嫉妬する女性

TEDの動画

嫉妬を語る叙事詩(TED)

誰かをうらみ、ねたむことに時間とエネルギーを費やしている人におすすめのTEDトークを紹介します。

タイトルは An ode of envy (羨望の叙事詩)プレゼンターは文芸評論家の Parul Sehgal(パルル・セガル)さんです。

邦題は『嫉妬の歌』。

ode は、オード、頌歌(しょうか)。オードは多くの人や事物に呼びかける形で歌う叙事詩。何かを祝う崇高な詩が多いです。



嫉妬の歌・TEDの説明

What is jealousy? What drives it, and why do we secretly love it? No study has ever been able to capture its “loneliness, longevity, grim thrill” — that is, says Parul Sehgal, except for fiction. In an eloquent meditation she scours pages from literature to show how jealousy is not so different from a quest for knowledge.

嫉妬とは何でしょうか? 何が嫉妬を生むのでしょうか、なぜ、私たちはひそかに嫉妬を好むのでしょうか?

嫉妬の、孤独、寿命、恐ろしいスリルの研究はありません。フィクションを除いては。

こうパルル・セガルは言います。

流ちょうで洞察に富んだ講演で、数々の文学作品にふれながら、セガルは、実は嫉妬は、知識の探求とさして変わらないと伝えます。

収録は2013年の7月。長さは13分、日本語字幕もあります。

☆トランスクリプションはこちら⇒Parul Sehgal: An ode to envy | TED Talk

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

プレゼンターが文芸評論家なので、多少、難しげな語彙が入っています。





転校生に嫉妬した

8歳のとき、女の子が転入してきました。すてきな子です。まあ転校生ってそんなふうに見えるものです。

その子は豊かな髪が輝いていて、小さくてかわいいペンケースを持っていました。

州都をよく知っていて、つづりもよくできました。

嫉妬を感じた私は、悪巧みを思いついたのです。

とんでもないことをした私

ある日の放課後、女子トイレに隠れて遅くまで残り、誰もいなくなった教室に忍び込み、先生の机から成績表をだしました。

そして、転入生の成績をいじったのです。Aを全部、下の成績に書き換えました。

成績表を戻そうとしたとき、何気なく、ほかの子の成績をみたら、これまたとてもよい成績だったので、思わず、全員の成績を修正しました。

すべてDにしたんです。自分の成績だけ、Aをたくさんつけて。

いまでも、当惑しています。いったいどうしてこんなことをしようとしたのか。

どうしてあんなに気分がよかったのか。

ばれなかったのも不思議です。明らかに変なのに、見つかりませんでした。

いちばん、不思議なのは、あの子のことがどうして、あんなに気にさわったのか。

小さな女の子で、つづりが得意だっただけで。

私は嫉妬にかられていました。

嫉妬の神秘

嫉妬はとてもミステリアスですが、どこにでもあります。

赤ちゃんも霊長類も嫉妬します。ツグミとか。

アメリカでの夫婦間の殺人の一番の理由は嫉妬です。

それなのに、これまで、嫉妬の孤独、寿命、恐ろしいスリルに関する研究を見たことがありません。

嫉妬については、フィクションを読むしかないのです。

小説にはあらゆる嫉妬が登場する

小説は、嫉妬をあらゆる角度から研究したラボです。

嫉妬がなかったら文学もなかったでしょう。

不実な王妃ヘレンがいなければ、『オデュッセイア』は生まれず、嫉妬深い王がいなければ、『アラビアン・ナイト』もありません。

シェイクスピアの作品も。

高校の課題図書もそうですね。

嫉妬がなければ、『響きと怒り』 『華麗なるギャツビー』『陽はまた昇る』 『ボヴァリー夫人』『アンナ・カレーニナ』は生まれなかったでしょう。

プルーストの作品と嫉妬

嫉妬なくして、プルーストの作品もありえません。

最近、プルーストはすべての答えを知っていると言うのがはやっていますが、嫉妬に関しては、彼は、確かによく知っていました。

誕生100周年を迎える『失われた時を求めて』は、男女の嫉妬や競争心の徹底的な研究です。

プルーストというと、感傷的なイメージがありますよね?

寝付けない少年や、ラベンダー・ティにひたしたマドレーヌを思い浮かべます。

実は、私たちは、プルーストの見方がどれだけ残酷か忘れています。

ヴァージニア・ウルフは「プルーストの本は、動物の腸線のように頑丈だ」と書いています。

プルーストの小説と嫉妬がどれほど、相性がいいか見ていきましょう。

嫉妬は自分勝手な物語を作る

嫉妬を煎じ詰めて、人々、欲望、障害という形にすると、物語のベースになるでしょうか?

