勇気のある女の子

TEDの動画

最終更新日: 2022.03.20

女の子に勇気を持つことを教えよう。完璧であることではなく(TED)

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女子に勇気を持つことを教えよう、と伝えるTEDトークを紹介します。

タイトルは、Teach girls bravery, not perfection (少女たちに勇気を教えよう、完璧主義ではなく)。

プレゼンターは、Girls Who Code という、若い女性がコーディングを学ぶ場を作り、プログラミングと勇気をもつことを教えているReshma Saujani(レシュマ・サジャーニ)さんです。

邦題は、「女の子は完璧さよりも勇気を」。



女子に勇気を持つことを教える:TEDの説明

We’re raising our girls to be perfect, and we’re raising our boys to be brave, says Reshma Saujani, the founder of Girls Who Code. Saujani has taken up the charge to socialize young girls to take risks and learn to program — two skills they need to move society forward. To truly innovate, we cannot leave behind half of our population, she says. “I need each of you to tell every young woman you know to be comfortable with imperfection.”

私たちは女の子を、完璧でいるように育て、男の子は勇気をもつように育てている、と、Girls Who Code の創設者、レシュマ・サジャーニは言います。

サジャーニは、若い女性にリスクをとることと、プログラミングの2つを教えています。この2つは、社会で前進するのに必要なスキルです。

本当のイノベーションを起こすには、人口の半分を置き去りにしてはいけない、「皆さん、一人ひとりが、知り合いの若い女性に、不完全であることを心地よく思ってほしいと伝えてください」と彼女は言います。

収録は2016年2月、動画の長さは12分40秒ですが、プレゼンそのものは10分ほどで、残りは質疑応答です。日本語字幕あり。動画のあとに抄訳を書きます。

☆トランスクリプトはこちら⇒Reshma Saujani: Teach girls bravery, not perfection | TED Talk

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

ストレートでわかりやすいプレゼンです。





私がはじめて勇気を出したのは

数年前、私はとても勇敢なことをしました。愚かなことをしたと言う人もいるでしょう。

議員に立候補したのです。

何年も私は、政治の裏方で、資金集めや準備をする人間として安全な場所にいました。でも、本当は、ずっと出馬したいと思っていたのです。

私の選挙区の下院議員の女性は1992年から現職で、これまで1度も負けたことがないし、民主党の予備選挙で、彼女に対抗しようとする人はいませんでした。

私は、自分が出馬することが、現状を打破して違いを生み出す方法だと思ったのです。

世論調査は、私の考えとはまったく違い、私は狂っている、勝てるはずはないと出ました。

でも、とにかく、2012年、ニューヨーク市の下院議員選挙に出馬しました。

絶対勝ってみせると誓い、あらゆるところから資金を集め、それなりにメディアで話題にもなりました。

しかし、選挙での私の得票率はたった19%で、私を、「新星」と報じた同じ新聞が、私が、6321票のために、130万ドルも無駄にしたと報道しました。

屈辱を感じました。

念のために言っておきますが、このスピーチは、失敗の重要性や、チャレンジやリスクを取ることについてではありません。

出馬の話をしたのは、私が33歳になってから人生で初めて、本当に勇気を出し、完璧であることにこだわらないことをしたと言いたかったからです。

女の子は完璧であるように育てられる

私だけではありません。本当にたくさんの女性が、確実にできるとわかっていて、完璧にできると思う仕事だけやってきました。

無理もありません。

ほとんどの女の子は、失敗やリスクを避けるよう、教えられますから。

かわいくほほえんで、安全な道を行き、オールAを取れと。

一方、男の子は大胆に遊ぶこと、高いところまでブランコをこぎ、うんていの上をはって、頭からジャンプしろと教えられます。

大人になって、昇給の交渉やデートの誘いをする頃には、男性は、リスクにつぐリスクを取る習慣がついています。

リスクを取ることで、報酬を得ています。

シリコンバレーでは、2回起業に失敗したあとでないと、誰も真剣に取り合ってくれないとまことしやかに言われています。

要するに、女の子は、完璧であるように、男の子は勇敢であるように育てられるのです。

女子の勇気不足は社会の損失

連邦政府の赤字を心配している人がいますが、私は、女子の勇気不足のほうが心配です。

経済や社会の損失が出ているのは、勇敢な女の子を育てないからです。

理工系の仕事や、経営幹部、役員室、議会などで、女性があまりいないのは、勇気の赤字のせいです。

1980年代に、心理学者のキャロル・ドウェックは、優秀な5年生が、難しすぎる宿題にどう対応しているか調べました。

その結果、聡明な女の子は、すぐにあきらめてしまうとわかりました。

IQが高ければ高いほど、あきらめる傾向が見られます。

聡明な男の子たちは、難しい問題をチャレンジだと捉え、そこからエネルギーを得ていました。より一層、努力する傾向があったのです。

これはいったいどういうことでしょう?

