ストレスがいっぱいの人

TEDの動画

ストレスがどんなふうに脳を消耗させるか?(TED)

最近、物忘れがひとどくなったと感じる人におすすめのTEDトークを紹介します。

タイトルは、How Stress Drains Your Brain — and What To Do About It(ストレスがどんなふうに脳を疲れさせるか、そしてその現象にどう対処するか?)

神経心理学者の、Nicole Byers(ニコール・バイヤース)さんの講演です。



ストレスと脳:TEDの説明

Do you ever feel extra forgetful? Stress could be the culprit.

In a fascinating talk about how your memory works, neuropsychologist Nicole Byers shares the science behind how stress drains your brain’s resources, making it harder to remember things and easier to make mistakes.

But fear not: she also shares a simple solution to recharge your brain and get your memory back on track.

物忘れがひどくなったと感じることがありますか? それはストレスのせいかもしれません。

記憶のメカニズムを説明するこのすばらしいトークで、神経心理学者のニコール・バイヤースは、どんなふうにストレスが脳のリソースを奪い、物事を覚えるのを難しくさせ、ミスを起こさせる科学を説明します。

でも、心配しないで。脳をリチャージし、記憶の仕組みを元通りにする方法も教えてくれます。

収録は2023年の4月。長さは9分。日本語の字幕はありませんが、English >> Japanese というのを選択すれば、AIによる日本語訳が表示されます。

☆トランスクリプションはこちら⇒Nicole Byers: How stress drains your brain — and what to do about it | TED Talk

☆TEDの記事の説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

身近な例が多い、わかりやすいプレゼンです。





暗証番号を忘れた

最近、休暇から戻りました。時差ボケで、飛行機が遅延し、荷物もなくし、疲れてきっていました。まだ小さい子供は機嫌が悪く、夫は私のあとからとぼとぼ歩いていたし。

そして、私は玄関のパスワードを忘れてしまったんです。7年も住んでいるというのに。

手当たり次第にいろいろな番号を入れてみました。そして、思ったんです。「ああ、ついに、私、おかしくなっちゃった」と。

脳の記憶容量はとても大きい

人の脳は、驚くほど記憶のキャパシティがあります。でも、すべての情報にすぐにアクセスできないんです。

Scientific Americans の記事によれば、人の脳は、250万ギガバイトのデータを保持できます。これは、iPhone、5000個分です。

でも、記憶はひとつのシステムではないので、毎回、たやすく目当ての情報にアクセスできるわけではありません。

異なるシステム、それぞれに限界があるし、日常のいろいろな要素が、記憶に影響を与えます。

ある神経心理学の研究

HMという患者を調べた有名な神経心理学の研究があります。彼はてんかんを治すため脳外科手術を受け、映画に出てくるテンセカンドトム(10秒しか記憶が続かないトム)のようになった人です。

手術そのものは成功しました。発作の度合いは軽くなり、頻度も下がりました。でも、手術のあと、HMは新しいことを学べなくなってしまったのです。

彼は、ずっと同じ神経心理学者の治療を受けていましたが、彼女に会ったことを覚えられず、会うたびに自己紹介をしました。

治療のセッションで、彼女が指示したタスクを行っても、それをしたことも覚えていませんでした。

でも、興味深いことに、手術前よりパフォーマンスがよくなったタスクもあるんです。

彼は、そのタスクをしたことはまったく覚えていません。HM自身は、毎回、はじめてやるタスクだと考えていましたが、彼の脳は、そのプロセスを学んでいたんです。

記憶にはいろいろなタイプがある

HMや彼のような患者たちからわかったことは、異なるタイプの記憶があるということです。

ある記憶は、ごく自然によみがえります。たとえば、庭を歩いていて、昔、おばあさんが、台所によく飾っていた花の香りをかげば、即座におばあさんとの楽しい記憶がよみがえります。

しかし、思い出すのにもっと脳力や努力が必要な記憶もあります。たとえば、パソコンのパスワードなど。

引き出すのに脳力や努力が必要な記憶は、干渉を受けやすい記憶です。

スーパーで、買おうと思っていた食品10個を思い出そうとしているとき、隣人に会って少しおしゃべりし、隣人が新車を買った話を聞いただけで、10のうち2つしか思い出せません。

脳のストーレージは、iPhone、5000個分と大きいのに、買うべきものを覚えておくような短期記憶は、7バイトぐらいの容量なのです。そして、短期記憶は、いとも簡単に邪魔されます。

これがどうして問題なのか?

