ガラスの珠

TEDの動画

7分で不安を解消する方法(TED)

心配ごとの多い人、ものごとを決められない人、前に進めない人の参考になるTED動画を紹介します。

タイトルは、Overcome Anxiety in 7 Minutes(不安を7分で克服する)。プレゼンターは、心理療法士で結婚カウンセラーの、メル・シュワルツ(Mel Schwartz)さんです。

人が不安やストレスをかかえるのは、未来が不確かなこと(uncertainty)を受け入れないから、という内容です。



7分で不安を克服する・TEDの説明

Anxiety has reached epidemic rates in Western society. Most professionals simply try to manage it, primarily through medication.

Psychotherapist and author Mel Schwartz shares his perspective on both the cause and the solution to this mass disquiet.

He proposes that anxiety is often due to our relationship with our thoughts. These are thoughts that are perpetually seeking certainty.

The more we try to know the future – which is of course unknowable – the more fearful and and anxious we feel.

Mel demonstrates how to shift our relationship with uncertainty and embrace the unknown, freeing us from the grip of anxiety.

不安は西洋社会にはびこっています。専門家の多くは、ただ不安に対して、うまく対応しようとするだけです。たいてい瞑想によって。

心理療法士で著述家のメル・シュワルツが、不安の原因と解決策をシェアします。

不安は、自分と自分の考えとの関係のせいで起こる、と彼は言います。絶え間なく確実性を求める考えです。

メルは、不確実性との関係の変え、先がわからないことを受け入れ、不安から自由になる方法を伝えます。

収録は2017年の11月。動画は9分24秒です。日本語字幕はありませんが、英語の字幕はあります。動画のあとに抄訳を書きます。

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

現代社会にはびこる、不安という病気

4千万人のアメリカ人が、不安症にさいなまれています。4人のうち1人が不安症になる可能性があるのです。

驚くべき数字ですね。

これは、私たちが、新しい世界に入ったことを示しています。不安社会になったのです。

4000万人の人が、わけもわからず病気になっているとしたら、アメリカ疾病予防管理センター(Center for Disease Control、CDC)は、その原因と治療法を探すべきでしょう。

臨床心理療法士として、この病気の治療法が、不安とうまくつきあうこと、特に薬をつかうこと、という考えに全く同意できませんでした。

だから、なぜ人は不安にさいなまれるのか、自分でその理由を探求しました。





ストレスのせいで生きづらくなる

ここで話しているのは、日常生活でよくあるストレスのことではありません。

いま、私は、この舞台にいて多少ストレスを感じています。このストレスは、積極的に参加したり、何かを作り出そうとしたり、前に進もうとするときに感じるものです。

私がお話しているのは、心身の苦痛(distress)になってしまうストレスです。

これがあるせいで、生きづらく、楽しくもなく、人間関係をそこなうストレスのことです。

先を知ろうとするから不安になる

このような不安の第一の理由は、私たちと、私たちの考えとの関係から生じます。

いつも確実なこと(certainty)を求めて、未来に起こるをことを知りたがると、人は不安になり、恐怖を感じます。

人は、先のことを知ることはできないのですから。

それなのに、皆、先のことを知ろうとします。そのせいで、人生の流れ(the flow of life)に乗ることが難しくなるのです。

人生を生きようとするのではなく、不確かなこと(uncertainty)を避けようとしてしまいます。

これが、恐怖を呼び起こすのです。

ご自身に聞いてみてください。何が、毎日のストレスや恐怖、不安のもとになっているのか? 先のことを知ろうとすることに関係があるのではないか?

愛のない結婚生活にとどまる理由

数年前、私はある女性の相談にのっていました。彼女は、人間関係や、結婚、不安症で悩んでいました。

愛のない結婚をして不幸でした。ご主人はマリッジカウンセリングを受けることを拒否していました。

夫婦のこころのつながりはなく、お互いに敵対している、とその人は言いました。

2人とも、経済的には自立していて、子供はいませんでした。

私は、こんなふうに聞きました。

「なぜ、結婚生活を続けているのですか?」

彼女は先の心配を口にしました。

「もし離婚したら自分はどうなるのだろう? 結婚していない人生とは、どんなものなのだろう?」

その時、彼女は、うつに悩み、不安でいっぱいの日々を送っているのを知っていたから、この答えを聞いて、耳を疑いました。

けれども、この女性は、前に進むためには、先のことを知らなければならない、と思っていたのです。

先がわからないから、いまの惨めな生活にとどまっていたのです。

「私はどうなるのか?」という質問の答えを知ろうとして、不幸なままの関係を続けていました。

このようなことは、多かれ少なかれ、日常生活のさまざまなところで見られます。

なぜ人は先のことを知りたがるのか?

では、なぜ、人は、こう考えてしまうのでしょうか? 確実性を求めながら、その場にとどまってしまうのでしょうか?

