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新年度のあわただしさが落ち着き、もうゴールデンウィークですね。
連休に何をしようか考えている人も多いかもしれません。
今回紹介するTEDトークは、3 things I learned while my plane crashed(飛行機が墜落しかけたときに学んだ3つのこと)。
スピーカーは、Ric Elias(リック・エリアス)さん。彼は、2009年、ハドソン川に不時着したUSエアウェイズ1549便の乗客の一人です。
2009年1月、ニューヨーク発のUSエアウェイズ1549便が、離陸直後にバードストライク(鳥の群れとの衝突)により両エンジンを停止。操縦不能となった機体は、機長の奇跡的な判断と操縦によってハドソン川に不時着し、乗客155人全員が生還しました。
この事故は、ハドソン川の奇跡と呼ばれています。
生と死の境目に立たされたとき、エリアスさんが何を感じ、どんなことに気づいたのか? 彼のシンプルで力強いメッセージは、日々を大切にするヒントになります。
このトークを通じて、「いまできることは何か」「本当に大切にしたいことは何か」を見つめ直せたら、連休中の時間の使い方も、変わるかもしれません。
今日が最後の日だったら?
収録は2011年、長さは5分、日本語字幕もあります。動画のあとに抄訳を書きますね。
☆トランスクリプションはこちら⇒Ric Elias: 3 things I learned while my plane crashed | TED Talk
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
臨場感のあるトークです。
飛行機事故に遭遇した
高度3,000フィートを上昇中に、大きな爆発が起きたと想像してください。
煙でいっぱいの飛行機を想像してください。
エンジンが「カタカタカタ…」と変な音を立てているのを想像してください。
怖いですよね。
あの日、私は特別な席に座っていました。座席は1D。乗務員と話せる唯一の席でした。
だからすぐに乗務員を見たんです。
すると彼女たちは「大丈夫。たぶん鳥にぶつかっただけ」と言いました。
パイロットはすでに飛行機を旋回させていて、まだそれほど遠くにはいませんでした。
マンハッタンが見えていました。
2分後、3つのことが同時に起こりました。
1.機長が飛行機をハドソン川に向けて一直線に操縦し始めたこと。通常のルートではありません。
2.エンジンが停止したこと。音のない飛行機の中にいることを想像してください。
3つめ、機長が3語言いました。私がこれまで聞いた中で、最も感情のない言葉でした。
「衝撃に備えて(Brace for impact)」
もう乗務員と話す必要はありませんでした。彼女の目を見れば、すべてがわかりました。
そこには恐怖がありました。人生が終わる、という目でした。
その日、私が自分自身について学んだことを、3つお話ししたいと思います。
1.すべては一瞬で変わる
私たちは「いつかやりたいことリスト(バケットリスト)」を作って、人生でやりたいことをいろいろ考えています。
あの日私は、
連絡したいと思っていたのに、まだしていない人たち
修復したかったけれど、そのままにしていた関係
やってみたかったのに、結局やらなかった体験
――そんなことを思い出しました。
あとになって、私はこんな言葉を思いつきました。
私は飲みそこなったワインばかりを集めていた。
せっかくの機会があっても、開けないまま過ごしてきました。だから、一緒に飲む人がそこにいるなら、迷わず開けると決めたんです。
もう、人生において何かを先延ばしにするつもりはありません。
切迫感と目的意識が、私の人生を大きく変えてくれました。
2.痛切なたった1つの後悔
飛行機がかろうじてジョージ・ワシントン・ブリッジをよけて飛んだとき、私はある強い後悔を感じていました。
私はいい人生を送ってきたと思います。
人間として過ちもしましたが、何事にも一生懸命取り組み、少しでもよくなろうとしてきました。
でも、その人間らしさの中で、私はエゴに振り回されていたのです。
そして私は、大切な人たちと過ごしていたのに、大切ではないことに時間を費やしてしまったと、時間を無駄にしたことを悔やみました。
