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ストレスや不安を減らして、もっとハッピーに暮らしたい人におすすめのTEDトークを紹介します。
タイトルは、The Daily Practice That Could Rewire Your Brain (脳の配線を変え得る毎日の習慣)
スピーカーは、企業幹部として豊富な経験を持ち、現在はスピーカーやコンサルタントとして活躍している Timm Chiusano (ティム・チュサノ)さんです。
トークに出てくる appreciation (アプリシエーション)は、ものごとに価値を見出すことです。トークの中で何度も出てくるので、抄訳では、「アプリシエーション」と訳します。
脳が変わるかもしれない習慣
収録は2025年の11月、動画の長さは9分。英語などの字幕あり。自動翻訳機能もありますので、必要なら利用してください。最近は精度が上がっているので、さほど違和感はありません。
動画のあとに抄訳を書きます。
◆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
日常的な話題から入っているので親しみやすいトークですが、アプリシエーションの概念をつかむのが多少難しいかもしれません。
すべてはマンホールのふたから始まった
こんにちは、ティムです。
私は、アプリシエーションに夢中になっています。
変な話に思えますよね。でも、私の話を聞いていただければ、皆さんは二度と同じ視点で物事を見られなくなると思います。
きっかけは、2018年のある最悪な日に見た、マンホールのふたです。
その日は、私のキャリアの中でワースト3に入るひどい日でした。
まあ、企業に勤めていればありそうな悲惨な日だったんです。
私は270人のチームを管理していましたが、皆が同じタイミングで感情がこわれたような感じでした。
8時間も不毛な会議が続きました。しかも、リストラが迫っていたんです。
私はリストラがあると知っていた数少ない人間の一人でした。 恐怖とプレッシャーがありました。
地下鉄を降りて、また夕食に遅刻です。 携帯をチェックすると、上司からメールが入っていました。
「明日の朝9時にオフィスに来るように。最悪な会議になるから覚悟しておけ」 。
家に向かって歩いているとき、ふと気づきました。
「おや、マンホールのふただ。 四角形じゃなくて円形の方が安全だって誰かが気づいたなんて、すごくクールだな。 それに、ここはニューヨークなのに、これインド製だよね。おもしろいね。後で調べてみよう」
そして我に返りました。
「ティム、一体何を考えてるんだ? こんなどん底の日で、いろいろつらいのに、どうしてマンホールのふたのことなんて気にしているんだ?」
本当に疑問でした。
自分はバカなのかな? どうやって脳が別の話題に飛んだんだろう。
もしかしたら、これが私の足を引っ張っている脳の部分なのか? とてもシビアな企業の仕事をしているのに。これが、私の気を散らして、成長を邪魔する脳なのか?
実は違いました。
私は、アプリシエーションが好きなんだと気づいたんです。
ありふれた日常に価値を見い出す
アプリシエーションがなければ、人生はとてもつまらないものになっていたでしょう。 なぜなら、私はありふれた日常に価値を見つけていたからです。
アプリシエーションは、身の回りにある「よいもの」に気づき、それを大切にする行為です。
日常的に実践したら、人生がどう変わるか、想像してみてください。
アプリシエーションに夢中になること、それは、人やものの「よいところ」を認めて楽しむこと、もしくは単に自分の周りの世界をよりよく理解したいと願うことを追求することです。
こうすることが皆さんの日常にとって何を意味するか考えてみてください。
アプリシエーションは、今ここにいて、その時間や、周りの人を楽しむことです。 それは、ニューヨークにある丸いマンホールのふたのような、ちょっとしたことでいいんです。
アプリシエーションは、いったいどういうことなのか、どう活かせばいいのか考え始めたとき、私は気づきました。
思考のクセや偏見が入り込む前に、私は自然とよい面を見ることや、相手を善意で解釈することを選んでいたのです。
おかげで、人生の楽しさのレベルが一段階あがりました。
アプリシエーションをすればするほど、エネルギーや生きる意欲が湧き、想像もしなかったような日常の喜びを感じるようになりました。しかも、私を今日、このステージへ導いてくれたのです。
アプリシエーションする日々をSNSでシェアした
その夜、私はSNSに投稿しました。
「アプリシエーションに夢中になろう(Be addicted to appreciation)」と。
当時のフォロワーは、友人と家族だけです。
本当は、自分自身に向けて言っていました。
「人生をこういう風に見てもいいんだ」と。 そしてアプリシエーションをもっと追求したらどうなるか考えました。
それは、ものの見方を変えるだけでなく、実践できる「行動」であり、思いがけない形で、皆さんに喜びをもたらします。
アプリシエーションと感謝は違う
こんな疑問があるかもしれませんね。
アプリシエーションと感謝(Gratitude グラティチュード)って同じことじゃないの?
