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ダイエットに関するTEDのプレゼンをお届けします。年頭に、「今年の目標はダイエット」「今年は5キロやせる」と決めた人もたくさんいらっしゃるかもしれません。
去年も同じ目標をたてて、「今年こそ」と決意を新たにしている人も多いでしょう。そんなあなたにこのプレゼンを贈りたいと思います。
ダイエットはそもそも失敗するようにできており、やるだけ時間の無駄である。それどころか、むしろ危険である、と脳神経学者のサンドラは、脳のメカニズムと、自分自身の体験から語ります。
タイトルは Why dieting doesn’t usually work なぜ、ダイエットは通常うまく行かないのか。
☆なぜダイエットは成功しないのか?TEDの説明
In the US, 80% of girls have been on a diet by the time they’re 10 years old. In this honest, raw talk, neuroscientist Sandra Aamodt uses her personal story to frame an important lesson about how our brains manage our bodies, as she explores the science behind why dieting not only doesn’t work, but is likely to do more harm than good. She suggests ideas for how to live a less diet-obsessed life, intuitively.
アメリカでは80%の少女が10歳になるまでにはダイエットを試みます。脳神経学者のサンドラ・アーモットは、正直に率直に、自身の体験を語りながら、脳がどのように私たちの体を維持するのか語ります。
科学的な裏付けをもとに、なぜダイエットはうまく行かず、むしろ害になるのか伝えます。さらに、ダイエットにあまりとらわれない生活を、本能的にする方法を提案します。
日本語の字幕版です。字幕なし、英語などにしたいときはプレイヤーで調節できます。聞き取りやすい英語です。お時間のない方は、動画のあとの抄訳へ進んでください。
☆スクリプトはこちら⇒Sandra Aamodt: Why dieting doesn't usually work | TED Talk | TED.com
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
ダイエットをやめたらかえってやせた
3年半前に、新年の目標として、ダイエットをやめることにしたんです。これまでにたてた目標でベストのものだと思ってます。
体重のことを気にするのはやめ、おなかがすいたら食べていたら、10ポンド(約4キロ500グラム)やせました。
13歳のときに、やせるべきだと思ってからダイエットを始め、やせたけどリバウンドしたので、自分を責めました。そんなことを30年続けました。やせても必ずリバウンドしてしまったのです。
脳が人の体重を決める
私は脳神経学者なので、ダイエットがなぜこんなに難しいのか不思議でした。体重は摂取カロリーと消費カロリーが決めるはずです。ただ、多くの人がわかっていないのですが、おなかがすいたという意識と、消費するエネルギーはほとんど無意識のうちに脳が決めているのです。
人が何も意識せず、呼吸したり、歩くことができるように、脳はあなたの体重も決めています。この体重は「セットポイント」と呼ばれます。ポイントといっても10~15ポンド(およそ4.5キロから7キロ)の許容範囲があります。
この範囲なら、自分でも体重を増減できるけれど、この圏外から出ることはすごく難しいのです。
脳の視床下部(hypothalamus)が体重をコントロールしています。脳はここから12以上の神経伝達物質を出し、体重を増やせと命令します。また、「体重を減らせ」と指令する物質もたくさん出しています。
外の状況が変化しても、常に体重を一定にするために、脳はからだの飢餓感(おなかがすいたという意識)と活動と代謝を調整しているのです。
このシステムは暖房と似ています。暖房は外が寒くなっても、いつも部屋の温度を一定に保とうとするでしょう?
