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TEDの動画

じつは何も見えていない私たち。あなたはどんな現実を生み出しているのか?(TED)

何もやらない前から、「自分にはできない」とあきらめたり、人の目を気にしすぎて、自分の行動を変えてしまう人の参考になるTEDの動画を紹介します。

Isaac Lidsky(アイザック・リッズキー)さんの、What reality are you creating for yourself?(あなたはどんな現実を自分のために作り出していますか?)です。

邦題は、「あなたはどんな現実を生み出しているのか?」

目の前にある現実は、自分が心の中で作っているもの。だから、もっと違った現実を作ることができる、という主旨のプレゼンです。



「あなたはどんな現実を生み出しているのか?」TEDの説明

Reality isn’t something you perceive; it’s something you create in your mind.

Isaac Lidsky learned this profound lesson firsthand, when unexpected life circumstances yielded valuable insights.

In this introspective, personal talk, he challenges us to let go of excuses, assumptions and fears, and accept the awesome responsibility of being the creators of our own reality.

現実は、認識するものではなく、自分が心の中で作っているもの。

アイザック・リッズキーは、人生が思いもよらない状況になったとき、このことを身をもって学び、貴重な洞察を得ました。

この内省的で個人的なプレゼンを通して、リッズキーは、私たちに、言い訳するのをやめ、憶測や恐怖を手放し、自分自身の現実を作り出す責任を持つことを訴えます。

収録は2016年の6月。プレゼンの長さは10分。日本語字幕もあるのでぜひごらんください。動画のあとに、抄訳を書きます。

☆トランスクリプトはこちらにあります⇒Isaac Lidsky: What reality are you creating for yourself? | TED Talk | TED.com

☆TEDの説明はこちらです⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

人間は思い込みが激しい

ドロシー(アイザックさんの奥さんだと思う)が子供だったとき、金魚が好きでした。

父親に、「魚は尾ひれを振って前に進むんだよ」と教えてもらったとき、ドロシーはすぐに、「そうね、パパ。それで、魚は頭を振りながら、バックするのよね」と答えました。

ドロシーにとってはこれはまぎれもない事実。魚は頭を振りながら後ろに泳ぐと信じていたのです。

私たちの人生も、後ろに泳ぐ魚でいっぱいです。勝手に憶測し、理にあわない結論に到達します。

ものの見方に偏りがあります。

自分は正しく、相手が間違っていると思います。

最悪の事態を恐れ、ありえない完璧を目指します。

自分自身で、自分ができること、できないことを決めつける。私たちの心の中では、魚は狂ったように頭を振りながらバックしているのですが、自分ではそのことに気づかないのです。

私が洞察を得られたきっかけは?

さて、私に関して5つの事実を述べます。1つだけ嘘が混じっていますよ。

1.19歳のとき、ハーバードで、数学の優等学位を取得し卒業した

2.現在、オーランドで建設会社を経営している

3.テレビのシットコムに出演した

4.めずらしい遺伝性の目の病気で失明した

5.2人のアメリカの最高判事の法務書記として働いた

どれが、嘘でしょうか?

実は、みんな本当なんです。

テレビのことが気になっている人が多いかもしれません。13歳のときNBCの「Saved by the Bell: The New Class」という番組に出ました。

失明したことも、嘘かもしれないと思ったかもしれませんね。

なぜでしょうか?

いわゆる「障がい者」に対して、思い込みがあるからです。

目の見えない人間として、毎日、ほかの人の偏見と闘っています。しかし、きょうは失明の話をしにきたのではありません。

ビジョン(vision)についてです。

失明したおかげで、以前より、ものを深く見られるようになりました。心の中にいる後ろ向きに泳ぐ魚に気づいたのです。

目をあければ、そこに世界があります。見ることは信じることであり、そこにあるのは事実。そうですよね? 私はそう思っていました。

しかし、12歳から25歳のあいだに、私の視力はどんどん衰えていきました。

店員だと思って近づいたらマネキンだったり、手を洗おうと思って手を入れた先が、便器だったり。だんだん物をしっかり見るのが難しくなり、とうとう失明しました。

視覚は錯覚にすぎない

私たちが見ているものは、普遍的な真実ではないと私は学びました。客観的な現実ではないのです。

それは、ユニークで個人的な仮想現実であり、脳が作り出したものなのです。

神経科学の観点から説明しましょう。

視覚野は、脳の30パーセントを占めます。触覚は8パーセント、聴覚は2~3パーセントです。

毎秒、目は20億もの情報を視覚野に送りますが、それ以外の感覚器官から入る情報は10億です。

だから、視覚は脳の容量の3分の1を占め、3分の2のリソース(処理能力)を使っているのです。視覚が生み出す錯覚に説得力があるのもうなずけますね。

ですが、忘れないでください。視覚は錯覚なのです。

ものを見て何かを理解するとき、脳が参照しているのは、自分の、世界に対する見方です。これまでに得た知識や、記憶、意見、感情、注意を向けているものに影響を受けています。

