マグネットのコレクション

TEDの動画

集めた物の中で、本当に大切なものはどこにあるのか?(TED)

たくさんある思い出の品を持て余している人の参考になるTEDトークを紹介します。

タイトルは、In all we collect, where do we spot the really important things? (私たちが集めたすべての物の中で、本当に大切なものはどこにあるのか?)

技術関係の仕事に携わってきたBob Stein(ボブ・スタイン)さんのプレゼンです。

スタインさんは、69年の人生で手に入れた物すべてに歴史的価値を感じて、捨てずに箱にしまっており、その箱の数は200~300にのぼります。

でも、あるとき、彼は、「箱に入れっぱなしではまずい」と気づきました。



本当に大切なもの

収録は2015年、動画の長さは12分。字幕はありません。動画のあとに抄訳を書きます。

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

彼が箱にしまっていた物は、人に見せる価値がある物が多いですね。

友人が残した大量のスライド

1年前、とても親しい友人のエンリコが亡くなりました。

彼は成功したプロのカメラマンで、ナショナルジオグラフィックにたくさん写真を寄稿していました。

エンリコの葬式の数日後、彼の妻が私の妻にこう言いました。

「どうしよう。エンリコの残したスライドが100万枚あるけど、私、どうしていいのかわからないわ」

妻は、パニックになって帰宅しました。私が、物を入れた箱を50箱、家に置いていることや、べつのところに、少なくとも250箱はあることを知っていたからです。

「ボブ、もしあなたが明日死んだら、私、どうしたらいいのかしら? 箱の中身はさっぱりわからないし」

翌日、自分の箱のことを考えて不安になりました。

妻と子供の1人が、私の箱のそばに立って、物を1つ取り出し、「いったい、どうしてボブはこんなもの残しておいたのかしら?」と言い、私の指示がないので、そのまま捨てるか、あるいは、価値を感じたものはeBayに出す。

突然、こんな光景が思い浮かんだのです。

家族がどちらの行動を取るにしても、私は自分の愛する人たちに、ものすごい重荷を背負わせることになると思いました。

イベントを思いつく

数日後、夜、ベッドの中で冷や汗をかきながら目覚めました。悪夢を見たんです。

自分の集めた箱がどこかの地下室で、朽ち果てていく夢です。それは、市民ケーンの「バラのつぼみ」という言葉が意味していたそりのようなものです。

その品物の価値を知る人がいないから、燃やしてしまうもの。もちろん、燃やしてしまったあとも、誰もその価値に気づきません。

夢から覚めてしばらくして、あるアイデアを思いつきました。2ヶ月間、美術館かギャラリーでするイベントのアイデアです。

そのイベントの話をするまえに、箱の中にどんなものが入っているのか、いくつか紹介しますね。

私の箱の中身

これは棚の写真です。ガジェットや絵、雑貨などいろいろな物がのっていますがこういう物が入っています。

80年代はじめのガジェットがたくさんあります。

これは私が子供のとき読んだ、ものすごくありふれた、イデオロギー的にも問題のある本たちです。

これは1976年に中国で撮った写真です。文化革命真っ只中の上海で撮りました。

これは80年代はじめのChraiterion(クライテリオン)の最初のロゴで、おもしろい歴史を語っています。

昔、30年ほど毎年日本に行って、子供のために、ロボットのおもちゃを買いましたが、そのコレクションも入っています。

これは60年代~70年代の政治的なポスター。これは私のレコードコレクション。

美術館でするイベント

私が思いついたイベントはこうです。

美術館を、リビングルームみたいなインテリアにして、テーブル、ソファー、書棚を置きます。それから、私の箱を1つずつ開けて、中身を取り出し、自分や訪れた人にとっておもしろそうな物があったら、適当な場所に置くんです。

本は本棚へ、絵は壁にかけます。

ここを訪れた人は、それぞれの物を見て手に取ったり、箱の中を自分であさったりします。

1番の肝は、私が来場者のそばに行き、その人が手にしている物について話をすることです。相手にも話に加わってもらいます。

この会話が、このイベントのコアになる要素です。

物について語る

そこにある物について語りたいんです。語れば、その物に対する理解が深まります。

友人の死が、このイベントのアイデアを思いついた直接のきっかけではありません。心の奥底で、ずっとこのアイデアを温めていました。

人類は、今、かいで漕がずに、川を上っているような気がします。複雑な変化の時期にいます。

人類は最初からずっと変化の時代を生きてきましたが、現代は特に難しい時代だと思います。

生きる価値のある未来に行くには、どうやってここまで来たかを深く理解する必要があると思うんです。そして、私たちがこれからどこへ行きたいのか知らなければなりません。

これを実験だと思ってください。箱を開けて、中身を公開することから、どんな社会的な価値を得られるでしょうか?

人々と、その物が表している、歴史的、文化的理解を深めることから、どんな価値を得られるでしょう?

