ページに広告が含まれる場合があります。
考え方を変えるのに参考になるTEDの動画を紹介します。
タイトルは、Can You Change Your Perception in Four Minutes? (ものの見方を4分で変えることができるか?)
講演者は心理学の学生でリサーチアシスタントの、Pari Majd (パリ・マジド)さんです。
このプレゼンでは、ローカスオブコントロール(Locus of Control、LOC)というコンセプトが紹介されています。
LOCは、人の信念をあらわすモデルで、自分の身に起こったできごとの原因を自分のせいだと考えるか、外的要因だと考えるか、スコアで表します。
ものの見方を4分で変える?(TEDの説明)
Ever heard of locus of control? Pari explains how we can use the locus of control to change the way we see the world and better enable us to succeed.
ローカスオブコントロールを聞いたことがありますか?
パリは、ローカスオブコントロールを使って、世界の見方を変えれば、より成功に近づくと説明します。
perception は、知覚、認知、つまり、ものごとの受け取り方、解釈です。
収録は2017年4月。動画の長さは15分。字幕はありません。動画のあとに抄訳を書きます。
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
言葉は人に大きな影響を与える
「ジョニー、あなたは本当に言うことを聞かないのね。1時間前におもちゃを片付けるように言ったでしょ。
通知表、もらってきた? 見せなさい。やれやれ、妹に、もっといい成績をとってもらいましょ」。
「ジョニー、遅かったのね。どこに行ってたの? 居残りしてた? また?
これで3回めじゃないの。居残りばっかり、それに停学?
お父さんを呼ばなきゃ。あなた、こっちに来て。息子にはがっかりさせられるわ」。
こういうセリフ、よく聞きますが、こうした言葉は、人に大きな影響を与えます。
これまでいろいろなリサーチに参加しましたが、自分自身のリサーチを始める前は、おもに学生のリサーチを手伝ってきました。
たいてい、小さな子どもが対象の研究です。
子どもを連れてきた保護者は、実験のあと、私に質問をしました。
「うちの子はどうでしたか?」「家ではもっとうまくやるんですけどね」などなど。
最悪の質問は、「うちの子はとてもできが悪いんです。どうやったら、もっと賢い子にできますか?」です。
この質問、よくあります。
私の答えはいつも同じです。
「いえ、お子さんはとてもよくできました。とてもがんばっていますね」。
当人が、保護者の隣に座っているのですから。
私の言葉は、その子の、自分の見方に影響を与えます。
それに、親のその子に対する見方にも影響を与えるでしょう。
ローカスオブコントロールをとは?
ある夏、スティーブン・ウィーキー博士とリサーチをしたとき、はじめて、ローカスオブコントロールという言葉を知りました。
ローカスオブコントロールは、日常のできごとの結果をどれだけ自分がコントロールできるか、考える度合いです。
自分の人生をどの程度、コントロールできるかどうか。
略してLOCと呼ばれます。
ローカスは、虫のバッタ(locust ローカスト)のことではなく、点や位置という意味のローカス(locus)です。
実際にお見せしましょう。
インターネットで、水をいれたペットボトルを一回転させるのが流行っています。
ボトルをほうり投げて、うまく着地させるのです。
やってみせますね。
〈ボトルが着地する〉
ボトル投げに成功したのは、私の運がよかったからだと思いますか?
それとも、私が事前に練習をしたからでしょうか?