窓をあけて冷たい空気を入れても、暖房の設定温度は変わりません。暖房システムは部屋の温度がさがれば、ファーネスを動かし、また温度をあげようとします。すると温度はもとに戻るのです。
脳はこれと全く同じことをしています。体重が減ったら、脳がノーマルだと思う体重まで戻そうとするのです。体重がたくさん減ったら、脳は、からだは飢餓状態にあると判断します。するとあなたはおなかがすいたと感じるし、筋肉が燃焼するエネルギーも減るのです。
人が体重を10%落とすと、からだの代謝(消費エネルギー)は通常より250~400カロリー減るというリサーチ結果があります。
これってかなりたくさんの食べ物です。ということは、ダイエットに成功しつづける人というのは、同じ体重の人より、生涯、これだけの分の食べ物をとらないで生きる、ということになります。
人間は飢饉に耐えるように進化してきた
私たちの進化の過程を考えると、脳がこのように反応するのは理解できます。これまでは食べ物はとても貴重だったのです。祖先は、食べ物が足りなくなると、エネルギーを蓄え、再び、食べ物にありつけたら、次の飢饉に備えて体重を増やしていました。
これまでは「食べ過ぎ」より「飢餓」のほうがずっと大きな問題だったのです。そのため、セットポイントは上昇するかもしれませんが、それを下げることはとてもむずかしいのです。
ダイエットに成功しても、セットポイントは下がりません。たとえダイエットに成功して7年間やせていても、脳はその間、体重を戻そうと努力しているのです。
昔は食べ物が希少でしたが、今はあふれています。何かの拍子で体重が増えると、ずっとそのままかもしれません。脳がその体重を新たな「セットポイント」だと決めてしまう可能性があるからです。
おなかがすくと食べる人とそうでない人の違い
心理学者は、物を食べる行動に関して、人を2つのグループにわけています。おなかがすいたら素直に食べる人と、意志の力で食べる量をコントロールしようとする人です。
この2つを、直感的に食べる人(intuitive eaters イントゥイティブイーター)と、コントロールしながら食べる人(controlled eaters コントロールドイーター)と呼びましょう。
おもしろいことに、直感的に食べる人のほうが、太りすぎていないし、食べ物のことを考えている時間も少ないんです。
コントロールしながら食べる人は、広告や、大盛りサービス、食べ放題といった環境に弱く、食べ過ぎてしまいます。アイスクリームを一匙食べることが、過食につながってしまうのです。
子供は特にダイエットと過食のサイクルにはまりやすいです。10代前半でダイエットした女の子は、しない子より、5年後に太りすぎてしまう、というリサーチ結果があります。たとえ、もとはふつうの体重であったとしても。
こうした体重の増加は摂食障害につながるという研究もあります。子供の体重のことをからかってはいけませんよ。
太っていても健康でいられる
これは14年間にわたって、4つの健康的な習慣の有無が死亡率に影響を与えるかどうか調べたものです。
4つの健康習慣とは
●果物と野菜をたっぷり食べる
●週に3回運動する
●喫煙しない
●適度な飲酒
体重がノーマルな人は、想像つくと思いますが、健康的な生活習慣をしているほうが、死亡率が低いです。
太り過ぎの人を見てみると、健康的な生活習慣がゼロの人は、死亡率があがりますが、1つずつヘルシーな習慣を取り入れて行くごとに、さがっていきます。
肥満で健康習慣のない人の死亡リスクはすごく高いです。体重がノーマルでもっとも健康なグループの人の7倍です。
けれども、健康的なライフスタイルは肥満の人にも恩恵があります。4つの習慣を持っている人は、体重がノーマルな人と死ぬリスクはさほど変わらないのです。
たとえ、体重を減らすことができなくても、健康にいいライフスタイルを取り入れれば、健康でいられるわけです。
ダイエットはやめて、おなかがいっぱいになるまで食べろ
ダイエットは信用できません。ダイエットをして5年後は、殆どの人の体重が戻っています。40%の人は、前以上に太ります。つまり、長い目で見ると、ダイエットをするとよけい太るということです。
やせたいのに、ダイエットをするとかえって太ってしまうなら、いったいどうすればいいのでしょうか?
