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充実した人生を生きるのに参考になるTEDの動画を紹介しています。今回は、心理学者のLaura Carstensen(ローラ・カーステンセン)さんの、Older people are happier(年を重ねた人ほどより幸せである)です。
邦題は「年をとるほど幸せになる」
「年をとるほど幸せになる」TEDの説明
In the 20th century we added an unprecedented number of years to our lifespans, but is the quality of life as good? Surprisingly, yes! Psychologist Laura Carstensen shows research that demonstrates that as people get older they become happier, more content, and have a more positive outlook on the world.
20世紀に、人類の平均寿命はかつてない伸びを見せました。ですが、人生の質は良くなっているのでしょうか?
驚くべきことに、答えはイエスです。
心理学者のローラ・カーステンセンは、人は年をとるほど、幸せになり、満足し、世界をよりポジティブに見られるというリサーチ結果を紹介します。
このプレゼンでは、高齢者が幸せなこと、なぜそうなのか、そして、高齢者の幸せの秘密の研究を進めれば、他の世代を含めた、人々の人生の質(幸福度)が向上する、と語っています。
動画の長さは11分38秒です。日本語字幕を貼ります。英語や、字幕なしがよい方はプレーヤーで調節してください。動画のあとに要約を書きます。
☆トランスクリプトはこちら⇒Laura Carstensen: Older people are happier | TED Talk | TED.com
☆TEDの概要はこちらで説明しています⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
20世紀以降、人の寿命はおよそ2倍になった
高齢化社会について、あまりによく耳にするので、多くの人は、この件に関して、自己満足していたり、無頓着になっています。
しかし、長生きは、すべての世代の人生の質(quality of life)をよくすることができます。
20世紀になって、伸びた寿命は、それ以前に伸びた寿命より長いんです。またたくまに、人の寿命は2倍近くになりました。
少子化が進んでいるので、人口の分布を示すピラミッド型の図は、今や、長方形になろうとしています。
歴史上初めて、先進国に生まれた赤ちゃんのほとんどが寿命を全うできるチャンスがある時代になりました。
平均寿命が伸びたのは文化のおかげです。科学技術が進歩し、生活様式が変わったので、健康で満足できる生活が実現するようになりました。
高齢化のパラドックスとは?
もちろん、年をとるとさまざまな問題が起きます。病気になったり、お金がなくなったり、社会的なステータスを失ったり。
何も考えずのんびりできる時期ではありません。
ところが、高齢化について調べれば調べるほど、「年をとると、何もかもが下り坂だ」という考え方が間違っていることに気づくのです。
年をとると、知識、専門性、感情面でもすばらしい進歩があります。そうなんです。年をとった人はどの世代の人よりも幸せなのです。
この現象を、社会学者は、「高齢化のパラドックス(the paradox of aging)」と呼んでいます。
老後の生活にはつらいことがいっぱいありますからね。
つらいはずの老後を生きる人がなぜ、幸せなのか?私たちはあらゆる仮説をたてました。
●たまたま今、年をとっている人たちが幸せなのではないか?今の若者が年をとったら違うのではないか?
●高齢者は、単に、物事を前向きにとらえようとしているだけではないか?そうでもしなければ、暗いことばかりだ。
ですが、調べれば調べるほど、「高齢者のほうが幸せだ」という説を裏付ける証拠が出てくるのです。
年齢を重ねると、確かに人は幸せになる
私と同僚は、18歳から94歳の人の感情を10年にわたって調べました。その結果、特定の世代が幸せなのではない、と判明しました。同じ人間が、年をとるにつれて、より幸せを感じることがわかったのです。
最晩年では、少し幸福度がさがりますが、それでも、大人になってすぐの頃よりは、幸福度が高いのです。
「年をとった人は幸せだ」と言い切ってしまうほど物事は単純ではありません。私達の研究では、高齢者はよりポジティブであり、若者ほど、入り混じった感情(mixed emotions 幸せだけど悲しい気持ち)を持たないとわかりました。
また、高齢者は、悲しみを受け入れ、より安らかに処理できることも判明しました。感情的な対立を、より上手に扱えるのです。
ほかの条件が同じなら、高齢者は、若者より、よりポジティブな情報に意識を向け、覚えています。
同じ写真を見せても、若い人に比べてポジティブな写真を覚えているのです。怒った顔より、笑顔に目を向けます。これは日々の暮らしを楽しむことにつながりますね。
私達は、学者なので、この現象にも仮説をたてました。
●高齢者の認知能力が劣っているので、ポジティブな感情を報告した。
●ポジティブな情報のほうが、ネガティブな情報より脳が処理しやすいのではないか?
