若い女性

TEDの動画

他人の意見から解放されるために(TED)

人の評価を気にしてしまい、自分の本当の気持ちを押し込める傾向がある人におすすめのTEDトークを紹介します。

タイトルは、Freeing Yourself From The Opinions of Others (他人の意見から自分を解放する)。

看護学の博士、Shara Ally(シャーラ・アリー)さんのトークです。

人の意見を気にして、自分を変えようとすると、不安や心配が増えるし、本当の自分を見失ってしまうので、他人の意見を聞くのはやめようという内容です。

動画の長さは15分55秒。英語ほか数カ国語の字幕あり。動画のあとに抄訳を書きます。

15分以上あるトークですが、内容はシンプルです。







人の意見を気にしてしまう私たち

これから言う質問のどれか1つでもしたことがある人は手をあげてください。

きょう、私はどんなふうに見えるだろう?

私の上司があなたの上司だったらどうする?

あの人は私を好きだと思う?

パートナーの私の扱い方が気に入らないと言うべきだろうか?

あなたが私ならどうする?

こうした質問の答えがすでにわかっているのに、他の人の意見を聞いてしまったことがある人は?

そういうことありますよね。他人の意見を聞くこと。それはとてもおもしろい体験です。

私たちは、他人が自分をどう思っているのか、その意見を聞くことに熱心で、皆に承認され受け入れてもらいたいと思っています。

友達、恋愛の相手、同僚にも。

私たちは、自分自身の定義を他の人にしてもらって、他人の意見の商品になってしまうのです。

看護学の博士として、私はいろいろなクライアントと仕事をしました。

皆、いい人たちばかり。そして、最初に紹介した質問は、私が彼らから一番よく聞く質問なんです。

なぜ、そんな質問をするのか?

彼らは、人を喜ばす方法を知りたいんです。パートナー、上司、友人、家族を喜ばしたい。

人を喜ばせることに熱心な人間(people pleasers)になった瞬間、「なぜ私はこんなに不安なんだろう?」と感じます。

なぜ私たちは、こんなふうにして、自分で心配や不安を増やしてしまうのでしょう?

すぐに思いつく答えは、「他人の認証が必要だから」です。

でも、死を前にしたとき、人の評価が、どれほど重要だと言えるでしょうか?

死にそうになった体験

幼い頃から私はアレルギーがたくさんありました。全部で48です。

ある夏の日、散歩に出ました。ふだん私はランチを食べませんが、その日は、軽いスナックを食べました。

でもオフィスに戻ったとき、すごく暑くなりました。そのうち吐き気を感じ、階段を上りながら息ができなくなり、オフィスに入ったとたん、倒れてしまいました。アレルギー反応を起こしたんです。

死にそうになりました。同僚が救急車を呼んでいるとき、私は祈るしかありませんでした。

サバイバルモードだったその瞬間、優先順位が変わりました。まず家族、そして大ファンだったコービー・ブライアント(アメリカのバスケットボール選手)のことを考えました。

他人の意見が入る余地はありませんでした。

幸い私は助かりました。

病院で、看護師が言いました。「シャーラ、助かったわよ」。

看護師は、さらにこう言いました。「シャーラ、あなた、アレルギーが多すぎるわ(You have too many allergies)」と。

看護師は親切に冗談めかして言ったのですが、私は涙がでました。

too(あまりにも、~すぎる)という言葉に傷ついたんです。それまで、何度も聞いた言葉でしたから。

ずっと自分を変えてきた

高校生のとき、みんなに受け入れてもらいたいと思っていました。でも、こんなふうに言われたんです。「シャーラ、あなたは太りすぎよ。背が高すぎよ、醜すぎよ。うるさすぎよ、敏感すぎよ」。

こうした意見を考慮して、私は自分を変えました。その後、大学に入ったときに、こんなふうに言われたんです。

「シャーラ、あなたやせすぎよ。静かすぎよ。頭がよすぎよ、美人すぎよ、威圧的すぎるわ」

このときも自分を変え、社会人になったら、今度は、「シャーラ、あなた、洗練しすぎよ」と言われました。

そう言われて、Googleで、too という言葉の意味を調べました。すると「過剰で、望ましい状態以上の人」という定義が出てきました。

私は、おおいに困惑しました。みんなの意見を聞いて自分を変えて、受け入れてもらえて、好きになってもらえて、仲間に入れてもらえるはずだったのに。

では、このtooという言葉はどこから来るのでしょう? 