脳は、実際に見えているものより、こうした情報と結びつけて目の前のものを理解するのです。それは無意識に行われます。

自分がどんなふうに感じているのかによって、見えるものが変わります。

映像の中の男性の歩いているスピードは、そのとき、チータを思い浮かべるか、亀を思い浮かべるかで変わってきます。

運動した直後には、坂道はより急な道に見えます。思いバックパックを背負っていると、目指す場所はより遠くに見えます。

自分が見ているものは、自分の心の中が作りだしたものですが、自分はありのままの世界を見ている、と感じてしまうのです。

自分なりの現実を作って、それを信じているわけです。

私もそうでした。目が悪くなる前は。





恐怖が現実を歪めてしまう

視覚は私たちが現実を作り上げる1つの方法にすぎません。私たちはさまざまな方法で、自分なりの現実を作っています。

たとえば、恐怖を例にとりましょう。

恐怖を感じていると現実が歪んでしまいます。恐怖を感じているときは、不確かな気持ちでいるよりは、どんなものもましに思えます。

不確かでいたくないので、恐れているものをすでに知っていると思ってしまったり、あいまいな気持ちでいるかわりに、最悪な状態を選んでしまいます。

心理学では、これを awfulizing(オウフライジング 最悪化)といいます。

自分を客観的に見なければならないときに、恐怖のせいで、視界がゆがめられ、批判的に考える能力を失ってしまいます。かわりに破滅的な感情にさいなまれるのです。

行動すべきなのに、恐怖のせいで行動できません。恐怖がもたらすであろうと思うことが起きることを傍観してしまいます。

失明する病気だとわかったとき、私は、自分の人生、これで終わりだ、と思いました。

何もいいことのない狭い世界で、寂しい人生を送ることになる、と思ったのです。完全な作り話ですが、このときの私はそう信じていました。もし、「自分が恐怖を感じている」という現実に向き合っていなかったら、実際そうなっていたでしょう。

物ごとをしっかり見るには?

では、どうやって、しっかり目を見開いて生きることができるのでしょうか。

自覚さえすれば、その生き方は学ぶことができるし、練習できます。ごく簡単にやり方をお伝えします。

1.あらゆる瞬間、あらゆる思考、どんなささいなことにも責任を持つ

2.恐怖を乗り越える

3.自分が憶測をいだいていることに気づく

4.心を強くもつ

5.自分自身を批判する声に耳を傾けない

6.運や成功に関する思い込みを修正する

7.自分の強さも弱さも受け入れ、その違いを理解する

8.心を開いて、自分が恵まれていることに気づく

恐怖も自己批判も、自分のヒーローも悪役もすべては自分自身の言い訳で屁理屈、手抜き、正当化、降伏です。

自分が作り上げたフィクションなのです。

そうしたフィクションは手放してください。あなた自身が現実の創造主です。だから責任があります。

私は恐怖というトンネルを抜け、何が起こるかわからない世界に出ることを選択しました。幸福な生活を作り上げようと思いました。

1人で、ではありません。家族がいます。

妻、三つ子、そして、最近、赤ちゃんも加わりました。

あなたは何を恐れていますか? 自分にどんな嘘をついていますか? 本当のことをどんなふうに飾り立て、どんな物語を書いていますか?

あなたはどんな現実を作り出していますか?