気が散るから忘れる

私たちは、とても気を散らされる現代社会に生きています。

仕事でミーティング中、あとでチームのメンバーにシェアするため、プロジェクトの詳細を記憶しようとしています。

でも、同時に脳は、同僚が話していることに意識を向けるし、パソコンに表示されるメールの通知を無視しようとするし、家族の「夕飯のメニューは何?」というテキストメッセージにも邪魔されるし、「疲れたから早く休憩してコーヒーを飲みたい」という思考もします。

一番優先順位の高いことをするために、細々とした刺激を無視するには、エネルギーがたくさん必要です。

脳内で400のことを考えていると、メモリーエラーが起きて、同僚の名前すら忘れ、自分のプレゼン中に、重要な部分を忘れてしまいます。そして、失敗した自分を1日中責めるのです。

ストレスが記憶の邪魔をする

脳のリソースを奪い、大事なことを思い出すのを邪魔するもうひとつの要因はストレスです。

それは大きなストレスや深刻なストレスである必要はありません。

日々のちょっとしたストレス、プレッシャー、締切などが、脳内のスペースを取り、心理的にたくさんのマルチタスキングをするはめになります。

去年、私は同じ週に2回、階段(ビルのフロアとフロアの間にある階段)に閉じ込められました。メンタルマルチタスキングをしようとしていたからです。

仕事が終わって片づけながら、翌日かけなければならない電話のことを考え、今やっているプロジェクトのアイデアについて考え、夕食に何を作ろうか考え、娘を迎えに行くまえに、スーパーに行くべきかどうか考えていました。

そして、鍵をオフィスに置いてきてしまったんです。1週間に2回も。

ストレスが脳を疲れさせる

クイーンズ大学の記事によれば、私たちは毎日6200の思考をしています。つまりそれだけ、邪魔される可能性もあるわけです。

カリフォルニア大学の研究から、邪魔が入ったり、マルチタスキングしたりして、タスクが中断されると、脳は、もっと早く働いて挽回しようとする傾向があるとわかりました。

でも、そんなことをするとますますストレスになり、かえって効率が落ちます。

誰もがストレスの多い日常を送っていて、やってもやっても終わらないTo-doリストに圧倒されています。

メール、電話、ズームミーティング、プロジェクトの締め切り。仕事から疲れて帰るころには、脳は燃え尽きているんです。

Science of Learning(Webサイト)の記事に、ストレスは記憶を取り出すことに影響を与えるだけでなく、問題解決やクリエイティブな思考をすることも邪魔するとあります。

大小かかわらずストレスが邪魔をする

日常のストレスやプレッシャーが、記憶の邪魔をすることはわかっています。

では、大きなストレスはどうでしょう? 先がわからないことや、パンデミックのせいで起きた生活環境の変化、経済的な重圧、家族に関するストレスなどは。

こうしたストレスも、脳のリソースを奪い、ミスを誘発し、覚えるべきことを覚えるのを邪魔します。

だから、記憶のエラーはごく普通のことです。特に、疲れていたり、働きすぎていたり、ストレスがいっぱいあったりするときは。

思い出そうとするとかえって思い出せない

では、どうしたら、記憶を助け、脳細胞をリチャージできるか?

いっしょうけんめい思い出そうとするでしょうが、これはうまく行きません。

映画のタイトルや俳優の名前を思い出せないことがありませんか?

