ジグソーパズル

TEDの動画

自分は正しいと思っているとき、実は間違っている理由(TED)

自分は絶対間違っていない、という思い込みのはげしい人におすすめのTEDトークを紹介します。

タイトルは、Why we are wrong when we think we are right(私たちが正しいと思っているとき間違っているのはなぜか?)

プレゼンターは心理学者の Chaehan So (チャーン・ソー)さんです。

認知バイアスをわかりやすく説明している講演です。



自分は正しいと思い込んでいるけれど

講演の長さは13分37秒です。英語字幕あり。

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

認知バイアスとは、簡単に言うと、思考のかたより、先入観、固定観念で、このバイアスが強いと、最適な意思決定をくだすことができません。

近頃話題になっている構造的な黒人差別の原因のひとつは、認知バイアスにあります。





私たちは判断ミスをする

こんにちは。私が話し始める前に、みなさんは、私の第一印象を持ったでしょう。

2つだけ聞きます。

私は何歳で、どこ出身か?

この人は、30歳で、ブレークダンスをドイツでまたはやらせようとしている、韓国から来たおかしな男だ、と思ったんじゃないですか?

実は私は43歳で、ここミュンヘンで生まれ、ドイツで育ちました。

多くの人が、私の年齢と出身地を当て損ないます。

みなさんも、ほかの人に誤って判断されたことはありませんか? しかも不当に。

みなさん自身が他人のことを判断しそこなった時は?

きょうは、私たちが判断ミスをする理由と、そうしないですむ、シンプルな原則をお伝えします。

認知バイアスとは?

いつも、自分が正しいと言い張る人って、うっとうしいですよね?

7年前、心理学の博士号をとるため勉強を始めたとき、そういう女性がいました。

彼女は、「チャーン、心理学の研究をするなんてすごいわね。でも、私にはそんなもの必要ないわ。人の見立てに関しては、私はいつも正しいから。いつもわたしの予想どおりにみんな行動するのよ」。

これを聞いて、「どうしてこの人は、そんなことを言い切れるんだろう? ただの幻想? もし幻想だとしたら、その背景にある、心理的なメカニズムはなんだろう?」と思いました。

