そして、ノーチョイスオプションがあることを思い出してください。
買う選択肢が目の前にあると、人はそれを選ぶしかなくなりますが、選択肢を消してしまえば、買わない選択肢について考えることができます。
カートではなく「お気に入り」に入れる
買う予定があるものは「お気に入り」や「ウィッシュリスト」に入れていったん保留にしましょう。
カートは「本当に買うもの」、お気に入りは「まだ検討中、買わない選択もありうる」ものを入れると使い分けるのはどうでしょう?
また、お気に入りに入れるもののハードルをあげるのもおすすめです。
気になったものをぼんぼんお気に入りに入れるのではなく、本当に買うつもりがあるものをお気に入りに入れてください。
買うものリストに買わない理由も書く
30日間待つノート(買いたいものを書いて、1ヶ月待つためのノート)や、買うものリストに欲しいものを書くとき、それが必要な理由だけでなく、必要でない理由や買わない理由も書いてみましょう。
たとえば、新しいジーンズが欲しいとします。この場合、それを買う理由と買わない理由は以下のようなものになるでしょう。
■買う理由
・必要だから:今持っているものが壊れた、古くなった、足りない。
・より快適にしたい:もっと履き心地のいいものや、機能的なアイテムが欲しい。
・気分を変えたい:新しいファッションやスタイルに挑戦したい。
・特定の用途がある:仕事、イベント、旅行などに適したものが必要。
・割引やセール:今買えば通常より安く手に入る。
・自己投資・モチベーションアップ:新しいものを買って前向きになりたい、自信を持ちたい
■買わない理由
・まだ使えるものがある:持っているアイテムで十分足りている。
・あまり使っていないジーンズがある:手持ちのものをしっかり活用していない。
・収納スペースがいっぱい:これ以上増やすとさらにパンパンになる。
・実は本当に必要かどうか分からない:一時的な衝動買いなのかも?
・お金:買うお金がない/ジーンズを買うより貯金しておきたい/ほかのものにお金を使いたい
・ミニマリストの思考:ものを増やさず、シンプルな暮らしを維持したい。
・環境への配慮:無駄な消費を減らしてサステナブルなライフスタイルを目指したい。
こんなに詳しく書く必要はありませんが、「絶対いる!」と思ったら、買わない理由もひとつかふたつ考えてください。
すぐに決めない自分を肯定する
「あとで考えよう」と保留にすると、「優柔不断かな」「決断力がないのかな」と思う人もいるかもしれません。
でも、それは無駄な買い物をしないために、状況をしっかりチェックしているということ。むしろ思慮深い自分をほめてください。
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「選ばない」という選択肢があるだけで、私たちの判断は変わります。
ノーチョイスオプションの考え方を取り入れれば、衝動的な買いものが減り、本当に必要なものを持つ暮らしに近づけるでしょう。
それは、我慢することでも、ケチになることでもありません。
自分の暮らしや気持ちを大切にした結果、「今回は買うことを選ばなかった」というだけのこと。
買わないことに罪悪感を持つ必要はありません。
自分にとって必要かどうかをしっかり考えた結果なら、買わない選択をするのは、健全な行動です。
何かを選ぶことと同じくらい、選ばないことを意識すると、より満足のいく暮らしにつながると思います。