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暮らしが充実するヒントになるTEDのプレゼンを紹介しています。
今回は、エミリー・バルセティス(Emily Balcetis)さんという社会心理学者の、Why some people find exercise harder than others (なぜある人たちは、他の人たちより運動するのが難しいと感じてしまうのか)という動画です。
邦題は、「運動するのが人より億劫なわけ」です。
「運動するのが人より億劫なわけ」TEDの説明
Why do some people struggle more than others to keep off the pounds? Social psychologist Emily Balcetis shows research that addresses one of the many factors: Vision.
In an informative talk, she shows how when it comes to fitness, some people quite literally see the world differently from others — and offers a surprisingly simple solution to overcome these differences.
なぜある人たちは他の人たちより体重を落とすのに苦労するのか?
社会心理学者のエミリー・バルセティスは、いろいろ理由がある中で、特に「視覚」が影響している、というリサーチを紹介します。
この有益なスピーチで、バルセティスは、運動しようとするとき、人は、それぞれ違った見方をすること、この違いを解決する驚くほど簡単な方法を紹介します。
バルセティスさんは、「もっと運動しよう」という目標をたてても、続けられる人と続けられない人がいるのは、「物事の見方が違うから」というリサーチ結果を提示。さらに、視覚に影響されない方法を1つ教えてくれます。
このテクニックは運動にかぎらず、断捨離でも、ほかの目標を達成したいとき、悪い習慣を矯正したいときにも使えると思います。
収録は2014年11月。長さは14分。日本語字幕を貼ります。英語や字幕なしがよい方はプレーヤーで調節できます。動画のあとに要約を書きます。
☆トランスクリプトはこちら⇒Emily Balcetis: Why some people find exercise harder than others | TED Talk | TED.com
☆TEDの説明はこちら⇒☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
人はそれぞれ世界を違った見方で捉えている
人はこの世界を主観的に見ています。
ある男性の写真を見せて、彼がどんな気持ちでいるか人に問うと、まったく同じ答えにはなりません。
また、ダイエットをしている人にりんごを見せると、ほかの人より大きく感じるし、スランプから抜けだしたソフトボール選手には、ボールはほかの人より小さく見えます。
見方の違いは政治にも影響します。オバマ大統領の肌の色をちょっと明るくしたり濃くすることによって、投票率も変わります。
色白のオバマ大統領のほうが支持率がアップするのです。
私たちの目が、実際に見ている部分は、実はとても小さく、腕を伸ばしたところにある親指の先ぐらいのものしか見えていません。
周囲の情報は、きわめてあいまいで、この部分は心の目、つまり主観がおぎなっているのです。
だから人によって同じできごとでも違うふうに見えるのです。
グラスに半分、水が入っているのを見て、「まだたくさんある」と思う人、「もうこれだけしかない」と思う人が出てくるのはこんな理由からです。
体格や気持ちが運動の難易度を決める
この見方の違いを、現在、世界的に注目を集めているフィットネスの分野で研究することにしました。
新年に、「今年こそ運動する」と誓い、実際に始める人は多いのですが、ほとんどのアメリカ人は、バレンタインデーまでに挫折します。
挫折してしまう理由はいろいろあるでしょうが、1つの理由として、それは、私たちが見ているものが、私たちの意図に反しているから、という仮説を立てました。
この仮説を証明するために、いくつかの実験をしてみました。
●仮説1:太っている人は、やせている人と視覚(物の見方)が違う
実験:ウエストとヒップのサイズの割合を使って、客観的に被験者の太り具合を決定。そして、足にウエイトをつけて、ゴールまで歩いてもらうことにした。
歩いてもらう前に、ゴールまでの距離を聞いたところ、太っている人のほうが、やせている人よりずっとゴールを遠いと思っていた。
結果:体格によって、人は環境の捉え方が変わり、それは気持ちも変える。しかし、体と心をお互いに影響しあっている。そこで次の実験を行った。
●仮説2:モチベーションの高い人のほうが、ゴールを近く感じる
実験:ウエストとヒップのサイズの割合を使って、被験者の太り具合を決定したあと、別の運動テストを追加。
「これ以上運動したくない」と意思表示した被験者はやる気のない人たち、「まだまだ運動をがんばりたい」と言った人たちはやる気のある人たちとして、またゴールまで歩いてもらう実験をした。
結果:たとえ太っていても、やる気に満ちている人は、ゴールをより近く感じていた。
つまり、たとえ太っていても、やる気さえあれば、ゴールの捉え方が変わる。ゴールにたどりつけると感じている人のほうが、運動をラクなものとして捉えている。
目標から目をそらすな
以上の実験結果から、人々の物の見方を変えて、より運動をしてもらう方法はあるのだろうか、と考えてみました。
そして、視覚に関する文献を調べて、1つの戦略を発見しました。それは、”Keep your eyes on the prize”(目標から目を離さない)というストラテジーです。