5年生のレベルでは、女子は、数学や理科を含むすべての学科で、男子よりいい成績を取ります。

だから、あきらめてしまうのは、能力の問題ではありません。

男女の違いは、チャレンジに対するアプローチの違いです。この違いは、5年生のときに終わるわけではありません。

女性は完璧だと思わないと前に進まない

HPのリポートによると、男性は求められる資格の60%しか満たしていなくても、求人に応募しますが、女性は、100%満たしたときだけ応募します。

この研究は、「女性はもっと自信をもつべきである」という話の証拠として、引き合いに出されますが、私は、女性が、完璧を目指し、過度に慎重になるよう育てられている証拠だと思います。

野心的になり、リスクを取るべきときでも、女性は完璧であろうとするために、仕事に関して、あまりリスクを取らないのです。

だから、現在、パソコンと技術の分野の60万件の求人で、女性はとり残されています。

完璧であることより、勇気をもつよう教育されていたら、女性たちは、イノベーションを起こし、問題を解決したはずなのに、それができない経済になっているのです。

若い女性にコーディングを教え始めた

2012年、私は、女子にコーディングを教える会社を立ち上げました。

彼女たちにコーディングを教えることは、勇気を持つことを教えることでもあると、すぐに気づきました。

コーディングは試行錯誤の連続です。

適切な場所に正しいコマンドを入れなければなりません。ときには、セミコロンひとつで、失敗と成功に分かれます。

命を吹き込むまで、何度も作り直す必要があります。忍耐が必要ですし、不完全でも平気でいることが求められます。

コーディングを教え始めたら、女子が、正しくできないことや、完璧でないことを、とても恐れているとわかりました。

コーディングの教師全員がそう言います。

最初のレッスンで、「コードの書き方がよくわからない」と言う女子のモニターを先生が見ると、そこは真っ白です。

理解のない先生なら、この生徒が、20分間、ただ、画面を眺めていたと思うでしょう。

しかし、UNDO(アンドゥ、取り消し)キーを、何回か叩いてみれば、この生徒が途中までコードを書いて、結局削除したことが見てとれます。

いいところまで来ていたのですが、正確には書けませんでした。彼女は、途中まではできたことを見せるのではなく、全部消してしまったのです。

完璧でなければ、ダメだと考えているからです。

コードのできを自分のできだと勘違いする女生徒

実は、うちの学校の女子はみな、とてもうまくコードを書きます。

ただ、コーディングを教えるだけでは不十分なのです。

私の友人で、コロンビア大学でJavaの入門コースを教えているレヴ・ヴリーは、コンピュータサイエンスの生徒とのやりとりについてこんな話をしてくれました。

課題がうまくできなくて悩んでいる男子生徒は、「先生、僕のコードはどこか変なんです」と言いますが、女子生徒は、「先生、私のどこかがおかしいんです」と言うのです。

女子に完璧であるよう教えることをやめなければなりません。悩んでいるのはあなただけではないし、一生懸命がんばることだけが解決策ではないと、女の子たちに知らせるべきです。

