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ブレインハック:脳科学が教える早く学ぶ6つの秘訣(TED)

いろいろなことをもっと効果的に学びたい人の参考になるTEDの動画を紹介します。

タイトルは、Brain Hack: 6 secrets to learning faster, backed by neuroscience(脳のハック:科学的に裏付けられたより早く学ぶ6つの秘訣)。

脳科学者の、Lila Landowski(リラ・ランドウスキー)さんのトークです。



ブレインハック:TEDの説明

Sharing the secrets to productive learning, backed by neuroscience, Dr Lila Landowski explains the methods which can be used to allow us to learn faster.

神経科学に裏付けられたより生産的な学びの秘訣をシェアしながら、リラ・ラウンドウスキーは、より速く学べる方法を説明します。

収録は2023年、長さは18分、英語字幕あり。動画のあとに抄訳を書きます。

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

alertness は、油断がないこと、緊張して警戒していることですが、「警戒態勢」と訳しました。





人は学び方を知らない

もっと若いときにこれを知っていればよかったと私は怒っています。

私は、神経科学者で講師です。脳と神経について研究し、健康管理のプロになろうとしている人たちに講義をしています。

学ぶのに苦労している生徒がいます。特に年配の生徒に。でも、それは生徒のせいではないんです。

私たちは学び方を教わっていません。

でも、もっと速く、効果的に学ぶ方法がありますよ。

脳科学に裏付けられた方法を6つシェアします。

それは、注意、警戒態勢、睡眠、繰り返し、休憩、間違えることです。

学ぶときに起きること

そもそも、私たちはどうやって学ぶのでしょう?

学ぶためには、神経の可塑性(neuroplasticity)が必要です。

神経の可塑性は、経験に反応して、脳がその構成を物理的に変える能力のことです。

何かを学ぶと、学んだことが情報でもスキルでもシナプスと呼ばれる神経細胞(ニューロン)の小さなつながりが生まれます。

このつながりが、強くなればなるほど、その回路がうながす行動をうまくできるようになります。

これはペトリ皿の中にあるつながっている2つのニューロンの映像です。

手のように見えるものは、成功円錐(growth cones)で、どんなニューロンにもついています。

成長円錐は、周囲の環境を感じ取り、860億個あるニューロンのどれかとつながろうとします。

これは学びではありません。脳が成長するあいだに、どんなふうに回路を作るのか示しているだけです。

回路を作る過程がうまくいかないと、学習や記憶に問題がおきます。

学びは練習と忍耐

子どもたちはスポンジみたいですよね?

言語、技能、スポーツなど、何かにさらされるだけで、覚えるかのようです。

ものすごく才能のある人に出会ったことはありますか? 自分とは違う、魔法のような何かを持っているだんだろうと思えるような人です。

でも、これは事実ではありません。

それは、練習と忍耐の賜物(たまもの)なのです。脳が成長するときに、スキルを学び始めるので、早ければ早いほどいいです。

セリーナ・ウィリアムズ(テニス選手)やベートーベンは、スキルをもって生まれたのではありません。

練習したのです。2人は5歳のときに始めています。

実際、学ぶ能力は、5歳をすぎると落ちていきます。幼年時代や、10代を通じて、どんどん学びが、難しくなっていきます。

20代の半ばになると、指数関数的に難しくなります。

でも、自分でできることがあります。

注意、警戒態勢、睡眠、繰り返し、休憩、間違いを使えば、より上手に学べます。

注意を向ける

学ぶためには、注意を向けなければなりません。これはとても重要です。

皆さんに、「目を閉じて、足が床についている感覚に意識を向けて」と言ったら、皆さんは、突然、靴下の布の感じや、靴がきついこと、床がとても硬いことに気づくでしょう。

その1秒前には気づいていなかったのに。

つまり、私たちは、何かにどれくらい注意を向けるか自分で選ぶ能力があるんです。

研究によれば、そのタスクに100%意識を向けていると、より情報を保持できます。特に、長期間保持します。

人類の歴史を見ると、ほんの少し前までは、私たちは、意識を向けることに苦労することなんてありませんでした。

今は、気が散ったせいで、読み直したり、見直したりすることがありますよね?

私たちは、1度に1つのことにしか意識を向けることができません。

SNSの画面をスクロールしながら、たくさんの、関係のない情報の切れ端を見続けていると、注意を向けられなくなります。

ADHDになるわけではありませんが、10代のとき、1時間以上、スマホを使っていると、注意力が欠如するという研究があります。

だから、スマホの使いすぎないようにしてください。

注意力をアップするには?