ある被験者グループにはゴールのみを意識するように指導、もう一方のグループには、そういう指導はせず、そばのゴミ箱とか、街灯なども視野に入る状態で、また同様の実験をしました。
その結果、ゴールだけに意識を向けるよう指導した被験者は、そうでない被験者、つまりゴールのそばの物も見ながら歩く被験者より、30%も、ゴールを近いと感じました。
次に、目標に集中することが、運動に対する捉え方をを変えるかどうかも調べました。被験者の足にウエイトをつけ、足を高くあげることを指導し、運動の難易度をあげましたが、目標に集中していた被験者は、そうでない被験者より、17%、少ない労力でできたと感じたのです。
目標に集中することで、運動に関する考えも、運動の質も変わったのです。
主観を変え、目標に意識を集中すれば、今よりラクにたくさん運動をすることができるのです。
まとめ:見方を変えれば世界が変わる
私たちの目が見ているものの大部分は、その人の考えが決定しています。世界は1つではありません。そして、その見方を変えることもできます。
何をやってもうまくいかない日。同僚は怒って、友達はイライラして、夫はがっかりしているように見える日があります。
しかし、それは自分が決めている見方。
同僚は、とまどっていた、友達は心配していた、夫は、共感を示そうとしていた、と見ることだってできるのです。
見方を変えれば、世界をもっと素晴らしい、快適な場所にすることができます。
—– 要約ここまで ——
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視覚はあてにならない話はこちらのプレゼンにも出てきます⇒我々は本当に自分で決めているのか?ダン・アリエリーに学ぶ、選択のミス(TED)
視覚情報が脳でフィルターをかけられる話はこちら⇒隠されたガラクタを発見する3つのコツ。もう物をためこむ時代ではない。 「3.第3者の目になって家の中を見る」をお読みください。
新年にたてた目標を達成する方法⇒なぜ人は新年に抱負を語るのか、はたしてそれは効果があるのか?
思い込みを捨てればうまく捨てられる
今回、このプレゼンを選んだのは、読者の方にもっと運動をしてもらいたい、と思ったからではありません。
もちろん、運動は大事なのでおすすめしたいとは思っていますが。
捨てることを始められない人に、行動のきっかけにしてもらいたいと思って紹介しました。
最近、「断捨離したいけど、始められない、どこから手をつけたらいいのかわからない」という問い合わせが毎日のように来ています。
そこで、まずこの記事を書きました⇒ばんばん捨てられるように、背中を押してください、というメールに答えます。
この記事をアップした日に別の読者から、「頭では捨てたほうがいいと思うけど、行動に結びつかない」という相談をいただきました。
そこで、この記事を書きました⇒だから捨て始めることができない。行動できない6つの理由と対応策。
そうしたら、また違う人から、「片付けようと思っても、どこから手をつけようか悩んであれこれ考えて、片付けることができない」というメールが届きました。
私は、「おかしいな?この人達は、私の記事を読んでいないのかな?それともうまく伝わっていないのかな?」と考えました。
そして思い当たったこと。
それは、全部自分勝手に解釈している、ということです。
たとえ記事を読んでいたとしても、自分の好きなように読んでいるし(よくわかるところは腑に落ちるが、ピンと来ないところはすべてスルー)、部屋の中のガラクタを見ても、実は大したことないのに、「もう、めっちゃ大変でとても捨てられない」と考えているのではないでしょうか?
しかし、それは思い込みなのです。心の目が見ているのです。
見方を変えれば、問題解決に近づきます。
断捨離を始められないときのストラテジー
断捨離をするのが億劫な人は、エミリー・バルセティスさんがプレゼンで言っていたストラテジーを、こんなふうに使ってみてはどうでしょうか?
1.何でもいいから1日5つ不用品を捨てる、1つ買ったら2つ捨てる、1ヶ月余計な物を買わないなど、シンプルなルールを1つだけ自分で設定する。
2.よけいなことを考えず、その目標を達成することだけを念頭に置いて、物を捨てたり、買い物を控えたりする。
こうすれば、捨てるハードルがぐんと下がるでしょう。
実際に捨てているときも、目標にフォーカスしてください。そうすれば、捨てる行動の質もあがってくるはずです。
もっとたくさん捨てることができるようになったり、判断に迷わなくなったり、といったことです。
「行動できない」と思う人は、目標を明確にしやすい、小さな断捨離から始めればいいのです。
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人は主観で物を見ているとは思っていましたが、実際に見えているのは、親指の先ぐらい、というのにはちょっとびっくりしました。
その他の情報は、全部脳が補っているのですね。
英語のことわざに、”Beauty is in the eye of the beholder.”(美はそれを見る人の目の中にある)というのがあります。
初めて、このことわざを見たのは、中学生のときで、ピーナッツ(スヌーピーの漫画)でライナスが言っていたと思います。
ライナスがわからない方はこの記事をどうぞ⇒部屋にある大量のいらない物が象徴する3つの心の闇とは?
この時、意味が全然わからなかったのです。しかし、今は、美なんて実はどこにも存在せず、人の頭の中だけにあるんだな、と理解しています。
多くの人の頭のなかで「美しい」と認識されるものは、世間的に「美しいもの」「美しい人」となるのでしょう。
ミニマリストの部屋を寒々しいと思うか、美しいと思うかも、その人の脳が決めているのです。
人の幸、不幸も同じだと思います。