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日記を書くメリットを教えてくれるTEDトークを紹介します。
タイトルは、The Healing Power of Writing (書くことの癒やしのパワー)。
ヨガの先生で、日記を利用したセルフケアを推奨している Kerstin Pilz(カースティン・ピルツ)さんのプレゼンです。
書くことのスーパーパワー
収録は2020年の10月。動画の長さは16分。自動生成の英語字幕があります。動画のあとに抄訳を書きます。
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
日記には人を癒やす力があると伝えるシンプルな講演で、内容はさほど難しくありません。
微笑みをなくして日記を書き始めた
ここは私が微笑みを失った街、その時、2度と笑うことはないと思いました。
2009年のバレンタインデー。愛して、結婚したばかりの人が、死ぬとわかった日。それはとても天気のよかった日。メラノーマを患っていた夫は病院にいました。
その日の午後、2つのことが私の命を救ってくれました。私はジンのボトルの中身を流しに捨て、ポケットサイズの日記帳をもって街に出ました。
きょう、私が皆さんにお話するのは、日記が私を助けた話です。
それは、ポケットにいつも、個人的なセラピストがいるようなもの。しかも、無料でいつでも利用できます。
それは、皆さんを助けるかもしれないのです。書くことで得られる癒やしの力の恩恵を受けるのに、うまく書くことも、ちゃんと書くことも必要ありませんから。
本能的に日記を書き始めた私は、書くことが、セラピーになるという研究がたくさんあることを知りませんでした。
でも、10代のとき、日記を書いて癒やされた体験がありました。
このとき私は、新婚の妻から未凡人になろうとしていて、次に起こることの検討がつかず、どんどん下に落ちていきそうでした。でも、書くことが、粉々に砕けそうな自分にしがみつかせてくれたのです。
日記が感情の波を受け止めてくれた
どんなに慎重に計画しても、こんなふうに誰の人生でも砕けるときがありますよね。
私は長く勤めた大学の仕事をやめ、南米に旅行するところでした。旅行する代わりに、夫は、戻らない旅に出たのです。そして、私は人生でももっとも重要な旅である心の旅(inner journey)に出ました。
2009年、スマホはまだ一般的ではありませんでした。だから、気持ちをまぎらわせてくれるものは、ポケットにあった小さな日記帳だけ。
痛みから逃れたかった私は、水泳とランニングを始めました。
みな、痛みから逃れ、自分を麻痺させたいときはあります。実際、今、パンデミックが出現してから、酒屋とNetflixが繁盛しています。
ジンの中身を流したとき、赤ワインは残しました。お酒なしで、乗り切れそうにないと思ったから。
でも同時に、押し寄せてくる感情の波をしっかり受け止めたいとも思っていました。
日記を手書きすると、ペースをおとせるので、自分自身の物語と共にいることができます。結局、感情から逃げ切ることはできません。感情はいつも私達に追いつきます。
人生は不公平だけど
書くことは自分自信の物語を目撃することです。そして、何も書いていないページは、本当の自分になって、自分の真実を語れるとても安全なスペースです。
だからこそ、書くことは人生を変えます。
誰もが語り手です。私達のアイデンティティは、自分が自分について語る物語に結びついています。
パーティで出会った知らない人に、あなたはどう自己紹介しますか? 職場でどんなふうに自己紹介しますか?
