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毎週TEDのプレゼンを紹介しています。今回は、アレクサ・ヴォン・トーベル(Alexa von Tobel)さんという女性の、One Life-Changing Class You Never Took (あなたが絶対受けたことがない人生を変える授業)です。
内容は、パーソナルファイナンス(personal finannce)です。パーソナルファイナスとは、個人のお金の管理、家計管理のこと。
アレクサ・ヴォン・トーベルさんとは?
アレクサさんは、learnVest という女性向けファイナンシャルサービスをするサイト(会社)を立ち上げた人。ハーバード大学のビジネススクールをやめて、会社を作りました。
彼女は、「アメリカ人は、パーソナルファイナンスについて、全く学校で習わないから、どんどん貧乏になっていき、ひいてはそれが国家の経済状況を悪化させている」と考えています。
「社会に出る前にお金に関するシンプルな原則を皆に教えておけば、この事態を避けられる」というのがこのプレゼンでの主張です。
現在20代~30代ぐらいの人にはとても有益なプレゼンですが、50代の私にも学びがたくさんありました。
TEDxWallStreetのプレゼンで、日本語字幕はありません。抄訳をつけます。動画のあとに、特にお金に関する語彙リストをのせますので、英語を学んでいる方は参考にしてください。
動画は11分28秒。現在、アメリカドルは、1ドル、108円ですが、抄訳では、100円で計算します。
※TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
語彙リストと注釈
The Biiggest Loser アメリカのリアリティショー。
肥満の人がどれだけやせられるか競います。優勝すれば賞金がもらえます。リアリティショーについてはこちらをどうぞ⇒リアリティーショーの魅力とは?
elliptical machine ペダルを漕ぐ感じの運動器具。かなり大きいです。
weigh-in ボクサーなどが体重検査を受けること。
401k アメリカの年金、定年退職後の積立。
あまり詳しいことは知りませんが、確定拠出年金です。従業員は自分でどれだけ積み立てるか決めて、それに応じて雇い主もお金を出します。
自分の口座を開設し、どのようにお金を運用するか自分で決める、自己責任型年金です。運用のうまい人は年金がたっぷりあり、何も考えてない人は、老後貧乏です。
living paycheck to paycheck 給料から給料を生きること。つまり給料が入ると、処々の支払いですぐにお金がなくなる自転車操業の状態。
credit score クレジットスコア、信用偏差値。その人の信用を計るもの。クレジットカードの借り入れ残高、返済状況、どのぐらい使っているかなどいろいろな要素から点数がつきます。
アメリカやカナダでは、クレジットスコアは、その人が社会的に信頼できる人かどうか、大きな目安にしています。
測っている会社によって多少違いますが、だいたい300~850点ぐらい。点数が高いほうがいいです。
スコアの高い人は住宅ローンを組んでも借り入れ金利が安いのに、低い人は金利が高かったりします。アメリカでは就職試験でも、スコアをチェックされ、スコアが悪い人は、不採用になることも。
スコアをあげるためには、期日までにちゃんと支払うことが大事。さらにあまり利用しすぎてもだめ。かといって、使わなさすぎてもだめで、毎月コンスタントに使う必要があります。
やたらとクレジットカードを作るのもだめですが、たまには新しいクレジットカードを作らないとだめです。
理想は利用歴の長いクレジットカードを2,3枚持っていて、すべてをコンスタントに使っていることでしょうか。
私はカナダのクレジットカードは1枚だけで(何しろミニマリストなので)、しかも、あまりクレジットカードを使っていません。
担保のある借金(住宅ローンや自動車のローン)をいっさいしたことがないため、クレジットスコアは低いはずです。最悪ということはないでしょうが。
1度、何かのローンで断られたことがあります。それが何だったのか思い出せませんが。
現金で払えても、ローンを組まないとスコアが上がらないなんて、変なシステムなのですが、そうなっています。アメリカでは、この点数は、学生時代の偏差値より、よほど日々の生活に影響があるようです。
私の夫はクレジットカードを持っていませんが(借金のため、ブラックリストにのった)こういう人は、かなり暗い人生を歩むことになります。
Roth IRA アメリカの年金の一種。拠出額は課税されるけれど、年金をもらったその額は非課税です。今税金を払って、老後は税金を払わない選択と言えます。
APR Annual percentage rate 年利
529 plan アメリカの公的学資保険。毎月積み立てます。利回りは課税されないし、学資として引き出せば、それも非課税です。税金の控除に使えるのがいいところです。
アメリカの大学はものすごく授業料が高いです。
