ネガティブな人

TEDの動画

最終更新日: 2017.08.14

人はネガティブ思考を引きずるようにできている話と、そこから抜け出す方法(TED)

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ネガティブ思考とは、悲観的な考え方のことです。

最近、続々とネガティブな問い合わせや、相談メールが届いています。

そこで、どうやったらネガティブ思考を改善できるのか、社会心理学者が説明しているTEDの動画を紹介します。

タイトルは Getting Stuck in the Negatives (and How to Get Unstuck) ネガティブ思考にはまってしまうこと(そして、そこから抜け出す方法)。

プレゼンターは Alison Ledgerwood アリソン・レジャーウッドさんです。



ネガティブ思考にはまること

講演の収録は2013年。長さは9分59秒。日本語字幕はありませんが、英語字幕があります。

シンプルな構成で、英語もわかりやすいです。動画のあとに抄訳を書きます。

☆TEDって何? という方はこちらをどうぞ⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

このプレゼンのポイントとなる単語を先に説明しておきます。

gains  ゲイン 利益、手にいれたもの
loss  ロス 損失、失ったもの

いったん落ち込むとなかなか回復しない

今日は、人がどんなふうに考えるのかお話します。

私は社会心理学者で、人をウォッチするプロです。人がどんなふうに考え、どうやったらよりうまく考えられるか研究しています。

数年前、自分の思考パターンに気づきました。

私は基本的に論文を書いて出版する生活をしています。

ふだんは、ふつうの気持ち(ベースライン)で暮していて、論文が受理されると幸せなりますが、すぐにベースラインに戻ります。

その数日後、別の論文が却下されると、ひじょうに気分が落ち込みます。そのうち気分が変わることを期待しますが、なかなか落ち込みから抜け出せません。

ここで不思議なことがおこります。

翌日、別の論文が受理されても、前に却下されたことが頭から離れないのです。

どうしてなんでしょう?

なぜ、成功体験より失敗体験のほうを引きずってしまうのでしょうか?

もしかしたら、人は悲観的な考えにはまってしまうのではないでしょうか?

水が半分入ったグラスと、半分しかないグラス

皆、違う考え方があることを知っています。

水が同じように入ったグラスでも、「まだ半分水がある」と「半分空っぽだ」という2つの見方ができます。

たくさんの社会科学のリサーチが、どちらの説明をするかで、その人の気分が変わることを証明しています。

「まだ半分ある」と見るのは、gained brain(ゲインド・ブレイン)と呼ばれます。自分が持っているものにフォーカスするからです。この状態であれば、人は好ましく感じます。

「半分なくなってしまった」と見るのは、失ったものにフォーカスしていて、人はこれを嫌います。

1つの考え方から別の考え方にシフトしようとするとき、どちらかの考え方にはまってしまうのでしょうか?

どちらか一方の考え方のほうに、偏ってしまうことがあるのでしょうか?

ネガティブな見方をすると、なかなか抜け出せない

この質問の答えを得るために、私たちは単純な実験をしてみました。

手術の結果に関する実験

被験者を2つのグループに分けて、新しい外科手術に関する情報を伝えました。

グループ1:手術に成功する確率は70パーセントと伝える(ゲイン、利益にフォーカス)

グループ2:手術に失敗する確率は30パーセントと伝える(ロス、損失にフォーカス)

全く同じことを、得るものと失うものそれぞれに、注意を引くように説明したのです。

もちろん、70パーセントの率で成功すると説明されたグループのほうが、この手術を好意的に考えました。

30パーセントの率で失敗すると聞かされたほうは、この手術をよいとは思わなかったのです。

次に、グループ1のほうに、「つまり、これは30パーセントの率で失敗するということです」と伝えたら、被験者はもうこの手術を好意的には考えませんでした。気が変わったのです。

グループ2の人には、「つまり、70パーセントの率で成功するということです」と伝えたら、こちらの人々も、手術を嫌ったままでした。

気が変わらなかったのです。

州知事の仕事に関する実験

もう1つ同様の実験をしました。再選を狙っている、現在の州知事の仕事ぶりを伝える実験です。

この知事が就任したとき、予算削減のため、1万人が仕事を失いかねない状況でした。

グループ1:現知事になってから、40パーセントの仕事が確保された、と説明。このグループの人は、現知事を好みました。

グループ2:現知事になってから、60パーセントの仕事がなくなった、と説明。このグループの人は、現知事を嫌い、彼の仕事ぶりはよくないと考えました。

次に、グループ1の人々に、60パーセントの仕事はなくなったと伝えたら、人々は、この知事を嫌いました。

グループ2のほうに、セーブできた職の数字を伝えても、最初の実験と同じように、知事の評価は変わりませんでした。

つまり、いったん、失った方にフォーカスしてしまうと、手に入れたものに目を向けることができないのです。

人は失ったものから手にいれたものに目を向けるのを難しく感じるのでしょうか?