内的な力と外的な力
練習したからうまくいったと考えた人は、LOCのスケール(矢印)で、インターナル(internal 内的な)のポイントを獲得します。
「私が、結果をコントロールすることができた」と考えたからです。
「運がよかったから」と答えた人は、エクスターナル(external 外的な)のポイントを獲得します。
外的な力のせいで、こうなったと考えたからです。
このような、LOCを測る質問にたくさんこたえてポイントを出すと、自分はインターナルか、エクスターナルかわかります。
インターナルな人は、人生のほとんどを自分でコントロールできると考え、エクスターナルの人は、自分の力ではなく、他人やほかのできごと、運などのせいで、いろいろなできごとが起こると考えます。
私はとてもインターナルで、自分の行動が結果に影響すると考えているので、ここでボトルを投げる前に、できる限りの練習をしました。
事前にリサーチして、うまく投げるコツを学び、成功する確率の高いボトルを選び、うまくいきやすい量の水(ボトルの3分の1)を入れ、投げるタイミングも工夫し、何度も練習したのです。
内的要因を見つけるほうが人生はうまくいく
リサーチによれば、一般に、インターナルであるほうが、有益です。
「運のせいだ」と思った人、心配しないでください。
自分がインターナルかエクスターナルか調べるには、もっとたくさんのLOCの質問に答えて判定します。
100%インターナルやエクスターナルの人はとてもめずらしいし、完全にインターナルなのもよくありません。
状況によってはエクスターナルに考えるほうが、自分のためになります。
たとえば、リサイクルするゴミを出したのに、ゴミの収集が行われないとき、それは自分のせいではありません。
このとき、インターナルすぎると、自分を責めてしまいます。
収集日でない日にゴミを出し、ゴミの収集がないと文句を言ったら、エクスターナルになりすぎています。
インターナルな人のほうが成績がいい
ここに2人の生徒がいるとします。1人はインターナル、もう1人はエクスターナルで、2人とも試験に落ちました。
なぜ落第したのかと2人に聞くと、インターナルの生徒は、「勉強不足だったから」と答えるでしょう。
エクスターナルの生徒は、「先生が悪い」「運がよくなるシャツを着ていなかったから」と答えます。
次に試験があったとき、インターナルの生徒は、より勉強するので、得点があがります。エクスターナルの生徒は、運を運ぶシャツを着て試験を受けるでしょうが、得点は変わりません。
リサーチによれば、LOCは、学業における達成や成功の度合いを決める、もっとも重要な唯一の要因です。
インターナルであるメリット
1950年代から、LOCに関するたくさんの研究がなされています。
学業の成功だけでなく、一般にインターナルであるほうが、人生のいろいろな面で助けになります。
1.すぐれたスポーツ選手は、とてもインターナルなことが多い
たとえば、モハメド・アリ。彼は、こんな言葉を残しています。
I am the greatest, I said that even before I knew I was.
(私はもっとも偉大だ。そうだと知らなかったときから私はそう言ってきた)。
I hated every minute of training, but I said, ‘Don’t quit. Suffer now and live the rest of your life as a champion.
(私はトレーニングが大嫌いだった。しかし、自分にこう言った。「やめるな。今、苦しんで、残りの人生をチャンピオンとして生きろ」)
とてもインターナルな言葉です。
2.インターナルだと薬やアルコール中毒になりにくい。
無理強いされても屈しないからです。
3.インターナルな生徒はいじめられることが少ない。
ほかの生徒に、靴をけなされても、「私はこれが好きなの」と言えます。
4.インターナルの透析の患者はより治療に専念する。
自分の行いが、健康にインパクトを与えると信じているからです。
LOCを変える実験
こうした研究をたくさん読み、物足りないポイントに気づきました
インターナルであることにこんなにメリットがあるなら、どうして、みな、人々をよりインターナルにしようとしないのか?
この点に関する研究は見つかりませんでした。
そこで私は、人のLOCを変えるために、何らかの介入はできないだろうか、と考えました。
精神療法のクラスの実験として、やってみることにしました。
4分間で、LOCを変えられるか、実験したのです。
短いほうがやりやすいので4分にしました。
実験のプロセス:
1.先に被験者のLOCを測定しておく
2.被験者にLOCに働きかけるビデオを見せる
3.再度、被験者のLOCを測定する
働きかけるビデオは、ポジティブな言葉と映像があるものと、ネガティブな言葉と映像のあるものを選びました。
ポジティブなビデオはワークアウトをする気にさせるものです。
人が早起きして、ジムに行ったり、山登りしたり、重量挙げをしたりします。
ネガティブなビデオは、気候の変化に対して、なすすべがない様子、人々が泣いているところ、洪水が家を押し流すところ、政治家たちが、いい法案を思いつかないところなど見せるものです。
ポジティブなビデオを見れば、よりインターナルになり、ネガティブなビデオを見れば、よりエクスターナルになる、と仮説をたてました。