その後、この幻想の正体を説明する、心理学の研究を見つけました。

認知バイアス(cognitive biases)に関する研究です。

認知バイアスとは、正しい判断をできなくさせてしまう思考の傾向です。

過去50年に、心理学では50の認知バイアスを発見しました。

でも、1つだけまだ答えが見つかっていない質問があります。

大学で心理学を教えていたとき、生徒の1人がした質問です。

「どうやったら、日常生活の中で、自分にそういうバイアスがあるとわかるんですか?」

研究者たちは、実験室でそれぞれのバイアスを見つけ、分析しただけです。それは、現実とは関係ありません。

そこで、私は、学術的な説明抜きで、認知バイアスを説明し、日常生活に関係のあるバイアスだけを選ぶにはどうしたらいいのか、考えました。

思考の調和パズル

ずいぶん長い間考えていたのですが、とうとう基本的な原則を見つけました。

私たちの思考が陥るわなを見つけたのです。このわなを私は、『思考の調和パズル(mental harmony puzzle)』と呼んでいます。

どういうことか説明しましょう。

頭の中でジグソーパズルの絵を作る

原則1:私たちは頭の中で、何か思いつきますが、これはジグソーパズルの絵のようなものです。

最初に思い描いたパズルの絵が、思考の中にある絵になります。

その絵がお手本になる

原則2:パズルを組み立てるとき、最初に思い描いた絵が、リファレンス(参照値、お手本のようなもの)の役割を果たします。

情報を受け取ったとき、それが自分の絵にあてはまるかどうかチェックしてから、パズルにはめます。絵に合わない情報は捨てます。

こうしている限り、心の中の調和が保たれます。

無意識に絵を組み立てる

原則3:私たちは、意識的にパズルを組み立てるだけでなく、無意識にも組み立てています。

無意識でやっていることには気づきません。無意識でやっていることの中に、選択的知覚・判断(selective perception)があります。

選択的知覚は、フィルターの役割を果たします。

自分の心の中にある絵に合うように、あらゆる情報をフィルターにかけるので、自分の絵に合う情報だけが、見えたり聞こえたりします。

最初に間違った絵を思い描いていたとしても、「やっぱりね。私の思ったとおりだわ」と感じられる情報を見たり聞いたりするわけです。

間違った判断をしていることに自分では気づきません。これが、思考の調和パズルのわなです。

具体的な例をあげましょう。

認知バイアスの例:サラの場合

博士号をとるため勉強していたとき、サラという女性に会いました。

サラは、恋人の話をよく私にしました。

確証バイアス

たいてい、こんなふうに始まります。「ああ、チャーン、週末のデート、とってもすばらしかったわ。彼は頭がよくて、ハンサムで本当に素敵なの」

彼女はいいことしか言いません。

これは確証バイアス(confirmation bias)です。

確証バイアスは、自分の信じていることに合う情報だけを熱心に探し、信念に合わない情報はしりぞける心理的な傾向です。

サラは、「すばらしい恋人」という自分の絵に合う、知性や魅力というパズルのピースだけを取ったのです。

デート中にやさしくなかった、といったよくない情報のピースは拒絶します。

自己奉仕バイアス

数カ月後、またサラに会ったとき、サラは前とは違うことを言います。

「もう、彼ってすごく頑固なの。私の言うことを全然聞かないのよ。そう彼に言ったら、私こそ彼の言うことを聞かないと言い返すし。

でも、客観的に見て、私は、彼よりずっとやさしいのよ」。

これは、自己奉仕バイアス(self-serving bias)です。

自分のセルフエスティームがあがる情報だけに意識を向け、ネガティブなフィードバックから自分を守ろうとする傾向です。

このバイアスの背後にある心理は、確証バイアスと似ています。

違いは、確証バイアスにおいては、どんな絵(信念)から始まろうとも、その絵にあった情報を探すことです。

サラが、自分の恋人は最良の人だと思ったように。

自己奉仕バイアスでは、自分自身のパズルを組み立てています。だから、サラは、自分が最良の人間だと思ったのです。

後知恵バイアス

さらに数カ月後、サラに会うと、こんな意見になっていました。

「ああ、彼ってひどいのよ。もう別れるしかないわ。まあ、うまくいきっこないことは、最初からわかっていたわね。私はこうなると思っていたわ」。

これは、後知恵バイアス(hindsight bias)です。

過去に体験したことは忘れて、最近起きたことを覚えている傾向です。

笑顔のパズルを組み立てていて、うまくいかなかったとき、突然、自分は、しかめつらのパズルを組み立てていたと思い出したりします。

人は自分の信念を守りたい

さて、サラから何を学ぶことができるでしょうか?

確証バイアスは、自分の最初の信念は間違いないと確認すること、自己奉仕バイアスはセルフエスティームをあげること、後知恵バイアスは、過去の現実の記憶を変えることです。

この3つには共通点があります。

すべては、自分が守りたい、大切な考えに基づいています。この考えを守ることができれば、思考の調和が保たれていると感じます。

しかし、この調和と戦わなければなりません。この調和があるせいで、選択的認知をしてしまい、最初の絵に一致しない情報を見逃してしまうからです。

もし、間違った絵でスタートしてしまったら、この絵に合わない情報こそが、正しい判断に導いてくれるのです。

認知バイアスを減らすには?

意志の力をつかって、認知バイアスを減らすことができます。

1.第一印象と戦う(fight the first impression)

リサーチによれば、人は、最初の100ミリ秒で、人の第一印象を決めます。

まばたきするより短い時間です。

はじめて会った人について、意識的に何かを感じる前に、すでにその人の絵が頭の中でできあがっています。人は、なかなかその絵を変えようとしません。

だから、「自分は無意識のうちに、第一印象を決めている」と、つねに、思い出してください。

そうすれば、次の対策をする準備が整います。

2.向こう側にジャンプする(jump to the other side)

