焼きたてのパン

ミニマム思考

最終更新日: 2018.01.18

道具が少ないほうがお菓子やパン作りは楽しめる

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昔、お菓子やパンを作るのが好きで、いろいろな道具を買い集めていました。しかしほとんど買っただけでろくに使いませんでした。

うまく収納しきれず、何年も台所や階下の戸棚の場所をふさいでいた道具や型は、結局すべて断捨離しました。

今回は、特殊な道具はなくてもお菓子やパン作りは楽しめる、むしろ道具など少ない方が、その本質を堪能できるという話をします。



お菓子作りのきっかけは夫にもらった本

私がお菓子作りを始めたのは、子供が生まれてからですから、今から、17年ぐらい前です。

20代の頃から、マドモアゼルいくこさんの本を見て、お菓子を作っていましたが、ぼちぼち作る程度でした。

マドモアゼルいくこさんの本のこと⇒マドモアゼルいくこの「秘密のケーキつくり」~断捨離せずに持ってるお菓子のレシピ

あるとき、スーパーで買ったマフィンを食べていたら、夫が「マフィンはすごく簡単に自分で作れるんだよ」と言って、若い頃から持っていたらしい、マフィンとクイックブレッドのコンパクトな本をくれました。

マフィンは今や日本でも有名なのでご存知だと思いますが、きのこがふくらんだような形をした焼き菓子です。

クイックブレッドは、ベーキング・パウダーや重曹でふくらませるパンや焼き菓子の総称。イーストを発酵させて生地をふくらませるパンより早くできるので、クイックブレッドといいます。マフィンはクイックブレッドの一種です。

夫にもらった本を見て適当にマフィンを作ってみたら、本当にすごく簡単にできました。マドモアゼルいくこさんの本にもコーンを入れて作る、セイボリータイプ(甘くない焼き菓子)のマフィンがあったので次にこれを作ってみました。これもなかなかいけました。

これがきっかけで、いろいろお菓子を焼くようになりました。

北米の台所にはたいてい大きなオーブンつきのコンロがあるので、お菓子が作りやすいです。しかもカナダは冬がきびしくまた長いので、台所でベーキングすると、部屋が暖まるため好都合です。

そんなこんなでお菓子作りに時間をさくようになり、お菓子の作り方が書いてある本を何冊か日本から取り寄せました。

栗原はるみさんの本を見てフードプロセッサーを買った

最初はお菓子ばかり焼いていたのですが、パンを焼いたほうが食事になるし経済的なので、そのうちパンを焼いてみたいと思うようになりました。

パンを焼いたことはそれまで1度もありませんでした。

私の母は私が子供のころ、お向かいに住んでいた奥さんとどこかにパンやお菓子の作り方を習いに行っていました。家でもロールパンとロッククッキーを作ってくれました。

ロールパンの上に刷毛でとき卵を塗っていた母のふっくらした手元をよく覚えています。

「パン焼いてみたいけど、難しいよね?」と電話で母に話したら、「パンは作ってみると意外に簡単だよ。私の本あげようか?」と母が言いました。

母はお菓子とパンのレシピがのっている小さな本をたった1冊だけ持っています。パン教室に行っていたころ買ったものだと思います。その本はまだ実家にあるはずです。

母が買ったお菓子とパンのレシピ本はこの本だけ。たった1冊です。やはり子供のころ、母がプリン(ハウス食品の冷やしてつくるプリン)をよく作ってくれましたが、プリン用の容器ではなく、湯のみ茶碗に入ってました。

たった1冊のレシピ本に、湯のみ茶碗で作るプリン。

その後、物を増やしてしまった母と、とても同一人物とは思えません。

昔の母のやり方には、ミニマリストになった今、なんて素晴らしいことだと畏敬の念を持っています。残念ながら私自身は、レシピ本をどんどん増やしてしまいました。

母の本は古いので、申し出は断り、自分で本を買うことにしました。

1990年代は、日本では料理研究家の栗原はるみさんが大変人気があったようで、図書館流通センター(今のhonto)でお菓子の本を見ていたら、彼女の本がたくさん出てきました。

そこで、「パンとおやつのレシピ」というのを買ってみました。

私のパン作りはこの本から始まりました。

1番最初にのっていたパンを焼いてみました。レーズンやくるみを入れる生地だったと思います。栗原さんが高校生ぐらいの息子さんと一緒に作っている写真がのっていました。

息子さんは生地をこねていました。

そのレシピの最後に、「クイジナートというメーカーのフードプロセッサーがあれば、生地をこねるのは2分半で終わります」と書かれていました。

「なんと、たった2分半とは?」

そのパン生地はかなりゆるかったので、両手をベトベトにしながら、えっこらさと生地をこねていた私は、「これは、このクイジナートとやらを買わねばなるまい」と思いました。

