食べるのをがまんしている女性

TEDの動画

最終更新日: 2019.06.24

セルフ・コントロール(自制心)の秘訣:ジョナサン・ブリッカー(TED)

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喫煙、食べ過ぎ、スマホの使いすぎなど、体によくない習慣やめたいとき参考になるTEDのプレゼンを紹介します。

タイトルは、The secret to self control (セルフ・コントロールの秘訣)、プレゼンターは、心理学者で禁煙の研究をしている Jonathan Bricker (ジョナサン・ブリッカー)さんです。



セルフ・コントロールの秘訣:TEDの説明

Jonathan Bricker’s work has uncovered a scientifically sound approach to behavior change that is twice as effective as most currently practiced methods. His new methods are driving new norms and new apps for how people quit smoking and decrease obesity, saving many people from an early death.

ジョナサン・ベッカーは、現在行われている方法よりも2倍効果のある、科学的に裏付けされた行動を変える方法を紹介します。

彼の新しい方法とアプリのおかげで、喫煙や食べ過ぎによる肥満が減り、たくさんの人々が早死にしないでいられます。

彼のアプローチは、acceptance and commitment therapy(アクセプタンス・アンド・コミットメント・セラピー)と呼ばれるもので、自分の中にわいてくる渇望を受け入れる方法です。

acceptance は受け入れることです。講演の中では、このアプローチを、Willingness (ウィリングネス)と呼んでいます。ウィリングネスは、何かを快くすることです。

収録は2014年の11月。動画の長さは15分。日本語の字幕もあります。動画のあとに抄訳を書きますね。

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に





父と母から学んだこと

母の話から始めましょう。

42歳で私を生んだあと、母は人生ではじめて、運動を開始しました。そのへんを走ることから始め、5キロのレースに出るようになり、次は10キロのレースへ。

その後はマラソンを始め、トライアスロンをし、57歳になるころには、エベレスト山のベースキャンプでトレッキングをしました。

次は父の話です。子どものころ、父は、私をよく科学の教室に連れていってくれました。

父は私が高校生のときの微積分の先生でもありました。机の下に入りたかったです。

母からは、健康の価値を学び、父からは科学の価値を学びました。どちらも大切なことです。

早死する二大要因とは?

この2つの価値は私の人生を導くものとなり、その結果、私は人々を疫病から助ける仕事につきました。

エボラのことじゃありませんよ。

「不健康な生活」という名の疫病です。

世界で5億人が肥満です。

50年前、アメリカではじめて喫煙の危険性が伝えられてから、この問題は解決したと思われていますが、実は、世界で1億人がたばこを吸っています。

肥満と喫煙は、予防しようと思えばそうできる、早死の二大原因です。

これらの問題を解決するのはジグソーパズルをするようなものです。

パズルのピース、すなわち私たちが不健康な行動をしてしまう原因はさまざまです。遺伝、脳内の伝達物質、周囲の人やメディアといった環境的要因もあります。

それぞれの要因は自分だけでは解決できません。

しかし、たった1つだけ、自分でできることがあります。

それは自分の選択です。

喫煙や食べ過ぎという、くせになっている行動に対する渇望をどうするかは、自分で選べます。

ウィリングネスとは?

