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夢は大きい方がいいと誰もが言いますが、実はそうではないと教えてくれるTEDトークを紹介します。
タイトルは、Why dreaming big might be holding you back (なぜ大きな夢を持つことが足かせになるかもしれないのか?)
起業家のJeff Hilimire(ジェフ・ヒリマイア)さんのトークです。
収録は2025年の3月、動画の長さは12分。動画のあとに抄訳を書きます。
誰かを助けることで、働くことがもっと意味あるものになると希望を与えてくれる内容です。
人は大きな夢を描けと言う
コーチやビジネスリーダー、自己啓発本に「大きく夢を描け、さもなければ去れ(go big or go home)」と言われたことはありませんか?
仕事の中で「BHAG(ビッグで、毛むくじゃらで、大胆不敵な目標)」を立てろと挑まれたことは?
かつての私は、まさにそんな大きな夢を追いかけていた一人でした。
そしてリーダーとして、チームにも「山を登れ」「星をつかめ」「雄牛の角をつかめ(=困難に挑め)」と鼓舞していました。
そうです。私は本気で突っ走り、ライバルを打ち負かし、誰もが驚くような成果を出すことを目指す人間だったのです。
それが全部、くだらない幻想だったと気づくまでは。
起業家として成功したけれど
私は大学を卒業する前に最初のビジネスを立ち上げました。それがきっかけで、起業家としての成功しました。
最初の会社は10年間かけて育てました。寮の部屋で仕事を始め、母の家の地下室へ、さらにフィットネスジムの裏手を経て、最終的にはアトランタ中心部の高層ビルにオフィスを構えるまでに成長しました。
幸運にもその会社を売却することができました。
その後、私と仲間たちは次の会社を立ち上げ、5年後にはその会社も売却しました。
この15年間で、私たちは地元のあらゆる重要なランキングに名を連ねました。
たとえば「急成長企業」や「働きやすい会社」といった名誉あるリストです。
有名クライアントも多数獲得し、ライバルを圧倒し、各種アワードも総なめにしました。
でも満たされなかった
それなのに私はなぜ、幸せではなかったのでしょうか?
次に自分は何をしたいのか? そう考え始めたとき、こんな疑問を感じました。
「これまでのすべてに、一体なんの意味があったのか?」
社会が提示する成功の方程式に忠実に従ってきたはずなのに、私は満たされず、心が動くこともありませんでした。
人生で初めて、キャリアのアクセルを踏むのをやめ、自分が世界に与えている影響を振り返ってみたのです。
かつて私が憧れていた人々、いわゆる業界の巨人(タイタン)たちのことを思い返しました。
でもなぜ、彼らに憧れていたのか?
彼らがビジネスを拡大し、ライバルを打ち倒したから? でもその先に、何があるというのでしょうか?
私はただ、自分の頭の中で勝手に思い描いたレースに出て、誰よりも大きく、誰よりも優れている存在になろうと必死になっていただけだったのではないか。
「星を目指さなければならない」という強迫観念に駆られて。
そんな私の胸の内は空っぽでした。
仕事に意味が欲しかった
私のしていることが、自分と家族以外の誰かにとって、プラスになるようにはまったく思えなかったのです。
心の底から、「自分の人生に意味が欲しい」と思っていました。
そのときはまだ気づいていませんでしたが、私は仕事における目的を探し求めていたのです。
2つ目の会社を売却したあと、私は3つ目の会社を立ち上げました。
今度はデジタル・マーケティングの代理店です。
ちょうどその頃、私は地元の小さな非営利団体の理事会メンバーにもなっていました。
小さく始めてみた
ある理事会で、その団体の新しいウェブサイトが必要で、それも、間近に控えた資金調達イベントに間に合わせる必要がある、ということになりました。
私はそのアイデアを自分のチームに持ち帰り、このプロジェクトを引き受けるべきかどうか議論しました。
私は「困っているチャリティを助けられる」と主張しましたが、チームは「今すでにとても忙しい」「スケジュールに無理がある」「無償でやるなら会社の資金にも響く」と反論しました。
結局、私たちは妥協して、このプロジェクトを引き受けることにしました。
あとから知ったのですが、あの日私がやったことには、ちゃんと名前があるそうです。
「ボラントールド(voluntold、やらされたボランティア)」というそうです。これは「ボランティアとして志願したように見せかけて、実は上司にやらされた」という意味の造語です。
