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運は偶然ではなく、自らの行動と準備でつくり出すもの。そう教えてくれるTEDトークを紹介します。
タイトルは The Luck Formula: The Secret to Being in the Right Place at Right Time (幸運の方程式:適切な場所・適切なタイミングにいる秘訣)。
起業家の Yin Noe(イン・ノー)さんのトークです。
幸運の方程式:TEDの説明
Join Yin Noe as she challenges the myth of luck, revealing how preparation, courage, and visibility shape success. From a chance meeting in Hyde Park to winning startup competitions, her journey proves that luck isn’t found — it’s made. Get inspired to step outside your comfort zone and create your own opportunities.
和訳:運の神話にチャレンジし、準備、勇気、自分を見せることが成功につながると伝えるイン・ノーのトークを聞きましょう。ハイド・パークでの偶然の出会いからスタートアップのコンペ優勝まで、彼女の経験が証明するのは、運は待つものではなく、自ら作り出すものだということです。
コンフォートゾーンを抜け出し、自分自身でチャンスを作り出しましょう。
動画の長さは8分34秒。収録は2024年の10月。動画の後に抄訳を書きます。
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
行動する勇気を与えてくれるトークですね。
運は偶然ではない
「運というものは幻想にすぎない」と言ったらどうでしょう? 運は訪れるのを待つものではなく、自分で生み出すことができるとしたら?
これまでの人生で「運がよかったからこれが起こった」と思ったことが何回ありましたか? それは本当に運だったのでしょうか? もしかすると、自分が思っている以上にコントロールできていたのかもしれません。
私も以前は、自分の成功は運のおかげだと思っていました。
夢だった大学に入り、コンピューターサイエンスを学びました。
イギリスのファイナンシャル・タイムズ誌が選ぶ「最も影響力のあるテクノロジー分野の女性50人」に選ばれ、翌年にはヨーロッパ全体のトップ50に入りました。ヒラリー・クリントンに会う機会にも恵まれました。
「それはあなたが努力したから」と思うかもしれません。でも、私の周りの人は、みんなすごく努力していました。
両親も「お前はきっと馬蹄(幸運のお守り)でも持っているんだろう」と冗談を言いました。
混沌としていたはずの私の人生が、なぜかすんなりと進んでいるように見えたからです。
そこで私は考えました。運とは、ただの偶然ではないのではないか、と。
バタフライ効果
バタフライ効果という言葉があります。ブラジルで蝶が羽ばたくと、それが連鎖反応を引き起こし、最終的にテキサスで竜巻が発生するかもしれないという考え方です。
私たちの人生にバタフライ効果を当てはめれば、ちょっとした行動や偶然の会話、大胆な決断が連鎖反応を引き起こし、大きな変化につながるのではないでしょうか?
実際、私の人生にもそんなことが起こりました。
ある日、母がハイド・パークで白い犬を連れたアジア系の女性を私と間違えました。私たちの犬はそっくりだったのです。
おかしな偶然に、私はその女性と笑いました。
でも、私はそこで彼女に「自己紹介をしてみよう」と思ったのです。「新しい友達を作るのも悪くないな」と。思い切って彼女をランチに誘いました。
それから1か月後、私たちは会ってお互いの話をしました。
2人とも女性起業家として、お互いに刺激を受けました。そして彼女が私をTEDxのチームに紹介してくれたのです。
そうやって、私は今、ここに立っています。ある意味、愛犬のおかげかもしれません。
チャンスにイエスと言う
「運がよかっただけじゃない?」と思うかもしれません。たしかに、運が味方した部分もあったかもしれません。でも、それだけではありません。私自身が行動を起こしたからこそ、この結果につながったのです。
私は少々内気なので、こうして人前で話すこと自体が、大きな挑戦です。
たった一瞬の勇気、コンフォートゾーンから一歩踏み出すという決断。それが、私を今日ここへ導いたのです。
そして私は気づきました。
人生に訪れる最大のチャンスとは、100%準備が整ったときや、自分が完璧になったときにやってくるわけではありません。むしろ、その前の小さな瞬間に「はい」と答えると、チャンスが開かれていくのです。
これこそが、私の幸運の方程式の最初の要素です。それは「機会」です。私の言葉で言うなら、「イエスと言える人」になることです。
準備すること
運は、まるで海の波のようなもの。どれだけ完璧な波が来ても、サーフィンの練習をしていなければ乗ることはできません。準備ができている人だけが、その波に乗れるのです。
具体的な例として「人前で話すこと」を紹介しましょう。
以前の私は、そして今も少しはそうですが、人前で話すのがとても怖かったのです。本当に恐怖でしかなく、そのせいで多くのチャンスを逃していました。
そこで、6年前に思い切ってインペリアル・カレッジ・ロンドンで開催された大規模な大学対抗スピーチコンテストに参加しました。出場者は博士課程やMBAの学生ばかり。私はまだ修士課程の学生で、場違いに感じました。
とても緊張しましたが、できる限りの準備をしました。
鏡の前で練習し、友人の前で練習し、さらには友人の飼い犬の前でも練習しました。そして迎えた本番。深呼吸をしてステージに上がり、最初は順調に進んでいました。
ところが、突然 何も話せなくなってしまったのです。
時間が止まったかのように頭が真っ白になり、ただスクリーンを見つめたり、観客を見たり、またスクリーンを見たり…まるで 驚いて立ち尽くすシカ(deer in headlights) のようになりました。
その時、「完全に失敗した」「せめて3位に入れたらいいな」と思いました。
ステージを降り、席に戻ったとき、気まずい気持ちでいっぱいでした。「やってしまった…」と落ち込みながら、他の出場者のトークを見守っていました。そして、いよいよ結果発表の時間が来ました。
3位の発表 —— 私ではない。
2位の発表 —— 私たちではない。
そして1位… なんと、私?!