よく、わかりません。でも、嫉妬を感じているとき、何が起こるか考えてみれば、これはいい線いっていると言えそうです。

嫉妬をしているとき、私たちは、物語を語りはじめます。

他人の人生について、自分自身にストーリーを語るのです。その物語は、私たちを嫌な気分にします。

なぜなら、それは私たちを嫌な気分にするために作られるから。

語り手も聞き手も自分だから、私たちは、どんな詳細を盛り込めば、自分自身をナイフで突き刺せるのかわかっています。

嫉妬のせいで、人は、アマチュアの小説家になります。この点をプルーストは理解していました。

嫉妬で自分を拷問する主人公

第一巻の、『スワン家のほうへ』で、メインキャラクターの1人であるスワンが、愛人との甘い時間を思い出しています。

突然、彼は、自分が愛しているこの女性のあれやこれやを、他の人も愛しているかもしれないと気づきます。

この女性が自分に与える喜びはすべて、ほかの人にも与えられるかもしれないのです。いまこの瞬間に。

ここからスワンは自分に物語を語り始めます。

スワンは、愛人に感じている魅力をすべて、彼に加えられる拷問の道具にしたとプルーストは書いています。

スワンもプルーストも嫉妬深いことで有名です。

プルーストと別れたかったら、国外に逃げるしかないほどでした。

嫉妬の好きなもの

でもそんなにつらいなら、嫉妬しなければいいわけです。

嫉妬はエネルギーを要します。

それは渇望する感情なので、何かで埋めなければなりません。

嫉妬の好きなものはなんでしょうか?

情報や詳細です。

嫉妬は、輝く豊かな髪や、小さくてかわいいペンシルケースといった情報が好きです。

写真も好きです。

だから、インスタグラムがこんなに受けているのです。

嫉妬は真実の探求だ

プルーストは、学識と嫉妬を合わせています。

嫉妬にかられたスワンは、戸口で盗み聞きをし、愛人の召使いを買収します。

こうした行動を、スワンは、「不快に思えるかもしれないが、これは古文書や記念碑の解釈と同じだ、とても知的価値のある、科学的調査だ」、と自己弁護します。

プルーストはこう言いたいのです。

「嫉妬は耐えがたいものだし、自分を愚かに見せるものだが、その本質は知識や真実の探求だ、痛みを伴う真実の探求なのだ」。

プルーストにとって、その真実は苦痛であればあるほどよかったのです。

苦悩、屈辱、喪失は、プルーストにとっては、英知への道でした。

彼はこう言います。

「私たちが求める女性とは、私たちを苦しめる女性だが、彼女たちは、1人の天才よりも、私たちのすべての感情をより深く、いきいきと引き出してくれるのだ」。

嫉妬は自分の本当の姿を見せる

プルーストは、嫉妬が自分自身の本当の姿を見せると言いたいのだと思います。

このように自分をあらわにする感情がほかにあるでしょうか?

敵意や隠れた野望、権利意識を見せてくれるものが?

自分の感情をこんなに激しく見せてくれるものが?

嫉妬に囚われた人

フロイトも嫉妬について書いています。

ある日、妻が浮気をしているのではないかと頭を悩ませている男性が、フロイトのもとを訪れます。

この男性は変わっていて、妻が実際にやっていることは見ていません。

浮気なんてしていないのに、妻は理由もなく疑われていました。

男性は、妻が何気なくやっていることを見ていました。

いつもにこやかにしすぎているとか、わざと別の男性に触れたとか。

フロイトによれば、この男性は、妻の無意識な行動にとらわれてしまっていたのです。

嫉妬が生み出す創造力

小説にはこういうことがうまく書かれています。

嫉妬によっていかに私たちが、激しく、しかし正しくない見方をするか。

嫉妬をすればするほど、私たちは、架空の世界の住人になります。

だからこそ、嫉妬のせいで、暴力や違法な行為、思いもよらなかった行動をしてしまうのです。

8歳のとき、私のしたことは、まずかったと思います。でも、こんなニュースも聞きました。

ミシガンに住む52歳の女性が、にせのフェイスブックのアカウントを作り、1年間、そのアカウントから、ものすごくひどいメッセージを自分自身のアカウントに送り続けました。

1年間です。

彼女は、元彼の新しい恋人を犯人に仕立てあげるつもりでした。

このニュースを聞いたとき、称賛の気持ちがわきました。

やり方は間違っていましたが、すばらしい創造です。

まるで小説のようです。

ハイスミスの小説に出てくる嫉妬

私の好きはパトリシア・ハイスミスの小説並です。

ハイスミスはアメリカのとても頭がよくて風変わりな女性です。

『見知らぬ乗客』や『太陽がいっぱい』を書いています。

ハイスミスは、小説の中で、いかに嫉妬が人の心をまどわせるか書いています。

いったん嫉妬にからめとられると、事実と事実でないことを分けていた薄い膜が簡単に破れることを見せています。

彼女のもっとも有名な作中人物はトム・リプリーです。

彼は、ある人の持っているものがほしいという気持ちから始まり、その後、その人自身になりたいと思い、その人を殺し、本人になりすまして、当人の指輪をはめ、当人の貯金を使います。

羨望の時代にいる私たち

でも、リプリーのやり方は真似できません。

私は、この世界の人全員にDをつけることはできません。

嫉妬の時代に生きている私たちにとって、これは残念なことです。

ソーシャルメディアの住人が使っている通貨は、「羨望」ですよね?