ですが、まもなく、チームは自分たちのスキルで人の役に立てる経験をしました。
彼らはそのプロセスを心から楽しみ、他の団体も手助けしたいと意欲的になりました。
そして、チームが意味のある仕事だと手応えを感じたように、私自身もそのチャンスをチームに与えられたということに、深い意味を見出すようになりました。
仕事において、ほんの少し目的を味わった私は、もっと、そんな仕事をしたくなりました。
ボランティアでサイトを作る
しかし、このアイデアを自分の小さなチームに何度も押しつけることはできませんでした。
もっと大きなことを望むなら、新たに仲間を募らなければなりません。
そこで、「小さなウェブデザイナーチーム」と「小さな非営利団体」とを結びつけるアイデアが浮かびました。
うちのチームが以前やったように、短期間でウェブサイトを作ってしまう仕事を任せるのです。
非営利団体は今すぐ助けを必要としています。
そして私は、クリエイターは短い時間で作るようプレッシャーをかけられると、意外にも最高の仕事をすることを知っていました。
「5〜6人いれば、週末で1つのウェブサイトを作れる。それなら、もっとチームを招待したらどうだろう?」
そう考えると、次の展開が見えてきました。
大人数の力を集結すれば、個々に動くよりずっと大きなことができる。それなら、もっとたくさんの人を巻き込もう、と。
5人で1サイト作れるなら、10人で2サイト、20人なら4サイト……そうやって計算を続けていった結果、48サイトという数字に行き着きました。
週末に48のサイトを作るイベント
私はこのアイデアを、地元の他のマーケティング代理店のリーダーたちに持ちかけてみました。
「週末で48の非営利団体向けのウェブサイトを作るイベントをやりませんか?」
すると、皆、同じ返答をしました。
「週末で1つのウェブサイトを作るだけでもほぼ不可能なのに、48サイトなんて、正気の沙汰じゃない」と。
でも、エージェンシーのリーダーたちがやりたがらない一方で、その部下やスタッフと話すと、みんな「やってみたい!」と言うんです。
それだけで、私にはもう十分な後押しでした。
私は親友のひとりを誘って、2015年10月に、できるだけ多くの非営利団体向けウェブサイトを週末のあいだに作るイベントを企画し、参加者を募集することにしました。
すると、驚くべきことに数百人もの人々が集まったのです。
私たちは彼らを小さなチームに分け、金曜日の午後から作業をスタートさせました。
多くの人が、その週末ずっと会場に泊まり込み、作業を続けました。
そして、奇跡のように、日曜日の午後6時までに、48の非営利団体のウェブサイトが完成したのです。
実際に何百人もの人たちが集まり、48時間ぶっ通しで作業し、48のウェブサイトを作り上げたのです。
小さく始めたからできたこと
もし最初からこのアイデアがここまで大きなものであったなら、おそらく私は挑戦しようとは思わなかったでしょう。
あまりにスケールが大きすぎて、手に負えない、と感じてしまったに違いありません。
でも、幸いなことに、私は小さな夢から始めたのです。
最初の「チームで、小さなウェブサイトを、短期間でつくる」というアイデアは、私の頭でも十分に理解できるものでした。
その小さな一歩を実行できたからこそ、アイデアをさらに広げていくことができたのです。
私は、そのアイデアがここまで大きく育つなんて、夢にも思っていませんでした。
2015年のあのイベントの日曜日の午後、受付デスクに座っていた私は、各チームの進捗を見に行こうとしていました。
金曜の早朝からずっと会場にいて、床に寝袋を敷き、数時間だけ仮眠をとっていて、すでにガソリン切れ寸前、コーヒーの飲みすぎでふらふらでした。
ボランティアも意義を感じてくれた
ちょうどそのとき、ひとりの若いボランティアがよろよろとやってきました。彼も私と同じくらい疲れ切った様子で、こう言ったのです。
「来年のイベントのリストに名前を書いてもいいですか? 絶対に次は見逃したくないんです。」
私はびっくりしました。
だって私はこれを来年もやるなんて、夢にも思っていなかったし、誰にもそんなことを言っていなかったからです。
「この子、疲れすぎておかしくなってるのかな。まあ、話を合わせてあげよう」と思い、私は紙を1枚取り出して、上に「2016年イベント」と書きました。
「もし、来年やることになったら、きみをリストに入れておくね」と伝え、名前とメールアドレスを書いてもらいました。
その後私はチームの様子を見に、会場を離れました。
