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テレビを見ると、いたずらに物を買ってしまう理由をミニマリストの視点からお伝えします。
もう何年も前から、テレビの弊害はあちこちで言われています。新聞や雑誌ではわりとおなじみの話題ですね。テレビの番組内で「テレビは見ない方がいい」と語られているのかは知りませんが。
テレビを視聴しすぎるデメリットはたくさんありますが、今回は、「買わない暮し」の実現を、どんなふうにしてテレビが阻むのか、という点にフォーカスします。
「持たない暮し」をするためには、物をいたずらに買わないことがとても大切なのですが、テレビを見ると物を買いたくなってしまうのです。
1.広告をしっかり見てしまう
テレビを見ると広告を見てしまい、これが購買につながります。その商品が欲しくなってしまうのです。特に子供はそうですが、大人も同じことです。
そもそも、テレビはなぜ存在するのか、その理由を考えたことがありますか?
ニュースを知らせるため?国民を啓蒙するため?国民に娯楽を提供するため?国民をマインドコントロールするため?芸術や文化の振興のため?
私はテレビは一般大衆に物を買わせるためにあるのだと思います。
テレビの運営は広告費で成り立っています。NHKは直接視聴料を集めていますが、民間のテレビは「無料」で見られることになっています。ですが、実は視聴者は間接的にお金を払っています。
子供のころ「時間ですよ」とか「東芝日曜劇場」のドラマが好きでよく見ていました。番組の冒頭で「この番組は◯◯の提供でお送りします」とスポンサーの名前が出るたびに、「ていきょうって何だろ」と思っていました。
「提供」は意味が2つあり、1つは「無料で差し出すこと」です。だからなんとなくプレゼントしてる雰囲気があります。もう1つの意味は、広告主がスポンサーとなって、テレビ番組を公開することです。これはプレゼントではありません。
大きくなってから、ああ、スポンサーがお金を払っているから、番組が作れるのだ、とわかりました。番組の合間合間に流れる、さまざまな広告を見た私たちが、その商品を買うことで、スポンサーにお金を払っているのです。
広告は短いですが、巨額の資金が投じられています。本体の番組より広告のほうができがいいくらいです。特に日本の広告は、売っている物はそんなに強調せず、うまくイメージをのせていますね。それを買ったあとに起きるであろう便利で楽しい生活のイメージを。
ひとつの連続ドラマを通じて、毎週同じ広告を見ていると、無意識のうちにその商品やサービスがだんだん頭に刷り込まれていきます。実際、「テレビでよく見るから、いい商品に思える、人気の商品に思える」とその商品にポジティブな印象を持つ人も少なくありません。
しかし「テレビでよく見る」のは、その商品が素晴らしいから自然発生的にテレビに登場しているからではありません。ちゃんとスポンサーが、ある意図を持って、番組の合間に広告を流しているからです。その「よさそうに思える」という印象は、作られたものなのです。
2.プロダクトプレイスメントを見てしまう
「いえ、NHKしか見ないから広告は見ていません」「広告は全部飛ばしてます」という人もいらっしゃるかもしれません。
しかし、広告そのものを見なくても、やはり、広告を見てしまっているのです。それは近年増えてきたプロダクトプレイスメント(product placement)という広告です。product は商品、placement は置くこと。番組内に売りたい商品やサービスを置く、つまり登場させる手法の広告です。
今は、広告をカットして録画できるハードディスクがあり、視聴者がふつうの広告を見ないことが多いです。そこで、番組の一部としてその商品を入れるプロダクトプレイメントが増えてきました。小道具として登場させたり、その会社や店舗の建物が背景に映り込むようにするやリ方です。
もちろんセリフにも登場します。「最近石けんを変えてみたの、◯◯に。そしたらほら、肌がこんなにすべすべよ」なんてあからさまなセリフもあります。
プロダクトプレイスメントは1950年代からあります。街の看板、チラシ、テレビ、ラジオ、映画の前後、雑誌、新聞、バスや電車、スタジアム、最近はインターネットなど、広告を広告として出せそうな場所は使い尽くしてしまったので、企業と広告代理店は番組やアニメ、映画の中に商品を入れ始めたのです。
アメリカにはプロダクトプレイスメント専門の広告代理店もあります。
プロダクトプレイスメントはうまくやれば、作品の流れを損なわず、効果的にアピールできます。ふつうの広告より人に物を買わせる力はあるかもしれません。
アメリカ映画やドラマの中でビジネスエグゼクティブみたいない人がいつもアップルのコンピュータを使っているのは、アップルのシェアが多いからばかりではないと思います。
3.非現実的な世界が「普通」に
テレビドラマでは平均よりずっと美しい人たちが、非現実的な世界を生きるさまを見せます。ドラマがフィクションということは誰でも知っていますが、多くの人がこの世界にあこがれます。
