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断捨離する一方で、どんどん物を買い、また断捨離をして、また捨てる、という負のサイクルから抜け出したい人に見てほしいTEDの動画を紹介します。
プレゼンのタイトルは、What I Discovered In New York City Trash (私がニューヨーク市のゴミの中で見つけたもの)。プレゼンターは人類学者のロビン・ネーグル(Robin Nagle)さんです。
ロビンさんは、特にゴミを研究対象にしており、自ら、NY市のゴミの収集を行い、誰が自分のゴミを片付けているのか調べました。
ニューヨーク市のゴミの中で見つけたもの:TEDの説明
New York City residents produce 11,000 tons of garbage every day. Every day!
This astonishing statistic is just one of the reasons Robin Nagle started a research project with the city’s Department of Sanitation.
She walked the routes, operated mechanical brooms, even drove a garbage truck herself–all so she could answer a simple-sounding but complicated question: who cleans up after us?
ニューヨーク市民は毎日11000トンのゴミを出しています。毎日です!
この驚くべき数字は、ロビン・ネーグルがNY市の公衆衛生局でのプロジェクトを始めた理由の1つにすぎません。
彼女は収集ルートを歩き、掃除機を使い、ゴミ収集車の運転までしました。すべては、ごく簡単に聞こえるけれど、複雑な質問に答えるためです。
その質問とは、「誰が私たちのゴミを片付けているのか?」です。
プレゼンは7分50秒です。収録は2013年。日本語字幕あり。英語字幕や字幕なしにしたい人はプレイヤーで調節できます。動画のあとに抄訳を書きますね。
☆トランスクリプトはこちらから⇒Robin Nagle: What I discovered in New York City trash | TED Talk | TED.com
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
子供のころキャンプ場でいだいた疑問
10歳のころ、父とニューヨーク州北部の自然がいっぱいの場所、アディロンダック山地にキャンプに行きました。
とても天気のよい日で、森は輝いていました。木々の葉は太陽の光でステンドグラスのようにきらめき、まるで未踏の地に足を踏み込むかのようでした。
キャンプ場につき、断崖の上にある小屋にもたれて、美しい湖を見ていたとき、恐ろしいものを発見しました。
小屋の裏がゴミ捨て場になっていたのです。40フィートスクエア(約12平方メートル)ほどの場所に、くさったりんごの芯や、丸められたアルミホイル、こわれたスニーカーなどが捨ててありました。
驚くとともに怒りを感じました。「自分の出したゴミを持ち帰らない怠慢なキャンパーのゴミを片付けるのはいったい誰なのだろう?」こんな疑問が生まれたのです。
誰が私たちのゴミを片付けているのか知りたい
長年この疑問を持ち続けるうちに、もっとシンプルな問いになりました。
「誰が私たちのゴミを掃除するのか?(Who cleans up after us?)」
場所はどこでもかまいません。イスタンブールでもリオでもパリ、ロンドンでも、いったい誰がゴミを片付けているのか?
ここ、ニューヨークでは、公衆衛生局(Department of Sanitation)が、ゴミを片付けています。毎日11000トンのゴミと、2000トンのリサイクル用のゴミを。
誰が収集しているのか、もっと詳しく知りたいと思いました。
どんな人たちがユニフォームを着て、この大変な仕事をしてくれているのだろうか、と。
そこで、ゴミ収集作業員たちとあるリサーチプロジェクトをすることにしました。私はトラックに乗せてもらい、回収経路を通り、NY市のゴミを片付けてる仕事をしている人たちにインタビューをしたのです。
そこで、たくさんのことを学びましたが、私はあくまで部外者でした。
もっと深く知りたいと思った私は、公衆衛生局の仕事を自分でやってみることにしました。
単にトラックに乗せてもらうのではありません。自分でトラックを運転し、専用の掃除機を使って掃除をし、雪かきもしました。
これは私にとって、すばらしいできごとであり、深い学びも得られました。
ごみ収集を自分でやってみてわかったこと
みな、ゴミの匂いについて聞きます。確かに匂いますが、人が想像するほどひどくはありません。それにすぐに慣れるのです。
慣れないのは重さです。この仕事について何年もたつのに、毎日たくさんのゴミを持ち上げる、その重さに慣れない人がいます。
危険もあります。
ある統計によれば、ゴミ収集作業員は、この国のもっとも危険な仕事10のうちの1つです。
1日中、とても交通の激しい場所を出入りする仕事です。前を見ていないバイカーと行き交うときは特に危険です。
また、ゴミそのものに危険物が混ざっていて、トラックの後ろに飛び出し、ひどい事故になることがあります。
それに、ゴミ収集はキリがないのです。舗道を見ると、ゴミは自然に湧き出てくるかのように思えます。途絶えることがありません。
さらに、作業員は悪いレッテルを貼られてしまいます。ユニフォームを着たとたん、その存在が消えます。誰かを怒らせるまでは。
人が怒る理由はさまざま。トラックが車の行く手をふさいだとか、自分の家のすごく近くで休憩したとか、近所のダイナーでコーヒーを飲んだとか。
自分のそばに来てほしくないのです。
ゴミ収集は重要な仕事
人が、作業員を毛嫌いするのは、とても皮肉なことです。
ゴミ収集作業員は、ニューヨーク市にとって、もっとも重要な仕事をしているのですから。
彼らは、公衆衛生を保つために、欠かせない人たちです。毎日ゴミを持っていってくれなかったら、ゴミがあふれて病気になってしまいます。
経済的にも彼らは必要な存在です。もし私たちが古い物を捨てなかったら、新しい物を入れる場所がないのですから。ゴミの収集がなかったら、経済も止まってしまいます。
私は資本主義を擁護しているのではなく、ごみ処理と経済の関係を話しています。
そして日々の生活のスピードもゴミ収集に関係していますね。みな、物を修理せず、きれいにもせず、マイマグやマイボトル、エコバッグを持ち歩かず、使い捨てています。
使ったら捨てて、すぐに忘れます。その一方でそれを拾って片付けてくれる人がいるのです。
そこで、きょうは、ゴミ収集に関する考え方をいくつか提案したいと思います。こうすることで、作業員への侮蔑も減るでしょうし、ニューヨーク市をより持続可能で人間的な街にできるんじゃないでしょうか?