記憶や歴史は発展する

記憶や歴史は、決定的なものではありません。

事実をクラウドに保存することはできるし、写真を箱に入れることもできます。

でも、それが表すものや意味は、常に処理され続けます。

だから世代が変わるたびに、アブラハム・リンカーンの新しい伝記が出るし、映画もリメイクされ続けます。

どの世代も、過去のできごとを、それ以後起きたことを考慮しながら、理解しなければならないのです。

私たちの理解は、時と共に変わっていきます。

こういう処理は、グループでやるのが1番いいと思います。

ウィキペディアのいいところ

私はウィキペディアの大ファンです。ウィキペディアの記事は、表に現れているものです。

でも、ウィキペディアの記事の1番おもしろい部分は、その歴史(記事が書かれるプロセス)にあります。

それぞれのできごとについて、人々があーでもない、こーでもないと討論するところ。そこに真実があります。

というのも、真実は、社会的に構築されるものだから。

だから、大きな、そして重要な疑問について、関わる人が多ければ多いほど、そのできごとに対する理解は、よりよく、深くなります。

たとえば、この中国で撮った写真について、きのう、ある人とずいぶん話し込んだんです。

詳細は省きますが、話の最後には、お互いに、違う形ではありますが、この写真が表しているものをより理解できました。

人と物との関係の変化

私には、もっと、みんなが話し合ってほしいと思う話題が1つあります。それは、私たちと物との関係の変化です。

デジタル時代が進んだらどうなるか。

私が子供のとき、テレビは、大きな四角い物体で、リビングルームにありました。

でも、私はもう30年以上、テレビは所有していません。

今やテレビは、コンテンツのカテゴリーに入ります。

若い頃、レコードの収集を始めましたが、それはまぎれもなく物体でした。私は、レコードを手に取ることが好きでした。

カウチに横になって、レコードを持って、ライナーノーツを読み、ジャケットの写真を眺めました。

私の子どもたちは、CDを買って、すぐにリップして(音声をデジタル化して)、CDは捨ててしまいます。

私の孫たちは、音楽をヴァーチャルな無限のジュークボックスから手に入れています。メディアに関して言えば、孫たちは、物とのつながりはありません。

私たちと物との関係はどんなふうになっていくのか?

物は物理的にそこにあるものです。私たちの体のように。人の体の役割は変わっていくでしょうか? この先、私たちは体を必要とするでしょうか? 

こういう問いは、とても大きな質問で、私たちが答えていかなければならないものです。

今、話し始めなければ、私たちが求めている場所に行き着かないと思います。

中身を取り出し人生を振り返る

箱を開けて、そこに詰まっている人生を振り返ることが、会話のいとぐちになります。

箱の中身を他の人が拾い上げることが、そのうち儀式になるかもしれません。

美術館や図書館で、いつも、似たようなイベントが行われるようになるかもしれません。各々が自分の箱を開けて、人生を振り返ります。

でも、箱の中に物を固定化してほしくはありません。

重要なのは、大事なことについて、お互いに話し合うことです。

話し合いが理解を深める

箱にこだわる必要はありません。クリエイティブになりましょう。ふだんの生活で、毎日、きょう、大事な会話をしたかな、と考えてください。

食事のとき何を話したかな、とか。

私はニューヨークに住んでいますが、地下鉄で、隣の人とシリアスな会話をするのが好きなんです。とても素晴らしい体験です。

私たちは、大事なことについて、十分、話し合っていません。

私が開催したイベントは、私がやりたかったことですが、皆さんも、大事なことを語る方法を考えてみてください。

////抄訳ここまで////

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思い出の品を活用する

もしあなたが、記念品や思い出の品に対して、人一倍、思い入れがあるなら、スタインさんのように、それぞれの品が想起させることについて、周囲の人と話し合うといいかもしれません。

何かを思い出したいから、思い出の品を持っているんですよね? 思い出すのを先延ばしにせず、今日やってしまえばいいと思います。

他の人と話し合うことで、その思い出の価値はさらに高まるでしょう。

箱の中に思い出の品を入れっぱなしにしておいても、思い出す機会がないから、持っている意味がありません。

どんなに長い間持ち続けても、自分が死んだら誰かが捨てるだけです。

私の夫は、古い物(40年以上前にとったノートや、若い頃のサングラスや帽子のコレクションとか)をたくさん持っていますが、ただ持っているだけで、それらが夫の今の生活にプラスになっているようには全く見えません。

もしかしたら夫は、無意識に、「あれはあそこにあるから安心」と思っているのかもしれませんが。

思い出の品は、そのままでは、今の生活には関係のない物です。しかし、取り出して、実際に使ったり、それについて語ったりすることで、今の生活に関わりを持たせることができます。

ただ箱に入れっぱなしにしておくより、今の自分に関わりのあるものにしたほうが、持っている甲斐があるでしょう。

時間、スペース、労力、手間など、たくさんのリソースを使って、思い出の品をキープしているのですから。





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