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レジリアンス(立ち直る力、打たれ強さ)を高める方法を教えてくれるTEDの動画を紹介します。
不安や心配の多い人におすすめです。
タイトルは、Boost Resilience: Take Charge of the Inner Critic & Inner Worrier (レジリアンスを上げる:内なる批判者と心配する者をうまく取り扱う)。
心理療法士の Jane Shure(ジェーン・シュール)さんのプレゼンです。
レジリアンスをアップする:TEDの説明
We all struggle with self-criticism – manifesting in nervousness, panic, and dread. Jane gives us simple tools to disempower our inner critic and empower an inner coach. Her 3 step process allows us to manage fear so that fear doesn’t manage us.
私たちは、皆、自己批判に悩まされ、それは、緊張、パニック、恐怖となって現れます。
ジェーンは、心の中の批判者に力を与えず、心の中のコーチをパワフルにする簡単な方法を教えてくれます。
3つのステップを行えば、恐怖を管理し、恐怖に管理されずにすみます。
収録は2016年の11月、動画の長さは12分。自動生成による英語字幕があります。動画のあとに抄訳を書きますね。
☆TEDとは? ⇒ TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
シンプルでわかりやすいプレゼンですね。
inner critic (インナークリティック)は、心の中で自分を批判する声、つまり自分で自分を批判する声、inner worrier(インナーウォリヤー) は、心の中で、心配ばかりしている人です。
心配に振り回される
心配してストレスを感じたことはありませんか?
実際には起こらないに、何か悪いことが起こるに違いないと思ったことは?
私もそんな経験があります。
数年前、あるカンファレンスでワークショップを行いました。
話し始めたとき、言葉につまづき、すぐに、恥ずかしい気持ちに襲われました。
大変なミスをしてしまったと思い込んだのです。
自分が自分をジャッジしているのと同じくらい厳しく、聴衆全員が私を批判していると思って怖くなりました。
こんなふうに、冷静だったのに、突然、恐怖に襲われる体験を皆さんもしたことがあるでしょう。
暑くなり、心臓はどきどきし、アドレナリンとコルチゾールが、脳内で吹き出し、体が震えました。冷静さがもっとも必要なときに。
幸い、なんとか乗り切り、講演を終えました。
実は心配するほどでもなかった
カンファレンスの2日目に、レジリアンス・グループでの仕事のパートナーであるベスが、前の晩、どんなふうに過ごしたか、私に聞きました。
「帰宅して、夫に、どんなひどい失敗をしたのか話したわよ」。
するとベスがきょとんとして、「え、何のこと?」と聞いたのです。
すぐにわかりました。私は、内なる批判者の魔法にかかって、ベスに確認すらしなかったのです。
同じ部屋にいて、私の話を聞いていたのだから、彼女にたずねれば、何か言ってくれたかもしれないのに。
心の中の批判を信じ込んでいたので、私は彼女に聞かなかったのです。
内なる批判者は絶対的な権威です。
疑問など全く感じません。
ただただ、ジャッジするのです。
自信があるだけでは不十分
しっかり準備して、自信もあったのに、どうして突然、強烈な自信喪失や不安、恐怖に襲われるのか?
なぜ、もっともネガティブな物語にハイジャックされるのか?
ベスと私は、自信があるだけでは、不十分なのだと気づきました。
自信だけでは、大脳辺縁系、つまり感情を司る脳の力からは逃れられません。
突然、スイッチが入り、大きな不安やパニックに襲われます。
感情的な脳の本質を理解することが助けになります。
いかに、脳が、状況の悪さを誇張し、恐ろしいことが起こると予測し、私たちを批判し、はずかしめ、非難するかを知れば。
そもそも、なぜ、脳はこんなことをするのでしょう?
