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ためこみすぎた物を捨てるのに苦労している人におすすめのTEDの動画を紹介します。
タイトルは、Downsizing and Saying Goodbye (ダウンサイジングとさよならを言うこと)、プレゼンターは、Charlie Campbell(チャーリー・キャンベル)さん。
キャンベルさんは、退職したもと大学の先生で、郊外の大きな家から、街中の高層アパートに引っ越した体験を語っています。
ダウンサイジング:TEDの説明
There’s so much more to saying “good-bye” than just saying “good-bye.” For Charlie, the late-stage downsizing transition from the big house to a downtown apartment brought layers of good-byes: to the past, to material things drenched in memories, to spaces to store tools and play music and enjoy a hobby of picture framing, to good neighbors and great friends. But while this sounds like a sad story, Charlie explains why it’s not.
「さよなら」というとき、それ以上の大きな意味が込められています。
チャーリーが、晩年になって、大きな家から、ダウンタウンのアパートに引っ越すとき、たくさんのさよならがありました。
過去との別れ、思い出がたっぷりある物との別れ、工具を置き、音楽を奏で、額縁を作る趣味をするためのスペースとの別れ、よき隣人や友人との別れ。
悲しい話に聞こえますが、そうではないことをチャーリーは説明します。
収録は2020年の11月。動画の長さは12分。自動生成される英語の字幕あり。動画のあとに抄訳を書きます。
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
キャンベルさんは、学校の先生だったし、とてもゆっくり話しているから、聞き取りやすいです。
住み慣れた家を手放した
誰でも家や近所づきあいがあります。
私はこの2つに、別れを告げました。
そうしたかったのです。さようならを言うとき、いろいろな気持ちになったものです。
幸せな気分になったり、悲しくなったり、頭にきたり、すごく退屈したり。
その家に、私は30年住みました。
寝室が4つに屋根裏部屋、そして古くて広い地下室がありました。
妻のモリーに2人の娘、猫が5匹、犬が1匹、そして私がそこに住んでいました。
古い家を管理して整えるのはフルタイムの仕事です。
子供はもう巣立ったので、私たちは郊外を離れ、都会に住むことにしました。
ダウンタウンに建築中のアパートを見つけ、リース契約をし、6ヶ月後に、ここに入居することにしました。
妻と私が、死んで天国に行くとき、古くて大きな家を片付けて売るより、アパートを片付けるほうが、娘たちも楽だろうと思いました。
物がたくさんあった
家には物がたくさんありました。屋根裏部屋は、物置になっていました。
思い出が詰まった箱や入れ物がたくさん。
わたしたちはホーダー(物をためこむ人)ではありません。でも、時間がたつうちに、家中のクローゼットや棚、たんすが、物でいっぱいになっていました。もちろん地下室も。
ガレージに物を出すことにし、力のある若い男性を数人雇って、屋根裏部屋にある物を運んでもらいました。
彼らは、3つある階段をあがって、たくさんある箱を階下におろし、玄関を出て、ガレージに運びました。車は、道に停めました。
思い出がいっぱい
自分の箱をあけるのは、子供が宝箱をあけるようなものです。
箱のなかには思い出深いものがたくさん入っていました。
この中から、アパートに持ち込むものを選びましたが、結局、私の物は段ボール箱、1つ分、妻のものは、段ボール箱、何箱にもなりました。
自分の物にさよならを言うのは、すこしばかり悲しい気分でした。
どれを取っておくか選ぶとき、いちいち写真にとって娘たちに携帯で送り、判断してもらいました。
娘がサムズアップ(親指を立てること)をすれば、キープ、サムズダウン(親指を下げること)をすれば、廃棄です。
サムズアップがありすぎたので、レンタル倉庫を1つ借りて、そこに物を入れました。
写真も捨てた
写真もたくさんありました。たくさんの写真にさよならを言わなければならないとわかっていました。
4つ箱を用意して、それぞれラベリングしました。
チャーリーとモリー、娘1、娘2、友達、の4種類です。
写真をつかみ、どんどん該当する箱に入れましたが、ほとんどは、ゴミ箱行きでした。
写真を取り出すとき、あらゆる思い出がよみがえってきました。
家具も捨てた
妻が、手持ちの家具を調べて、アパートに持ち込むものを決めました。
ずっと使っていた質がよくて快適な家具は、手放すことになりました。
娘たちが、小さなものをいくつかほしいと言ったので、そういうのは、レンタル倉庫に運びました。
残りの家具にはすべて、肩をすくめがら、さよならと言いました。
さよならをするのに私は、大忙しでした。
たくさんあった工具も捨てた
もう地下室はないのだから、工具にもさよならをしなければなりません。
この工具がまた、思い出がたっぷりあるものばかり。
父がくれた工具があったし、叔父たちや隣人たちからもらったものもあります。
誰も古い工具を捨てず、全部私にくれたのです。
年老いた男が、ぶつぶつ言いながら、地下室でのそのそ歩いている姿を想像できますか?