これらの疫病をふせぐのに効果的だと思われる、セルフ・コントロールに関する新しい科学があります。

ウィリングネスです。

ウィリングネスとは、渇望がやってきて、過ぎていくのを受け入れること。欲望のままにたばこを吸ったり、不健康なものを食べることなしに。

これは意志のちからではありませんし、渇望をむりやりねじ伏せることでもありません。

渇望と戦うのをやめるのです。渇望を受け入れ、自分の中にいることを許し、渇望と和解します。

ここまで聞いて、みなさんは、「うそでしょ?」と思っているでしょう。

私もそうでした。はじめて、ウィリングネスのことを聞いた数年前は。

友人がウィリングネスの本を持ってきて、「ジョナサン、この本はきみの人生を永遠に変えてしまうよ」と言いました。

「ああ、そうなんだ。あとで目を通しておくよ」

パラパラと中を見た私は「ただのエセ心理学だ」と思い、本を放り出しました。

数年後、妻に釣れられて、ワシントン大学で行われたウィリングネスに関するセミナーに行くまでは。

このセミナーでびっくりしました。

その後、本を読み直し、ウィリングネスに関するほかの本もたくさん読み、ウィリングネスのトレーニングも受けました。

ウィリングネスは、行動を変えるためのアクセプタンス・アンド・コミットメント・セラピーのアクセプタンス(受け入れること)の一部だとわかりました。

この方法は、不安障害や依存症の人々を助け、行動を変えるために広くつかわれています。従業員のパフォーマンスの向上や、ストレスを軽減にも役立っています。

従来のやり方は渇望を無視すること

セミナーでの私の驚きをみなさんにわかっていただくには、私の仕事について知っている必要があります。

この世界では、禁煙や減量をしたいとき、欲望を無視しろ、と教えるのがふつうなのです。

たばこについて考えるのをやめ、何かを食べたくなったら気を紛らわせることをすすめます。

この方法をうまく表しているブロードウエイの歌があります。

♪頭の中に考えが浮かんで混乱してきたら
その感情を感じるな。押し殺せ。
電気のスイッチのように切るのさ。スイッチを切れ。

みんないつもそうしてる。正しくないと思えることを感じたら。
そういう気持ちはライトみたいに扱うのさ。切ればいいんだ♪

私たちはこの歌のように、「悪感情のスイッチを切れ」という世界に住んでいます。

渇望を無視しようとするのは無駄

さて、このクッキーを見てください。焼き立てです。
わ~すごくおいしそう。食べたい。

クッキーを食べたい渇望を感じているところに、それを切れ!

スイッチを切れ!

よけい食べたくなります。スイッチを切ろうとしても無駄なのです。切れないのですから。

それに、もしかしたら、スイッチを切る必要もないんです。

フレッド・ハッチンソンがんリサーチセンターにある私の研究所で、渇望を受け入れる方法が、どのぐらい効果的か調べてみました。

対面でするカウンセリング、禁煙ホットライン、ホームページ、アプリを使いました。こうした技術を使うと、何百万人の人の禁煙を助けることができます。

さて、リサーチの結果ですが、渇望を無視するアプローチをした人の中には、禁煙に成功をした人もいますが、実験によって結果にばらつきがありました。

ところが、ウィリングネスの方法をとった人は、そうでない人の2倍、禁煙に成功したのです。

とはいえ、データでわかるのは、このアプローチの効果のほんの一部分です。

ウィリングネスの使い方をお見せするために、私が行っているカウンセリングの例をお話しします。

喫煙者ジェインの場合

ここにジェインという45歳の女性がいます。ティーンエイジャーのときから喫煙を始め、何度か、禁煙を試みたものの、うまくいきませんでした。

だから、ジェインは、新しい方法はうさんくさく思っていますが、今度こそうまくいくんじゃないかという期待もしています。

まず、ジェインに渇望に気づくように言いました。

欲求を感じたら記録する

たばこを吸いたい気持ちが起こるたびに、記録をとることをすすめました。渇望の強さも記録し、そのあとタバコを吸ったのかどうかも。

説明している途中で、ジェインは、「それってどういうことですか? 私、渇望なんて感じません。ただ、タバコを吸うだけですよ」

「とにかく試してください。うまくいかなかったら別の方法を試しましょう」。

1週間後、ジェインは「吸いたい気持ちを記録しました。ずーっとね。で、タバコのことが頭から離れないんです。どうしたらいいんですか?」こう言いました。

答えをいう前に、ことの背景をお話しします。

ジェインはいつも吸いたいという欲求があったものの、多くの人と同様に、自動的に行動していたのです。

朝起きたらたばこを吸い、コーヒーを飲んだらたばこを吸い、車に乗ったらたばこを吸うという具合です。

私たちは、その行動をする前に考えていたことや感じていたことに気づかないのです。

自分と感情の間にスペースを作る

ジェインへの私の答えは「受け入れること」です。エクササイズの1つとして、「私は~と思っている」と考えることをすすめました。

ジェインは、たばこを手に取るまえに、「私はいまストレスでいっぱいだ。どうしてもたばこが必要だ」と感じることがありました。

そこで、この言葉に、「私は~と思っている」をつけるように言いました。

「私はいまストレスでいっぱいで、どうしてもたばこが必要だ、と思っている」というように。

さらに、「私は~気づいている」という言葉をつけることもすすめました。

「私はいまストレスでいっぱいで、どうしてもたばこが必要だ、と思っていることに私は気づいている」。

このエクササイズは、どんなネガティブな感情を感じたときにも使えます。

たとえば、私が「みんな私のプレゼンに退屈している」と思ったら、「私は、みんなが私のプレゼンに退屈している、と思っている」と考えるのです。

このエクササイズは、自分と自分の考えのあいだにスペースを与えてくれます。

このスペースがあるから、私は、1500人が見ているステージから走って逃げたりしないのです。

私たちは、思ったことをそのまま実践したりしません。自分が思ったことを毎回やっていたら、大きなトラブルになります。

このエクササイズはジェインにとって役立ちました。しかし、もう1つ、ジェインには問題がありまいた。

喫煙する自分を恥じてはいけない

たばこを吸うことに対して、他人からジャッジされていたのです。

喫煙者であることを夫に批判されていました。ジェインは、たばこを吸う自分を嫌っていたのです。

たばこを吸うことは恥ずかしいことだ、と。

自分を恥じる気持ちをやわらげるために、ジェインはたばこを吸っていました。たばこを吸うと、一時的に気分はよくなるものの、すぐに不面目だと思う気持ちは戻ってきていました。

そこで私はジェインに言いました。

「恥ずかしいと思う気持ちを、人間の体験の一部として大事にしてみてはどうでしょう?