愛、昇進、人間関係を得ようとしてうまくいかないとき、その理由を探していると、この言葉が出てきます。

自分の内面を見る代わりに、私は、ほかの人がどうするか、ほかの人の意見を求めてしまったんです。セラピスト、友人、家族、同僚、世間の意見を。

そして、「いったい私のどこが悪いんだろう」と自問しました。そして気づきました。too という言葉を何度も聞きすぎていると。

当時、付き合っていた男性がいましたが、関係が終わるとき、彼に聞いたんです。「どうして、私にこんなことをするの?」

すると彼は言いました。「シャーラ、きみはやり過ぎなんだよ(You’re too much)」

私はまた困惑しました。

やり過ぎっていったい何が? と聞いたのですが、彼は何も言いませんでした。

人の意見を聞きすぎてからっぽになった

ずっとほかの人の意見を聞いて、直してきたのに、答えがわからない宙ぶらりんの状態になりました。

このときまでに、看護学で学士号、修士号を取得し、出世の階段をのぼって、年収は10万ド以上で、MBAの博士号も取得間近でした。

それなのに、私は孤独でからっぽでした。

学校や職場で、変わろうとして疲れ、怒りを感じました。

変わったのに不安でした。自分の目的がよくわからず、自分が誰なのかもわからない。

他の人の意見を取り除いたら、自分はいったい誰なのか?

死を前にしたとき、私に関していろいろ意見を言う人たちに、「私は大丈夫なの?」と聞いても、答えられません。

彼らは、私が助かるかどうかわからないし、私がアレルギーを持っていることすら知らないのです。

人の意見に合わせて自分を変え、認めてもらおうとした結果、不安が増えるサイクルはどこから来るのでしょう?

それは私たちが、人をジャッジしてしまうからです。

第一印象は0.1秒で決まる

プリンストン大学の心理学者が、第一印象についてリサーチをしました。

その研究から、人は、10分の1秒で、つまり、0.1秒で、他人をジャッジするとわかりました。

第一印象は、相手の表情で決まります。表情からその人が信頼できるか、能力があるか、魅力的か決めてしまうのです。

0.1秒という短い時間で決めるのですから、人の意見に合わせて変わることに何の意味があるのでしょう?

アメリカの不安症とうつの協会によれば、44%の人が、この病気にかかっています。ほとんど2人に1人です。

ソーシャルメディアのプラットフォームにある、「いいね」「シェアする」「コメント」は、人の不安と相関関係があり、不安症のような症状を引き起こします。暑く感じたり、吐き気を催したり、息切れしたり。

これらの症状がアレルギー反応とよく似ているのは皮肉なことです。

私たちは、他人の評価をもとに、アレルギー反応を引き起こしているのでしょうか?

他人の意見に従っていると自分を見失う

他人の意見のせいで、自分を制限してしまうと、私たちはこなごなになり、使い物にならなくなります。

物理的にそこに存在していても、人格は失われます。そして、「私は十分なのか?」という質問にさいなまされるのです。

この問題を打開する最初のステップは、自分が人生に何を求めているか知ることです。外に答えを探しに行くのではなく。

人生の求めているものを考えるとき、私たちは、みな、同じ答えにたどりつきます。

私たちは、人間関係に何を求めているか?

承認、愛情、評価、共感、優先してもらうことを求めています。

では、自分自身にそれを与えているでしょうか?

さらに一歩進んで、自分に対して、これらの原則をちゃんと与えれば、不安症の症状として現れるアレルギー反応は軽減されるでしょうか?

