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最終更新日: 2021.12.26

時間管理の哲学~より有意義な人生にするために(TED)

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今年最後のTEDトークは、時間に関するものを選びました。

タイトルは、The Philosophy of Time Management(時間管理の哲学)。

タイムマネジメントのリサーチャー、Brad Aeon(ブラッド・イーオン)さんのプレゼンです。

時間は命そのものだから、時間管理のコツやテクニックを追い求めるのではなく、いかに時間を使うか、自分で考えるべきだ、という内容です。



時間管理の哲学:TEDの説明

You are going to die eventually. Will you fill whatever lifetime you have left with so-called time management techniques and shortcuts? Or will you see time management as a way to infuse your life with meaning and purpose?

あなたは、いずれは死にます。

人生の残り時間をいわゆる時間管理のテクニックや時短術で埋めますか?

それとも、時間管理を、人生に意味や目的を吹き込むものだと考えますか?

収録は2017年の9月、長さは12分。自動生成される英語の字幕があります。

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

シンプルですが、味わい深いプレゼンです。





子供のときからの疑問

6歳のとき、私が一番恐れていたのは退屈することでした。

毎日To-doリストを作って、常にやることを用意していました。

ある日、ウミガメのドキュメンタリーを見ました。

ウミガメは150歳まで生きられるというのです。6歳だった私は、自分はそんなには生きられないだろう、死んでしまうだろうと思いました。

それは、不思議な実感でした。

何をやっても、最後には死んでしまうと思うと不思議な気がしませんか?

母のところに走って行って、聞きました。

「みんないつかは死ぬって本当? ママも僕もパパも友達も?」

「そうよ。みんな死ぬのよ。どんなにあがいてもね」。

私は怖くなり泣き出しました。死は存在の終わりで、すべての終わりだからです。

いつか死んでしまうなら、生きるのに意味があるのか、と思いました。

さらに母に聞きました。

「じゃあなぜみんな働くの? どうせ死ぬのに、パパも、みんなも、どうして働かなきゃならないの?」

この質問に、母は答えてくれませんでしたが、ずっと私の心の中に残りました。

それから、さまざまなことを自問しました。それは皆さんも同じだと思います。

それが、哲学というものです。

哲学が時間管理のルーツ

哲学は、問いかけることです。時間の使い方について、質問することほど重要なことはないでしょう。

というのも、時間は、私たちがもっているもののすべてだからです。

したがって、時間管理について考えることは、とても哲学的なことです。

時間管理のコンセプトは、哲学から始まりました。

古代の哲学者たちは、重要な質問にこだわっていました。

人生を有意義なものにするために、どう時間を使えばいいのか?

しかし、現代の時間管理には、哲学は皆無です。

時間管理の本は、コンサルタントによって書かれています。哲学者ではなく。

より多くのことをやるため、速く、効率的にこなすため、生産的になるため、うまく仕事をするためのコツやヒント、テクニックが紹介されています。

時間管理は哲学から遠ざかってしまいましたが、意味のある人生を生きたいと思うなら、もう一度、時間管理と哲学を融合させる必要があります。

時は金なり、ではない

哲学は質問から始まります。

ここにシンプルな質問があります。

なぜ、時間を管理する必要があるのか?

ある人たちは、こう答えるでしょう。

時間が貴重だから。時間はとても大事だから、管理しなければならないのだ、と。

ですが、時間は、実際にどんなふうに貴重なのでしょうか?

時間管理のリサーチャーだと自己紹介をするたびに、人々は私に言います。

「ああ、時間管理ですか。それはとても大事ですよね。時は金なり(Time is money)ですから」。

時は金なり。

「時は金なり」と聞くたびに、昔、知り合いとコーヒーを飲みながらした会話を思い出します。

彼は、請負業者でした。

私と話をしているとき、彼は、少しいらいらしている様子でしたから、私は、「ジェフ、どうしたんだい? すべてうまくいってるかい?」と聞きました。

すると彼はこう言ったのです。

「時間を無駄にするのが嫌いなんだ。すごく腹がたつ。僕は1時間に160ドル(1万8千円ぐらい)稼ぐから、きみと1時間一緒にいれば、160ドル損することになるんだ」。