「手をあげるのが怖い。質問するのが怖い。わからないのは自分だけで、苦労しているのは自分だけだと思われたくないから」と言う女性がどれほどいることか。

勇気を持てばこんなことが起きる

女の子に勇気を持つことを教えて、サポートできるネットワークを用意すれば、みな、すばらしい仕事をします。

たとえば、タンポン・ランというゲームを作った2人の高校生がいます。

このゲームで、彼女たちは、月経にまつわるタブーや性差別に立ち向かいました。

シリアの難民の学生は、アメリカ人が投票に行くのを助けるアプリを作り、自分を迎えた国に対する愛情を示しました。

腫瘍が良性か悪性かを調べるアルゴリズムを作った16歳の少女もいます。彼女はがんにかかった父親の命を救いたいと思っていました。

これは、何千もあるうちのたった3つの例です。

何千人もの女の子が、「不完全でもいいのだ」と社会に認められました。

そして、挑戦を続けることや、忍耐を学んだのです。

コーダーになろうが、次のヒラリー・クリントンやビヨンセになろうが、彼女たちは夢に向かうのを先延ばしすることはないでしょう。

女の子が夢を叶えられる社会を

彼女たちの夢ほど、アメリカにとって重要なものはありません。

アメリカ経済だけでなく、ほかのどんな経済も成長し、真にイノベーションを起こすためには、人口の半分を置き去りにするわけにはいきませんから。

女の子たちに、この社会において、完璧でなくてもいいのだと思ってもらわなければなりません。しかも、今すぐに。

私のように33歳になるまで、勇気を出すことを待つわけにはいきません。

学校や、キャリアの早い段階で、女子に勇気を持つことを教えるべきです。

自身の生活やほかの人の生活に、もっとも大きな影響を与えられる可能性のある時期に。

皆に受け入られ、愛されるのは、完璧だからではなく、勇気があるからだと教えなければならないのです。

だから、皆さん、一人ひとりが、周囲にいる若い女性、姉妹や姪、従業員、同僚に、不完全でいることを心地よく思うように、話してください。

女子に不完全でいればいいことを教え、その能力を活かす手助けをすれば、若くて勇敢な女性のムーブメントを起こせます。

そのムーブメントがよりよい社会を実現します。

それは、彼女たちのためだけでなく、私たち、全員のためなのです。

//// 抄訳ここまで ////

単語の意味と補足

STEM  理工系の学問、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字。

C-suites  経営幹部、役付きの社員、CEO(最高経営責任者)・CFO(最高財務責任者)・COO(最高執行責任者)・CIO(最高情報責任者)など。

サジャーニさんの著書です。

キャロル・ドウェックさんのプレゼン⇒自分の能力を自分で見限ることの恐ろしさ、できると信じることの素晴らしさ(TED)

完璧主義に関するほかのプレゼン

自分をブスだと思うことがなぜ悪いのか? ありのままの自分を認めるために(TED)

もう完璧を追い求めるのはやめよう:イスクラ・ローレンス(TED)

「美しくありたい」という病気の弊害(TED)

自分にやさしくして、脳の神経回路を書き換える(TED)

完璧であろうとする危険なこだわりがどんどん増えている(TED)

健全な完璧主義というものはあるのか?(TED)

完璧主義が人をしりごみさせる理由(TED)

エネルギーの使い方を間違えない

数日前に、化粧品や衣類を買うせいで、収入の全部を使い切ってしまう女子大生の質問に回答しました。

毎月収入を使い切ってしまう人に私がアドバイスするとしたら。

この方は、美容にお金をたくさんかけています。そんなに物をたくさん買ってはいないけれど、いちいち「いいもの」が欲しくなるとお便りにありました。

なぜ、いいものが欲しいのか?

高いもののほうが、効果的で、より美しくなれると思っているからでしょう。

では、なぜ、そこまでして現状より美しくなりたいと思っているのか?

美しい人間になったほうが、社会に受け入れられる、素敵な人とカップルになって幸せになれる、サバイバルできると思っているからです。

では、なぜそう思ってしまうのか?

たぶん、サジャーニさんの言うように、「女の子は、かわいくほほえんで、安全な道を進み、いい成績を取っていればいいのだ」と社会的に条件付けされてしまうからです。

衣料品や美容にお金をたくさんかけている女性は他にもたくさんいて、「服/靴/バッグを買うのが止まらない」とか、「次々と化粧品が欲しくなります」というお便りをいただきます。

美容や身を飾るものに異常にお金をかける直接の原因は、そういう習慣が身についているからですが、根本的な理由は、本当にしたいことや、試してみたいことをずっとがまんしているからではないでしょうか?

本人は意識していないかもしれませんが、「失敗したくない」とか、「私は女の子だから」といった理由で、本来の能力やパワーを発揮できない女性がたくさんいると思います。

「失敗してもいいから、とにかくやりたいことにチャレンジだ! そうすることで社会に受け入れてもらえる」と思うことができれば、不健全なほど買い物にのめりこむことはないでしょう。

過干渉の母親にしても、「かわいい人」や「完璧な人」でいるために、ずっと変ながまんをしてきたから、余ったエネルギーが、がーっと子供に向かっているのだと思います。

「べつに完璧じゃなくてもいい、失敗してもいい、とにかくやりたいことをやってみよう」。こう思うことができれば、無駄な買い物や、他人に対する干渉は止まります。

自分のリソースやエネルギーの使いみちを間違えないでください。





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