そして、数日後、私にはすごく高い買い物でしたが、大枚はたいてフードプロセッサーを買いました。これが私が自分で買った最初にして最後のフードプロセッサーです。

もう断捨離しましたが⇒捨てても大丈夫だった6つのもの(写真つき)~キッチンの断捨離編

栗原さんの本とフードプロセッサーが私のお菓子作りの本と道具の集め始めでした。その後、お菓子作りの本を見て、あったら便利そうな道具や、かわいい型を貧乏人の財力が及ぶ範囲で買いました。





加藤千恵さんの本を見てタッパーウエアにあこがれた

しばらくして、加藤千恵さんという洋菓子研究家の、「フードプロセッサーでパン&デザート革命」という本を買いました。

栗原はるみさんに教えてもらったクイジナートのフードプロセッサーは本当にとても便利で、これを使って生地をつくり、どんどんパンを焼いていました。

「せっかくだからもっとフードプロセッサーを活用したい」そう思って購入したのが加藤さんの本です。

加藤さんのレシピは、生地はフードプロセッサーが作るから簡単なものの、それ以外の工程や副材料が、栗原さんのレシピに比べて複雑でした。

ズボラな私には手間がかかりすぎたので、あまり作らなかったのですが、本はとてもきれいでよく眺めていました。

「お菓子作りには実にさまざまな道具があります」と巻末に便利そうなものがいっぱいのっていました。

その中で、加藤さんが、パン生地を発酵させるのに使っていた大きなタッパーに目が行きました。プラスチックの巨大な軽量カップみたいな形。側面にメモリがついているので、生地の容量が2倍になったかどうかよくわかります。

これはパン生地を発酵させる専用の容器らしく、油などぬらずそのまま生地をぼんと入れて蓋をするだけでいいのです。

私は生地をフードプロセッサーでこねたら、取り出して、油をぬったボールに入れて、上からスーパーのレジ袋をかぶせて発酵させていました。

このやり方がシンプルで好きだったのですが、加藤さんの本を見た時、このタッパーがあったらどんなにか便利であろうかと妄想しました。

その妄想は数日間続きましたが、結局買うとろこまで行きませんでした。お金がなかったからです。タッパーは買いませんでしたが、同じ本にのっていたタルト型などを楽天市場で買ってしまいました。

しかし結局使いませんでした。

それから15年ぐらい、私はせっせとパンを焼き、お菓子を作っていました。きれいなお菓子作りの本を見て、あったら便利そうな道具や、かわいい型を貧乏人の財力が及ぶ範囲で買い続けました。

6年前に、フライレディの指示に従って、物を捨て始めたときも、お菓子作りの道具は処分していませんでした。

私が、お菓子作り本や型をほとんどすべて捨てたのは、一昨年(2014年)です。

堀井和子さんの言葉で原点に戻る

その数年前に、イラストレーターの大橋歩さんが作っていた「Arne (アルネ)」という雑誌で、堀井和子さんが床にしゃがみこんで、パンを手ごねをしている写真を見ました。
堀井和子のパン作り
堀井さんが「うちのパン」と呼んでいるそのパンは、卵もバターも入れないシンプルなパンです。もう16年ぐらいずっと同じレシピで週に2度ぐらい作っていると、記事にありました。

堀井さんは「いろんな種類の生地をつくっていると比較ができないんですが、1つのことをずっとやっていると、いろいろなことがわかりますね」とおっしゃっておられました。

これは先日紹介した門間みかさんと同様の発言です。
門間みかさんの言葉はこちら⇒貧乏主婦のお金をかけない楽しみ(前半)~ミニマリストへの道(46)

これを読み、当時、すでにかなりミニマリストよりになっていた私は、「やっぱりそうだよね。別に手とボールがあればパンなんてこねられる」そう思いました。

道具が少ないほうが洗うのも楽です。そもそもフードプロセッサーだと、パネトーネのような柔らかい生地はカッターの下に入り込んでうまくこねられないのです。

この記事を読んでから、パンは手ごねするようになりました。

そして、たくさん集めた型も基本の型を残して全部捨てました。どのみちよく使うのは、パウンド型、スクエア型、丸型、マフィン型ぐらいです。

どんどん断捨離しながら、使いもしない型や道具を集めた自分の頭のネジのゆるさ加減にあきれました。全く、どこがシンプルライフだったというのでしょうか?

砂糖を摂るのは控えているし、娘も大きくなったので今はめったにお菓子やパンを作りません。

たまに作るときは自分の手とボールとシンプルな基本の型だけを使っています。

結局原点に戻ったのです。途中あんなに本や型を増やして本当に無駄なことをしたと思っています。

別にたくさんのレシピや道具や型を集めなくても、お菓子やパンを作ることは充分楽しめます。門間さんや堀井さんが言うように、むしろレシピや道具が少ないほうが、いろいろなことがわかっておもしろいのです。





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