小説が、嫉妬の対処法を教えてくれるかどうかは、わかりません。

小説の登場人物は、よくわからないことがあったら、どうするでしょうか?

ベーカー街221Bに行って、シャーロック・ホームズに聞いてみましょう。

レストレード警部のホームズへの気持ち

ホームズの小説では、モリアーティ教授が有名ですが、私は、レストレード警部のほうが好きです。

彼はスコットランド・ヤードの警部でいつもホームズの助けを必要としていますが、同時に彼を嫌っています。

事件の捜査をしながら、苦々しく感じているのです。

でも、何度も一緒に捜査をしているうちに、だんだん変わっていきます。

『六つのナポレオン』で、ホームズが事件を解決したあと、レストレードは、ホームズにこう言います。

「ホームズさん、私たちはあなたに嫉妬はしていません。誇りに思っています。スコットランド・ヤードで、あなたと握手をしたがらない者はいません」。

このとき、ホームズは珍しく感動し、私も感動しました。

嫉妬は幾何学の問題か?

ささいなシーンですが、謎めいています。

ここでは嫉妬を感情の問題ではなく、幾何学の問題として捉えています。

ちょっと前まで、ホームズはレストレードから、敵視されていたのに、次の瞬間には、みなが仲間になりました。

レストレード警部は、突然、敵対心をよいものとして受け入れたのです。

嫉妬は、幾何学的な問題で、相手との関係において、自分をとこに立たせるのか、という問題だとしたらどうでしょう?

そうすれば、他人のすばらしさを不快に思わなくてもよくなります。

仲間になればいいのです。

小説が助けてくれる

この方法がうまくいかないときのために、心の平安を得るための小説があることを覚えておきましょう。

フィクションは嫉妬を分析してくれるし、嫉妬を手なづけ、問題について検討し話し合うきっかけを与えてくれます。

やさしいレストレード警部、恐ろしいトム・リプリー、狂ったスワン、マルセル・プルースト自身と、素晴らしい仲間もたくさんいます。

//// 抄訳ここまで ////

単語の意味など

scour  ~を捜してかけめぐる、捜し回る

baffle  当惑させる

primate  霊長類の動物

parse  (文)を構成要素に分析する

impediment  障害

crux  確信

gamut  全領域、全範囲

domesticate  飼いならす、なじませる

うらやましいから気になる

先日、会社の同僚が気になって、自分の仕事に集中できない人の相談に回答しました。

仕事ができない同僚のせいで自分の仕事が増えて不満←質問の回答。

その後、「もしかしたら、この相談者さんは、仕事がろくにないのに、のほほんと残業している同僚がうらやましいのかもしれない」と思いました。

自分は仕事が増え、時間内に終わらせようと、必死で働いているのに、仕事の少ない彼女はのんびり残業をして、残業代まで稼いでいる。

これは、全部、相談者さんの頭の中で作られたフィクションなので、「嫉妬が架空の話を作る」、という状況がそのままあてはまります。

「いえいえ、私は仕事ができない彼女みたいにはなりたくないですよ」と、相談者さんはいうかもしれません。

でも、のんびり仕事をして、残業代を稼ぎ、評価も得ている(特に下がってはいない)相手がうらやましいとは言えませんか?

実は、自分もうそうしたいけれど、自分には、「残業をするのは無能のしるし」という鉄のように硬いおきて(価値観}があるため、死んでもそんなことはできません。

人は、自分ができないことをしている(ように見える)人や、自分が持っていないものを持っている(ように見える)人を、うらやましいと思い、嫉妬を感じ、やたらと気になり、「嫌いだ、いやな女だ」と思いながら、相手のことをえんえんとチェックしてしまうのです。

「本当はうらやましいんだ、自分も自分のほしいものを素直に求めていこう」と思うことができると、嫉妬に苦しむことはないかもしれません。

たまにいただく、対人関係が問題になっている悩み相談は、上でリンクしたメールのように、本人の頭の中で作られた物語がめんめんと語られています。

ディテールが細かいので長文であることが多いです。

このエネルギーと創造力を別の分野で発揮すれば、もっと楽しい人生になるんじゃないでしょうか?

嫉妬のさなかにいるときは、自分は嫉妬のせいで、勝手に変な物語を作っている、と気付きにくいのですが、プルーストのように、その物語を客観的に書き出してみると、文学にはならないかもしれませんが、自分の本心を見ることができます。

頭の中で、怒りや不満、嫉妬、うらみがうずまいて、爆発しそうなときは、モーニングページなどを利用して、文章にすることは、本当におすすめです。





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