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旅先で静かな海岸を歩いていると、美しい波音とは対照的に、目に入るのは数え切れないほどのプラスチックのゴミ。ペットボトル、袋、ストロー…これらはすべて、私たちが無意識に使い、捨ててしまったものです。
毎日、世界中の海に大量のプラスチックが流れ込み、海岸に漂着するだけでなく、海洋生物がプラスチックの破片を食べています。美観が損なわれるだけでなく、プラスチックが、海洋生物や私たちの健康に重大なリスクをもたらしています。
そんなプラスチック汚染の現状を教えてくれる、TEDトーク The One True Solution to Plastic Pollution(プラスチック汚染の唯一にして真の解決策)を紹介します。
講演者は、海洋保護活動家の、Wellsley Brown(ウェルズリー・ブラウン)さんです。
プラスチック汚染の解決策
収録は2019年で、動画の長さは13分です。動画のあとに抄訳を書きます。
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
ブラウンさんの英語はとても聞き取りやすいです。
日常にはプラスチック製品があふれている
いつもどんなふうに1日を始めているか考えてみてください。
朝起きて顔を洗い、歯磨きをし、フロスもかけるかもしれません。
コーヒーを持って仕事に行き、私のように料理が苦手な人は、途中でランチを買うでしょう。
このとき、どれぐらいプラスチックにさわるでしょうか?
洗顔クリームのボトル、歯ブラシ、歯磨き粉のチューブ、フロス、コーヒーカップのふた、ランチの入った容器。
スーパーに行けばもっとプラスチックに出会います。じゃがいもにラップで個別包装するなんて、いったい誰のアイデアなんでしょうか?
企業は、消費者に使い捨てのプラスチックを使う習慣を断つことなどできないと、信じてもらいたがっています。
でも、それは企業が私たちにほかの選択肢を与えていないからです。
実際、プラスチックなしで日常生活を送るのは不可能に近いです。
自分で歯磨き粉やデオドラントなどを作らない限り。これができないなら、プラスチックに包まれたものを買い続けるしかありません。
企業が、毒性があり無駄が多く、地球を汚染しつづけるプラスチックを使うのをやめない限り、この問題はなくならないのです。
大量のプラスチックが海に流れ込む
毎年、176億ポンド(およそ80億キログラム)のプラスチックが海に入り込んでいると科学者は推測しています。
176億ポンドは、プラスチックでいっぱいのごみ収集トラックを、毎分投げ込むのと同じぐらいの量です。
「私はちゃんとリサイクルしておるから大丈夫」と思うかもしれません。何トンものプラスチック商品を製造している企業も、消費者にそう思ってもらいたがっています。
今、そうした企業のロゴがついたパッケージが海外に流れ着いているので、企業もようやく、この問題に気づき始め、リサイクルをがんばると言っています。
でも、リサイクルはうまくいきません。
製造されるプラスチックのうちリサイクルされるのは、9%だけです。
91%は、焼却されるか、ゴミ捨て場に送られるか、海洋を含む自然を汚染するかします。
どこにでもあるプラスチック
街を歩けば、あらゆるところに、プラスチックに包まれたものや、捨てられたプラスチックの袋があります。
プラスチックはどこにでもあるんです。
海面に浮かび、世界の果ての海岸線に打ち上げられ、北極の氷から溶け出し、一番深い海底、つまり水面から7マイル(約11.27キロ)行った底に沈んでいたりします。
日常でプラスチックを避けることはできません。それは、プラスチックを世界に持ちこんだ私たちの日常だけでなく、海洋生物にとっても同じことです。
プラスチック汚染のためにダメージを受ける海洋生物の数は日毎に増えています。
つい最近、88ポンド(およそ40キロ)のプラスチックを飲み込んで死んだクジラがフィリピンに打ち上げられました。
このようなことは今に始まったことではありません。
動物や人間がプラスチックを食べている
60%のクジラやイルカ、ウミガメの半分、90%の海鳥がプラスチックのかけらを飲み込んでいると推定されています。
動物プランクトンですら、プラスチックを食べているのです。
プラスチックの小さなかけらを食べた海洋生物は、魚のようなもっと大きな生物に食べられます。
こうしてプラスチックは、食物連鎖の上のほうまで来て、私たちの食卓に上るのです。
海産物をあまり食べなくても、プラスチックはほかの食べ物の中に入り込んでいます。
塩、はちみつ、水、ビールなどからマイクロプラスチックが検出されています。
私たちがプラスチックを食べ、飲んでいることは否定できません。でも、どれぐらい食べているか、そして食べたプラスチックがどんなふうに健康をおびやかすかはまだわかっていません。
科学者たちは、プラスチックとそれに関連する化学物質がどんなふうに人体に影響を与えるか、引き続き研究しています。
プラスチックは決してなくならない
プラスチックが問題なのは、決してなくならないことです。どんどん小さなかけらになっていきますが、いったん環境に放出されたら、完全に分解することはないのです。
もし全員が、すべてのプラスチック製品をリサイクルしたら、海には入りこまないと思うかもしれません。
もし、そうできれば。
でも、リサイクルビンに投げ込まれたプラスチック全部がリサイクルされるわけではありません。
リサイクルされるものもありますが、その多くは、ダウンサイクルされます。つまり、より価値のないチープなプラスチック製品になります。
捨てられたり、リサイクルの過程で失われたりするプラスチックもあります。一部は、アメリカのような国から、処理場が整っていない他の国に輸出されます。
自国でプラスチックを処理するより、遠くの国に輸出するほうが安くあがるからです。
つまり、ちゃんとリサイクルしたとアメリカで思っている製品が、地球の向こう側のゴミ捨て場や海洋の中に行き着くのです。
あまりにたくさんのプラスチックを輸出しているので、もう受け付けない国も出てきています。自分の国にも処理しなければならないプラスチックはたくさんありますから。
企業はこのことを知っています。リサイクルするスピードより、自分たちが作り出す製品のほうが多いことも知っています。
こうして、海洋に入り込むプラスチックは増え続け、海の中でたまっていくのです。
リサイクルでは解決できない
この問題を解決するために、リサイクルだけに頼るのは、沈んでいく船の穴を塞がずに、助けようとするようなもの。
大量のプラスチックが海に流れ込んでいるという事実は、既存のシステムが機能していないことを意味します。
廃棄されたプラスチックの処理より、製造する量がずっと多いのです。
どうしてこんなことになったのでしょう?
