ページに広告が含まれる場合があります。
現代人がやりがちなマルチタスク。マルチタスクとは、複数のこと(マルチタスク)を同時にすることです。
マルチタスクは、たくさん仕事ができ、時間の効率化になるというのは幻想です。それどころか脳にダメージを与えます。その理由をお伝えします。
※マルチタスクはmultitask で「同時にいくつかの仕事をする」という意味の動詞、マルチタスキング multitasking はその名詞形です。
日本語ではマルチタスクは名詞のように使われているので、この記事ではマルチタスクもマルチタスキングも「同時に複数の仕事をすること」という意味で使っています
マルチタスクとは?
音楽を聞きながら料理をしたり、掃除をするのはマルチタスクではありません。音楽は完全にBGMになっていますから。
仕事をしているとき使っている脳の部分と音楽を聞いているとき使っている部分は別の場所だそうです。
ここで言うマルチタスクは、たとえば会社でクライアントや同僚と電話で話しながら、ひそかにiPhoneでテキストメッセージやツイターをチェックしたり、歩きながらテキストしたり、友達と会っているとき、友達の話を聞きながらメールをチェックしたりということです。
誰しも経験があるのではないでしょうか?
スマホやパソコンといった通信機器、デジタル機器が進歩したので、私たちは1度にいろいろなことができると錯覚しています。
私もたまに娘や夫が話しを聞いているふりをしながら、ブログの記事を書いています。
これは全くよくありません。
脳はマルチタスクするようにはできていない
自分は複数の作業をこなしていると思っていますが、実は脳はマルチタスキングできないようになっています。
たとえばガムをかむような自動的にできる反復作業をしながら、メールをチェックすることはできるそうですが、メールをチェックしながら人の話を能動的に聞くことはできません。
脳は常に1つの作業で手一杯なのです。一見マルチタスクに見えていても、脳は1つの作業からもう1つの作業へ大急ぎで焦点を切り替えています。
するとこんなことが起きます。
マルチタスクはクセになり、そのせいで集中力が低下する
マルチタスキングしていると、ドーパミンが分泌され、これがクセになり脳は同じことを繰り返します。
マルチタスキングが快感を引き起こす行動になってしまうのです。
というのも常に新しい刺激が飛んでくるので脳はうれしいのです。これを心地よい刺激だと思ってドーパミンが出ます。
前頭葉の前のほうの部分は新しいものが好きだそうです。人が買い物をやめられないのは、そのせいもあると言われています。
脳は同じパターンの快感を感じたくて、延々とマルチタスキングをしてしまいます。
パソコンでインターネットをしながら、お客さんと電話しつつ、そばにあるスマホでツイターをチェック。
こんな行動が楽しくなり、脳から報酬を受け取り続けるのです。「自分はすごく仕事ができる。時間を効率的に使っている」と錯覚します。しかし、これは甘いお菓子を食べて幸せになっているのと同じようなものです。
マルチタスクをしているとき、脳は高速でフォーカスのスイッチを切り替えているだけ。いつもこれをやっていると、フォーカスする能力がだんだん落ちてきます。いざ集中したいとき、集中できません。集中力が低下するのです。
おそろしいですね。
しかもマルチタスキングはストレスも引き起こします。
コルチゾール(ストレスホルモン)とアドレナリンの分泌が増え、脳にダメージを与える
マルチタスキングをしていると、常にどちらか一方(あるいは複数)のタスクは「待ちの状態」です。
後回しにされているわけです。
ふだんの生活でも、やらなければいけないのにやれていないと、それがストレスになりますよね?
未完了のことがあると、夜、すっきり眠れません。それについてはこちらに書いています⇒梅雨で気分がスッキリしないあなたに~毎日5つだけ捨てて暮しを変える
マルチタスキングもいつも未完了のことをかかえているわけですから、脳にとってストレスになるのです。
ストレスを感じるとコルチゾールが分泌され、アドレナリンも出ます。そして、ストレスの元(外敵)と戦うためにからだは優先順位を変更します。消化が後回しにされたり、免疫が落ちたりするのです。
この点については、こちらに詳しく書いています⇒集中できないのはぐしゃぐしゃの部屋にいるから。ガラクタは脳にも悪影響を与えています
コルチゾールは脳にとってあまりいいものではありません。強いストレスがかかったとき、つまりパニックになったとき、一瞬記憶が飛んで何も考えることができなくなりませんか?