●年をとると、もうネガティブな情報は処理できないのではないか?
ところが、これは違うのです。
もっとも、脳がシャープに働いている高齢者が、一番ポジティブなのです。情報がポジティブだろうが、ネガティブだろうが、高齢者でも同じように処理できます。
なぜお年寄りは、より幸せなのか?
高齢者がより幸せを感じるのは、人が時間を推し測る力があるからだと考えられます。
時計の時間やカレンダーの日付ではなく、ライフスパンです。
年をとると、「私たちは永遠に生きるわけではない」ということが認識できるので、人生をポジティブなものとして見られるのです。
若者のように、残り時間がたくさんあると、あらゆる情報を吸収しようとし、さまざまなリスクをとります。嫌いな人とすら、時間を過ごそうとします。
もしかしたら、楽しいんじゃないか、学べることがあるんじゃないか、なんて期待して。
若者ってブラインドデートに行きますよね。うまく行かなくても明日があるさ、と思って。50歳過ぎた人は、ブラインドデートなんかに行きません。
年をとるにつれて、残り時間は減り、目標が変わってきます。すべてのことをしている時間がない、とわかり、優先順位がよりはっきりします。
細かいことはどうでもよくなり、より人生を味わい尽くそうとします。
感情的に大事だと思われることに、リソースを使おうとします。だから、日々の暮らしは楽しくなり、より幸せになります。同時に、「不公平なこと(injustice)」にがまんならなくなってきます。
高齢化から学べること
2015年までには、アメリカ合衆国では60歳以上の人口が、15歳以下の人口を上回ります。
これは、科学者にとって何を意味するのでしょうか?
数字が結果を決めるわけではありません。もし、私達、専門家が、高齢者のかかえている問題を解決し、高齢者の強みを生かせば、ほかの世代の人の暮らしの質も、驚くほど向上するでしょう。
この社会は、情緒が安定し、才能にあふれ、健康で、教育水準の高い市民でいっぱいになるのです。知識を現実的な問題の解決に使うことができるので、これまでにない、よい社会になるでしょう。
—- 抄訳ここまで —–
死を意識することでよく生きられる
高齢者のほうが、日々幸せを感じている、というリサーチ結果はたくさんあります。
こちらでも紹介しています⇒年をとるのも悪くない。若いときより老後のほうが楽しい6つの理由。
先週紹介した、ジェーン・フォンダも同じことを主張していました⇒60歳以降は可能性に満ちている「人生の第3幕」ジェーン・フォンダ(TED)
私はまだ高齢者というほど、高齢ではありませんが、確かに若いときよりは、日々を楽しく生きています。
「ミニマリストになったからそうなんだ」と思っていましたが、よく考えると、50歳になった時、もっときっちり生活をシンプルにしよう、と決めました。
その話はこちらで詳しく語っています⇒何度も失敗したけど、今も前を見て進んでいます~「ミニマリストへの道」のまとめ(1)
私の場合は、「このままでは、老後の生活がしんどい」と思ったからですが、老後を意識する、というのは死、あるいは終わりを意識しているからです。
つまり、人は、たとえ若くても、終わりを意識することで、そこまでのプロセスをより充実して生きられるのだと思います。
スティーブ・ジョブズもそう言ってました⇒スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学卒業式のスピーチからミニマリストが学んだこと
若いころから、死を意識するのは難しいと思います。私も、自分がもうすぐ死ぬとは思っていません。
ですが、「ずっとこのままではないんだ」と認識することは大事なことです。今日という1日、今という時間は、失われたらもう2度と戻ってこないのです。
断捨離で言えば、いくらモノをためこんだところで、あの世に持っていくことはできないし、80歳をすぎて、モノに囲まれていると、日々の生活がしんどいだけです。
「人生、モノをためこむことより、服を毎日とっかえひっかえ着替えることより、大事なことがあるんだ」ということが、残り時間を意識することでわかってきます。
若い人でも、少し想像力を働かせれば、終わりを意識することはできます。すると、今の生活がよりよいものになるのです。