時々私達は、自分が自分の語る物語の責任者だということを忘れてしまいます。
物事がうまくいかないとき、被害者の物語にしがみつきます。
「かわいそうな私。なぜ私なの? どうして人生はこんなに不公平なの?」
確かに人生はとても不公平なもの。1年後の2010年、私はタウンズビルのモーテルの一室に1人でいました。夫が病院で寝ているとき、3週間、毎晩、このモーテルに泊まりました。
そして、その晩、心が粉々になりそうなものを見つけました。
夫は、結婚したその日から浮気をしていたんです。
さらに、夫の葬式の3週間後、サイクロンのせいで、家から避難するように言われたんです。
街はサイクロンでめちゃめちゃになり、その光景はますます私の気持ちを参らせました。
自分自身も帰らぬ旅に出てしまいそうなほど、危険な瞬間でした。
風のなか、ぺたんこになったバナナ畑に立って、地球の向こう側にいる母に電話しようとしていたとき、新しい物語を書き、笑顔を取り戻すことは、自分にかかっていると気づきました。
母は、第二次世界大戦の開戦前日に、ナチが支配する世界で生まれました。貧しかった祖父母は母を学校にやることができませんでした。
母は、生涯、被害者の物語に囚われていました。家族の中で、自分がすごく馬鹿で、教育を受ける資格のない人間だという物語を自分自身に語っていました。
本当は能力があるのに、自分自身のからに閉じこもる母を見るのはとても悲しい体験でした。
私は母のようには生きたくなかった。自分自身のヒーローになりたいと思いました。
日記を書きながら夫を許した
そして、書くことが、とてもつらかった時期に、教えてくれました。
帰らぬ旅に出るような瞬間や克服すべき障害は、自分の物語のアーチを描く、重要なターニングポイントなのだと。
自分の物語のヒーローになるためには、私は夫を許す必要がありました。だから、夫に、彼が決して読むことのない手紙を書きました。
手紙を書いたら、私は突然自由になりました。痛みや怒りは、日記のページに記され、私の心は自由になったのです。
何通も手紙を書きました。彼がどんなに最低だったか、えんえんと話す必要があったから。でも、最後には夫を許すことができました。
彼が付き合っていた女性たちにもメールを書きました。相手には、最終的なメール、つまり許すというメールを出したのです。
何人かは、私が許してくれたから終わりにできたと感謝のメールをくれました。
ある人は、いかに、自分の夫がひどい人か長いメールをよこしたので、返事を書いてなぐさめました。また返事が来ましたが、こんなやりとりをするのは自分のためにならないと気づき、この人と話をするのはやめました。
そして、自分の気持ちを会話することにしました。私は愛されていたのだと自分に言いました。
セルフコンパッションと感謝
セルフコンパッション(自分を許すこと)は、書くことによって私が見つけたスーパーパワーの1つです。
もう1つのスーパーパワーは感謝すること。夫のガンを治す方法はないと言われたとき、私は、病室の外の太陽の光や、プルメリアの花の香について日記に記しました。
当時は感謝にどんなメリットがあるのか知りませんでしたが、最悪の日に、何かポジティブなことも加えたいと本能的に思ったのです。
感謝日記は、1日の終わりに感謝できることを5つ書くだけ。そして感謝できることはいつでもあり、微笑みを取り戻させてくれます。
でも、皆、自分の物語を書く時、ネガティブなことばかりを見てしまうんです。決断を誤ったこと、夢が砕かれたこと、機会を失ったことなどに。そして、自分がよくないと思ってしまうのです。
書くことは、こうしたネガティブな語りを放出するとても簡単で効果的な方法です。
書きながら、心の中の会話のスピードを落とせるので、もっと健全なシナリオを変えることができます。
結局、人生が自分に与えてくれたものを、どう語るかが、重要ですから。
感情を出してみる
私の場合、悲しみがあったから日記の癒やしのパワーを見つけることができました。
悲しみにはいろいろな形があるから、皆さんもきっと違う色合いの悲しみを体験したことがあるでしょう。
子どもが独立して家を出ていったこと、愛する人が依存症やメンタルの病気に囚われていくのを見たこと、離婚、パンデミックが私達の日常に影響を与えたことなど。
悲しみを通り抜ける過程で、西洋文化は悲しみに抵抗しようとするとわかりました。
大変なときも、感情を外に出さず強くあれと育てられます。でも、真に勇気のある行動は、ネガティブな気持ちをしっかり感じること。弱い自分でいることを許すことです。
悲しみを体験したことがない人は、早く立ち直るように私に言いました。
「もう5ヶ月たったのだから、夫の名前を使うのをやめたほうがいい」と。でも、悲しみを乗り超えることはできません。悲しみの中を進むのです。
そのとき、日記は私の話を聞いてくれました。何ページも。そして、ある日、私は悲しみの物語を手放し、ページをめくって自分の新しい物語を書く準備ができました。
そして、大学の仕事には戻らす、今は、人々に書くことの癒やしのパワーについて教えています。
10分あれば日記は書ける
書くことから癒やしのパワーを得るために、うつになったり、みじめになったり、惨憺たる体験をする必要はありません。
日記には、自分の創造性とつながる楽しさがあるし、自分自身の声を見つけたその瞬間、力を得られます。
自分の物語を語ることができます。というのも、書くことは、自分の深いところにある、自分自身との対話を掘り下げることだから。
皆さんの人生で一番重要な関係は、自分自身との関係ですよね。
だから、明日から始めてみませんか?
10分あればできます。中には、「10分なんてないよ。朝ごはんを食べる時間もなのに」と言う人もいるでしょう。
でも、何も考えずに、インスグラムのフィードをスクロールしているんじゃないですか? そんなことをしているうちに10分は簡単に過ぎていきます。誰もがそういうことをします。
私達は他人の人生を見ているんです。知らない人に絵文字を送りながら。
でも、自分自身の人生を見ようと立ち止まることを、どれほどしているでしょうか? 自分自身にやさしい言葉を送ることは?
