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遺品整理に関するご相談をいただきました。物を捨てない両親がためにためた物を、実家で仕事のかたわら1人で片付けていて、ちょっと疲れてきたそうです。故人の所持品の片付けで疲れすぎないためにはどうしたらいいのでしょうか?
この記事で回答します。まずメールをシェアします。Nさんからです。
実家にある物をえんえんと捨て続けています
件名:実家・遺品整理に関するご相談
ブログ、毎日楽しく拝読しております。筆子様のストレートな、時にミもフタもないような物言いに、しばしばクスッと笑わされております。
現在、実家整理をしているんですが、たぶん整理疲れなのかな?と思い、ご相談させていただきたくメール差し上げます。
まず、状況を簡単にご説明します。
私は40代独身女性で、実家暮らしの会社員です。
実家はマンションが2室あり(同じマンション内の、隣り合った2軒を持っています)、50年近く住み続けています。
80代の両親と一緒に、3人で住んでいたのですが、今年初めに父が亡くなり、母も施設に入ったので、この2軒を処分しようとしています。
数年前に、近所に新しいマンションを購入しており、実家処理後は私1人でそっちに移住するつもりです。
なお、50代の兄が2人います。長兄は既婚で同県内に住んでおり、次兄は独身、新幹線で3時間ぐらいの距離に住んでいます。
で、父の死後、実家の荷物をえんえんと捨て続けています。
母の荷物は(生きてるから)後回しなのですが、父の荷物や、私たち子ども世代の遺物など、物量はものすごく多く(両親とも、全く物を捨てないタイプの人でした)、着々と進めていました。
おかげさまで実家2室のうち1室は、年内にもカラッポにできる見通しが立ってきたところで、先日次兄が急逝しました。
めちゃめちゃ仲良かったので、父が死んだ時と比べてダメージがハンパないのですが、それはそれとして、緊急の問題として次兄の家をどうしよう、と。
賃貸マンションに住んでいたので、すぐにも明け渡さないといかん。でも荷物が多く、私が1日2日行ったぐらいでは片付けられない。
業者に頼んで全部捨ててもらう方法もありましたが、ちょっと前までふつうに暮らしてた兄の遺物を捨てるには、私自身の気持ちの整理がつかず、結局引っ越し屋さんのおまかせパックで、全部実家に送ってもらうことになりました。
で、その荷物が先週搬入されました。
大きな家具家電は捨ててもらったのですが、本や雑貨の段ボールで、半年がかりで空けた実家1軒が埋まりました。
なんかこう、賽の河原ってこんな感じかしら、とか思ったりして。
今は毎日、一箱ずつ中身を確かめ、ゴミ袋に入れたりヒモでくくったり、売れそうな本は分類したり。
「思い出の品」も多く、私の知ってる思い出に当たると懐かしく、私の知らない思い出だとまた感慨深く、いちいちしょんぼりしてしまいます。
ここからがご相談です。
兄が亡くなったダメージからまだ回復してない現在、こんなことやってたら落ち込む一方だな~と思うんです。
幸い、実家整理は急かされてるわけではないので、しばらく放置して、新しいマンションで生活することもできます。
でも、やっぱり早く荷物を減らしてスッキリしたい、という気持ちが先立つんです。会社にいても、あー早く帰って部屋片付けたい、ってばかり思ってて。
どうしたら心置きなく「ダンシャリを休む」ことができるでしょう??