まさしく、私がそうでした。
悲しい気分で、工具たちにさよならを言いました。
趣味のものはどうしたか
もう充分片付けたとみなさんは思うかもしれません。
でも、まだあるのです。
私の趣味は額縁を作ることです。
どうしたらこの趣味を続けられるか考えたあげく、スタジオを借り、必要な道具は、みなここに移したので、この趣味に、さよならを言わなくてすみました。
実はもう1つ趣味があります。アコーディオンを弾くことです。
いまでも、レッスンを受けているし、バンドを作って、老人ホームに慰問に行くこともあります。
新しいアパートの25ページにわたる契約書の中に、しっかり書いてあるんです。「楽器を演奏してはいけない」と。
アコーディオンの演奏も、額縁作り用に借りたスタジオですることにしました。これで、アコーディオンも弾けるし、額縁を作ることもできます。
一番つらかったのは隣人との別れ
もっともさよならをするのがつらかったのは、近所の人々です。
私は、近所の人たちと親しくするタイプで、夏になると、近所の人を集めてパーティをし、庭仕事をするたびに、通りかかった人とおしゃべりをしていました。
午後になると、ビールを持ちながら、近所を歩いて、みんなの近況を聞いてました。
この生活に別れを告げるのは、とてもつらいことでした。
ある隣人のことを考えると、いまでも胸がいっぱいになります。すぐとなりに住んでいた人で、彼女を見るたび、私は、「やあ、元気?」と話しかけていました。
この人はいつも忙しくしていて、私がふらりと遊びに行くと、台所に立って、「5分しか話せないわよ」と言ったものです。
ですが、私は、彼女の4人の子どものことや、仕事のこと、どこに休暇に行くのか、私を次の感謝祭のディナーに呼んでくれるかどうかまで知っていました。
前とは違う近所付き合い
私たちは、たった3マイル(約4.82キロメートル)離れたところに引っ越したのだから、また、彼女のキッチンに遊びに行って、話ができると思っていました。
でも、そうしたことはありません。たとえ、そうしていても、前と同じではないでしょう。
以前の隣人にテキストやメールを送るたびに、前とは全然違うと思います。
外で偶然、以前の隣人の誰かに会えば、笑っておしゃべりをするけれど、むなしさが残ります。
新しいアパートに引っ越したら、新しい隣人たちと出会って、前と同じように暮らせると思っていましたが、そうではありませんでした。
バルコニーにいるとき、誰かが通りかかると話をすることはありますが、以前とは違います。
さよならを言うこと
もし私が、「サルでもできる引っ越し」という本を書いたとしたら、「さよならを言うこと」について、1章をさきます。
ダウンサイジングして、いろいろなことに気づきました。いいこと、悪いこと、ほろ苦いこと。
自分がさよならを言うことになるなんて、それまで誰も教えてくれませんでした。
もし、あなたが、ダウンタウンを歩いているとき、高いビルのアパートの一番上のバルコニーで、ビールを持っている人を見たら、それは私です。
笑顔で手を振って、こう言ってください。
「さようなら」と。
//// 抄訳ここまで ////
単語の意味など
empty nester 子供が巣立った家に住む親
catch-all 物置、ガラクタ入れ
staging area 荷造りする場所
able-bodied 健康で丈夫な
make the list リストにのる、選ばれる
lug やっとのことで運ぶ
double up (物を)共有する
小さな暮らしに関する別のプレゼン
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ミニマリズム~何もしない時間、何もないスペースを作ってより充実した人生を
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自分からさよならを言う
キャンベルさんが、ダウンサイジングする気になったのは、
・古くて大きな家の管理が大変なこと
・夫婦2人だけで大きな家に住むこともないと思ったこと
・自分たちが亡くなったあと、後片付けをするお嬢さんたちの便宜を考えて
こんな理由からでしょう。
写真を見ると、確かにすごく大きな家です。
キャンベルさんは、いろいろなものにさよならを言いましたが、さよならを言わない選択もあったはずです。
病院や施設に入るか、死ぬかして、家を離れるまで、自分からはさよならを言わない選択です。
これまでどおり暮らし続けて、さよならを言うしかないときにさよならを言い、後片付けは全部ほかの人に任せる
こういう暮らし方だってできないことはありません。
古くて広い家に夫婦2人だけで住んでいると、無駄に光熱費がかかるし、あちこち直すのにもお金がかかるし、管理も大変ですが、ためこんだ物や、今持っている状況にさよならを言わなくてもすみます。
ですが、キャンベルさんは、自分からさよならをすることに決めました。
スピーチの最後で、「さよなら」と私に言ってくれ、と言っているのは、そうしてよかったと思っているからです。
私も、さよならを言うしかないのなら(人は皆死ぬので、さようならを言うしかありませんが)、自分から言いたいほうです。
その時は、つらいかもしれません。
けれども、暮らし方で、自分で決められる部分は、自分で決めるほうがいいと考えています。
あなたは、どう思いますか?