だから、明日、スマホで何かする前に、それをタイマーとして使ってください。
10分に設定して、自由に書いてください。
筆にまかせて書いたあと、どんなことが起きるか、きっと驚きますよ。それは、自分の中にいる編集者を介入させない行動です。
人生を驚きと畏敬のレンズで見てください。そすれば、あなたは新しい視点を持つことができます。
いろいろな書き方
方法はいろいろあります。シンプルなブレインダンプをしてもいいし、その日のゴールを書いてもいい。
お題(writing prompt)を使ってもいいでしょう。私がした5つのこと、私が今朝見た5つのもの、など。
自分が感じていることを書いてもいいですね。淹れたてのコーヒーの香りをかいで、それが呼び起こす記憶について書くのもいいです。
そして書き続けてください。そうすれば魔法が起きます。
日常的に個人的なものを書くことは、日々の散歩やヨガと同じように、ウエルビーイングによいことをもたらします。
集中できるし、心が落ち着くし、つながることができます。
それはすばらしいストレスの解毒剤。紙とペンにかかるお金を出すだけで、誰もができることなのです。
//// 抄訳ここまで ////
Kerstin Pilzさんの本。予約受付中。メモワールのようです。
書くこと・物語に関するほかのプレゼン
手書きのメリット(TED)~手書きは人生を変えるパワーがある。
知らない人にだすラブレター(TED)~手書きの手紙のいいところ。
気持ちの整理をするために、紙に書き出そう:ライダー・キャロル(TED)
日記のすすめ
日記は書いてみるとけっこうおもしろいので、興味がある人はつけてみてください。
いつもブレインダンプやモーニングページをおすすめしていますが、私は、日記も書いています。
なんでもそうですが、自分に合った方法や日記帳を使うと、楽しく書き続けることができます。
それが自分に合っているかどうかは、書いてみないことにはわかりません。
私は、小学生の頃から何度か日記を書いてみましたが、続いたことはありませんでした。
鍵付きの日記なんていう今から考えるとめんどくさい日記帳を買ってしまったのですが(きっと昭和の流行り物)、鍵をあける手間がある分、日記を書くハードルがあがるので、おすすめしません。
カナダに来てから、日本にいたときからスケジュール帳として使っていた味の素の赤い手帳を日記帳に使ってみたら続きました。
それから、ビジネス手帳みたいなものにつけたときも続きました。
たぶん私にはかわいい系のセンチメンタルな日記帳より、実用的な日記帳のほうが向いています。そのうち全然かわいくないビジネス用の3年や5年の連用日記をつけ、今は10年日記をつけています。
使っている日記帳はこちら(アマゾンへの広告リンク)
私の色はゴールドですが、このパールブルーもよさそうな色です。この日記帳もシンプルなタイプです。
でもそのほうが飽きないと思います。
何も日記は日記帳につける必要はなく、大学ノートでも手帳でも、好きなものにつけてください。色ペンやシールでデコりたいならそうすればいいでしょう。
実は、今年になってから、GoogleのKeepsでも日記をつけています。
紙の日記帳も楽しいのですが、娘に、「あれっていつだったっけ?」と聞かれたとき探すのがけっこう大変なので、備忘録はデジタルにしました。
Keepsの日記は、仕事を開始する時間と終わった時間につけて、その日、何時間、どんな仕事をしたか書き、前日に何か特別なことが起きていればそれも書いています。
デジタルの場合、手書きより圧倒的に早く書けるので、スローダウンするメリットはありませんが、それでも、書けば、振り返りができます。
もちろん、カースティンさんのいうように、日記には癒やしの力もあるでしょう。
プレゼンでは、SNSで他人の生活を見ているときのほうが、自分と向き合っている時間より長いと言っていましたが、これは多くの人の現実だと思います。
自分に向き合うために、いろいろな付き合い方ができる日記をぜひお試しください。
ネガティブ思考改善にモーニングページがいい~今月の30日間チャレンジ
日記を書くことは心の断捨離に効果的。10年日記を使っています
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日記はただその日あったことや、気づいたことなどを淡々と書いていても、読めば、その時の自分の心模様やその場の雰囲気を思い出します。
毎日、日記をつける必要はありませんが、もし、継続したいなら、できるだけ短い日記にするのがおすすめです。何かを書いて残すことより、日記に向かう時間をもつことのほうが重要ですから。