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シンプルライフの参考になりそうな海外メディアの動画や記事を紹介するシリーズ。今回は、アメリカのミニマリスト、ピーター・ローレンス(Peter Lawrence)の動画です。
ほとんど家具のない自宅を見せてくれます。
モノを削ぎ落として暮らす人
ピーターの自宅はカリフォルニアにあるワンベッドルームのコンド(condo)です。コンドはcondominium (コンドミニアム)で、日本で言えばマンションにあたります。
動画を見るとけっこう広いです。物がないからそう見えるのかもしれませんが。
アメリカのミニマリストと言えば、ブロガーが多いのですが、彼はミニマリズムムーブメントが広がる前から、モノをそぎ落として生活していたようです。
シンガポール生まれで、アメリカに移住。シリコンバレーのヒューレットパッカードでマネージャーをしていましたが、40歳ちょっとでリタイヤしました。
ずっとミニマルライフを送っていたから、仕事をしなくてもなんとか生活できるお金をためられたのです。
彼の生活ぶりを見ると、ほかのミニマリストは物持ちに見えます。
動画は13分47秒です。訳をつけますので、お時間のない方はそちらへ飛んでください。ほぼ忠実に訳しました。
彼は英語ネイティブではないので、まれに文法的におかしなところがあります。私も人のことは全く言えませんが。
ですが、わりとフォーマルな表現、難しい単語を使っている部分もあり、相当インテリなのではないかな、という印象です。
ミニマリストって何?という人はこちらをお読みください⇒ミニマリスト、断捨離、シンプルライフの違いとは?
持たない暮し:どこまでもシンプルで充実した暮しを求めて
1年使わなかったモノは捨てます
私の家にようこそ。
シンガポールからカリフォルニアに来た時、モノはなかったんですが、ここに落ち着いたら、ふつうの人みたいに、テレビ、ヴィデオ、ダイニングテーブル、ベッド、ふとんとか買いました。
ここが私の寝室です。
そのあと引っ越しして、そのときもっとモノを減らして、
ここがウォーキングクローゼットです。
所持品を自分の小さい車に収めることができると思ったんです。
これが私の服です。ジャケットとかシャツ、パンツとか。タオルに下着にソックス。スポーツジャケット、このスーツは1996年兄弟の結婚式に着ました。
どれをキープして、どれを捨てるかはたった1つのルールで決めています。「これは過去1年に使ったかどうか」1年使わないならいらないわけですから、捨てます。
家族の誰一人、私みたいな生活はしてません。友だちもそうです。
バスルームです。ボディクリーム、爪切り、クシ、フロス、歯磨き粉、歯ブラシ、髭剃りと髭剃りの刃です。
昔の人は、シンプルに暮らしていましたよ。アメリカでも。1950年から住宅建設が爆発的に増えるまでの、1スクエア平方メートルの家に住む家族は。
国民の幸せは1950年代にピークを迎えました。ずっと狭い場所でシンプルに暮らしていたのに。
誰でもシンプルライフを送れると確信しています。そして幸せに暮らせると。
我が家で1番高いのはこのラップトップコンピュータです。これは私の唯一のライトで、1997年に買ったと思います。今も充分間に合います。
映画はこのプロジェクターで見ます。1人で見る時は、このスリーピングバッグをここに置いて、寝転がるだけ。
友だちが来たら、これを動かして壁に映します。
どれだけ少ないモノで、自分の目標を達成できるか
私にとってミニマリズムは、どれだけ少ないリソースで、自分の目的を達成できるか常に考える生き方です。
家全体にモップをかけるのが好きです。いい運動になるから。
入り口では足の筋肉を鍛えることができます。
1人のミニマリストとして、いつも自分のやっていることの目的は何か考えています。
この椅子でも別のエクササイズができます。
いったん自分の目的が明確になったら、その目的のためにどんな最小限のモノが必要なのか。
ここで上半身を鍛えることもできます。ほかの人は、ぶらさがるバーを買うけど、ドアのさんを使えばいいのだから、買う必要ないです。
私はできるだけ早く、経済的に自立したいと決めてました。シンプルな暮しはそれを実現しやすくしてくれました。
最初は自分がどうやって薬を使わずにコレステロール値を下げたか、本に書こうと思っていました。そしたら、私の変わった暮し方について書いてみたら、と人に言われたんです。
本を書くことは、始めはたんに個人的な楽しみのためのプロジェクトだったのですが、本を書き終えたら、自分にとって大事なものがよくわかりました。
そして、会社をやめようと思ったんです。
お金より時間が大切
キャリアを捨てることは、自分にとって大事なリソースを優先することでした。つまりお金より時間を優先したんです。
お金は人が作ったものです。でも時間は人には作れません。
お金は1日で使いきったり、そのあとそれを取り戻すこともできます。でも、いったん失った時間を取り戻すことができる人なんて誰もいません。
みんないつも「どれだけお金が残っているか」気にしてますが、「どれだけ時間が残っているか」なんて気にしないものです。
人はよく「ミニマリズムは質のよくない人生(poor quality of life)」だと言いますが、私はそうは思いません。
確かに私はベッドは持ってないけど、だからといって夜ぐっすり眠れないわけではないです。
私はHDテレビを持ってないけど、この(窓が)私の自慢の120インチのHDテレビです。毎朝日の出を見られるし、月に1度月の光も見えるし、冬は雪をいただいた山が、秋には鮮やかな紅葉、時には虹も見えるし、7月には緑の森に、パノラマサイズで花火が見えます。
これのどこが「質のよくない人生」と言えるでしょうか?