もう1つ、ご相談があります。
ダンシャリで、自分なり故人なりが大事にしてたコレクションを手放す時、できたらゴミにするのではなく、値打ちがわかる同じ趣味の人に受け継いでもらいたい、と思うのです。
お金にしたいのではなく、大事にしてもらえるならタダでも、なんならお金を払ってもいい、と思います。
趣味の品でなく、食器1つにしても、被災地や海外の貧困地域などで活用してもらえるなら、その品の倍の送料を払ってもいい、みたいな感じ。筆子さんの言葉で言えば「循環」させたい。
でも実際そうしようとすると、お金の問題だけでなく、趣味の品なら譲る相手を探さないといけないし(オークションとか、専門古書店とか)、寄付にしても汚れを落としたり、送るために梱包したりと手間が増え、本来のダンシャリ作業がこうちゃくしてしまうのです。
手放すことを決めたら、その時点でその品の役目は終わったんだから、ゴミにしていいのよ、と言われそうですが、これも気持ちの整理がつかないのです。欲が深いんでしょうね。
このへん、どうやって折り合いをつけていったものでしょうか。
自分自身の物だって(多くはないけど)持て余してるのに、この上家族3人分の思い出品まで背負い込んでしまいそうでハラハラします。なにかご意見を伺えれば幸いです。長文失礼いたしました。
Nさん、メールありがとうございます。
お兄さん、残念でしたね。ご冥福をお祈りします。
さて、ご相談は以下の3つですね。
1.遺品整理を休みたいが、気になって休めない。
2.故人のコレクションを本当に大事にしてくれる人に譲りたい気持ちがあるが、その作業をしていると捨てるスピードが鈍る。
3.家族3人分の荷物の処理を思うと気分がふさぐ。
1つずつ私の考えを書きます。
1.毎日ほんの少しの時間だけ断捨離してあとは休む
亡くなったお兄さんの荷物を片付けるのは、少し待ったほうがいいと思います。肉親の死というのはとても大きなストレスだからです。お父さんだって今年亡くなったばかりですよね。
自分では「たいしたことない」と思っていても、数ヶ月後、がたっと来る恐れがあります。
先日も、お母さんの遺品の片付けをしていたらどんどん体調が悪くなっていった方のメールを記事でとりあげました。
こちら⇒いらない物を捨てると体調が悪くなる? いえ、病気になる原因はほかにもたくさんあります。
このあと、相談主のKさんからメールをいただいたのですが、一昨年は、亡くなったお母さんの介護をされていたそうです。
Nさんは介護はしていないかもしれませんが、仕事のあいまに、毎日お父さんの荷物を片付けていたし、お母さんが施設に入るという環境の変化も体験しています。そして、今回すぐ上のお兄さんが亡くなりました。
こうしたことはすべて、心身ともにストレスになっていると思います。
そこで、しっかり休んだほうがいいと考えますが、「それでも早く荷物を片付けたい」と思うなら、1日15分とか30分、時間を区切って、その間だけ断捨離に集中してはどうでしょうか?
そうすれば、たとえ亀の歩みだったとしても、片付けは進んでいるわけですから。
ちょっと話は違うのですが、「子育てで忙しくて、自分の好きなことができない」とストレスをためているお母さんたちにも、私は同じアドバイスをしています。
まず、ちょっとの時間だけ、自分のやりたいことに集中し、あとは家事や子育てに時間を使うのです。
時間をどう使うかはすべて自分の選択だと意識するとなにごとも多少は前向きに行えます。
実家の片付けをするにしても、子育てに時間を使うにしても、自分が選んでそうしている、と思えば、やらされている感がなく、疲れやストレスも少ないのです。
時間の使い方は自分で選んでいる話⇒時間がないんじゃなくてやる気がないだけ。大事なことに時間を使う方法(TED)
2.人に譲るか捨てるか? 自分で優先順位を決める
遺品を誰かに譲るか、そのままどこかに寄付するか、ゴミにするか、というのも自分の選択です。
優先順位の高いことをしてください。
「それぞれのコレクションを大事にしてくれる人に譲りたい」という気持ちが強いなら、当然作業量は増えるし、断捨離にかかる時間もかかります。
しかしそれが自分で選んだ道なら、「ちっとも断捨離できないじゃん」と不満を持つこともないでしょう。
ただ、私なら、最短で捨てられる道を選ぶと思います。その理由⇒不用品を処分するときはお金にすることを考えないとシンプルにできる