概算ですが、州内の公立大学に行けば、年間、9,000ドル(90万円)、州外の公立大学だと、23,000ドル(230万円)、私立大学は31,000ドル(310万円)です。数字のソースはこちら⇒How Much Does it Cost to Study in the US? | Top Universities
これは授業料だけ。ほかに教科書代や住居費もあります。教科書がけっこう高いです。
私立の有名校(スタンフォードやハーバード、MITなど)は4万ドル近いです。子供1人大学にやるだけで1千万越えます。2人、3人と子供がいたら大変ですね。こんなに払える親は金持ちです。
そこで、多くの学生は奨学金や学生ローンを利用し、卒業するときに借金があるわけです。
実は私の娘も今年の9月から州立の大学に行きます。
年間8000ドルぐらいの授業料だったと思います。大学のページには、平均5000ドルと書いてありますが。
この金額は学部によって変わります。これまでのところ、願書を出す時に、140ドルぐらい、席を確保するのに550ドル払いました。
☆One Life-Changing Class You Never Tookの抄訳
人は日に6~10回お金に関する決断をしている
私はパーソナルファイナンスに情熱を傾けています。
きょうは、私の好きなテレビ番組、The Biiggest Loserの話から始めます。私、この番組が大好きで、エリプティカルマシーンで運動しながら見ています。
ドーナツを爆食するところや、体重検査のところ、とってもおもしろいですね。
この番組を見るたびに、思うんです。なんて素晴らしい番組なんだろうと。アメリカ人は、肥満に悩んでいるし、この番組のおかげで、その問題に関心を寄せることができます。
毎週火曜日に、600万人がこれを見てます。いつも思うのです。「ああ、これのパーソナル・ファイナンス版があればいいのに」って。残念ながら、お金の話は相変わらずタブーです。
平均的なアメリカの国民は、毎日、日に6~10件、お金に関する決断をしています。コーヒーを買うべきか否かという簡単なものから、401Kに関する、重大なことまで。
ここで問題なのは、こういうお金に関する決断に関して、まったく教わらないということ。アメリカでは、高校、大学、大学院で、パーソナルファイナンス(以降PFと略します)について全く教えていません。
たいていみんな両親に聞いて学びますが、その両親も、PFについて、何も教わっていないのです。皆、試行錯誤して学んでいるのですね。
お金のことはとても大事なのに、試行錯誤するしかないのです。
お金はストレスの一番の元
若者たちが最もストレスを感じているのはお金のことです。アメリカ国民の76%が、お金の管理ができてません。友だちの4人に3人、この会場の75%の人が、お金について、どうしたらいいのかわからない状態です。
現在、大学の卒業生の84%が、お金に関してもっと助けが必要と言っているのに、サポートを得られません。
その結果、61%の人が、自転車操業です。50%以上の人が、どうやって来月の支払いに苦慮しています。これは驚くべき数字ですね。ストレスがいっぱいです。
どうしてこんなことになってしまったのか?
こんな事態になった原因を知るために、今年、大学を卒業した180万人の1人を例にあげて、どうしてこんなふうになるのか、見てみたいと思います。
お金に関する5つの誤り
ここにジェシカという人がいます。22歳のごくふつうのアメリカ人。大学では英語を学びました。今年大学を卒業しますが、25,000ドル(250万円)の学生ローンと、クレジットカードのローンが4,000ドル(40万円)あります。
もし運がよければ、繰り返しますが、運がよければ、卒業後すぐに就職して、年収35,000ドル(350万円)稼ぐでしょう。ということは、月、2,300ドル(23万円)の給料です。
ここで、ジェシカがする5つの決断を紹介します。本人も「まずい決断」だと自覚しているものもあるし、それが悪いとすら知らないものもあります。
1.予算を立てない
第一に、ジェシカは予算を立てていません。彼女は、「私はほとんどお金がないのに、予算なんて立ててどうするの?」と考えています。
ジェシカは、推奨されているお金の管理方法も知りません。
収入の50%をどうしても必要なものに使い、30%をライフスタイルに使い、20%を将来のために使う、というものです。この20%は大切なポイントです。
(☆筆子注:必要なものとは、衣食住にかかる費用、ライフスタイルはその他の趣味や楽しみにかかる費用)。
ジェシカは、大学卒業後、大都市に出て、アパートを借ります。大学卒業後に、多くの人がやることですね。そして、家賃に1,200ドル(12万円)払います。
アパートを借りるという決断をしただけで、適正な予算からはずれてしまいます。将来のために20%貯金しないので、今後ずっとリスクがついてまわります。
2.借金を返さない
ジェシカはすでにたくさん借金があります。彼女はこんなふうに思うのです。「みんな借金があるじゃない。どうして、そんなに心配しなければならないの?」そして、最低限の支払いをします。
あるいは、時々、支払いをしません。なぜなら、クレジットスコアというものを知らないから。これがどんなに大事なものか知らないのです。
3.緊急事態のための貯金をしない
ジェシカは、緊急事態用の貯金についても考えていません。というのも、毎月の支払いだけでせいいっぱいだからです。