45分後、戻ってくると、その紙はびっしりと名前で埋め尽くされていたのです。
しかも、誰かが2枚目の紙を持ち出し、それもいっぱいになっていました。
どうやら、「来年のイベントの申し込み用紙があるらしい」と噂が広がったようで、
私は一言も「来年もやる」と言っていないのに、50人以上がサインアップしていました。
彼らは、週末のあいだずっと家族や友人から離れ、他人を助けることに打ち込んだボランティアたちです。
それなのに「もっとやりたい」と望んでくれたのです。
イベントはどんどん広がっていった
その瞬間、私は自分の人生を大きく変える気づきを得ました。
私たちが作ったのは、非営利団体を助ける仕組み。確かにそれもそうなのですが、それ以上に、人々が自分のスキル、つまりスーパーパワーを使って善いことをする仕組みを生み出していたのです。
それは、多くの人にとって初めて自分の仕事を誇りに思えた経験であり、日々の暮らしに意味をもたらしてくれるものでした。
こうして、「48イン48」という活動が、生まれました。
その翌年、私たちは実際に2つのイベントを開催しました。
そのまた翌年には4つ、そして6つと増えていき、ボランティアは途切れることなく集まり続け、私たちの活動もどんどん成長していきました。
「48イン48」のイベントにあふれる仲間意識と熱意は、実際にその場にいなければわかりません。
中には、48イン48のロゴ入りシューズを作ってきたボランティアもいました。
そして信じられないことに、今年の10月、私たちは10周年を迎えました。
これまでに35回のイベントを開催し、ボランティアたちは340ポンド(約155キロ)ものコーヒーを飲み干しながら、
1,300の非営利団体向けウェブサイトを作成し、7,500人のボランティアが延べ30万時間の労働を提供しました。
その世界的な影響額は、推定で3億ドル(約450億円)以上にのぼります。
小さな夢を描いてみよう
人は皆、「人生に目的や意味を感じたい」「ポジティブな変化を生み出したい」という願いを持っています。
それを実現する方法は人それぞれ違います。
多くの場合、夢は「大きくて、毛むくじゃらで、大胆な目標(BHAG)」として始まります。
でも私は今ここで、それは間違いかもしれないと言いたいのです。
世間はこう言います。
「大きな夢を描いて、思い切りバットを振れ」と。
けれど私が「48イン48」を通じて学んだのは、大きな夢を描くこと自体が、私たちの行動を止めてしまっているということでした。
私たちは、自分のスキル、あるいはスーパーパワーを使って、善いことをすることができる。
そしてそれは、自分自身の人生を変え、時には世界をも変える力を持っています。
でも、それを実現するには、現実的に達成可能な夢と目標が必要なのです。
私たちは、「自分の貢献は小さすぎて意味がない」と思い込むのをやめるべきです。むしろ、もっと小さく考えるべきなのです。
だから、次にあなたが、「自分の仕事には意味がない」「世界の中での自分の存在が物足りない」と感じたとき、夢を、少しだけ小さくしてみてください。そして、まず行動を始めてみましょう。
世界はあなたの力を必要としています。
//// 抄訳ここまで ////
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ジェフ・ヒリマイヤさんの著書です。
小さな目標を作ってみる
大きな夢を掲げると、かえって行動できないというトークを紹介しました。
これは、仕事だけでなく、片付けにも言えることです。
夢を持つことはいいことですが、その夢があまりに大きすぎると、到達するのに苦労します。その理由は以下です。
・最初の一歩を踏み出せない
最初から、48時間に48サイト作ることを目指していたら、ヒリマイアさんにはできなかったでしょう。
・準備に時間をかけすぎてしまう
夢が大きいと、「完璧な準備」をすることに力を注いでしまいます。
・現実とのギャップが多すぎて挫折しやすい
たとえば、捨て活でも、「家全体をきれいにする」という大きな夢を掲げると、なかなか成果を感じられないので、途中でいやになります。
・仲間を巻き込みにくい
あまりだいそれた目標だと、多くの人は怖気づきます。
したがって、今もし、やりたいことがあるのに、なかなかできていないときは、少し夢や目標を小さくしてみるといいでしょう。
特に片付けにおいては小さな目標を掲げることが効果をあげます。
どんなにものだらけの家でも、一つずつものが家に入り、時間が経つうちにたまっていったはずですから。
コツコツ捨ててみてください。