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久しぶりに習慣に関するTEDトークを紹介します。
9月に入り、新しい生活が始まった方も多いかもしれません。
気持ちが改まるこの時期は、新しい習慣を身につけるのに絶好のタイミングです。
でも、やる気はあっても「三日坊主で終わってしまう」「続けるのが難しい」と感じることは多いですよね。
そこで今回は、The Power of Habit (習慣の力)というトークを紹介します。
スピーカーは医師のJude Abourdan(ジュード・アバーダン)さん。
失敗や挫折から立ち直り、習慣の力で夢を実現させたという内容です。
習慣の力
収録は2022年3月、動画の長さは12分半、動画のあとに抄訳を書きます。
◆TEDの説明はこちらをどうぞ⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
高校生に向けて語られたトークですが、大人が聞いても学びのある内容です。
典型的な優等生
みなさん、こんにちは。私の名前はジュード・アバーダンです。イスタンブール医科大学の医学・外科学部を卒業したばかりの医師です。
今日は、私がどのようにしてここまできたのか、個人的なストーリーをお話しします。
高校時代、私はあらゆることで一番になろうと必死でした。文字通り何でもです。
幼いころから独学で絵を描き、ギターを弾けるようになり、姉のプロ用カメラをこっそり借りて写真の勉強もしました。
さらに、アラビア語以外のすべての科目でオタク的とも呼べる方法で優秀な成績を取りました。
平均点が100点から99点に下がっただけで、頭がおかしくなるくらい悔しかったものです。私は完全な優等生タイプでした。
ほとんどすべての校内コンテストに参加し、数々の成果をあげ、有名な人気者でした。
周囲からの賞賛や拍手もあり、大きな自信を持ち、「私は本当にできるんだ」と自分の力を感じていました。
大学ではじめての挫折を味わう
その後どうなったでしょうか?
私は夢だった医学部に合格しました。
でも、最初の試験に落ちました。医学部の1年め、基礎知識を問う初めての試験です。
落第するほどのことではありませんが、人生で初めて失敗しました。
タイプAの性格の人なら、このときの私の気持ちがよくわかるでしょう。
タイプAの人は野心的で自意識が強く、行動的で、常に時間管理に気を配る傾向があります。一方、タイプBの人は忍耐強く、あまり不安を感じず、リラックスしているのが特徴です。
私は典型的なタイプAで、決して満足せず、常に「もっと上」を目指していました。
だから、人生で初めての失敗に打ちのめされました。特に、家族や友人が遠くにいて、そばに支えてくれる人がいなかったので余計つらかったのです。
私は自信を失い、自分を疑うようになり、「自分は本当に医学に向いているのだろうか」とさえ考え始めました。高校では優等生だったのに、夢だった学部で落第点を取る――それは大きなギャップでした。
その結果、私は深刻なうつ状態に陥りました。
当時は失敗の意義や、それが自分の人生や成長にどれだけ大きな可能性をもたらすかに気づいていませんでした。
欲しかったものがすべて崩れ去ったように感じ、そんな気持ちが嫌で仕方がありませんでした。何かを変える必要がありました。
心の奥底では「また立ち直って、もう一度挑戦できる」とわかっていました。
別の試験で高得点を取るチャンスは必ずある。必要なのはその方法、もう一度挑戦する力を与えてくれるレシピでした。
新しい勉強法とライフスタイル
結局、その試験から卒業までに、私は学部内でトップクラスの学生になることができました。
新しい習慣を身につけたのです。私が実践したことを紹介しますね。
まず、新しい勉強法を取り入れました。
カラフルな付箋に重要事項を書き、部屋のあちこちに貼りました。人体の構造を体に描いて、写真のように記憶しようとしました。また、同級生に教えながら理解を深めました。
特に頼りにしたのが「アクティブ・リコール」という方法です。
これは、授業や動画を見終わったあとに教材を閉じ、内容を思い出し、理解したことをノートに書き出す勉強法です。とてもおすすめのやり方です。
次に、食生活を整えました。
健康的な食事を心がけ、家で料理する時間を作り、毎週にまとめて食事を用意しました。
3つ目はヨガを学んだことです。
ヨガは身体・心・精神をいやす運動で、ストレスやプレッシャーを管理するのに必要でした。
4つ目は友人関係の見直しです。
私を励まし、成長を促してくれる仲間と付き合うようにし、やる気を削ぎ、気持ちを落ち込ませる人たちとは距離を置きました。
5つ目、これはとても大事ですが、毎日、自分にかける言葉に注意するようにしました。寝る前や朝起きたときに浮かぶ考えは、すべて日々自分に言い聞かせる言葉に影響されます。言葉には力があります。