あまりそういう経験はないでしょうか?何かすごく大きな衝撃を受けることですが。
仕事をしながら、ツイターで全然関係ない投稿を見ている時に、これと同じようなことが起きています。記憶は飛ばないでしょうが、多かれ少なかれ頭の中がぼんやりしたり、考えがまとまらなくなります。
そのためミスを誘発するし、作業スピードも低下します。つまりマルチタスキングするとかえって作業効率は低下するのです。
仕事をバリバリやろうとしている気持ちとはうらはらに、作業が進みません。
考えてみればあたりまえのことです。
2つのことを同時進行するより、1つに集中するほうが、その作業は早く、うまく成し遂げられます。
それだけではありません。コルチゾールは脳の海馬(かいば)を壊すと考えられています。海馬は大脳皮質側頭葉(だいのうひしつそくとうよう)の奥の方にある部分です。
海馬は新しい記憶をストックしておくところ。また、さまざまな感覚を通じて入力された情報を認知する場所です。
長期間、習慣的にマルチタスキングをしていると、認知症のリスクがあがると言われています。
学習能力も低下する
マルチタスキングしながら、何か新しい情報を学ぼうとすると、その情報は、脳の間違った場所に行ってしまうという研究があります。
たとえばテレビを見ながら、試験勉強をすると(ながら勉強)、情報は脳にインプットされるものの、線条体(せんじょうたい)に行ってしまったりするのです。線条体は「何かをやる方法」の記憶を司る場所です。
ボールの蹴り方とかそういうのでしょうか。教科書を見て年号を覚えても、それは「事実を覚えておく場所」に行かず、ボールの蹴り方を覚える方面に行ってしまうのです。
テレビを見ずに、教科書だけに集中していれば、ちゃんと海馬に情報を格納でき、試験のとき、そこからさっと取り出すことができるわけです。
もちろん脳は疲れる
マルチタスキングをして、こっちのタスク、あっちのタスクと脳が高速で焦点を切り替えていると、当然脳は疲れます。
脳はたくさんグルコースを使います。グルコースはブドウ糖のことで、人の生命活動のエネルギー源です。
車で言えばガソリンです。特に脳は全身の20%のエネルギーを使っています。
脳がいつにもましてブドウ糖を使ってしまったら、私たちは疲れます。脳が疲れれば、全身も疲れてしまうのです。
疲れてしまい気が散りやすくなり、またしても集中できなくなります。集中できないし、コルチゾールがたくさん出ているので衝動的になるし、イライラしてきます。
しかも、マルチタスクは、短期間にいろいろ選択しなければならない状況です。
お客さんと話しながら、お客さんの言うことを理解しようとしつつ、このテキストメッセージに答えるべきか否か、このツイートをリツイートすべきか否か、このメールは削除すべきか、アーカイブすべきか、そろそろ電話を切るべきか、そろそろ休憩をするべきか、休憩は会社でするか、そばのコメダに行くか、コメダでは何を頼むべきか。
脳はバチバチとフォーカスを切り替えつつ、ぐるぐると選択もし続けています。
こうした意思決定は脳に負担をかけます。さらに人が「選択するエネルギー」は限られています。
細かいことをごちゃごちゃ選択しているあいだに、もっと大事な選択をするエネルギーが枯渇してしまうのです。
この点については、何かを成し遂げる人は、いつも同じ服を着ている話で書きました。服を決める選択にエネルギーを使わず、もっと大事な選択にエネルギーを使うためです。
こちらにくわしく書いています⇒ミニマリスト主婦の普段着とよそ行き~少ない服はストレスフリーで生産性があげる 「服が少ないほうが生産性があがる」のところを読んでください。
小さな作業をマルチタスクしていると、選択するエネルギーが失われてしまい、本当に大事なことを決めるときにうまく決められなかったり、まずい判断をしてしまうのです。
一度にたくさんのことをしようとすると、その作業の効率が落ちるだけでなく、もっと大事な仕事をするとき、意思決定がうまくできなくなるのですね。
*******
先進国に生きている現代人の脳はそれでなくても疲れています。日々、たくさんの情報が押し寄せてくるので、情報の取捨選択や分類をしなければなりません。
しかも、なんだか毎日やることが増えています。
一昔前は旅行に行きたいときは、旅行エージェントや飛行機会社に電話して、担当の人に、飛行機の座席をとってもらいました。
しかし、今はインターネットで自分でできます。さまざまな情報を見比べながら。
昔は、買い物は必ず店に行って、店員さんのアドバイスに耳を傾けながら、商品を手にとって選んでいました。
今はたくさんあるネットショップを見て、値段、決済手段、発送方法など比較検討して自分で決めることが多くなりました。
明らかに日々処理しなければならない情報は増えているのです。
そんなときにマルチタスクをするとますます脳が疲れてしまいます。できるだけ1つのことに集中するように、心がけたいものです。