Nさんが片付けているのは、自分の物ではなく、亡くなった人の物ですから、故人の意志をつないでいきたい、という思い入れが強くなるかもしれません。
ですが、亡くなった本人は、生前、そこまでその物を大事にしていなかったりします。「本当にこれは自分にとって大事だから」という理由でコレクションしている人もいるでしょうが、多くの人は、なんとなく集めているだけです。
いったん手にしてしまった物は捨てにくいので、なし崩し的に物がたまっていくのです。
少なくとも私はそうでした。私の場合、単に買い物が好きだったから、物がどんどんたまっていきました。しかも物を捨てる発想がなかったため、どうでもいいものが山をなしてしまったのです。
そのときの話⇒人はなぜ物を集めたがるのか?~私はこうして収集癖を断捨離しました
亡くなったお兄さんがいま生きていたら、「おいおい、僕のコレクション、大事にしてよ」とおっしゃるかもしれませんが、一方で、自分の所持品の始末で妹が悩んでいるのを見るのもお兄さんの本意ではないと思います。
物を循環させる話ですが、この世界はつながっているので、その物に対して、破壊的なことをせずに、そのまま外に出せば、それを必要としている人のところの手に渡るのではないだろうか、と私は考えています。
「このコレクションを持つべき最適な人に渡したい」と思いすぎると、その完璧主義が自分を苦しめることになります。
3.取り越し苦労をせず、いまを生きる
3つめの相談に対しては、マインドフルネスでいまを生きよ、とアドバイスします⇒マインドフルネスで実現する。今この瞬間を生きて幸せになる4つの方法。
「家族3人分の思い出品」とは、お父さん、お母さん、すぐ上のお兄さんの分ですか?
先日も、おばあさんの写真アルバムが見つからなくて悲しいという質問の答えに書きましたが⇒祖母の思い出のアルバムが見つからない。ない物に執着する気持ちを手放すには?
思い出は心の中にあるのです。
みんな、「思い出品」に過剰な思い入れを持ちすぎではないでしょうか?
これが、たとえば、自分は満州の残留孤児で、幼いとき、極寒のさなか、お母さんや弟たちと逃げている最中に、お母さんが息絶えてしまった。
亡くなる前にお母さんが自分の首に巻いてくれた襟巻きはやさしかったお母さんの唯一の思い出の品だからずっと大事にしたい、というのならわかります。
ですが、多くの場合、単に捨てられない物たちを「思い出だ」「記念だ」と言いながら後生大事にしているように思えるのです。
それぞれ、大切な思い出を体現している物なのかもしれません。ですが、思い出品ってそこまで数はいらないんじゃないでしょうか?
少なくとも、思い出の品の処遇に悩んで、現在の暮らしが損なわれるのは本末転倒だと思います。
思い出は大事でしょうが、一番大事なのはいまの生活ですよね?
Nさんも、「思い出品の処理が大変だ」といまから暗くならず、とりあえずは、マイペースでお兄さんのものを片付け、自分の暮らしをシンプルにしていったほうがいいと思います。
お父さんとお兄さんは亡くなり、お母さんは施設で暮しているから、もうそれ以上物は増えないでしょう。これはある意味、ありがたいことです。
年をとってからも現役バリバリで、物を増やし続ける人は多いですから。
いま生きている人の物を生前整理できるなら、そちらも少しずつやるといいですね。
生前整理について⇒生前整理のススメ~すべてを遺品整理に回すより、少しでも生前整理をしておくべき理由とは?
数々の遺品整理の相談メールを拝見して気づいたのですが、自分の物ではなく、故人の遺品になると、自分の中でさらにその物の価値があがり、捨てにくくなるようです。
以上、参考になれば幸いです。
こちらに思い出品の捨て方を書いています⇒思い出の品を捨てるのが苦手な人は、こんなふうに考えてみては?
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今回は遺品整理に関する質問に答えつつ、断捨離で疲れないポイントをお伝えしました。
とにかくゆっくりやることが大事だと思います。遺品はこれまでの人生でため込まれた物。量的に多いため、短期決戦で片付けるのは無理があります。また、全部自分でやろうとせず、要所要所で業者に手伝ってもらうのもいいですね。
大量の物を残して、あの世に旅立つ人がまだまだ多いので、遺品整理を請け負う会社やサービスは今後もどんどん増えていくはずです。