脳は私たちを守るために反応している
皮肉なことに、この反応は、私たちを傷つけるためではなく、守るために、脳に組み込まれています。
大昔、私たちが、より人間らしいものに進化していたころ、四つ足の虎を相手にしていました。
人には、虎と戦う爪も牙もありませんでしたが、脳がありました。
脳は、驚異や危険があることを、匂いや音で知らせてくれたのです。そして、人が、その場でじっとしたり、逃げたりする助けをしました。
しかし、今や、私たちの相手は、虎ではなく、人間です。
私たちは、他人が、自分について何と言うのか心配しています。他の人が、自分をどう思っているかを心配していますよね。
心の中にいる心配性の人
脳科学の分野では、次々と新しい発見がなされています。
それらすべての研究が、「ただ、考えるだけでは、恐怖から逃れることはできない」と示しています。
神経物質の化学反応はとても強力で、理性的で合理的な思考を越えてしまうのです。
恐怖をベースにした思考は、脳の中で、煙探知器のように、鳴り響きます。
煙が出ていなくても、警報が鳴ると不安になり、火元はどこだろうと、あたりを見回し、火事ではなかったとわかったときには、すでに不安や心配で胸がいっぱいになっています。
これが、内なる心配性(inner worrier インナーウォリヤー)のすることです。
心の中にいる心配性の人には、サポートシステムがあり、それが、内なる批判者です。
安全でいるために心配する
安全に生きることを、親が子供にどうやって教えるか考えてみてください。
優しい言い方はせず、わざと子供を怖がらせます。
「熱いコンロにさわっちゃだめ! やけどするよ!」
「通りに飛び出しちゃだめ! 死んじゃうよ!」
すると子供はどうするでしょうか?
親の調子を真似をし、頭の中で何度も繰り返します。4歳になる頃には、この内なる批判の声が、完全に脳に染み付き、一生続きます。
脳が作る嘘のストーリー
内なる批判の声は、私たちを脅かすだけではありません。よくないことが起きるのは、自分のせいだと言うのです。
幼いとき、私たちは、不満を感じると、いつも自分が悪いと自分を責めます。
がっかりしたり、不満を感じたりすると、内なる批判者が筋書きるのです。
最初はとてもシンプルなストーリーです。
私のせいだ、私に何かまずいところがあったのだ、と。
成長して言葉が増えてくると、凝った筋書きになります。
私が厚かましいから、パーティに呼んでもらえなかった、私がわがままだから、ママが、私の世話をしてくれないんだ、私がうるさすぎるから、遊び場で他の子が私のことを笑っているんだ。
言葉が増えれば増えるほど、より複雑なフィクションの物語を作り出します。
人は、感情にもとづいた物語の影響のもとで生きていますが、そのことに気づいていないときすらあります。
この物語が、本当だと思ってしまうのです。内なる批判者は、事実を語っているはずだと。
実際は違います。この物語は神話にすぎません。
例のカンファレンスで私に起きたことが、まさにこれでした。
一瞬にして、私の頭は、恐怖にもとづく物語を作り、私は、それが正しいと思い込み、怖くなったのです。
私たちは、皆、同様の影響を受けています。生存するために、ネガティビティ・バイアスをもっているからです。
ではどうしたらいいのでしょうか?
内なる批判者に負けないために
心の中の批判者や心配性の人をうまくコントロールするには、賢くならなければなりません。
電子メールの取り扱い方を考えてみましょう。
画面に表示された内容を疑う目が必要ですよね? 本物に見えたとしても、嘘かもしれませんから。
感情をベースにした物語に対しても、同じことが言えます。
疑う目をもたないと、詐欺にあって、苦しい思いをします。
つまり、自分を守らなければならないのです。そのために、ベスと私が「インナーコーチ(inner coach 心の中のコーチ)」と呼んでいるものが必要です。
心の中のコーチの役割
心の中のコーチとは、理性的で合理的な自分のことです。
このコーチは、心の中に、自分をはずかしめ、責めたてる批判者や、最悪の事態を想像して物語を作り、自分を脅す心配性がいることに気づいています。
コーチは、深呼吸をして、心と体をスローダウンすることを促します。リモートコントロールを思い描き、ポーズボタンやミュートボタンを押すことも、促します。
さらに、事実とフィクションを区別するのを助けてくれます。個人的に受け止めるのをやめるように言い、自分を励まし、サポートし、前向きな声で話しかけます。
言うは易し、行うは難し、ですよね。
コーチの言葉を考えてみる
私のクライアントに上司に昇給を頼むことを恐れている女性がいました。
彼女は、そうできない理由を頭の中で、いくつも作っていました。
でも私は、こう言ったのです。
「やらなきゃだめよ。誰も、あなたにお金を持ってきてはくれないわよ。だから、自分で頼むのよ」。
どうやって、内なるコーチに助けてもらえるか、彼女と話し合いました。
コーチはこんな言葉をかけてくれるでしょう。
「怖くても大丈夫。それは問題じゃない。あなたは、ただ、昇給を頼めばいいのよ。すごく大胆な行動だと思うかもしれないけど、とにかくやるの。そうする必要があるの。あなたならできるわ。やり遂げて」。
別のクライアントは、同僚にメールを送ったのに、返信がないことを悩んでいました。
彼の内なるコーチが、こんなふうに勇気づけてくれます。
「個人的に受け止めるのをやめなさい。相手の人生で起きていることなんて、あなたにはわからないのだから。あなたがわかっているのは、今、あなたのほうが彼の関心を必要としているということだけ。
あなたの仕事は、忍耐強くがんばること、そして、簡単にあきらめないことです」。
自分に向けたポジティブな言葉を書くと、自己批判や心配から逃れられる人がいます。その言葉を、実際に声に出し、その声を聞くことが効果的な人もいます。
そんなことをするのは、変な気分かもしれませんが、どんなことも、初めてやるときは、気まずいものですよね?