実は、この2つは全く違います。
アプリシエーションは土台で、感謝は取引的なものです。
感謝は、何かを受け取ったときに生まれます。でもアプリシエーションは、日々の行動や存在そのものに重ねることができます。
毎日のように、こんな見方をするのは、正直、うっとうしく感じることもあります。
もう3日も雨? → でも、貯水池にはいいかもしれない。
職場にいる、考えただけで胃が痛くなるあの人 → もっと理解すべき相手かもしれない。 相手の立場に立ち、必要なところで関わればいい。そうすれば、自分が主体になって関われる。
信じてほしいのですが、アプリシエーションは、本当に効果があります。
しかも、これは私の思い込みではありません。
ラトガース大学の教授が、アプリシエーションを研究の中心に据え、次のように結論づけました。
彼女は、「アプリシエーションは気質(disposition)になり得る」と結論づけました。それは「感謝(グラティチュード)」とは違います。感謝は、アプリシエーションを構成する8つの要素のうちの1つに過ぎないのです。
日々の中で「気づく」ことを続けるだけで、誰でもアプリシエーションというマインドセットを持つことができます。
たくさんの人が共感してくれた
48歳の私がSNSで150万人ものフォロワーを持つようになったのもアプリシエーションのおかげです。
私は企業人の日常をVlog(ビデオブログ)にしていました。
朝4時から夜10時まで、15分刻みでスケジュールが詰まっている狂ったような日々を記録したんです。
すると人々は、「わあ、これかっこいいね、見ていてすごく癒される」と言ってくれました。
「40代のヤバいくらい最高の月曜日(This is a dope-ass Monday in your 40s)」というのは、昔のSNSのつかみの言葉なんですが、まさかずっとあとになってこれがバズるとは思いませんでした。
でも、バズったんです。
「大人になるのが怖くなくなりました」 「住む世界は全然違うけど、あなたの人生の見方が大好きです」。こんなコメントをもらいました。
全く意図していませんでしたが、アプリシエーションのおかげでこんなことが起きたんです。
アプリシエーションの始め方
アプリシエーションを生活に取り入れる方法をお話ししましょう。
まずは「もの」から始めます。
身の回りにあるものから「電球」を選びましょう。
どこにでもあって、ふだんあまり感謝しないものです。
でも、時間をかけて電球が進歩してきたことや、私たちの気分に何をもたらすか考えてみてください。
このステージを見てください。 照明がもたらす効果は、驚くほど大きいですよね。
一瞬、「わあ、すごいな」と思うだけでも、大きな違いが生まれます。
必要なときに部屋を照らしてくれる。それだけで、立派な価値です。
今夜、ベッドに入るとき、一瞬だけでいいので電球のことを考えてみてください。違いが生まれるはずです。
さて、次は「人」です。
隣に座っている人が、あなたが座ろうと思っていた席を奪ったかもしれません。列に割り込んできたかもしれません。
もし、その人のよさを認める理由が必要なら、こう考えてみましょう。
「この人と同じ境遇、同じ人生を歩んできて、自分はもっとよくできただろうか」と。 答えはノーです。こうすれば人のことをもっとよく解釈できます。
皆が一緒に幸せになれる
最後に、アプリシエーションが自分に何をしてくれるかお話しします。
世界には、どうしようもなく嫌なものもあります。アプリシエーションは万能ではありません。
でも、つらい出来事に直面したとき、それを理解し、意味を見出そうとすれば、私たちは一緒に変化を起こせる存在だと気づけます。
アプリシエーションは、皆さんをより幸せにしてくれます。
驚きが増えるし、今を生きることができるし、当たり前のことを当たり前と思わなくなるでしょう。
ふだん、アプリシエーションを心がけると、他の人を励ますことができるし、お互いの違いを、お互いを信じる理由として捉えることができます。
世界は今、アプリシエーションを必要としています。
ものごとのやり方やそうする理由をよりよく理解するには、少し違う視点で見ることが必要です。
日常を、もう少し当たり前だと思わずに生きることは、私たちにとってよいことです。
皆が心から共に生きる世界に感謝できるとき、 私たちは集団として大きな力を発揮できると信じています。
心の持ち方に関するほかのプレゼン
私の朝のコーヒーを可能にしてくれたすべての人に感謝する旅(TED)
制限があるからこそ素晴らしい物が生まれる:震えを受け入れる(TED)
感謝が苦手な人はアプリシエーションから始めてみる
「幸せになりたいなら感謝しよう」とよく言われます。でも、つらい状況や心が疲れているときは、感謝したくてもなかなかできません。
そんなとき、アプリシエーションから始めるといいと思います。
アプリシエーションは、端的に言ってしまえば何かに気づくことです。
周囲にいる人や、そこにあるものに対して、「これは、よいものだ」「意味がある」「価値がある」と感じること、もしくは、なぜそれがそうなっているのか理解しようとすることがアプリシエーションです。
この場合、何かをもらっていなくても、特に強い感情が動かなくてもできます。
アプリシエーションするとき、べつにありがたいと思う必要はなく、ただ、そこにそんな背景があるんだなと思うだけで十分です。
アプリシエーションをしているときは、結果を評価しているというより、何かを探している状態です。
それは、現実をそのまま受け入れることでもあるので、気持ちがラクになります。
変えられない状況に対して、「どうして、そうなるのかな」と興味を持つと、ただ振り回される状況から、関心を向けている側に変わるので、無力感も減るでしょう。
「感謝をするのは苦手だな、わざとらしい」と思ったら、アプリシエーションを試してください。
きっと、今よりストレスが減り、つらい状況でも喜びを見つけられます。














