舌の先まで出かかっているのに、どうしても思い出せない。

ところが、4時間後、家に帰ろうと車を走らせているとき、突然その名前が出てくる。

ありますよね。ごく普通のことです。

思い出せないとき、必死に考える方法がうまくいかないときがあります。ニューロンが互いに競争しあっているから。

何か特定のことを思い出そうと必死に考えているとき、たとえば名前や暗証番号ですが、そんなとき、脳細胞に負荷がかかりすぎて、止まってしまうんです。細胞がリチャージする時間が必要なのです。

だから、4時間後に、思い出したかった記憶が戻ってきます。

必要なのは脳のリセット

記憶の中にあるけれど、それを取り出すルートが疲弊しているので、リセットする時間が必要なのです。

それに、ストレスは脳の機能を衰えさせます。失敗することを心配していると、よけい失敗します。

いつもより物忘れが多い、脳がうまく働かず、必要なことを思い出せない。そんなとき、脳はリセットを求めているのかもしれません。

暗証番号やパスワードを思い出せないとき、数分間、別のことを考えてください。どんなことでもいいです。

カードの読み取り機をじっと見つめる代わりに、店の人と天気について、おしゃべりをしましょう。暗証番号を思い出そうとするかわりに、スマホを取り出して、SNSをちょっと見てください。

何かを思い出そうと脳細胞を疲れさせるのではなく、脳の別の場所を活性化させると、メモリーセンターがリチャージされ、リセットできます。

仕事でいつもよりミスが多いときは、立ち上がって休憩してください。近くを散歩したり、ほんの数分楽しいことをしましょう。

こうした、小さな休憩をとると、メンタルのリソースがリフレッシュされ、脳にエネルギーとフォーカスが戻り、求めている情報を取り出しやすくなります。

記憶のエラーは、あなたが変になったしるしではありません。脳が、休憩とリセットを必要としているサインかもしれないのです。

///// 抄訳ここまで ////

補足

Ten Second Tom テンセカンドトム 映画、50 First Dates 『50回目のファースト・キス』に出てくる10秒ごとに記憶を失う(10秒しか記憶がない)男性。

この人です。動画の長さは1分26秒。

ちなみにこの映画のヒロイン(ドリュー・バリモア)は、前日のできごとを忘れる記憶障害を患っています。

記憶や脳に関するほかのプレゼン

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ブレインハック:脳科学が教える早く学ぶ6つの秘訣(TED)

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ストレスをかかえこみすぎないこと

ストレスは、体全般によくありませんが、脳にもよくなくて、記憶を取り出す邪魔をするし、創造的な思考や問題解決をするときも妨げになります。

そもそも、ストレスが多いと、じっくりまともに考えることができませんよね。

というわけで、楽しく、健康的で生産性の高い毎日を送るためには、食事、睡眠、運動に気をつけるだけでなく、ストレスマネジメントも必要です。

どんなふうにしてストレスを軽減させたらいいかは、過去記事にたくさん書いているので、検索して読んでください。

ここでは、5つだけ書くと

1)1人になって静かに考える時間をもつ

自分1人の時間を持つ5つの方法。時には他人の声や視線を断捨離する。

2)がまんしない、自己主張する

3)気持ちを書き出す

4)タスクを詰め込みすぎない

5)好きなことをやる時間を作る

番外:不用品を持たない生活をする

この6つの中ですぐにできるのは、気持ちを書き出すことですかね。

がまんするのをやめるのもできると思います。特に、がまんのしがいのないところで、がまんするのをやめましょう。

長期間にわたって、がまんしたり、自分の気持ちを抑圧したりしても、何もいいことありません。

がまんするのは、思考のくせですから、差し障りのないところから、1つずつがまんするのをやめましょう。

そうすれば、脳も今より働くから、覚えておきたいことを覚えるキャパシティもあがって、生産性もあがります。

****

年をとると物覚えが悪くなると言いますが、むしろストレスが脳の機能を邪魔していることが多いとわかりましたね。

うまくストレスマネジメントして、持てるパワーを存分に発揮しましょう。





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