練習が必要です。そうしないと、自分を守るために、恐怖のお世話にならなければなりません。
うまく恐怖を取り扱わないと、恐怖にコントロールされてしまいますよ。
自己批判と心配に負けないステップ
まず、心の中の批判者と心配性の声を聞きましょう。そうしないとそれらの声に対して、何もできません。
次に、その声が作る架空の物語に気づいてください。
最後に、その物語を信じることに抵抗します。
この3つのステップを、何度も何度も練習すること。すると、勇気や自信が湧いてきて、より幸せでいられるし、レジリアンスを強化できます。
//// 抄訳ここまで ////
単語の意味など
geyser 間欠泉(一定の時間を隔てて、周期的に吹き出す温泉)
regale ~を(会話などで)楽しませる
negativity bias ネガティビティ・バイアス ネガティブな情報により注意を向け、記憶に残す傾向。
不安や恐怖に関するほかのプレゼン
危機を乗り越える人(レジリアントな人)の3つの秘密(TED)
心配性は自分で克服できる。恐怖と向き合うことを学ぶ(TED)
恐怖を「克服する」方法(TED):恐怖心に対する新しいアプローチを知ろう。
ネガティブなセルフトークを変えて、前向きに行動しよう(TED)
人はネガティブ思考を引きずるようにできている話と、そこから抜け出す方法(TED)
思い込みから自由になる
かつて、人間が群れをなして、狩りをしながら暮らしていたころは、他人(仲間)の評価は、とても重要でした。
仲間はずれにされると餓死しますから。
だから、誰かに馬鹿にされたり、恥ずかしい思いをしたり、批判されたりすると、私たちは、恐怖を感じます。
ですが、今は、特定の人に評価されなかったとしても、べつに死にはしません。全く困りませんよね?
しかし、脳の大脳辺縁系の部分は、今も、昔のままの反応しているので、人に何か言われると、昔と同じように恐ろしくなります。
人と違うことをするのが怖いのも、世間の目が怖いのも、このせいです。
この恐怖が嘘のストーリーを作って、ストレスを増やすので、インナーコーチの助けを借りて、うまく対処していきましょう。
インナークリティックやインナーコーチ(インナーガイダンスと呼ばれることもある)は、心理学で使われる言葉ですが、横文字なのでピンと来ないかもしれません。
要するに、自分の思考は1つに統一されているわけではなく、その瞬間、いろいろな思考や感情が頭の中に同時に存在しているのです。
腸内細菌を説明するとき、善玉菌、悪玉菌、日和見菌が、丸いかわいいキャラクターで描かれることがありますが、それと似たようなものを想像するといいかもしれません。
ネガティブなことを考えているときは、頭の中が、たくさんのネガティブ菌で真っ黒になっていますが、実は、光輝くポジティブ菌もちゃんといます。
ネガティブ菌とポジティブ菌は、今、私が作った言葉です。メタファーですから、菌の名前は自分で考えてください。というか、べつに菌でなくてもかまいません。
このときたまたま黒い勢力が強いだけで、冷静になって考えれば、ポジティブ菌を拾い上げ、増やすことができます。
それは自分でできることです(ある程度、脳が健康ならば)。
そのために、私は、書くことがとても効果的だと思いますが、ジェーンさんの言っていたように、心の中のコーチが言いそうなことを、自分で話してみてもいいでしょう。
心の中の批判者、心配性、コーチを、区別して考えることができると、批判する声にのっとられ、ずっとそのまま、ということはないと思います。
人間なら、誰でも、論理的で理性的な思考をする能力がありますから。
悩みごとが多い人は、心の中には、自分の味方がちゃんといることを、覚えておくといいでしょう。