絵を描く人

TEDの動画

絵を描くことは、物ごとを考える助けになる(TED)

絵を描くと、思考力がアップする、という内容のTEDのプレゼンを紹介します。

タイトルは、How drawing helps you think(いかに、絵を描くことが考えることをを助けるか)。

講演者はラルフ・アマー(Ralph Ammer)さんです。

ラルフさんは、ミュンヘン大学の応用科学の教授で、バイオフィリックデザイン(biophilic design)を教えています。

バイオフィリックデザインは、バイオフィリア(biophilia)を意識したデザインです。

バイオフィリアは、辞書によれば、「人間に遺伝的に組み込まれている、自然界に対する先天的な愛情」。

つまり、バイオフィリックデザインは、自然を意識したデザインです。



絵を描くことが思考を助ける:TEDの説明

You don’t have to be an artist to draw! In this beautifully illustrated talk, Ralph Ammer shows how drawing your thoughts can be a powerful tool for improving your thinking, creativity and communication. He wants you to believe in your drawing abilities, and provides numerous exercises to help you get started.

絵を描くのにアーティストである必要はありません。

とても美しいイラストが盛り込まれたトークで、ラルフ・アーマーは、自分の考えを絵に描くことが、いかに、思考、創造性、コミュニケーションを向上させるか見せてくれます。

彼は、あなたには絵を描く能力があると信じてほしいと言い、描き始めるためのさまざまな練習法を紹介します。

動画の収録は2018年12月。プレゼンの長さは17分。英語字幕あり。たくさんイラストが出てくるので、できれば実際に見てください。

☆TEDの説明⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

日本語の字幕がないので、「英語は興味がない」という方は、先に抄訳を読んで、内容を頭に入れてから、見るとよいと思います。





絵を描くのは考える手段の1つ

絵を描くたびに、私たちは、自分に、痛々しい質問をします。

「これは上手な絵か?」

「私は才能があるか?」

最悪な質問は、「これは芸術か?」です。

こんなふうに問いかけ、「これは芸術には見えないな。私はどっちみち芸術家じゃないし。絵は描けないから、描くべきじゃない」、こう結論づけます。

こんなこと、言葉については決してしません。

誰も、「あ、これは詩らしくないから、しゃべるの、やめとこう」とは言いません。

なぜなら、皆、言葉は、考える手段であり、人に伝えるためのものだとわかっているからです。

実は、絵を描くこともそうなんです。

人は、絵を描くことを芸術の世界の片隅にある暗い場所に追いやっていますが、絵を描くことは芸術表現以上のものです。

絵を描くことは芸術よりも大きいのです。

それは、絵を使って考えることです。

ビルをデザインする建築家や分子の動きを解明しようとしている化学者は、言葉だけでなく、絵を使って考えています。

視覚的に考えているのです。みなさんも、そうできます。

絵を描くことがいかに思考を助けるか、5つのパートに分けて紹介しますね。

1.直感(intuition)

絵を上手く描きたいと思ったら、目(視覚)と手の動きをつなげる練習をするといいです。

紙を丸で埋めるだけで練習できます。大きな丸から描き始め、すきまを小さな丸で埋めて、最終的に紙全体を丸で埋めます。

肉体的な作業だから、手が疲れるかもしれません。

ですが、腕が強くなればなるほど、絵を描くとき上手にコントロールできます。

同じものを繰り返し描くことは、心を落ち着ける効果もあります。

視覚だけにフォーカスするので、ほかの思考が止まります。

たえまない思考や心配が止まり、より直感的に視覚を使うことができ、その結果、美しいものを見ることができます。

2.美を見出す(beauty)

美を見るのはそんなに簡単なことではありません。

身の回りにはあまりにたくさんの物があります。それを全部見るわけにはいかず、とても疲れます。

だから、取り込む情報の量を減らし、パターンや秩序を見るようにするのです。

少しだけ見るようにします。

振り返らないで、後ろの人が着ているものを思い出せますか?

この会場の入り口の前に、何本、木がありましたか?