本当に信じられませんでした。「まさか!」と思いました。驚きすぎて、思わず泣いてしまいました。うれし泣きの瞬間 です。
私の驚きの表情がニュース記事のあちこちに載り、あとから見返すとちょっと笑えるほどでした。
でも、この瞬間は私にとってとても懐かしい思い出です。もうずいぶん昔のことですが、今振り返ると、大きな転機だったと思います。
「完全に失敗した」と思っても、それは次の成功への準備の一歩なのです。あの日を境に、自分の中で何かが変わりました。まるで脳の配線が組み替えられたように。
脳の神経可塑性
この変化について知りたくなり、心理学や科学的な視点から調べました。そこで出会ったのが「神経可塑性(Neuroplasticity)」という概念です。
神経可塑性とは、脳が新しい神経回路を形成し、自らを再編成する能力のことです。
つまり、恐怖に立ち向かうことは、次のチャンスへの準備をするだけでなく、脳そのものを作り変え、生物学的に自分の成功能力を高めるのです。
私はこの事実にとても魅了されました。これこそが、私の幸運の方程式の 第二の要素、すなわち 「準備」 です。
自分を見せること
幸運の方程式の最後のスパイスにいきましょう。
皆さんは、恐れや不安が原因で、自分を表に出すことをためらうことがありませんか?
私たちは、「完璧なタイミング」や「最適な状況」を待ってしまいます。でも、それを待つのではなく、その場に行って自分自身を見せ、チャンスを自ら作り出すことができたらどうでしょう?
私がフィンテック系スタートアップのCEOになったときのことです。
私は金融の経験がほとんどありませんでした。専門はコンピューターサイエンス。実は当時、「ブル(bull)マーケット」と「本物の牛(bull)」の違いすらよくわかっていませんでした。
でも、目の前にチャンスがあったので、挑戦することにしました。何か月も金融の基礎を学び、できるだけ多くの専門家に会いました。
何より大事だったのは、自分を「見える存在」にすることです。
あらゆる関連イベントに積極的に参加し、貪欲に学び続けました。
その結果、私たちの会社は想像を超える成功を収めることができたんです。
私たちのスタートアップは、厳しい競争を勝ち抜き、スタートアップ支援プログラムに参加できることになりました。17,000件以上の応募のうち1%未満しか選ばれない狭き門でしたが、あきらめずに3回応募し、ついにチャンスをつかみました。
これは 「運」だったのでしょうか? それとも、何度も何度も挑戦し、アピールし続けた結果だったのでしょうか?
あなたがその場に行って自分を見せることをためらっている理由は何でしょうか? 何があなたを止めているのでしょう?
今日、皆さんに持ち帰ってほしい一番のメッセージは実際にその場に行くことです。
次にあなたが「やる気が出ない」「このイベントや会議には気が進まない」と感じたとき、その考えを改めましょう。
今日あなたが取る小さな行動が、明日や未来の扉を開くかもしれません。
だからこそ、運を偶然と考えるのはやめましょう。外に出て、自分で運を作りましょう。自分自身の幸運のお守り(ラッキーチャーム)になってください。
/////抄訳ここまで ////
運に関する他のプレゼン
人生において運が果たす役割とは?:バリー・シュワルツ(TED)
小さな行動が未来を変える
運は作り出すものと伝えるトークを紹介しました。
コンフォートゾーンを出て、人生を変えていくのは、シンプルライフや断捨離も同じことです。
使わないものをそのままにしているのは、コンフォートゾーンにとどまることです。
ノーさんのトークで印象的だったのは、「小さな勇気を持って一歩踏み出すと、大きな変化が起こる」 という部分でした。
断捨離においても、些細に思える一つ一つの決断が、後になって大きな変化をもたらすことにつながります。
「もう使わないかもしれないけれど、とりあえず取っておこう」。そんなものを思い切って手放すと、いずれは、部屋が片付き、心が軽くなり、生活全体がシンプルになっていきます。
捨てるのは勇気がいるかもしれませんが、その小さな一歩が生活を変えます。
ノーさんの方程式では、幸運をつかむには『準備』と『自分を見せること』も重要だと言っています。この考え方はシンプルライフにも応用できるでしょう。
シンプルライフでは、自分にとって本当に必要なものや大切なものを明確にし、無駄を省いていきます。
これはよりよい人生に対する準備と言えるかもしれません。
準備を整えておくと、予期しないチャンスが訪れたときに、しっかりつかむことができます。
断捨離を、単なる片付けではなく、新しいチャンスを受け入れるための準備と考えると、前向きに取り組むことができるでしょう。
不用品を手放すライフスタイルは、自分の生き方を見せていくことでもあります。
人生を変えるのは、一瞬、一瞬の決断です。「ちょっと怖いな」と思っても、いらないものを捨てる決断をしましょう。