実験の結果、よりインターナルにするのは、わりと簡単だが、よりエクスターナルにするのはむずかしい、とわかりました。
自分でLOCを変える方法
考え方を変えるだけで、結果に大きな影響があるのだから、LOCを変えるべきです。
私の夢は、職場や学校、病院などで、LOCを変える働きかけをすることです。しかし、これはコミュニティのサポートがなければできません。
そこで、自分自身で、よりインターナルにする方法をいくつか考えました。
1.育児
まず育児です。私は子供がいないので、人に、こうしろ、ああしろとは言えませんが、
子供とのかかわり方を変えれば、子供のLOCが変わります。
LOCは学ぶことができるので、子どもたちが小さなうちから、インターナルになる思考プロセスを教えてあげるのは、重要です。
子供が、何かをうまくやったら、「あなたは、とっても賢いわね。あなたのこと、とても誇りに思うわ」と言ってはいけません。
「あなたは、とてもがんばっているわね。あなたのこと、とても誇りに思うわ」と言ってください。
賢いかどうかはその子供にはコントロールできませんが、がんばることは、コントロールできます。
がんばれば、自分で結果を変えられるとわかります。まさに、これがインターナルの考え方です。
子供が何か新しいことを試したいと言ったら、力づけ、やる気を起こしてあげます。子供のやる気をくじかないでください。
その気になり、努力さえすれば、何でもできる、と考えられる子にしましょう。
2.健康
健康やフィットネスのゴールがあるとき、自分自身を信じることが大切です。
もちろん、できそうにないむちゃなゴールは設定しないように。
できそうなことを少しずつクリアしていきます。
自分や誰かが病気になったとき、「治療はうまくいく」と信じるようにします。
医者と相談し、治療プランを決めたら、に治療を進めますが、「これは必ずうまくいく」と、信じるのです。
プラシーボ効果です。
薬でないものでも、効くと思えば、薬と同じ作用をすることがあります。
3.環境
誰かが大変な目にあったら、力づけてください。前向きな環境を作ってあげます。
環境は人のものの見方に大きなインパクトがあります。
他人を非難し、被害者になり、自分の行動に対して自分で責任をとらないエクスターナルな人たちに囲まれていると、インターナルでいることは難しいです。
ものの見方を変えるように努力します。考え方を変えるだけで、結果が変わるのだと自覚してください。
何かうまくいかないことがあったら、別のやり方はできなかったか、考えてみます。
ポジティブで、自分を力づけてくる環境に身を置き、ものの見方がどれほど重要か、自覚するようにします。
もっとインターナルに考えたかったら、4分で変われますよ。
考え方を変えるだけで、人生を変えることができるのです。
//// 抄訳ここまで ////
単語の意味など
dialysis 透析
valence 誘意性、誘発性
人を惹きつけたり、回避させたりする性質のこと。それにふれると、魅力や嫌悪といった感情が起きる
tear down こわす、破壊する、けなす、中傷する
考え方を変えるヒントになるほかのプレゼン
オレンジ対バナナ:人と比べることで生じるダメージとその修復(TED)
自分の能力を自分で見限ることの恐ろしさ、できると信じることの素晴らしさ(TED)
LOCはこう使ってみるといいと思う
Locus of control は直訳すると、「コントロールのポイント」となります。
どの程度、自分でコントロールできるのか、その人が考えているポイントです。
LOCがインターナルであればあるほど、自分でコントロールできると考えていて、エクスターナルであればあるほど、自分以外の何かがコントールしている、と考えています。
エクスターナルの人は、不安やうつになりやすいそうです。
「自分ではどうしようもない」という無力感にさいなまれることが多いからです。
必ずしもインターナルがいいとは言えません。状況によってはエクスターナルに考えるべきときもあります。
ただ、リサーチによれば、よりインターナルであるほうが、その人のためになります。ゴールを決めて、そこに向かって努力できるからです。
インターナルな人は、「なにごとも自分次第」と考えますが、エクスターナルな人は、「自分が何をしても無駄」と考えます。
「自分に要因がある」と思ったほうが、状況を変えるためにできることを工夫するので、うまくいくわけです。
LOCの傾向は生まれもったものが多いそうですが、子供時代にも特定の考え方を獲得します。
子供を信じ、常に力づけてくれる親に育てられれば、よりインターナルな子になります。「自分の行動と結果に因果関係がある」と学べるからです。
自分がインターナルかエクスターナルかどうかはあまり気にすることはないでしょう。
何かに悩んでいたり、落ち込んでいたり、不満だったりするとき、LOCのことを思い出して、偏った考え方をしていないか、客観視できることが重要だと思います。
現象そのものはニュートラルであり、それをどう受け取るかで、楽しくもなり、つらくもなります。
あとは、自分を信じることですね。
このブログにも、1冊目の本(1週間で8割捨てる技術)にも書いていますが、汚部屋を片付ける、というゴールがあるなら、「自分は必ずできる」と信じることが、一番重要ではないでしょうか?。
自分を信じるのは、自分を助けてくれるとてもありがたいマインドセットだと私は考えています。