飛び立つ鳥

TEDの動画

最終更新日: 2024.11.9

困難な時期がくれる贈り物(TED)

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困難なことに直面して落ち込んでいる人に勇気をくれるTEDトークを紹介します。

タイトルは、The gift of tough times(困難な時期の贈り物)。

コミュニケーションの専門家で、自己啓発のコーチ、 Tara Igoe (タラ・イゴ)さんの講演です。

困難なできごとが、心の傷を浮き彫りにし、それを贈り物と捉えれば成長できるという内容。

ポイントは、感情を押し込めず感じることです。



困難な時期がくれるもの

収録は2014年、動画の長さは10分。字幕はありません。動画のあとに抄訳をつけます。

タラさんは、ストーリーテリングの仕事をしていたパフォーマーだったせいか、詩情にあふれたトークですね。

父の死

2003年の4月、当時住んでいたLAから、故郷のマサチューセッツへ行きました。

父が亡くなったからです。悲しみで胸がいっぱいでした。そして、飛行機に乗るのが怖くなりました。
父の葬式が終わり、LAに戻るとき、飛行機が墜落すると思ったんです。

父は大腸がんで亡くなったから、飛行機とは何の関係もありません。

でも、私はそう思ってしまいました。なぜなら私は生きることが怖かったし、死ぬことが怖かった。だから、飛行機に乗るのも怖かったんです。

自分の感情に向き合う

以前は、自分の気持ちを押し込めて、嘘の安心感を作っていましたが、それができませんでした。

でも父を失ったことが、なぜか私の心を開いてくれ、その時、自分の気持ちを感じたいと思いました。

それまでそんなことは一度もしていませんでした。

父を失くした痛みを感じたかったんです。そうすれば、なぜか、私は父とつながったし、自分自身ともつながりました。

だから悲しみを感じ、父を救ってくれなかった医者に怒りを感じました。

そうしたら、自分の中にあった何かが開き、人生をこれまでとは違う見方で見るようになりました。

そして、うまくいかなかったことにも直面するようになりました。

そして私は仕事をやめ、演技の仕事に戻りました。舞台やストーリーテリングの仕事をしました。

そして、自己啓発の世界に身を投じました。以前、大好きだったことですが、またその世界に戻ったんです。

鳥かごの中の鳥

自己啓発のイベントである鳥に出会いました。

パームスプリングでの催しの休憩中、廊下を歩いていたら、鳥かごの中にいた鳥が、窓に体を押し付け、空を仰いでいたんです。

翼を切り取られた鳥が、鳥かごの中で決して飛ぶことのない空を見上げていました。この光景に心をつかれました。

その鳥の名前はカウボーイ。カウボーイを気の毒に思う以上に、私はカウボーイがどんな気持ちなのかよくわかりました。

私もそれまでずっとそんな気持ちでいたからです。

私は自分で自分を鳥かごの中に押し込めていました。

だから、私はコーチの資格を取ることにしました。

私はコミュニケーションの専門家でしたが、あの鳥にすごく感銘を受けたので、コーチになって、他の人達が、心の檻(おり)から出るのを助けたいと思ったのです。

失恋する

2012年、私は恋をし、その恋を失いました。

彼と一緒に住むために、19年住んだLAから引っ越すことにしました。

友人や舞台の仕事、キャリアなど、私を私に足らしめていたものであり、嘘の安心感を与えてくれていたものすべてに別れを告げ、北部の田舎に引っ越しました。

そこにはたくさんの動物がいました。そして、いろいろなことが起きて、私は壊れたんです。

到着から2週間ほどして、ひどいパニックアタックが始まりました。

あまりにひどくて、コントロールできず、地元の病院に行かねばなりませんでした。

気持ちを落ち着けるためにふだんやっていたことでは、抑えることができず、何もかもうまくいきませんでした。

私の年老いた愛猫ですら、家で感じるストレスに耐えられず、数日間、キャビネットの中に隠れていました。

でも私は猫のように隠れることはできません。

だから、私はまた自己啓発の世界に戻り、自分に何が起こっているのか、答えを探そうとしました。

無垢な自分に戻る旅

そしてこんなことを発見したんです。私の気づきが皆さんの助けになるといいのですが。

ちょっと前に聴衆の中にいる赤ちゃんが泣いていましたよね? この赤ちゃんは舞台に上げる価値があります。

とても貴重ですから。

この赤ちゃんこそ、私が戻ろうとしていたものでした。

誰もがかつて感じていた無邪気さと完璧であるという気持ち。