これを聞いて、私は、少々、気分を害しました。

しかし、本当にショックを受けたのは、次に彼が言った言葉です。

「子供と一緒にいると、腹が立つんだよ。確かに、子供と時間を過ごしてはいるが、子供と1時間過ごすごとに、160ドル稼ぎ損ねているわけだからね」。

この話は単なる逸話ではなく、どこででも見られることです。

時間はそんなに安っぽいものではない

実験によると、人が、時間をお金と考え始めると、より心がかき乱され、幸福度が下がります。

いつも急ぐようになるし、欲張りになります。

人を助けようとせず、ボランティアや環境のことを考えなくなります。1時間に160ドル稼ぐこと以外は重要でなくなるのです。

お金は、時間の本当の価値なのでしょうか?

ローマの哲学者のセネカは、「時間をお金だと考えるのは、実は時間をとても安く評価することになる」と言っています。

時間を安く評価してしまうのは、時間がたっぷりあり、永遠に生きられると思っているからです。

しかし、私たちはいずれは死にます。

これに気づいたら、いずれ死ぬことが、ちゃんとわかっていたら、時給160ドルはもう意味がありません。時間はお金ではなくなるのです。

死について考えるのは楽しくないと言う人もいるでしょう。そうかもしれません。しかし、とても役立ちます。

なぜ生き続けるのか?

フランスの哲学者、アルベール・カミュは、「哲学における最も根本的な問題は、なぜ私が、今、自殺しないのかということだ」と言いました。

これは本当です。なぜ、みなさんは、今、この瞬間に自分を殺さないのか?

この質問の答えが、生きている本当の理由を思い出させてくれるでしょう。

この質問の答えこそが、時間の本当の価値を教えてくれます。

死ぬとわかっているとき、時間はもうお金ではないのですから。

哲学が時間管理に役立つのは、この点においてです。

時間について、意味のある問いかけをすることを哲学が助けてくれます。

時間を管理できるか?

もう1つ一見、シンプルな質問があります。

時間を管理することができるのか?

大学時代、「時間は管理できない」という教授がいました。

「タイムマネジメントなんて戯言よ。やるべきことが多すぎるし、仕事や義務がありすぎるから、時間なんて管理できないのよ」と言うのです。

この教授は、「忙しすぎて時間がないから、娘に会うことができない」と公然と自慢していました。

たくさんの仕事をして、とても生産的だったこの人は、皆に称賛されていました。

しかし人々は、仕事上の義務が、彼女をうつ病にしたことを知りません。

教授は結婚を犠牲にし、もちろん、娘さんとしっかり関わり合うこともなかったのです。

一番残念に思うのは、教授がこんな生き方をしなければ、事態は違っていたかもしれないことです。

教授は、今も生きていて、娘さんの成長する姿を見られたかもしれません。

しかし、彼女は、時間を管理できることを信じていなかったので、試そうともしませんでした。

オフィスに立ち寄ると、彼女は、いつも、私にこう言いました。「ごめんなさいね。時間がないのよ」と。

でも、これは嘘でした。

時間がない、は嘘

「時間がない」は、人類の歴史における最大の嘘です。

本当に時間がなかったのは、私たちの曽祖父母です。

この人たちは、時間がありませんでした。

毎日12時間、働かなければなりませんでしたから。

仕事だけではありません。この時代、何をするにも時間がかかりました。

洗濯機がなかったから、すべて手洗いしました。冷凍食品がなかったから、いつも、一から料理していました。

昔は、こうしたことすべてに時間がかかりました。だから、曽祖父母は、時間がなかったのです。

しかし、ここで驚くべきことがあります。

曽祖父母は、「時間がない」とぐちをこぼすことはありませんでした。

私たちは、そうします。

これはパラドックスです。

私たちは、曽祖父母の世代の人たちより、時間があるのに、時間がないと文句を言っています。

なぜでしょう?

時間はあるが選択肢が増えた

選択肢が増え、時間の使い方を自分の好きなように、より自由に決められるからです。

現在の私たちの生活を考えてください。

アマゾンで、年中いつでも、買い物ができます。

女性は、卵子を冷凍保存して、妊娠を遅らせることができます。

フレックスタイム制を導入する会社がどんどん増えています。

Netflixで、好きな番組を、見たい時に見ることができます。

時間が増えただけでなく、時間の使い方を好きに決められる自由も増えたのです。

それなのに、「時間がない」と私たちは言います。

なぜでしょう?