プラスチックの最大の市場である包装業界が、何度も使える入れ物より、1回しか使わない入れ物を使うことに決めたからです。
1950年代に、使い捨ての生活が始まりました。
今日製造されるプラスチック製品の40%近くが包装に使われ、使い捨て製品となっています。
使い捨てプラスチック製品の矛盾
でも、使い捨てのプラスチック製品のデザインには欠陥があります。
使い捨てを目的とした製品に、永遠に持つ素材を使っているのですから。
使い捨てのプラスチック製品は、世界中で、掃除をしたときに見つかるトップテンの中に入っています。
たとえば、プラスチックのボトル(ペットボトル)やふた、プラスチックの袋(ビニール袋)、ストロー、テイクアウトに使うコンテナなど。
プラスチックばかりに包まれた世界は、明らかにサステイナブルではありません。使い捨てのプラスチック製品を作っている産業に、この習慣を断ってもらう必要があるのです。
個人にもできることはあるが
もちろん、私たち個人も、プラスチックのフットプリントを減らすべきです。
できるだけ使い捨てのプラスチック製品を使うことを拒否すべきです。少なくともプラスチックで個別包装されたじゃがいもを選ぶべきではありません。
でも、ストローはいらないと言っているのに、受け取ってしまうことってありますよね?
友人や家族から、「プラスチック警察」と呼ばれている私でもあります。
がんばってプラスチックを避けようとしても、いつもうまくいくわけではありません。
個人の行動だけでは、この問題を解決するのに十分ではないのです。
このトークを始めてから、30万ポンド(およそ150トン)のプラスチックが海に入り込んでいます。これは地球上に存在した動物のうちもっとも大きなシロナガスクジラと同じぐらいの重さです。
企業がやり方を変える必要がある
企業が、製品を製造し、包装し、私たちに販売するやり方を変えるまでは、社会の変化は起きず、さらに多くのプラスチックが海に行き着きます。
この問題を解決するため、企業は使い捨てのプラスチックを私たちの生活に押しつけるのをやめ、プラスチックを使わなくてもいい選択肢を消費者に与えるべきです。
私たちは、海洋擁護団体のようなグループに参加して、企業にプラスチック汚染を止めるよう働きかけることができます。
「リサイクルよりも、使い捨てのプラスチックを排除し、再利用やリフィルできる配達システムを導入すべきだ」。そんな私たちの声を聞き始めた会社も出てきました。
今、使い捨てされている容器がすべて回収され洗浄され何度も使えるとしたらどうでしょう?
イノベーションのチャンスはたくさんあるのに、変わりたがらない企業が制限をかけています。
もちろん、皆さんが、日常生活で使い捨てのプラスチックを減らす気になってくれれば、とてもうれしいです。
でも、プラスチックが環境に及ぼしている壊滅的な影響を、大きな規模で、永続的に減らすには、つまり、お腹にビニール袋が詰まったクジラが打ち上げられるニュースを見たくないなら、どこかの国の海岸線や国全体がプラスチックの廃棄物であふれているところを見たくないなら、未来のある海や、私たち自身の未来が欲しいなら、企業に変わることを求めるべきなのです。
//// 抄訳ここまで ////
エコロジーに関するほかのプレゼン
自分のゴミを処理してくれる人は誰?:ニューヨーク市のゴミの中で見つけたもの(TED)
ファストファッションはもうやめた。あなたもそうすべきだと思う(TED)
ほかにもゼロウエイストのトークなど、たくさんあります。
プラスチックの使い捨ては極力すべきでない
日常で、プラスチックを使うことは避けられず、使い捨てのプラスチックの利用も減ってきてはいますが、まだまだ多いですよね。
最近、YouTubeで料理を作る動画をよく見ています。先日、スープやおかずをたくさん作って、一食分ずつ冷凍庫で保存する際に、ジップロックバッグを使い、その袋は、1回で捨てているという動画を見て、びっくりしました。
でも調べてみると、ジップロックバッグを販売している日本のメーカーは、最近が繁殖するかもしれないから、食品を入れたら、1回で捨てることをおすすめしているらしいのです。
ジップロックは何回使いまわせる? 企業の回答に「意外だった」 – grape [グレイプ]
北米では、Ziploc(ジップロックを作ってるメーカー)がジップロックバッグは石鹸で洗って乾かして何度も使っていい、と言ってます。
Ziploc Finally Settles the Debate: This Is How Many Times You Can Safely Reuse a Plastic Bag
同じジップロックなのに、素材が違うんでしょうか?
私はジップロックバッグや、店が食品の包装に使うビニール袋に食品を入れて、何回も使っています。
でも、食中毒になったことはありません。
食中毒を心配するよりも、海の中にプラスチックが大量に入り込んでいるほうを心配すべきじゃないか?
ついでに書くと、プラスチックでできている袋に液体の多い食品を入れて、電子レンジにかけたものを食べるほうが危険ではないのか?
そう思ったので、今回のトークを紹介しました。
あなたはどう思いますか?