長期的に注意力を上げたいなら、集中して注意を向ける瞑想(focused attention meditation)が効果的です。

短い時間だけ、注意力を上げたいなら、運動をしてください。

運動は、学びと記憶にかかわる脳の部分を大きくするし、新しい神経細胞を作る手助けもします。

定期的に運動していると記憶力がよくなるという研究もあります。

運動は、認知、つまり考える能力を向上させます。

20分の適度な運動をするだけで、そのあと2時間、注意力が向上しますよ。

何かを勉強する前に、ジョギングやスタージャンプをしましょう。

職場にいるなら、階段の上り下りをしてください。ほかにもいろいろな運動があります。

警戒態勢

学ぶためには、素早く対応できるように警戒しなければなりません。

そのタスクにしっかり集中していないと、情報を保持するのに苦労します。

「戦うか逃げるかシステム」を発動させる、つまり交感神経系を優位にしておくと、アドレナリンやノルアドレナリンなどが分泌され、警戒心が高まります。

ここでも運動が役立ちます。

ヴィム・ホフ呼吸(Wim Hof breathing)などの呼吸法をしましょう。

シャワーの最後を冷水で終わるのも効果的です。

ストレスも同様の働きをします。

ちょっとストレスがかかることをしたあとに勉強すると、より学ぶことができます。

大きすぎるストレスはだめですよ。

長期的なストレスや恒常的なストレスは、脳の構成を変えて、学びや記憶を阻害します。

でも、ほんの少しのストレスは、パフォーマンスを向上させるのに役立つんです。

学びのあとに、少しだけアドレナリンが出ると、よりうまく学べます。

カフェインのような物質を使うこともできます。

学ぶ前に、カフェインをとると、学びや記憶が向上するという研究があります。

ものを食べると、「戦うか逃げるかシステム」のスイッチが切れるので、警戒心がなくなります。

おなかいっぱい食事をしたあとは、勉強しないほうがいいでしょう。

私たちが警戒していられる時間には限界があります。

人は、ウルトラディアンリズム(ultradian rhythm)にそって生活しています。

90分ごとに、警戒のピークを行ったり来たりしているので、いつも100%警戒してはいられません。

しかし、90分のうちの8分から30分は、とても警戒している状態でいられます。

睡眠

もう1つ重要なのが睡眠です。睡眠をとらないと、警戒状態にはなれません。

睡眠はほかの理由でも、学びにとても重要です。

睡眠は、免疫システム、代謝、感情のコントロールをリセットし、その日、脳の中にたまったゴミの掃除もします。

さらに睡眠は、記憶の定着にひじょうに重要で、短期記憶を長期記憶に変えます。

脳の、海馬と呼ばれる部分は、学びや記憶に重要な役割を果たします。

その日、何かをすると、海馬がそれを記録します。

日記みたいなものです。

私がみなさんに、このトークの前に何をしたか聞くと、みなさんは、思い出すために海馬を使うのです。

でも、海馬は短期間しか情報を保持しません。

寝ているあいだに、そうした短期記憶が、皮質と呼ばれる場所でフィルタリングされ、長期記憶に変わります。

睡眠を取らないと短期記憶が長期記憶に変わらないので、睡眠は学びにとても重要なのです。

徹夜や一夜漬けは、勉強法としては最悪の方法です。

だから、勉強をする前にしっかり睡眠をとってください。そうすれば、より警戒した状態でいられます。同時に学んだあとも、しっかり寝てくださいね。

繰り返す

学ぶときは、繰り返しが鍵になります。

1度見たり聞いたりしたことを永遠に覚えておくなんてできません。

運動が筋肉を作るように、ある思考や行動を繰り返すと、脳内の神経回路が強化され、思い出しやすくなります。

脳内で新しい回路が作られるとき、エネルギーや脂肪酸が必要で、たくさんのタンパク質が合成されなければなりません。

たった1度しか使わない神経回路に、脳は、そんなにたくさんのエネルギーを消費したいとは思いません。

だからこそ、学ぶためには繰り返しが必要なのです。

繰り返すのは、脳に、「これは、私の人生で何回も起きること。効率的になるためには、この回路のつながりを強化して、上手にやらないとね」と知らせることなのです。

学びたいことを何度も繰り返して学んでください。スペーシングテクニック(時間をあけて分散して学習すること)を使いましょう。

1日にすべて学ぶのではなく、2日に分けたほうが効果的です。

ときには、1回ですべてを学ぶこともできますす。これは、心理学や脳神経額で、一試行学習(one-trial learning)と呼ばれます。

学ぶときに、感情が強く動くと起きることです。

すごく楽しい、すごく悲しい、すごく怖い、など。特に、恐怖があるとき、そうなります。

脳は、怖かった体験のディテールをすべて覚えてようとするからです。

つぎに、そんな状態になったときは、うまく対応してください。恐怖を感じたプロセスで、うまくいかないことがあると、PTSDになる可能性もあります。

休息

休憩は学びにとても重要です。その理由は2つあります。

まず、休憩は、学んだ情報を脳が再生するチャンスです。それは、完全に無意識下で行われます。

ピアノであるパッセージを練習して、10秒休憩すると、脳の中でそのパッセージを繰り返すので、20倍のスピードで覚えることができます。