明日仕事をくびになったり、何かの緊急事態になったら、経済的にとても危ういことを知りません。クレジットカードの借金に頼るしかありません。
4.昇給の交渉をしない
彼女の4つめの過ちは、サラリーアップの交渉をしないことです。「仕事があるだけでありがたい」と思っていて、給料をあげてもらう交渉をせず、上司があげてくれるのを待っています。
だから数年たっても、年収35,000ドルです。
5.20代のとき老後のことを考えない
最後の大きな過ちは、20代で老後のことを考えていないことです。というのも退職までまだ43年あるからです。
だから、せっかく401kプランがあるのに、利用しません。
15年後もお金に苦しむジェシカ
では、ジェシカの15年後を見てみましょう。彼女はお金に関して、まったく態度を変えておらず、相変わらず、ミスをし続けます。
ジェシカは結婚し、子供を2人もうけます。15%の年利の借金を申し込みます。
ジェシカの借金は、2万ドル(200万円)近くになっています。お金が必要になるたびに、クレジットカードで借金するからです。借り入れの金利もあがっています。
この時点で、まだ1万ドル(100万円)の学生ローンが残っています。
20年前にした決断のせいで、まだ毎月苦しんでいるのです。クレジットスコアは622から500台に転落。というのも、借り入れが増え、返済の延滞も増えたからです。
幸い、ジェシカは退職後のことを考え始めました。ところが、退職後用の貯金は、10,000ドル(100万円)に満たない額です。実は、アメリカ人の54%がこんな状態です。
ジェシカは子供たちのために529プランの積立をしていません。というのもそんな余裕はないからです。
お金のないアメリカ人
ここで考えてほしいのです。この状態が国家にどんな影響を与えるか。ジェシカのような人が何百、何千万とこのアメリカにいます。
現在、アメリカの消費者の借金(クレジットカードによる借り入れ)は2.5兆ドル(250兆円)です。
こんな状態では、家を持つアメリカンドリームは実現しません。申し込みの25%は即却下されています。
アメリカ人の31%が、老後のためのお金を持っていません。65歳になって、体にガタが来てもリタイヤできないのです。
おまけに、離婚の原因の1番はお金のことです。これがアメリカの現実です。
ジェシカ夫婦の子供も同じ道をたどります。子供たちは、ジェシカの老後の面倒を見なければならない分、悪い状態です。
このようなドミノ打おしの影響は、世代を経て続きます。ジェシカの決断は、その後の世代に大きな影響を与えます。
では、どうしたらよかったのでしょうか?
大学を出る前に、ジェシカに、お金に関する5つのシンプルな原則を教えておけば、こんなことにはならなかったのです。
お金に関する5つの原則
1.予算を立てる。収入より少ない額で生活する。
2.借金をしない。クレジットカードの借金は全額返済する。
3.緊急用の蓄えをしておく。
4.昇給の交渉をする。
5.20代から退職後のお金を貯めておく。複利のおかげで、同じ金額をためても、早く始めたほうが倍額以上の差がでる。
この原則を、早くにジェシカに教えておけば、数年後、ジェシカは夢見ていたコーヒーショップを開くこともできるし、持ち家も持てるし、退職後の生活を心待ちにできます。
子供たちも529プランのおかげで、安心して、大学に行けます。
この原則はジェシカに力を与えることができるのです。
お金はライフラインです。お金は私たちが死ぬまで、毎日の暮らしに影響を与えます。人々が社会に出るまでに、このシンプルな原則を教えることができたらどんなにいいでしょう?
そうすればみんなに力を与えることができます。経済的にとても豊かな生活を送れるようになるのです。ひいては、国家の経済状態にもいい影響があるし、これからの世代の人はより豊かになっていくのです。
お金持ちになることが大事なのではありません。お金には人生を豊かにする力がある、ということが重要なのです。
—- 抄訳ここまで —–
お金のことは学校では教わらない
学校ではPFについて学ばない、というのは、日本でも同じですね。なぜか、学校では、こういう日常生活に直結しているスキルを教えません。
5つの原則の中で、いかにもアメリカ的なのは、サラリーをあげてもらう交渉をする、というところですね。でも、これ、日本でもやってみたらいいと思います。
たとえばアルバイトの時給なども、交渉次第であがりそうです。私たちはもっと「交渉」をする民族にならなければなりません。
50代でも使えるお金に対する考え方
私のように50代で貯金なしの人には、見るのがつらい動画ではあります。最後の、20代から積立を始めた人と、40代から始めた人の貯金額の違いを示すグラフは衝撃的です。
ですが、少なくとも、まだリタイヤまで時間があります。
きょうからでもこの原則を実行すれば、大きな違いがあるのではないでしょうか。50代で退職後の蓄えがない人は、ほかにもこんなことをするといいと思います⇒50代で貯金のない主婦が、老後のためにできる3つのこと
「なんとかなるさ」と理由もなく楽観的になるのではなく、「今さらどうにもできない」とあきらめることもなく、きょうからコツコツ貯めていきたいですね。
私もがんばりますので、同じような状況の方、一緒にがんばりましょう。