人は、こうしたものに注意を向けません。その必要がないからです。

身の回りにある物を実際に見るより、ただ認識するほうがずっと簡単です。

木に葉が何枚あるとか、枝がどんな形だとかは、気にしません。

そこに木があると、認識できれば、ぶつからずにすみます。

私たちはこの世界にあるものに、ラベルをつけて情報を減らしています。

しかし、絵を描くときは、実際に見て、世界がどうなっているのか発見する必要があります。

ラベルは消えて、いま、そこに本当にあるものを見ます。

周囲にあるものに、しっかり注意を向けると、それは私たちの一部になります。

昨年の夏、フランスの小さな村に滞在しましたが、そこにあった美しいものをたくさん覚えています。

時間をかけて、まわりにあるものを見て、絵に描いたからです。

そうやって美しいものの記憶を自分の胸に刻みました、カメラを使わずに。

「そうか、じゃあ私もきれいなものを見つけたい。そこにある木を1本描いてみよう」。こう、あなたは言うかもしれません。

その絵はこんなふうになるべきでしょう。

木の絵

ところが、実際は、こんな絵になるかもしれません。

木と葉っぱの絵

なぜでしょうか?

問題は、私たちが、すでに知っているものを描いてしまうことにあります。

こんなときは、対象を描くかわりに、対象の間にあるスペースに意識を向けて、それを描いてください。

心の中に認識しているもの(葉、芽、植物など)がないとき、目の前にあるものを観察しやすくなります。

そうやって観察したら、どこにでもある物の中に、とても美しいものが見つかります。

意識を向けるから、世界が美しくなるのです。

3.深く考える(reflection)

ここまでで、直感的になり、見ているものを描く方法がわかりました。

では、わたしたちは、見えないものを描くことができるでしょうか? たとえば、思考や感情を。

まず、人の世界の見方(イメージの捉え方)は、進化によって形作られてきたことを理解しなければなりません。

何百年以上もかけて、周囲の状況が世界の見方を教えてきました。

たとえば、重力は、とても重要なものです。

だから、人間は、水平の線と垂直の線にとても敏感です。

水平の線は、大地のような安定や休息を思わせます。

垂直の線は重力にさからい、人が立っているところや、成長する植物です。

水平線も、垂直線も、比較的、安定感を与えます。

斜めの線は、落ち着きません。

「これは、立つのか、もっと傾くのか?」

こんな気持ちにさせます。

こうした感覚が、視覚的言葉の基礎となります。

「言葉」と言ったのは比喩です。形は言葉とはずいぶん違います。

辞書で、形を調べることはできませんし、形で文章を作ることもできません。

しかし、形を配置することはできます。配置することで意味を持たせることができます。

たとえば、紙の上にテントウムシを、いろいろ違う配置で、描いてみます。

対象(テントウムシ)の場所を変えるとそれが意味するものが変わります。

テントウムシの絵

脅威を与える怪物になったり、恋人になったり、道に迷った人になったりします。

このように、線や形を変えることを学ぶと、目に見えないものを描くことができます。

私は、毎日、自分の思考を絵に描いています。

それを描くことができないとしたら、それを理解していないのだ、と考えています。

頭の中にあるものを知るために、ちょっとしたスケッチを描くこともあります。

日常よく使う物の形と、それぞれの関係について考えて描いたり、2人の人間の2つの違う会話を描いたりします。

リズムや言葉、ほかの形のコミュニケーションを絵にしたこともあります。

そうやって毎日描いているうちに、たくさんの絵がたまり、それは、私の世界の見方を表すものになりました。

それぞれの絵をカテゴリーに分けて、つながりを見ることもできます。

このように、絵を描くことが、自分や世界を理解する助けとなります。

4.イマジネーション(imagination)

絵を描くことで、どこにもない新しいものを思いつくことができます。

創造性の核は、アイデアです。

アイデアとは何か?

私は、2つか、それ以上の考えが結びついて、頭の中で、なにか新しいものを形作ることがアイデアだ、と考えます。

もちろん、たくさんの思考や知識が頭の中にあったほうが、そうしたものが結びつけ、新しいものを生み出しやすくなります。

創造性とは、量の問題なのです。

例をあげましょう。

新しいカップのアイデアを得たいとします。

絵を描くことができれば、頭の中で、既存の物の形を思い浮かべ、それを結びつければいいのです。

サッカーファンで、ワールドカップのことを考えていたら、こんなカップになります。

不機嫌なら、不機嫌なカップをデザインできるし、きちんとしていることが好きな友達がいるなら、こんなきちんとしたカップを思いつくかもしれません。

このように、絵を使って考えることはとてもパワフルなことです。

それを作らなくても、なにかを想像できるからです。

絵を描くのは、なにかを作るときの一番最初の段階で、とても効果的です。ここで、できるだけたくさんのアイデアを出します。

今いちなアイデアでもいいのです。アイデア出しをしているときは、「このアイデアはいい、悪い」といった判定はしません。

次の段階では、アイデアを絞り込み、実行可能なアイデアを見つけます。

最初は、馬鹿げたアイデアだと思っていたものが、友達への最適なプレゼントになるかもしれません。

ビジュアルを使った考え方は、どんな問題を解決するときにも使えます。

なぜなら、創造性は呼吸のようなものだからです。

情報や知識を取り込んで、それを組み合わせ、新しいアイデアを生み出します。

このとき、絵を描くことができれば、大きな助けになります。

5.コミュニケーション(communication)