終わったあと、10~20分の休憩をいれるとさらにいいですよ。

スマホなどは使わなず、静かに休憩するか、昼寝をするか、何もせず、ただしっかり休んでください。

休憩が重要なもう1つの理由は、新しく脳に入れた情報は、安定していないので、すぐに、その回路を使って別の何かを学ぼうとすると、新しい情報がこわれてしまうからです。

このプロセスは、逆行性干渉(retrograde interference)と呼ばれます。

子供は、数分で学びが定着しますが、大人は、1時間、もしくはそれ以上たっても不安定です。

学習を終えたら、10~20分休憩しましょう。

職場にいるときは、深く考えなくてもできる日常的なタスクをやってください。

そして似たようなことをするまで、1時間は待ちましょう。できれば、別の日にやることが望ましいです。

間違える

人は間違えます。間違えるのは嫌ですよね。

とても怖く感じます。でも、間違えることには、生物学的理由があります。

間違えると、不安やストレスを感じますが、これには、とても重要な目的があるんです。

ミスをすると、アセチルコリンのような神経調節物質が出て、集中して注意するネットワークが活性化します。

注意力が高まり、不安を感じることが、重要な目的を果たします。

それは、「ほら、間違えた。やり方を変えて、もっとうまく、効率的にする必要があるよ」と教えてくれているのです。

そして、神経の可塑性へのドアが開きます。

次に何が起ころうとも、脳は、それを取り入れようとするのです。

間違いをして、ちょっと不安になって、そのまま流してしまったら、それを学ぶことはできないし、失敗に対処する方法も学びそこなってしまうのです。

代わりにこうしましょう。

学んだことをテストしましょう。完全に準備できるまで待たないように。

何かを学んだら、たとえば、サッカーを学んだら、ゴールにまっすぐキックしてはいけません。

アングルを変えましょう。もっと難しくするのです。そうすれば失敗しますから。

何もかも完璧にしてから、始めるのはやめましょう。

間違えれば、神経調節物質が出て、注意力があがるのですから。

うまくやれば、報酬系でドーパミンが出て、気分がようkなります。そうすればも、やる気が出るし、今学んだことがもっと定着しますよ。

だからこそ、学びをゲームのようにするとうまくいきます。

脳にとっては、Win-Win(ウインウイン)です。

間違えて不安になっとき、その不安を悪いものだと思わないでください。

その気持ちに身を任せて進みましょう。

なぜなら、それはあなたの脳が最高の状態になるのを助ける機能なのですから。

あなたが昨日の自分よりよくなるのに役立ちますよ。

まとめ

私はもう怒っていません。

脳を理解して、潜在的な能力を解き放ち、より速く、効果的に学ぶ鍵を見つけたからです。

その鍵は、注意、警戒状態、睡眠、繰り返し、休憩、間違いです。

今度、何かを学ぶときは、気を散らすものはすべて取り除いて集中し、少し運動をして警戒の度合いを上げ、学びたいことを繰り返し学んで、数日間かけて繰り返しましょう。

その合間にしっかり睡眠を取ってください。

失敗を大事にして、学んだあとには、10~20分休むようにします。

そうすれば、脳にお礼を言われるでしょう。

//// 抄訳ここまで ////

補足

■スタージャンプ(star jump):大の字になってジャンプすること。

■ヴィム・ホフ呼吸法

学びに関するほかのプレゼン

脳の働きをよくする7つの秘訣(TED)~知的生産性をあげたいあなたへ。

新しい脳細胞を増やす方法(TED)大人になってもニューロンはできます。

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間違いや失敗はありがたいもの

脳科学の研究からわかっている、学びをより効果的にするものは、

1.注意力

2.警戒態勢

3.睡眠

4.繰り返し

5.休憩

6.間違えること

この6つです。どれも重要ですが、今回は、6番の間違えることについて書きます。

間違えることや失敗は、学びにとってまずいものではなく、むしろその情報を頭に入れるとか、そのスキルを習得するというゴールを達成するのに役立つものです。

しかし、間違えると、セルフイメージが悪くなるので、皆、間違えたくないと思いますよね?

特に、子供のとき、間違えたり失敗したりするたびに、親に叱られた人は、間違えることに大きな恐怖を感じるでしょう。

まあ、私だって間違えるとショックです。

でも、「あ、間違えた、が~ん」で終わると、せっかくの学びの機会を失ってしまいます。

それは、失敗から学ぶという、よく言われる理由からだけではなく、脳が失敗のあとに、より情報を取り込めるよう、物理的に体制を整えるからです。

間違えたあとは、「あ、チャンス!」と思うべきなのです。

だから、失敗しないようにしっかり準備するよりも、失敗しやすいように、ちょっとタスクを難しめにしたほうが、学習には効果的です。

断捨離も、「大事なものを捨てて後悔したくない」と身構えて、何もしないより、どんどん失敗したほうが、自分のためになるんじゃないでしょうか?





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