親しい友だちが喫煙すること恥じていたら、その友達にどんなふうに、あたたかくて、やさしい言葉をかけてあげますか? その言葉、自分自身にいうことはできないでしょうか?」

ジェインは、その時、少し恥の気持ちから解放された表情で私を見ました。

一時的にでも、恥を感じないときがあれば、次に渇望を感じたときの助けになります。

セルフ・コントロールの秘訣

というわけで、セルフ・コントロールの秘訣は、セルフ・コントロールをあきらめることなのです。

そうしないと、渇望という名の怪物(craving monster, クレービングモンスター)と綱引きをすることになります。

その怪物は、「ほら、たばこを吸って、クッキーを食べて、さあ!」と言います。

あなたは、「いやだよ、クレービングモンスター、わたしは、あんたから気をそらすから。無視するからね」

すると怪物は、「何言ってるの。ほらほら、吸いたいんでしょ?」と返します。

怪物を無視しようとして、あなたは綱をひっぱります。そして結局、クレービングモンスターに負けて、クッキーを食べたり、たばこを吸ったりするのです。

また怪物が戻ってきたら、綱引きをして、また負けて、吸って、を繰り返します。

あなたがその綱を手放すまで。

怪物が自分の中にいることを許し、居場所を与えれば、その怪物はそこまで恐ろしいものではないと気づきます。

ときには、向こうから去っていってくれるでしょう。

このあと、昼食の時間になると、何を食べるか選択することができます。そのとき、自分の中の渇望に注意を向け、その渇望を受け入れるようにしてください。

自然にそれが過ぎていくのを感じてください。

あなたがどんな選択をしようと、自分自身に、やさしい言葉をかけてくださいね。みんな同じようにがんばって山を登っているのです。

//// 抄訳ここまで ////

単語の意味など

make peace with 仲直りする、和解する

psycho-babble  心理学用語をたくさん使ったたわごと。わけのわからない話。

futility  無益、むだ、無意味さ

autopilot 自動操縦、オートパイロット、無意識でやっていること

respite 一時的中断、小休止

行動を変えることに関するほかのプレゼン

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いやな気分よ、さようなら(認知行動療法入門):TED

習慣のループを知れば、どんな習慣も変えることができる(TED)

自分のことを否定しないほうがいい話

ウィリングネスは、禁煙や食べ過ぎだけでなく、買い物のしすぎをやめたい方にも使える方法です。ゲームのしすぎをやめたい人、スマホばかり見るのをやめたい人にも役立ちます。

すぐに人をコントロールしようとする思考のクセにも使えるでしょう。

自分の気持ちをジャッジせず、ただ、受け入れる、という方法はこちらのプレゼンでも紹介されていました⇒いやな気分こそ大事にして、自分の感情とうまくつきあう(TED)

無理に押し殺そうとすると、反動がかえってくるから、とりあえず、そのまま感じるのがいいわけです。

自分の考えていることに、意識的にならないとできないので、ちょっとたちどまって頭の中を観察することが求められます。

観察しているとき、自分をジャッジしないのも大事なことです。

トークにでてきたジェインさん、たばこを吸う自分が恥ずかしくて、その気持をまぎらわすために、たばこを吸っていました。

これ、お酒を飲みすぎる人にありがちですね。

自分が嫌いで情けなくて、その気持ちがいたたまれなくて、お酒を飲んでまぎらす、飲んで酔っ払っている間だけは、何も考えずにすむから。

ですが、これは一時的な解決法ですし、お酒の場合は、飲みすぎると確実に体をこわすので、もはや解決法とも言えません。

破滅への道を歩いているだけです。

このような方は、自分を否定するのをやめると楽になると思います。

きのうも、自分のことを大嫌いな人からメールをいただきましたが、自分を嫌いさえしなければ、解決できることがたくさんあります。

どんなにがんばっても、自分以外の人にはなれないので、他人になろうと無理するのは無駄です。いまの自分を受け入れるしかありません。

それが、自分を大事にすることだと思います。

まずはいまの自分を受け入れる。そして、そこから、ちょっとずつ自分を成長させていく。これがベストな道ではないでしょうか?





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