いつも、ここに住んで自然の美しさを眺められることはとても幸せだと思っています。
不動心を得たいと思っています
これがキッチンです。調理用具はこれです。トング、はさみ、スプーン、フォーク、ティースプーン、計量スプーン。
調理道具はこれです。ブレンダーと鍋とフライパン。フライパンはめったに使わないのですが、友だちが来た時は、よけいに作るから持ってます。鍋のフタがフライパンにもぴったり合うから便利です。
ミニマリズムに関するもう1つの誤解は、「ミニマリストはケチ」というものです。そうとも限りません。
私が買うフルーツや野菜はたいてい高いオーガニックです。
私のバッグはここに。旅行かばんに、トートバッグ。これは非常用バッグ。奥にあるのはランドリーバッグです。
たいていの人が持っているのに、私が持っていないものはたくさんあります。でも別にほしくないし、何かを犠牲にしているとも思いません。
ドレスシューズ、ローファー、スニーカーです。
なぜこんな暮しをしているのか?理由はたくさんあります。経済的な理由、精神的な(spiritual)理由、環境への配慮…。
もう1つ理由があって、それはいわゆる「予期しないできごとへのトレーニング」training for the unexpectedです。
「不動心」は日本語の言葉で武士道から来ています。意味は「動かない心」。つまり、静かで、どんな状況でも動揺しない心です。ストイックであればどんなものに対しても平穏な気持ちでいられるのです。
ギターの弦は切れてるし、キーも合ってませんが、演奏してみましょう。
人生でずっと続くことなんてありません。「保障」など何もないです。確かなのは「死」だけです。だからと言ってがっかりすることはなく、限りあるリソースを使うことばかり考えず、自分が何を追求するのか考えるべきです。
価値あるものは自分自身の中にある
私が内面を鍛えることを選んだのは、自分にそれが足りないと思ったから。モノはいっぱいありましたが。
それと、ふつうスキルや才能をものにするのは時間がかかるものですが、モノは、欲しければ店に行って、すぐに簡単に買えます。お金がない時ですらクレジットカードを使って。
だから私はモノより心のスキルや内面のほうがより価値があると思っているのです。
ある時占領されて焼け落ちた街がありました。みんな自分の持てるだけのモノを持って歩いてました。でもここに何も持たずに歩く人がいたんです。
人は聞きました。「あなたのモノはどこですか?」って。そしたら彼はこう言いました。Omnia Mea Mecum Porto と。これはラテン語です。意味は、「私の持っているものは私自身が運んでいる」です。
これがミニマリズムの頂点です。価値のあるものは私たち自身の中にあるのです。
私は音楽のレッスンは受けたことがありませんが、自分で作った曲です。
だから私は物質的なモノが足りないとは思ってません。私はスキルや人格に何か足りないものあると思うんです。
ですからできるだけ少ないモノを持って、自分のスキルや内面を鍛えているのです。そしたら私自身もいつか、Omnia Mea Mecum Portoと言えるでしょう。
幸せを第一に考えるべきだとは思いません。私たちにとって難しいのは、自分がこの地上でどんな役割を持っているのか知り、それを果たすことです。
アブラハム・マズローがうまいことを言ってます。「音楽家は音楽を作るべきで、画家は絵を描くべきで、詩人は詩を書くべきだ。もし完全に心の平安を得たいのなら」。
私はこの「平安」は充実感(sense of fulfillment)だと思います。そしてそれはすべてのものを超えているのです。幸せを含むすべてのものを。
・・・和訳ここまで・・・
Omnia Mea Mecum Porto = Omnia mecum porto mea
ラテン語から来た名言、ことわざ。ラテン語の正式な読み方はオムニア・メア・メークム・ポルト
祖国が占領されたとき、ギリシアの七賢人の1人ビアスは何も持たずに逃げました。彼は自分のすべての財産は自分で知恵であると思っていたから、というお話から。
直訳:自分のすべての物を自分が運んでいる
アブラハム・マズローの言葉
“A musician must make music, an artist must paint, a poet must write, if he is to be ultimately at peace with himself. What a man can be, he must be”
「音楽家は音楽を作るべきで、芸術家は絵を描くべきで、詩人は詩を書くべきです。もし自分が自分自身に完全に満足したいのなら。人は自分ができることをするべきなのです。」
これはアメリカの心理学者、マズローの欲求5段階説の1番上の自己実現欲求の説明です。
人間の欲望は5段階のピラミッドの形のようになっていて、下の欲求が満たされると次の欲求が生まれるという説。
下から、生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、承認欲求、最後が自己実現欲求です。
今の日本人の大部分は3と4のはざまにいるでしょうか?
自己実現欲求の上にもう1つ自己超越欲求というのもあり、ミニマリズムによって自己実現をほぼ果たしているピーターは今はこれを感じているかもしれませんね。
ピーターの書いた本、The Happy Minimalistは2008年の夏発売。日本ならキンドル版が入手しやすいです。
マズローの欲求5段階説を説明しています⇒強すぎる承認欲求(人にほめられたい気持ち)を手放す方法
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彼は内面を鍛えるために、モノをそぎ落として暮しているのですね。
モノを持たないのに、広い家に住んでいるのは、自然を楽しむためと、身体を鍛えるためなのでしょう。
あの机、前の人が置いていった古いアイロン台らしいです。余計なものにはお金を使わず、自分のしたいことにお金を使っています。
彼が言っているように、昔の人は物をそんなに持っていなかったけれど、私たちとは違った幸せや豊かさを感じていたと思います。
もちろんいろいろな制限もありましたが。
一口にミニマリストと言ってもいろんな人がいますが、すべてのミニマリストに共通なのは、「自分の本当にしたいことを追求する姿勢」ではないでしょうか?
物をいっぱい持っていると、物に生活を支配されてしまい、自分の本質とか、自分の気持ちについて考える時間や余裕がなくなるのです。