仕事や人生、人間関係、自分の心や魂において、後ろ向きの魚をそのままにしておくことは、大きな害になります。

チャンスを逃し、可能性を閉じ、不安や不信感にさいなまれます。

後ろ向きの魚を探してほしいのです。

ヘレン・ケラーはこう言いました。

「目が見えないという現実より悪い唯一のことは、目が見えるのに、何も見えていないことだ」と。

私にとって、失明したのは、とても幸いなことでした。見えないからこそ、見ることができるから。私が見ているものを、皆さんにも見てほしいと願っています。

///// 抄訳ここまで ////

単語の説明

vision  ビジョンは視覚ですが、ここでは、洞察力、本物を見抜く力、といった意味です。

awfulizing  オウフライジング ものごとを awful(たいへん悪い) に、考えてしまうこと。悪いほうに悪いほうに考える思考パターンです。

catastrophizing  カタストロファイジング 破局化、とも言います。

カタストロファイジングは、たった1つ何かネガティブなことが起こっただけで、世界が終わってしまうと大げさに考えることです。

将来を思い煩ってひどく心配する人は、オウフライジングの認知のワナにはまっています。不確かさを受け入れることができないので、「最悪な状態が起こるはず」と思い込んでしまうのです。

そして、その最悪な状態を心配して苦しみます。

ずっと先のことを心配する人によくあるパターンです。たとえばこの方⇒自分の進路に関して上手に親を説得する方法←質問の回答

他人には、「そんなの馬鹿げた心配だ」とわかりますが、本人はかなり深刻に悩んでいます。この思考パターンは無意識なので、人に指摘されるまで気づきません。

頑固な人は、たとえ指摘されても、最悪の状態が起こることを心配するほうを選びます。

現実は自分が作っていると語るほかの動画

我々は本当に自分で決めているのか?ダン・アリエリーに学ぶ、選択のミス(TED)

言い訳を作り出してしまう私たち:あなたに夢の仕事ができない理由(TED)

なぜ運動するのを面倒に感じるのか? あるいは断捨離を始められないのか?(TED)

自分の恐怖に向き合うことで恐怖を手放せる

恐怖のせいで、不本意な行動をしてしまうことってたくさんありますが、2つ例をあげます。

1.あとでいるかもしれないから捨てない

「あとで後悔するかもしれないから」と言いながら、いま、全く使っていない物を捨てない人がたくさんいます。

先にも書いたように、これから起こる未知のできごとを心配すると、かならずネガティブな思考になってしまうので、こうした心配はほどほどにしたほうがいいです。

あとのことを心配しすぎている例⇒あとで必要になったときに買うお金がもったいなくて捨てられない、という質問の回答。

こんなときは、自分が何を恐れているのか、その恐怖の正体を明らかにするとよいでしょう。

ただ、なんとなく、「あとでお金がいるかもしれない」とか「あとで必要になるかもしれない」と思うだけでなく、なぜ自分はそんなふうに感じてしまうのか、そこのところを考えてみるのです。

すると、それは単なる取り越し苦労にすぎない、ということがわかったり、もっと別の問題点(自分が本当に恐れているもの)に気づくことができます。

自分が見たくないものをがしっと見るべきなのです。

たとえ恐怖はあっても、基本的に自分は大丈夫なので捨てても大丈夫です。捨てれば、もっとよいものが入ってきます。これは捨てた人にしかわからないことです。

自分は大丈夫な話⇒お金がなくても豊かに楽しく暮らすたった1つの秘訣。

2.人の目を気にしすぎてもらい物が増える

人の目を気にしすぎて、もらい物にノーと言えなかったり、贈り物を捨てなかったりする人も、最悪化のワナにはまっているかもしれません。

人の言ったことや、行動、視線などを悪いほうへ悪いほうへ考えてしまい、「こんなことすると、嫌われてしまうかもしれない」と恐れ、いらない物を無理やりもらったり、誰も使っていない贈り物を後生大事にしまっておくのです。

人の行動をどう解釈するかは、自分にかかっているので、もう少し客観的に考えれば、ノーと言えます。

自分の行動を制限してしまうのは、人の言葉や目つきではなく、それに対して自分が感じてしまう恐怖なのです。つまり自分で自分を縛っているだけです。

しかし、そのことに気づいていないと、「あの人は、無理やり物をくれる迷惑な人」と相手をうらんでしまいます。

自分自身の恐怖に向き合って、乗り越えれば、もうよけいなもらい物にわずらわされることはないでしょう。

**********

アイザック・リッズキーさんは、Eyes Wide Open という本で、ご自身の体験を語っています。

翻訳はないようですが、オリジナルを日本のアマゾンで入手可能です(キンドル版もあり)。表紙クリックで該当ページに飛びます。

もともと才能にあふれた人だと思いますが、それでも、目が次第に見えなくなるのは、すごい恐怖ですよね。大きな悲しみがあったと思われます。

私は老眼でだんだん文字が見えにくくなっており、それでけっこう落ち込みますが、まあ誰でも通る道だし、恐怖と向き合おうと思っています。





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