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ベストセラー『フランス人は10着しか服を持たない(Lessons from Madame Chic レッスン フロム マダム シック)』の著者、ジェニファー・L・スコット(Jennifer L Scott)の TEDxStGeorge のプレゼンテーションをご紹介します。
この本は、トーハンが6月1日に発表した上半期ベストセラーランキングの総合第1位です。累計発行部数61万部を突破したとのこと。日本語の翻訳版が発行されたのは、2014年の10月23日。日本語版が出る前にアメリカでもベストセラーになっていました。
といっても、出版社はこの本がここまで日本で当たるとは思っていなかったでしょうね。
10着のワードローブ
今回ご紹介するTEDの動画は、2014年9月6日、ニューヨークで開催されたもの。TEDxは、TEDの精神を受け継いでいるコミュニティーが世界のいろいろな場所で行うプレゼンです。
TED本体は運営にかかわっていません。
ジェニファーのプレゼンのタイトルはThe ten-item wardrobe(テンアイテムワードローブ)です。質のいい自分のスタイルにあった服を少数持つことが、自分のおしゃれ、自分らしさを生きることにつながる、と彼女は提案しています。
動画はこちら。字幕はないので、英語に抵抗のない方はどうぞ。動画のあとに、抄訳を書きます。
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
洋服を10着持つこと
洋服を持ちすぎている私たち
きょうは、「ワードローブを10着持つこと」についてお話します。数年前に、私は、Lessons from Madame Chicという本を書きました。
パリに留学生としてホームステイしていたとき体験した、自分の人生が変わるような20個の学びについて書いたんです。
ガラクタを捨てることや、運動、フォーマルな機会の楽しみ方などいろいろ書きましたが、1つだけ、どんなライフステージにいる人にもとても反響のよかった箇所があります。
それは「ワードローブを10着だけ持ち自由になる(Liberate yourself with the ten-item wordrobe)」という部分です。
ぎっしり服がつまっているクローゼットを持っているのが、あたりまえの社会に住んでいる私たちには衝撃的な内容ですよね?
服を持ちすぎてると、こんな副作用があるんですよ。
1.着る物がない。
服があればあるほど、朝、準備するのが簡単だと思いがちですが、実はこれは逆です。服が少ないほうが選択も少なくなって楽なんです。
2.衝動買いしてしまう。
クローゼットの中身を自分でわかってないから、目についたセールになっている服を買ってしまいます。
3.自分の本当のスタイルがわからない。
あまりに服がありすぎて、選ぶことができず、1日中ずっとスエット姿なんてことになるのです。
ホームステイ先のパリのタンスはとても小さかった
2001年、パリに留学生として、マダムシックの家に住み始めました。本名ではありません。優雅で、地に足のついたシックな一家だったのでこう呼んでいます。
初対面のとき、ご主人はスーツに革靴、奥さんは、シルクのブラウスにAラインのスカート、パールのネックレスをつけローヒールの靴をはいていました。
私のためにドレスアップしてくれたんだと感激しましたが、実はこれが2人のいつものスタイルだったんです。
マダムシックに自分の部屋へ案内されたとき感動しました。窓からきれいな中庭が見えるその部屋には小さなツインベッドがあり、家具もコーディネートされていて、とてもかわいくて素敵でした。
ところが、小さな洋服ダンス(armoire)を見せられたときパニックになりました。扉をあけると、ハンガーが10個並んでるだけ。
スーツケース2つにぎっしり服を入れてやってきた私は、これから半年間、どこに服をしまえばいいのか、多いにとまどいました。
翌日、ほかの学生に聞いても、みんな似たような状況で、私が故郷カリフォルニアで使っていたような大きなクローゼットのある家なんてどこにもなかったのです。
「いったいこんな小さな洋服ダンスだけでどうやって暮らしてるんだろう?」
不思議だった私は、周囲のフランス人を観察しました。マダムシックはもちろん、友人のステイ先のママ、大学の先生、タバコ屋やパン屋で働いてる女の人たちを。
そして気づいたんです。みんな、質の高い洋服も何度も何度もローテーションして着ているということに。しかもそれで幸せそうで、似合ってるんです。
アメリカだと、同じ服を週に2度着るのって、恥ですよね?私も以前はそう思ってました。
これは文化の違いです。
フランス映画のヒロインはいつも同じ服を着ている
フランス映画のヒロインは、よく同じ服を着ていますが、フランスではそれが普通だからです。しかしアメリカ映画のヒロインは、シーンごとに違う服を着ています。
もし、同じ服ばかり着ているとしたら、それは監督が「この人は、うつうつとしている、精神を病んでいる」と表現したいから。
たとえば、ウッディ・アレンのブルージャスミンに出てくるケイト・ブランシェット。最初はお金持ちで衣装をとっかえひっかえしてますが、妹と住むようになり、少し精神をやんでいたときは、同じ服ばかり着てました。
とはいえ、私もパリから戻ったときは相変わらず、洋服をたくさん持っていたんです。卒業して、3つ仕事をしていたときがありますが、毎朝、着るものを選ぶに苦労してました。
とうとうある時、うんざりして自分の服の7割を捨てました。
服のことなんて、ささいなことだと思ってる人も多いでしょうが、毎日のことですから、自分にとって納得できるワードローブを持つことは人生を変えることにもなるんですよ。
洋服を10着にする方法
衣類の捨て方をお教えしますね。
服をすべて出してください。量が多すぎるときは、少しずつでいいです。そしてこんな質問を自分にするのです。
1.Does this fit me?