時間がないと言い訳する理由

哲学者のジャン=ポール・サルトルは、「人は、自分を偽って、自由ではないと思いこむ傾向がある」と言いました。

自由に時間を使えることは、自分自身で時間の使い方を選択し、その選択の結果とともに、生きていくことだからです。

自分の時間をどう使うかは、自分の責任なのです。

そして、それが怖いところです。

間違った選択をしてしまったら? 大事なことを逃してしまったら? という恐怖を感じます。

いつも、こんなふうに恐れています。

もっと子供と時間を過ごしていたら、 もっと勉強をするのに時間を使っていたら、もっとパーティをしていたら、人生はもっとよくなっていたかもしれない。

選択の失敗を知りたくないから、いつも、「時間がない」と言い訳をしているのでしょう。

時間がなければ、その使い方を自分で決めなくてすむので、安心です。

しかし実際は、私たちには時間はあるし、その時間を管理できるのです。

ただ、無限に時間があるわけではないから、犠牲を払う必要があります。

すべてを手に入れることはできません。

犠牲を払うか、言い訳するか

時間に関しては、犠牲を払うか、言い訳をするかのどちらかです。

しかし、この2つのうちの、1つだけが、有意義な人生をもたらします。

私たちは、かつてないほど柔軟な時代に生きています。仕事を減らし、自分の時間に、より有意義なことができる環境にあります。

なぜ、そうしないのでしょうか?

ここで言う「私たち」は、全員のことです。あなたや私、この街に住むすべての人々。

というのも、時間管理は、自分だけの問題ではなく、私たち全員に関係があるのです。時間の使い方は、社会全体に影響を与えます。

投票に行かない人は、こう言います。

時間がなかった。

本を読まない人は、こう言います。

読んでいる時間がない。

なぜ、みなリラックスして、美術館へ行ったり、ボランティアをしに行かないのか?

時間がないから。

しかし、本当はそうではありません。

時間は命そのもの

時間管理について考えてみたり、哲学者のように、正しい問いかけをしてみてはどうでしょう?

コツや近道を追い求めるのではなく。

その時、どんな質問をするべきでしょうか?

週末に、上司に呼び出されるのを許すのは理にかなったことか?

そんなことをする価値があるのか?

自分の時間を使う価値があるのか?

ここで言う時間は、お金ではなく人生です。

あなたは、上司に、商品を提供しているのではなく、時間を提供しています。

自分の命を提供しています。

これ以上大事なことは、私は知りません。

今度、友人に、「一緒に遊ぶ時間がない」と言うとき、自分に問いかけてください。

友達と過ごすことよりもっと大事なことが本当にあるのか、それとも、ただ、言い訳をしているだけなのか?

欧米社会では、孤独を感じている人がどんどん増えています。

孤独になる理由の1つは、「ほかの人と、一緒に過ごす時間がないから」と感じていることです。

しかし、時間はあります。

だから、できれば、その時間を大切な人たちと分かち合ってほしいのです。

時間を有意義に使いたいなら、哲学を大事にしてください。

そして、決して問いかけることをやめないでください。

//// 抄訳ここまで ////

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文明の進化によって、家事や労働に費やす時間をずいぶん短縮することができた私たちは、自分で時間の使い方を決められます。

しかし、時間の使い方を自分で決めると、その結果を引き受けなければならないので、私たちは、時間がないふりをして、忙しがりながら生きています。

やらなくてもいいことをたくさんやって、わざと忙しくしているところもあるかもしれません。

自分のためでなく、人にすごいと言ってもらうために、時間を使っている人もいるでしょう。

しなくてもいい心配をするのに、時間を使っている人もいます。

しかし、このような時間の使い方をしていると、有意義な人生を送ることができません。

なぜなら、時間は命そのものだから。

「どんなふうに時間を使っていきたいのか。常に、問いかけながら生きていこう」。

こうイーオンさんは言っています。

今年1年、満足できる時間の使い方ができたか、来年はどんなふうに時間を使っていきたいか?

年末年始の休みに、じっくり考えたいですね。





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