そこで、3つめの実験をしました。

ネガティブでいるほうが簡単

1つの見方からもう1つの見方に変えることがどの程度難しいのか調べる実験です。

病気に関する情報を与える実験

またグループを2つにわけ、異常な病気が発生したことを伝える実験をしました。

この病気のせいで、600人の命が脅かされています。

グループ1:100人助かったら、何人、死んだことになるのかと質問(ゲインにフォーカス)

グループ2:100人死んだら、何人、助かったのかと、質問(ロスにフォーカス)

ともに、600-100=500という計算をするだけです。

ただ、グループ1では、ゲインからロスに視点を変え、グループ2はロスからゲインに視点を変えることになります。

どちらのグループがより早く答えをだせるか調べたところ、ゲインからロスに視点を変えるグループのほうが、早く問題に回答しました。

平均7秒です。

ロスからゲインに視点を変えなければならなかったグループは、11秒かかりました。

つまり、いったん何かが失われたことにフォーカスしてしまうと、その考えにとらわれて、見方を変えにくくなるのです。

私たちの研究と、関連する研究からわかることは、人は、ネガティブな方に傾いてしまうということです。

よい⇒悪いという変換はいとも簡単なのに、悪い⇒よいと思考を変えるのは難しく、努力が必要なのです。





経済に関する考え方

経済を例にとりましょう。2007年から2010年の経済状態を表すグラフです。

あるとき、大きく落ち込みましたが、2010年の終わりまでにはほとんどの経済指標は回復しています。

ところが、消費者の自信は、落ち込んだ状態のままなのです。景気はよくなってきたのに、消費者は心理的に、不景気のときのままです。

奇妙なことに、経済そのものを変えることより、人の心を変えるほうが難しいのです。

ポジティブな物の見方をするには?

物ごとをポジティブに見るためには、努力が必要です。でも、練習できます。

よりポジティブな物の見方をできるように、気持ちを切り替える練習をすればいいのです。

カリフォルニア大学デービス校のリサーチによれば、毎日、自分が感謝していることを数分書くだけで、幸福度や快適さが向上し、健康にすらなります。

また、よいニュースを人に伝える練習も効果的です。

私たちは、その日のいやなできごとを人に伝えて、気を晴らすのはよいことだと考えがちです。

だから、上司が最悪だとか、友だちが折り返し電話をよこさないとか、会議のこととか、うまくいかなかった、ささいなできごとばかりを話します。

そしてよいできごとを話すのを忘れてしまいます。

まさしくこの点で、練習しなければならないのです。

私が家で、夫にさんざんその日の愚痴をこぼすと、夫はそれを聞き、「で、何かいいことはなかったの?」と言います。

すると私は、授業のあと生徒がやってきて、すごく興味深い質問をしたことや、朝、突然メールをくれた友だちのことを話すことになり、だんだん笑顔になっていきます。

きょうは、けっこういい日だったじゃない、と思い始めるのです。

コミュニティ単位でも、ポジティブなことにフォーカスするといいです。

悪いできごとは心に残りやすい点に注意を向けるべきでしょう。

ほんのひとつの意地悪な言葉が、1日、ときには1週間ぐらい、その人の心の中に居座ります。

しかも、悪いできごとは増殖するものです。

誰かがあなたにひどいことを言い、あなたがそれに言い返し、全然関係ない人にも八つ当たりをしたり。

もし、今度、誰かにひどいことを言われたら、それを許したらどうなるでしょうか?

ものすごく態度の悪いウエイトレスに出会ったら、チップをはずんだらどうでしょうか?

私たちの心は、ネガティブな情報を探し、それを持ち続けるようにできているのかもしれません。

けれども、そうならないように少し努力して、コップの中にもっと水が入っていると見ることもできるのです。

//// 抄訳ここまで ////

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ネガティブな相談メールを見て思うこと

このプレゼントをまとめると:

人は物ごとを悲観的に見る傾向があり、いったん悲観的な考えに囚われると、なかなか抜け出せない。

悲観的な考え方から抜け出す方法は

- 1日数分、自分が感謝していることを書く

- その日起きたよいできごとを人に伝える

こうなります。

とくに、その日起きた悪いできごとではなくて、よいできごとを家族や友だちにシェアするのはひじょうに大事です。

話し相手がいない場合は、ノートに書くといいでしょう。

このブログを開設して、2年半ほどたちました。

毎日のようにいただくメールを拝見しているうちに、2つのことに気づきました。

1.悩んでいる人は、自分が持っていないもの/持っていない状況にしか目を向けていない

ある人は子供がいないことを悩んでメールをくれます。

その一方で、子供が小さくて、時間がないから、片付けられない、仕事を思う存分できない、家事がおろそかになってしまう、という悩み相談をもらいます。

ちょっと視点を変えるだけで、問題の大半は解決します。

解決しないまでも、そこまで暗くなることもないでしょう。

過去記事で、けっこうたくさん前向きになる方法とか、足りないマインドを捨てろと書いているつもりですが、ネガティブな相談メールが止まることがありません。

アリソンさんが言うように、人はごく自然に、足りないものを探してしまうのでしょうね。

おまけに、自分がないものにばかり目を向けていることに気づかないのです。私もきっとそうでしょう。

だから、毎日意識して、持っているもの、すでに手にしている状況について考えてみるのは有効だと思います。

2.うまくいかないできごとにフォーカスしている人はいつまでも不幸である

何度もメールをくださる読者の方がいます。

そうした読者の方は2種類に分かれます。

一方は、片付けをしていて、よかったできごと、楽しかったできごとを報告してくれる人たち。この人たちはどんどん幸せになっています(少なくともメールでそう感じられます)。

もう一方は、片付けをしていて、うまくいかないこと、できないこと、苦しいことを報告してくれる人たち。

もちろん本人はそんなつもりはないのです。単なる近況報告であり、断捨離の進捗状況を知らせてくれているのだと思います。

しかし、結果的に、よくないできごとにフォーカスしたメールになっています。

こうした人たちはいつも不幸です。何か1つ、うまくいっても、今度は別の問題を見つけて、相談してきます。

このような人たちにいいたいことは、完璧な人生なんてこの世にはない、ということ。

そして、よかったできごとに目を向ける練習をしたほうがいい、ということ。

アリソンさんのプレゼンが、そのきっかけになればうれしいです。





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