サイズは合ってる?
2.Is this age appropriate?
年齢にふさわしい?
3.Is this my true style?
私らしいスタイル?
4.Do I love this?
これが好きなの?
5.Do I wear this?
これを着てる?
この質問にYESと言えないものは全部捨てます。寄付するといいですよ。
それからシーズンオフの服をまとめて別のところに置きます。場所がなければクローゼットの一角をあてがってもいいです。
そして、10着のコアアイテムを選ぶんです。
たとえば、秋の10着のサンプルはこんな感じ。女性ならスラックス1本、ジーンズ2本、ワンピースが3着、ブラウス4着。男性ならワイシャツ7着に、ズボンが3本。
10着が無理なら15着や20着でもかまいません。大切なのは、自分で管理可能な少しだけのワードローブを持つことです。
10着のコアアイテムに加えて、特別な時用の服(extras)も用意します。それはTシャツ、セーター、アウター、フォーマルウエアなど。
洋服を10着にするメリット
コアアイテムを絞り込むことでこんないいことがあります。
1.朝の身支度が楽になる
2.自分のスタイルがわかる
3.衝動買いが減る
何より、いつも素敵でいようという気持ちになるんです。
パリで初めての夜、夕食のあと、私はパジャマ姿でキッチンに行きました。寝る前におやつを食べたかったのです。上は大学のTシャツで、下は何年も着ている白いスエットパンツ姿。
このときマダムシックに会い、この人たちは寝る前におやつなんて食べないと思ったので、水だけもらいました。
1週間後、彼女にパジャマの膝の穴のことを聞かれました。洗濯で開けてしまったのだろうか、と。
ずっと前から穴があいていると言ったら、なぜ穴があいてるのにはいているのか、と、聞かれたんです。
そのとき、はっとしました。「なぜボロいパジャマをわざわざパリに持ってきて着てるの、私って」
その後、このパジャマを捨てて、店でちゃんとしたパジャマを買いました。高級品ではなかったのですが、夜寝る時とても幸せでした。
間に合わせではなくちゃんとしたパジャマを着ていたのですから。
この時初めて気づいたんです。自分の好きなちゃんとした服を着ることは自分を大事にすることなんだって。他の人に見せびらかすために着るんじゃないんです。
こんなことがわかったのは、洋服を10着にしたからです。この考え方を、生活のいろいろな面に応用すれば、自分の見せ方を考えるのにとても役立ちます。
ですから、皆さんも「ワードローブを10着持つこと」をぜひ試してみてください。
・・・・・・・・抄訳ここまで・・・・・・
シーズンごとに10着のコアアイテムを持つ
ジェニファーがこのプレゼンで話していることは、本に書いてある内容と同じですが、とてもうまく15分にまとめていると思います。
彼女は髪をおろしていることが多いのですが、この動画ではシニヨンにしてシックな装いです。
この動画からわかるように、『フランス人は10着しか服を持たない』と言っても、所持している服が10着というわけではないのです。
季節ごとにコアアイテムを10着選びます。サラリーマンやOLなら、会社に着て行く服、学生なら学校に着ていく服。専業主婦なら、買い物や、奥さんたちの集まりに着ていく服でしょうか。
そのうえで、さらにextras として、Tシャツとか、アウターも入りますので、実際の手持ちの服は、ワンシーズン15着として、年間で、60着~80着というところでしょうね。
プロジェクト333のほうが、絞り込むアイテムは少なくなると思います。
⇒3ヶ月33アイテムでおしゃれを楽しむ方法~アメリカの女性ミニマリストに学ぶ、プロジェクト333
ジェニファー自身は、ブログやYouTubeで、いつもそのシーズンのコアアイテムを発表しています。ブログはこちら⇒The Daily Connoisseur 最近は週に1度更新しています。
ここに出てくるマダムシックって裕福な貴族の家系の人です。だから、お金はあるのですが、生活ぶりはとても堅実です。
質素な生活ぶりからジェニファーが学んだことはこちら⇒こ『フランス人は10着しか服を持たない』から学んだ節約術
それでもアパートや家具調度、食材なんかにはお金がかかっています。パリは貧しい移民も多いので、筆子は、はじめは「フランス人」と一般化するのはいかがなものか、という感想を持ちました。
しかし、これが彼女にとってのパリやフランスなのは事実です。
ベストセラーになっているということは、本に書かれていることが、多くの人がフランスに求めていることや、こんなふうに生活できたら、と願っていることと見事に一致しているのでしょうね。
日本人もアメリカ人も、パリやフランスの女性に対して、おしゃれなイメージを持っていてあこがれている、ということがよくわかります。
ところで、自分らしさを大切にするなら、私のように服にお金をかけないという道もあります。そして、確かに服の数が少ないと、毎朝着る服に全く迷いません。