私の答えは「mindfulness マインドフルネス 注意深さ」です。瞑想やヨガじゃないですよ。「mindful eating 注意深く食べること」です。おなかがすいたら食べて、おなかがいっぱいになったらやめること。
食べたいだけ食べることを自分に許してください。そして満腹感に気づいてください。邪魔がはいらない場所で、ふつうに食事をしてください。食べ始めたときと食べ終わったとき、からだがどんなふうに反応しているのか注意をむけてください。
おなかがいっぱいになったら食べ終えます。からだに食べ終えるときを決めさせるのです。この食べ方をマスターするのに、私は1年かかりました。でもやってみてよかったです。
食べ物に対して、ずっと自然に接することができるようになりました。食べ物のことなんてめったに考えなくなりました。家にチョコレートがあるのを忘れています。脳の中がすっかり入れ替わったかのようです。
このアプローチは体重を減らしはしないかもしれません。これまでおなかがすいていないのに、よく食べていたのなら別ですが。でも、医者でも、人の体重をたくさん落とす方法を知らないのです。だから、みんな、体重を減らすことより、最初から太り過ぎないようにと言ってますね。
考えてもみてください。もし、ダイエットがうまく行くなら、みんな今頃やせてますって。なぜ同じことをしながら、違う結果を期待してしまうのでしょうか?ダイエトは無害に見えますが、実はさまざまな害があります。
極端な場合には、人生を破滅させます。体重を気にし過ぎることは摂食障害につながります。特に若い人の場合。
アメリカでは10歳の少女の80%が「ダイエットしてる」と言います。自分の価値を、間違ったものさしで計るようになっているのです。
ここまでひどくならないにしても、ダイエットなんて時間とエネルギーの無駄です。ダイエットに使う意志の力をほかのことに使えるじゃないですか。子供の宿題を手伝ったり、大事な仕事を終えるとか。意志の力は限られています。
今ダイエットをしている少女たちに、「おなかがすいたなら食べればいいんだよ」と言ってあげたらどうなるでしょう?食欲を恐れるかわりに、それに耳をすますことを教えてあげたとしたら。
ほとんどの女の子は、より幸せに健康になると思うのです。大人ならたぶんやせるでしょう。私が13歳のとき、誰かがこれを教えてくれたらよかったのに、と思っています。
—- 抄訳ここまで —-
幸せになりたくてダイエットをするのにかえって不幸になる
からだはもともと、自分の適正体重(セットポイント)を保つようにしているので、たとえ一時的にダイエットに成功してやせても、体重は戻る、というわけですね。
しかも、これまで人類は飢饉と戦ってきたので、セットポイントは幾分高めに設定されています。上方修正はあっても下方修正はないわけです。
なのに、最近は、「よりやせていることがより美しいことである」という「やせ信仰」が広がっています。そのため、メディアに簡単に影響を受けてしまう子供たちは、まだ成長している途中なのに、ダイエットを始めてしまうのです。
やせていることが本当にいいのか?と問いかけるTED⇒キャメロン・ラッセルの「ルックスはすべてじゃない」に学ぶ本当の幸せ(TED)
いったんダイエットを始めると、脳は、「あ、飢饉だ」と思って、エネルギーをセーブするためなるべく使わわないようにし、さらに「おなかがすいてるから食べてね」と命令を出します。
そんなとき、一口チョコレートを食べてしまうと、おなかがすいているので、どっと食べて前より太り、セットポイントも上がるのです。
こうして早くにダイエットを始めた人は、太ったりやせたりを繰り返し、そのたびに、いちいち自分を責めたり、自信を失い、一生、食べ物のことばかり考え、食事を楽しむことができないまま人生を終えることになります。
若い人がダイエットを始める理由は、やせると美しくかっこよくなって、かわいい服を着こなせて、異性にもてて楽しくなりそうだから、なんて動機からでしょうか。究極のゴールは幸せな人生を送りたいから、ということになると思います。
ところがダイエットをすることは、幸せな人生から逆に遠ざかってしまうのですね。
自分の適正体重の外に出ようとするのはないものねだり
私は8歳のころから太っているのですが、これまで2度、体重をどーんと落としたことがありました。でもやはり体重は戻りました。
だから、視床下部が物質を出して、飢餓感とか、代謝をコントロールしているのは本当だと思います。
現在も太っていますが、考えてみると20歳のころと体重はそんなに変わりません。これが私のノーマルな体重なのでしょう。
「ダイエットは成功しない」というのは、ちまたにたくさんダイエットのやり方や、サプリ、本、DVDなどが出ていることからもわかりますよね。
みんな、一時的にはやせて「このダイエットなら成功する」と宣伝しますが、5年、10年と長いスパンで体重の推移を見たうえで、成功します、と言っているわけではありません。
やはり、食べたいものを食べて、おなかがすいたときにやめる、というのが1番良さそうです。ただ、これまで本能を抑えこもうと無理をしていた人は、体の声をうまくキャッチできないかもしれません。
おなかがすいてなくても食べてしまう事情⇒おなかがすいていないのに食べ過ぎる5つの理由とその対策
サンドラさんも、それができるまで1年かかった、と言っていますから。ですが、そういう「普通の食べ方」に矯正するのは意味があります。
結局、自分のからだが喜ぶことをしてあげればいいのですね。からだのメカニズムは本当に偉大ですから。
自分の食欲に正直になること、私も今年はこれで行くつもりです。これなら余計な物を買ったり、お金を使うこともありません。