こうやって生み出したアイデアを、他の人に伝えることもできます。

文章やプレゼンなどを使って。

コミュニケーションをするとき、もっともパワフルなツールは言葉ですが、言葉には、限界もあります。

書いた言葉は、意味を取るために、1行、1行読んでいかなければならず、読むはしから言葉が消えていきます。

言葉を心の中にとどめるのは難しいのです。絵は、それがとどまるのを助けてくれます。

言葉とラベルの話にもどりましょう。

目を閉じて、木をイメージしてください。その木のイメージは人によって違います。

「木」という言葉は、あらゆる木を表す、社会の符号です。

「人ぞれぞれ、イメージが違うから、そういうのは、コミュニケーションするときには役立たない。誰でも知っている共通の土台にフォーカスするべきだ」

そう、あなたは言うかもしれません。

ですが、私は、「それをしたら大事なことを見失う」と言いたいのです。

言葉の問題、つまり、それを心にとどめることが難しいのは、個人的な体験に結びつけることが難しいからです。

絵は、木があらわす抽象的なイメージと、木に関する個人的な体験を結びつけることができます。

その絵が、一般的ではなく、特別で、個人的なものであることが重要です。

アイデアを表す、きあめて一般的なイラストを見てみましょう。

電球です。

電球の絵は、とても慣例的なものです。それは、言葉の代理にすぎず、何の価値も付け加えていません。

一方、個人的なイメージもあります。そのようなイメージは、言葉が表すものを補足します。

アイデアを言葉で伝えたいなら、イメージや絵を使うと、それが定着しやすくなります。

その絵が個人的なものであるのは、問題ではなく、個人的だから、パワーがあるのです。

個人的な表現を使って、ほかの人とつながり、自分のアイデアを理解してもらうことができるからです。

そのとき、絵は、言葉と同じほど、オリジナルなものでなければなりません。

以上が、絵が思考をサポートする5つの方法です。

絵を描けば、ひらめきが生まれ、より人生が美しくなり、理解が助けられ、新しいことを思いつき、それをほかの人に伝えることができます。

毎日絵を描くことを習慣にすると、あなたの思考が驚くほど向上します。

その絵は、芸術作品である必要はありません。

思考やほかの人との結びつきを助けるなら、それで十分なのです。

//// 抄訳ここまで ////

単語の意味など

viable  実行可能な、成功しそうな

placeholder  代用語、要素の名前に置き換えられる記号、文の要素で構文上必要だが意味的情報を持たないもの

common ground  共通の土台/基盤/立場

conventional  慣例的な

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思い出の品は絵に描くといいかもしれない

毎日、絵を描いていると、いろいろいいことがありそうです。

ラルフさんが紹介していた方法の中で、対象をしっかり見て描く、というのは、買い物しすぎる人、不用品を捨てない人、汚部屋にいる人におすすめです。

買いすぎる人、いらない物を捨てない人、汚部屋の住人は、結局、自分が持っている物をちゃんと把握していないのです。

特に買いすぎる人は、すでに家にある物ではなく、外にある物、これから手に入れる物に関心が向いています。

自分の持ち物をしっかりスケッチしてみると、自分がいかに物をたくさん持っているか、よくわかるのではないでしょうか?

思い出の品を捨てられないときも、観察して絵に描くといいでしょう。

じっくり観察した物が自分の一部になるのなら、その思い出の品や、描いた絵を捨てても、頭の中に残ります。

絵を描くことが、その品物を体験することにつながるのだと思います。

そんなことをしなくても捨てられるので、私は絵に描いたことはありません。

ですが、思い出を文章にすること、その体験が定着する、という経験は何度もしています。

たとえばこれ⇒2015年、断捨離してよかったもの(古いもの編)~捨てるからこそよみがえる思い出

*****

絵を描くと、物ごとを考える助けになる、というプレゼンを紹介しました。

モーニングページを書くことをおすすめしていますが⇒ネガティブ思考改善にモーニングページがいい~今月の30日間チャレンジ

文章を書きたくない人は、絵を描いてもいいかもしれません。

私も明日から、「きょうの気分」という絵を毎日、モーニングページの欄外に描いてみます。





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