そのとき、私は、妻との関係、友人との関係、人とのつながりについて深く考えました。
そしてその後、私は自分の人生からネガティブなエネルギーを取り除こうと決めました。
もちろん完璧ではありません。でも、以前よりずっとよくなりました。
妻とはここ2年、一度もけんかをしていません。とても気分がいいです。
私はもう、正しくあることを目指していません。幸せであることを選ぶようにしています。
3.私の本当の望み
頭の中で「15、14、13」とカウントダウンが始まり、水面が近づいてくるのが見えました。私は心の中でこう祈っていました。
どうか一気に爆発してくれと。
ドキュメンタリーで見たように、飛行機がバラバラに砕けて壊れるのは嫌だったんです。
着水に近づきながら、私はこんな気分になりました。
死ぬことは、思ったほど怖くないと思いました。
人生を通して、ずっと死ぬ準備をしてきたかのようでした。
でも、とても悲しかったんです。
「まだ死にたくない」「私は自分の人生が大好きだ」と思いました。
悲しみの中でひとつのことがはっきりしました。
たったひとつ願いが叶うなら、子どもたちが成長するのを見たいと思ったんです。
この出来事から1か月後、私は娘の学校の発表会を見に行きました。娘はまだ小学1年生。あまり芸術的な才能があるとは言えません。
今のところは、ね。
でも私は、娘を見ながら子どものように号泣していました。涙が止まりませんでした。
そのとき、すべてがしっくりきたんです。
この2つの経験がつながって、私ははっきりと気づきました。
私の人生で本当に大切なのは、いい父親になることだけなんだと。
私の人生の唯一の目標は、いい父親であることなんです。
私はあの日、奇跡という贈り物を受け取りました。
死ななかったこと、それ自体が奇跡だったのです。
そしてもうひとつ、未来を垣間見て、そこから戻ってきて、違う生き方ができるという贈り物も受け取りました。
今日、飛行機に乗る予定の皆さんに、私から一つチャレンジがあります。
もし、いや、絶対にそうなってほしくはありませんが、同じことが皆さんの飛行機で起きたとしたら?
そう想像してみてください。
そして考えてみてください。
「どう生き方を変えるか?」
いま、いつかやろうと思って先延ばしにしていることはありませんか?
まだ時間があるからと思って、手をつけていないことは?
あなたの人間関係は、どんなふうに変わるでしょうか?
そこにあるネガティブなエネルギーと、どう向き合いますか?
そして何よりも、こう自分に問いかけてみてください。
私は、いま、可能な限り最高の親でいるだろうか?
/// 抄訳ここまで ////
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先延ばしにしない、そして、身近な人との時間を大切に
人生は一瞬で変わるから、大切なことを先延ばしせずに今すぐ始めよう、と教えてくれるトークを紹介しました。
日々の生活の中で、「いつかやろう」と思いながら先延ばしにすることはよくあります。
私たちは、やりたいと思っていることをすぐにやらない傾向があると思います。
「また今度」「もっと時間があるときに」「準備ができたら」と後回しにしてしまう。
でも、時間って、思っているよりずっと早く過ぎてしまいます。私は先日66歳になりましたが、物心がついてから66歳になるまで、本当にあっという間でした。
そして、人はいつ死ぬかわかりません。
だから、本当にやりたいことはやっておいたほうがいいと思います。
それはべつに大きなことでなくてもいいでしょう。
連絡しておきたかった人にメッセージを送るとか、ずっと読んで見たかった本を手に入れて5分だけ読むとか。
それだけで、とても楽しい気分になるのではないでしょうか?
今回のトークで心に残ったのが、「どうでもいいことで、大切な人との時間を無駄にしていた」という気づきでした。
身近な人が相手だと甘えが出て、きつい言い方をしてしまったり、感情をぶつけてしまうことがありますよね。
でも、そういうそばにいる人とのつながりが、人生の中で一番大切だと思います。
エリアスさんは、自分が正しいと認めさせるより、幸せになることを選ぶようにしたと言っていました。
私も見習いたいと思います。
あなたも、本当にやりたいことや、大事にしたい人のことを考えてみてはどうでしょうか?