人はそういう感覚を感じる自分にもう一度戻ろうとしています。どうやったら戻れるか探しています。

少なくとも、これが私の人生観です。もとの自分に戻る道を見つけようとして、ジョン・グレイのような人達から、学びました。

彼らは、人間関係とコミュニケーションの専門家です。

テレビでこうした人達の番組をたくさん見て、話を聞きまくりました。

私の人生で一番暗かったこの時期、父が亡くなったときよりも暗かったこの時期を乗り越えるために、助けてくれたことが2つあります。

感情を受け入れる

愛する人を失ったり、恋に落ちたりする瞬間は、癒やされていなかった古い傷が出てくるきっかけです。

私の場合、治っていない傷が津波のように押し寄せてきました。

何ヶ月も泣いてばかりいましたから。

そういう瞬間は、実は、私達にとっては機会であり、贈り物なのです。

私は、自分の感情を感じることを学び、ストレスや不安と呼ばれるものを、そういうネガティブな言い方で呼ぶのをやめるようにしました。

そういう否定的な言葉は、感情によくありません。

私達人間は、自分自身を感じ、表現するためにここにいます。それが人生の豊かさで、先ほどの赤ちゃんの泣き叫ぶ声なんです。

赤ん坊は、それを感じるべきか否かなんて考えていなくて、ただ、その瞬間にいて感じています。

そういう感情こそ、私達の人生の指針で、私達を宇宙と結びつけてくれます。

私は、以前、私がストレスと呼んでいたものを、認める方法を学びました。

たとえば、職場の上司がいやな人で、あなたは奥さんに、「ああ、ストレスがたまっている」と言ったとします。

それをストレスと呼ぶ代わりに、どんな感情でいるのか、言うんです。

会議で自分に注意を払ってくれなかったから、ボスに対して怒っている、自分の仕事を認めてくれなかったから怒っている、あんなに一生懸命働いたのに。だから傷ついた。

こんなふうに自分の感情を語ります。

以前の私は、ストレスと呼んでいたものを、体のあちこちに感じていましたが、自分がどんな気持ちなのか、その瞬間、何を感じているのか問いかけるようにしました。

こうするだけで、私は変わりました。

もちろん、こうできるようになるまで、長い時間がかかりました。

ネルソン・マンデラの言葉

あるインタビューで、ネルソン・マンデラがオプラ・ウィンフリーに語った言葉が好きです。

オプラは、彼に、一体どうやって25年間も刑務所で生き延びられたのか尋ねました。

彼は、こんなふうに答えました。

「もし刑務所に入っていなかったら、人生でもっとも難しいことである、自分自身を変えることなんてできなかったでしょう」。

ネルソン・マンデラは自分自身と向き合わざるを得なかったのです。

そして、その瞬間、彼は選択しました。

その変化に屈服し、自分を変えたんです。彼は自分の感情に耳を傾け、成長し、皆が尊敬する男性になりました。

廊下にいた鳥のカーボーイとは違って、私達は皆、自分が囚われている心の檻を開ける鍵を持っています。

適切な道具を見つけ、自分の感情をちゃんと感じれば、檻から出て、飛び立てるのです。

//// 抄訳ここまで ////

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タラさんの言いたいことを簡単にまとめると、

つらいことがあると、治しきれていない心の傷が出てくるけれど、実はこれは、贈り物である。

贈り物であると考え、自分の気持ちに耳を傾ければ、もっといい自分に変わることができる。

この2行になると思います。

つらい、悲しいという気持ちは心の中に押し込めないほうがいいと、他の専門家もよく言っています。

でも、人間にとって、こういう気持ちにまっこうから向き合うのは難しいんでしょうね。

自分に正直になって、悲しみや不安、怒り、寂しさ、もどかしさに向き合うことができたら、ストレス解消のための買い物なんてする必要はありません。

しかし、現実は、こうした買い物をする人が多いし、気持ちをいやすために、ゲームや飲酒、その他の自分のためにならない行動に走る人はたくさんいますから。

でも、一番いいのは、自分の心に向き合って、それを丸ごと受け入れることです。

これ、1人でできますし、1人でできないならセラピストなどの助けを借りることもできます。

もし、今度、何かすごくつらいことがあったら、自分がどんな感情になっているのか、目をそらさずに向き合ってください。

買い物するより、良い結果になると思います。





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