人間は映像に強く影響を受けます。ドラマの主人公が着ていたような服を着て、持っていたような物を持ち、似たような生活をしたら幸せになりそうだ、と思うのです。
子供たちが、将来、テレビや映画の主人公と同じ職業につきたい、とあこがれるのはよくあることです。私も「アテンションプリーズ」というドラマを見て「スチュワーデスになりたいなあ」とぼーっと思っていました。
幸か不幸か身長が全く足らず、スチュワーデスになることは早々に選択肢からはずれました。
単にあこがれたり、服や持ち物を揃えたいと思うぐらいならそんなに害はないかもしれません。物ならば、それらを買った時点で買い物が止まるでしょう。
ですが、問題なのは、テレビを見ていると、「あなたはそのままではだめですよ、もっと金持ちになりなさい、もっと美しくなりなさい、もっとやせなさい」というメッセージを常に受け取ってしまうことです。
テレビに出てくる人たちは街を歩いている人たちより美しくやせています。だからこそ、街角でスカウトされたのです。平均よりきれいな人たちなのです。
先日紹介した「ダイエットが失敗する理由」を説明しているTEDの動画では、アメリカの子供たちは10歳にしてすでにダイエットをする、と語っていました。
⇒結果的に太っている。なぜダイエットは成功しないのか?(TED)
子供たちが「やせなきゃ」と思うのも、メディアの影響があるからです。テレビに出てくる人たちはみんなやせすぎていますから。
しかも、キャメロン・ラッセルが語っていたように、テレビ、映画、雑誌などに出てくる人のイメージは完全に作りこまれたものです。
⇒キャメロン・ラッセルの「ルックスはすべてじゃない」に学ぶ本当の幸せ(TED)
私たちは、平均より美しい人たちによって演じられる、架空のありえない世界を見て、あたかもそれが「世間の標準」であるかのような錯覚を起こしてしまうのです。
たとえテレビの世界が作り物、作品だということを頭では知っていても、潜在的に「あれが普通」と思ってしまいます。実際、テレビが登場してから、世間の人の価値観はだんだん似たようなものになってきました。
テレビを見ているとき、クリアな頭で、能動的に見ている人は少ないでしょう。たいてい1日の仕事を終えて、心身ともに疲れた状態でぼーっと見ているのではないですか?
だから、テレビに出てきたことを簡単に信じてしまいます。
かくして私たちは、ああ、今のままじゃだめなんだと思い、テレビに出てきたような生活に近づくためにいろいろな物を買ってしまうのです。
☆テレビを見るのをやめると得られる物⇒ミニマルライフを加速する~テレビを断捨離すると手に入るもの
☆テレビを見る習慣を手放す方法⇒いきなり捨てなくてもいい。テレビを見るのをやめる11の方法
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このほかにもテレビの弊害はたくさんあります。先日も書きましたが、時間を奪うことがその1つ⇒今すぐ捨てたい。時間を奪う5つの悪しき習慣。
3ヶ月ことに始まる、たくさんのドラマを録画して見ようなんてことになったら、時間がいくらあっても足りません。そうやってドラマを見ることは、鑑賞ではなく消費です。番組の消費に追われてしまうのです。
消費に追われ番組の録画をためてしまい、私はビデオテープの断捨離という苦労までかかえこみました⇒番組録画をやめたら楽になる~時間貯金をしても時間の量は変わらない
ハードディスクならば、テープを捨てる必要はないでしょう。けれどもさまざまな番組録画をする手順を考えたり、見るローテーションを考えたり、見ないまま、たまっていく番組のことを考えてストレスを感じることはないでしょうか?
運動不足になることも問題です。テレビを立って見る人っていませんから。
先進国ではテレビを毎日見る人がとても多いです。毎日ですよ?テレビは生活必需品ではありません。私はもう30年ぐらい見ない生活をしていますが、ふつうに生きています。
それを多くの人が毎日欠かさず見ている。これはちょっと異常な状態ではないでしょうか。
どんなに人間の生活にメリットがあると思われるものも、食べ過ぎたり、飲み過ぎたり、やりすぎると害があります。テレビの場合は、もともとそこまではっきりと「いいものです」とも言えません。
仕事のあと、疲れてソファの上でぼーっとテレビを見ることを英語で vegetate (ヴェジテイト)といいます。これが「リラックスできる」と言う人も多いのですがはたしてそうでしょうか?スクリーンからは常に刺激的なブルーライトが出ています。
テレビを見過ぎることは、目を痛めつつ、生活習慣病になる準備を整えながら、買い物をするようにプログラミングされていること、と言ったら言い過ぎでしょうか?
テレビを見ることで、自分には手が届くはずもない世界にあこがれ、現実とのギャップにさいなまれストレスをためているだけ。そんな人は少なくないと思うのです。