すでに自分の中に絵があるとわかっていたら、その絵の向こう側に行きます。

コツは具体的な証拠を見つけること。

たとえば、第一印象がよくない相手について、この人が、お年寄りが道を渡る手助けをしたのを見た、とか、攻撃的な人間に対して、親切に答え声を聞いた、とか。

向こう側にジャンプする、とは、自分の意見とは反対の意見を支持する具体的な証拠を最低2つは見つけることです。

3.意識を向ける(define your inner focus)

常に、意識的に、自分のバイアスに立ち向かいます。

「私はやせた人が嫌いだ」というバイアスを持っていると気づいたら、このバイアスを、意識的に減らすようにします。

たとえば、「やせた人を見たら、すぐに偉大なガンディーを思い出そう」と決めるとか。

自分が偏見を持っている人を見たら、その逆を考えるのです。

この3つは、すぐに実践できます。

きょうから始めてください。そして、明日は、他の人に、このことを教えてあげましょう。

むずかしいかもしれませんが、少しずつ山を上る要領で行います。

最初はむずかしい、でも、次は、ちょっと痛いぐらいで、頂上にあがってしまえば、すばらしい景色を楽しめます。

何度もやればやるほど、楽になっていきます。

サラがこれをやっていたら、彼女はきっと、幸せな関係を楽しんでいたでしょう。私との関係を。

山登りをして、正しいと思っていたけど、間違っていた、そんな光景を見て、楽しんでください。

//// 抄訳ここまで ////

*1ミリ秒は、1000分の1秒。

セルフエスティームの説明はこちら⇒セルフエスティーム(自分を愛する気持ち)が高い人の12の特徴

認知バイアスに関するほかのプレゼン

物事のとらえ方を決めてしまう3つの偏見(TED)

間違っているのに、自分が正しいと感じてしまうのはなぜなのか?(TED)

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自分を知るためにする効果的な問いかけ(TED)

楽観主義バイアスを知って、よりよい人生を生きる(TED)

無意識の思い込み

どんなに公平に、客観的に考えようと思っても、私たちは、いつも無意識の思い込み(フィルター)をとおして物事を見ています。

今回紹介した動画では、この思い込みをパズルの絵に見立てていました。

この思い込みは、自分を見る時も、他人を見る時も、ふだん自分が使っている物を見るときも、自分をとりまく状況を解釈するときにも発揮されます。

認知バイアスのせいで、本当は自分にとって大事な情報をいとも簡単に無視することがあります。

たとえば、お菓子が大好きな人(かつ偏頭痛やアトピーに悩んでいる人)は、砂糖が身体によくないという情報は積極的には読まないでしょう。

「耳が痛い」「怖くて聞きたくない」という情報は、実はその人にとって必要だし、その人の苦境を助けてくれるものです。

物事が思い通りにすすまなくてイライラするときは、頭の中にある自分のパズルのことを思い出してください。

ソーさんのアドバイスにあった、第一印象をくつがえすことや、反証を見つけることをやってみると、もっと柔軟に考えることができて、ストレスが減ると思います。

何かで行き詰まっているとき、その場から、数メートルずれるだけで、見える景色は変わります。

*****

きのう「カード払いがやめられない」という相談メールをいただきました。

長いメールでしたが、突き詰めれば、

「クレジットカードを使いすぎて、借金が減らないし、貯金もできない。現金で支払いできるようになりたい」。

こんな内容です。

これに対して、5つアドバイスを書いて返信しました。

私が一番最初に書いたのは、クレジットカードを解約することです。

カードを使うのをやめて、デビットカードかプリペイドカートを使う。

それができないなら、財布にカードを入れるな。カードは鍵のかかる引き出しにしまって、持ち歩くな。または、ご主人にカードを預かってもらえ。

こう書きました。

私の返信それぞれについて、「これからはこうしていきたい」と書かれた長いメールが返ってきましたが、

カードを解約する、とか、デビットカードを使うことにする、財布からカードを抜く、といった内容はいっさい書いてありませんでした。

この人の頭の中には、「カードを使わない生活」はないのだと思います。

だから、私のアドバイスの肝心要のところは、すっぱり切り捨てているのでしょう。

自分には、見えていない選択肢こそが、一番の解決策であるいい例です。

相談主のMさん、ここを読んでいたら、自分のバイアスについて考えてください。





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