作業員がいるから暮らしが成り立つ
ゴミ収集の仕事は、儀式に通じるものだと思います。毎日決まった時間に街に出ます。たいていの市では作業員はユニフォームを着ています。
決まった日に、彼らが仕事をしてくれるから、私たちは自分の仕事をすることができます。作業員は、安心感のよりどころと言えるでしょう。
日々、彼らが毎日行っている仕事の流れが、私たちの暮しの安全を守ってくれているのです。
その流れは何があっても止まるべきではありません。
2001年の9月11日の翌日、私はゴミ収集トラックの音を聞きました。まだ小さかった息子を抱いて、1階に降りて見てみると、毎週水曜にリサイクル用の紙を回収する男性がいつもどおり紙を集めていました。
こんな日にも仕事をしている彼に、私はお礼を言おうとしましたが、泣き出してしまいました。
彼は私を見てうなずくと、「大丈夫ですよ(We’re going to be okay)、大丈夫」と言いました。
私がゴミ収集のリサーチを始めたのは、この日からしばらくたってからです。この男性にも会いました。
彼の名前はポーリーと言います。私たちは何度も一緒に仕事をし、とてもよい友人になりました。
私はポーリーが正しいと信じたい。私たちは大丈夫だと。
しかし、人間が種(しゅ)として、地球上でどんなふうに暮らすのか考え直すとき、私たちは、あらゆるコストを考えに入れるべきです。人間の労働というコストを含めて。
ゴミを片付けている人の意見を聞けば、どうやったらもっと持続可能なシステムを実現できるのか、そういうシステムについてどんなふうに考えるべきなのか、より情報を得られるでしょう。
道端にリサイクル用のゴミを出す試みは、過去40年ですばらしい成果を収めてきました。アメリカだけでなく世界中で。ここから、産業廃棄物を減らす取り組みに対しても、新たな試みが生まれるかもしれません。
私たちがゴミと聞いたときに思い浮かべるのは、家庭のゴミ(municipal waste)ですが、これはゴミ全体のほんの3パーセントにすぎません。
もし、あなたのゴミを片付けている人に出会ったら、時間をとって、彼らの存在を認めてください。「ありがとう」と言ってください。
//// 抄訳ここまで ////
補足:単語の意味など
zoom around 急に動く、急いでかけつける、スピードをあげる
stigma 汚名、不名誉
liturgical 儀式にかかわる
2001年の9月11日 アメリカ同時多発テロ事件のあった日。火曜日でした。
municipal waste 一般廃棄物、いわゆる住宅から出るゴミ ☆municipal は、「地方自治の」という意味。
ゴミに関係のある過去記事の一部
ベア・ジョンソンに学ぶゼロ・ウェイスト・ホームを作る5つのルール(TED)
なぜ私はゼロ・ウェイストな暮らしをしているのか:ローレン・シンガー(TED)
ゼロ・ウェイスト(ごみゼロ)なクリスマスの過ごし方、3つの提案
食品ロス(捨ててしまう食べ物)を減らすためにできること(TED)
ニューヨーク市のゴミはどこに行く?
ニューヨーク市のゴミがどんなふうに回収され、処理されるのかをリポートしたニューヨーク・タイムズの動画です。長さは、8分ほど。
ロビン・ネーグルさんも、インタビューに答えています。1分14秒あたりに登場。
捨てるゴミを近隣の場所まで輸送するのに、大きなコストがかかっています。
日本は事情が違うと思いますが、ゴミの量は多いのは同じですね。
アメリカが使い捨て社会だとしたら、日本は過剰包装社会です。いつ、いかなる時も過剰包装します。日本は物を入れるためだけの物(つまり入れ物)がとても多いです。たとえば、袋とか⇒なぜ日本人はこんなにバッグ、袋、ケースをたくさん持っているの?
過剰包装文化があるから、バッグやケースなど物を入れる物、包む物がやたらとあるのかもしれません。
いったん捨ててゴミを出さない暮らしにシフトする
断捨離嫌いな人がダンシャリアンを批判するときよく言うのは、「ゴミを出すから地球にやさしくない」「まだ使えるものを捨てるなんてもったいない」です。
確かに捨てればゴミが出ますが、使わずに家で死蔵しておくのは、ゴミにするタイミングを遅くしているだけの話です。イヤなことを後回しにしているのです。
不用品を捨てることは痛みを伴うので、大々的に物を捨てた人は、多かれ少なかれ、次に物を買うときの態度が変わるはずです。
買い物に慎重になるでしょう。
たとえ、捨てるときゴミが大量に出たとしても、その後、必要な物だけを買う暮らしや、1つひとつの物を使い切る生活にシフトできれば、生涯に出すゴミの量を大幅に減らすことができます。
いらない物を手放して暮らしをリセットしたら、大量のゴミを出さない暮らしに移れるといいですね。