習慣のループを利用した
このような新しいライフスタイルを維持するために、習慣のループという考え方を使いました。
これは、チャールズ・デュヒッグの著書『The Power of Habits(習慣の力)』で学んだことです。
習慣のループは、あらゆる習慣を支配する神経的な仕組みのことです。このループを知ると、新しい衝動や行動で古い習慣を上書きできます。
習慣のループは「きっかけ(cue)」「ルーティン(routine)」「報酬(reward)」という3つの要素から成り立っています。
習慣のきっかけは、習慣を引き起こすものなら何でもかまいません。
たいてい、場所、時間帯、人などがきっかけになります。
私の場合、きっかけは自分の机でした。大学の授業を終えて帰宅し、机を目にすると、そこからルーティンが始まりました。
ルーティンは習慣のループの中で最もわかりやすい要素で、それは皆さんが変えたい、あるいは強化したい行動そのものです。
私の場合、机を見ることがきっかけで、勉強を始めるのがルーティンでした。その後に待っているのが報酬で、これは私のお気に入りの部分です。
報酬は、脳が「この行動は次回も覚えておく価値がある」と判断する理由になります。
望ましい行動にごほうびを結びつけると、その行動を繰り返しやすくなります。
たとえば私の報酬は、コーチと一緒にヨガをすること、美味しいものを食べること、大好きなドラマ『フレンズ』のエピソードを見ることなどでした。
どんな習慣でも身につけられる
こうして私たちは特定の刺激を受けたときに脳の特定の領域を活性化する行動パターンを作り出せます。その結果、どんなことでも成し遂げられる規律、つまり習慣の力が身につきます。
もちろん、悪い習慣も克服できます。喫煙、先延ばし癖、心理的な問題、たとえば怒りのコントロールにも効きます。
勉強や仕事を始めようとするときに、つい先延ばししてしまうことが多いですよね。
そんなときも、習慣のループを作ればやめることができます。
アラームなどで合図をすればいいのです。先延ばししていると気づいたら、その合図をきっかけにルーティンに自動的に移って、その後で、罪悪感のない先延ばし、つまりごほうびタイムを作ればいいのです。
ここで、一緒に練習してみましょう。皆さんが「毎日欠かさずやりたいこと」「うまくなりたいこと」は何ですか? それを特定します。
次に、きっかけ(cue)を決めます。
場所でも、特定の時間でも、ものでも、人でもかまいません。
そして、自分の好きなごほうびを選びます。
友達と会うことでも、休憩中のチョコレートでもいいですよ。
ランニングを習慣にしたければ、きっかけを作り、習慣のループにします。こんなふうに、いろいろなことを、もっと簡単に、自然にできるようになります。
前に進むのに必要なのは習慣
今、私は医師で、高度救命処置(ALS)の認定を受け、クリニックで働きながら医学生に教えています。また、英語のサポートも行っています。
近いうちに、自分の医療用ユニフォームブランドも立ち上げる予定です。
医学の道はここで終わりではありません。むしろ、ようやく始まったばかりです。
私の次の目標は、アメリカで専門医の研修を受け、外科医としての認定を取得することです。
チャールズ・デュヒッグが言うように、変化はすぐに、簡単に起きることはありません。でも、時間と努力を費やせば、ほとんどあらゆる習慣を作り直すことができます。
モチベーションは最初の一歩を踏み出すきっかけにはなりますが、前に進み続けさせてくれるのは習慣です。
今回の経験から、私は、変われる可能性を自分自身が信じさえすれば、人生が投げかけてくるどんな障害でも乗り越えられると学びました。
///// 抄訳ここまで /////
◆チャールズ・デュヒッグのプレゼンはこちら⇒習慣のループを知れば、どんな習慣も変えることができる(TED)
デュヒッグの本です。
習慣・勉強に関するほかのプレゼン
大々的に散らかるのを予防するために、きょう10分だけ使って片付けよう(前編)。
習慣は裏切らない
今回紹介したトークは学生向けですが、社会人でも、日々の習慣づけはとても重要です。
やる気や気分は毎日揺れ動き、ある意味あてになりませんが、一度身についた習慣は、そう簡単にはくつがえりません。
いつも部屋が散らかっている、つい無駄遣いしてしまうという日常生活の問題も、よい習慣を身につければ解決できます。
たとえば、片付けなら、ものを床置きしない、そのへんに出しっぱなしにしないという日々の習慣がものを言います。
衝動買いなら、買う前に少し待ったり、手持ちのものを調べたりする習慣を身につければいいのです。
こうした、ひとつひとつはささいな行動をルーティンにすることを意識してみてください。
すごい方法を探すより、地道な行動を習慣付けするほうがずっと効果的です。