集合体としての人間はすばらしいものです。この部屋にいる誰もが、ユニークな何かを持ち寄れるのですから。

しかし、ジャッジされることを恐れて、せっかくのすばらしさを認めることができず無力になってしまいます。

いったん、「~すぎる」状態になると、私たちは人の自分の評価に、共依存してしまいます。

本当の自分になろう

自分自身との関係を良くする方法は実は単純なことです。

自分に対して思いやりをもち、成長させることは、人の意見を気にせず、自分自身の意見を持つことから始まります。

すなわち、セラピストや家族、友人、同僚、この世界すべてに共依存する必要はないのです。

これができるようになると、もっと健全な自分になります。

私たちがそれぞれの場所にいるために、社会というシステムは、私たちの自信のなさや人格をあてにしています。

私たちの人格がどうであるかは、それぞれの人が考えることです。そうすれば、健全な社会やコミュニティに貢献できます。

私たちは、人の評価に頼りすぎて、本当の自分になることをないがしろにしています。

他人の評価とは関係のない決断をするよう努めれば、自由になり、自信、自己肯定感、セルフエスティームを得られます。

この世であなたを救える人はあなただけです。

私たちは、皆求めている人生を築き上げるチャンスに恵まれています。

自分の時間とエネルギーを使うべきところ

作家のスティーブン・コヴィーはこう言っています。

「終わりを念頭にして始めなさい」。終わりとは、死です。

時間以外のものはこの世にたっぷりあります。時間の次に制限があるのは、あなたのエネルギーです。

だから、きょう、この会場にいる人たちに、考えてほしいのです。

私たちは、時間とエネルギーを本当の自分になるために使って、自分を成長させようとしているでしょうか?

それとも、他人の意見を追い求めることに時間とエネルギーを使っているでしょうか?

本当の自分を育てるために、人の意見を求めるまえに、私が自問する3つの質問を紹介します。

1.私はこの問題を自分で解決できるか?

2.この人は、見返りを求めず、私を導いてくれるか?

3.私は自分が十分だとわかったうえで、意図的に助けを求めようとしているか?

この3つの質問に「イエス」と答えられたら、あなたは、ほかの人の意見から解放され、本当の自分になったのです。

本当の自分になるには勇気が必要ですが、それは自分への贈り物です。

次に他の人の意見を求めたいと思うとき、お伝えした質問3つに「イエス」と答えたか考えてください。

//// 抄訳ここまで ////

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自分の気持ちを大事にする

人間は社会的動物なので、社会やコミュニティの中で自分の立ち位置を確認しながら生きています。

人の意見を全く参考にしない人はいません。

しかし、近年、必要以上に人の意見や世間の目を気にしすぎて、のびのび生きられない人が増えています。

その理由の1つは、先の不安が大きく、ストレスが多い社会であるということ。

もう1つはソーシャルメディアで、他の人と自分を比較することや、他人の評価という情報をひじょうに簡単に得やすくなったこと。

さらに日本人は、もともと「和」を重んじるので、「1人だけ違ったことをしたり言ったりすると痛い目にあいますぞ」という教育を受けています。

だから、自分の本当の気持ちより、他人がどう思うかのほうが大事になりがちです。

しかし、他の人といっても、いろいろな人がいて、多様な意見があるので、全員が、「これがいい!」という生き方をするなんて不可能です。

いつも人の意見をベースに生きていると、昔のシャーラさんのように、自分を押し殺して、よかれと思ったほうに変えてきても、根本的な問題は何も変わらない状況に陥ります。

こんなとき、指針にすべきものは、やはり自分の本当の気持ちではないでしょうか?

自信のない人は、自分を嫌っているので、「本当の自分は、どうしようもない自分だから、ほかの人になりたい」と思います。

ですが、そう思ってしまうのも、他人の意見を過大評価しすぎるからです。

本当の自分は実はすばらしい。

いまは、よけいな考え事や不安で、そのすばらしさが隠れてしまっているだけ。

ずっと世間体を気にしていた人が、いきなり自分を全面的に信じるのは難しいかもしれません。

でも、自分との約束を少しずつ守りながら、自分を信じる道を歩いてほしいと思います。

人の意見を気にしすぎていると、シンプルライフにするのも難しいですから。

ストレスが増えて買い物が増えるし、他の人になろうとして、自分らしくないものやサービスを買ってしまいますからね。





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