私たちは、スポーツや映画を見たり、本を読むときは、先がわからないほうがいいと考えているのに、自分の人生に関しては、不確かなことを邪魔にし、大事にしようとしません。

この原因は17世紀の科学者、アイザック・ニュートンにあると思います。

ニュートンは、充分な情報があれば、現代なら、情報はデータと呼ばれるでしょうが、この先のできごとを、ある程度、予測できる、といいました。

この説は、決定論(determinism)と呼ばれます。私たちは、この考えを極端なまでに取り入れているのです。

そのせいで、たくさんある選択肢を細切れにして、現状にとどまってしまいます。

そして、恐怖が生まれます。まちがった動きをしてしまうかもしれない、という恐怖です。

まるでチェスをしているかのようです。うしろに座って、考え込んでいます。間違った手を打たないように。

決められず、前に進むことができないのなら、それは不確かなことに対する恐怖のせいでしょう。

現実は、ニュートンの説とは違う

実は、私たちは、間違った行動方針(game plan ゲームプラン)にのっとって生きてきたのです。

過去100年のあいだに量子物理学の分野で、この世界や現実が、これまで考えられてきたのとは違う、ということがわかりました。

ニュートンの言う現実とは違うのです。

現実は固定されていないし、予測可能でもありません。動かないものなどないのです。

世界は流れ、動いていて、可能性や限りない潜在的な力という泡がたっているのです。

私たち自身も、この流れに乗り、不確実性との関係を変えることができます。

不確かなことを受け入れると、自分で自分の人生の舵を取り、ものごとを決めていけます。

人生を川だとイメージしてみる

私はこの考え方を、結婚生活で悩んでいた女性に使いました。

目を閉じて、川岸に立っていることを想像してもらいました。その川は、彼女の人生の流れです。

自分がいまいるところは、とりわけ勢いが強いです。

彼女は目を閉じました。

何が見えるか聞いたところ、勢いよく流れている川の中に自分がいる、と言いました。

しかし、そこには大きな岩があり、彼女はその岩につかまっている、とも。

理由を聞くと、「川の先は右側に曲がっているから、流れがどこに行くのか知る必要があるのです」という答えでした。

右に曲がった先が、離婚してシングルになった彼女の人生だとしましょう。彼女はそれがどんなものか、知りたいと思っていたのです。

彼女に、岩から手を離さないとだめだと説明しました。手を離して、人生の流れに乗らなければならないと。

いったん手を離すことができれば、自由にその道を行くことができるのです。

考え方を変える方法

どうやったら岩から手を話して、変化を受け入れることができるのでしょうか?

方法は2つあります。

1)不確実性との関係を変える

まず、不確実性との関係を変える必要があります。

恐れているものにたいして、人は抵抗します。それを押しのけようとするのです。

そうすると、恐れはより大きくなり、人はますます不安を感じるようになります。

私たちがすべきなのは、その恐れを招き入れることです。恐怖を招き入れれば、この場合は、不確実性ですが、恐怖は消えます。撤退するのです。

こう考えてください。現実は不確かなのだから、確実なことにしがみつこうとすると、人は機能しなくなる、と。

よりよく生きるために、行動方針を変えなければなりません。

2)自分の思考について考える

次に、自分の思考について考えてください。確実性を追い求めている思考に気づき、その思考を手放します。

大事なのは、その考えに気づくことで、考えていること、そのものにはならないことです。

自分の思考に気づかなければ、それを手放すことはできません。

その考えを持ったその瞬間、感情が生まれます。この2つは連携しています。

確実なところを知りたい、と思うから、恐れが生まれ、心配になってしまうのです。

考えと考えのあいだのナノ秒のあいだに、潜在的な力を持って人は存在しています。これが、普遍的な現実(universal reality ユニバーサル・リアリティ)なのです。

確実性を追い求める思考をしていると、恐怖が生まれ、決して不安を乗り越えられません。

人生においても、もっと重要な関係は、親との関係でもないし、子供との関係でも、配偶者との関係でもありません。

ほかのどんな関係よりも、あなたの人生に影響がある関係は、自分の思考との関係なのです。

自分の思考を注意深く選ぶことを学ぶべきです。そうすれば、思考を味方につけることができます。

思考が味方になれば、自分の人生の脚本を自分で書き始めることができるのです。

不確かなことは、人生を進むヨットの帆に当たる風だと思ってください。その風があるから、前に進めるし、恐れや不安をもたずに生きられるし、喜びがもたらされ、いまを生きることができます。

不確かなことを受け入れてください。それは、あなたの親友になります。

//// 抄訳ここまで ////

単語の意味など

disquiet  不安、心配、不穏、動揺

mire  ~をぬかるみにはまらせる、人を苦境に陥れる

determinism  決定論
人間の意志とは無関係に世界の動きは決められている、と考える説。

inert  自力で運動できない、不活性の

boulder  (水の作用で角のとれた)大きな岩、巨石

embolden  大胆にする、勇気づけて~させる;ボールド体で表す

dissipate  消える

in tandem  2人(以上)縦に並んで、連携して、協力して

nanosecond  ナノセコンド、ナノ秒(10億分の1秒)

恐怖や、世界に関するほかのプレゼン

「恐怖」が教えてくれること:カレン・トンプソン・ウォーカー(TED)

先送りをしない人生を生きるために、目標ではなく恐怖を明確にすべき理由:ティム・フェリス(TED)

心配性は自分で克服できる。恐怖と向き合うことを学ぶ(TED)

恐怖に打ち勝つ方法。3つの質問を投げかければいい(TED)

人はネガティブ思考を引きずるようにできている話と、そこから抜け出す方法(TED)

ネガティブ思考を直してくれる楽しい質問(TED)

人は変わり続ける。未来の自分に対する心理:ダン・ギルバート(TED)

ニュートン力学と量子力学

私は物理は得意ではありませんが(高校で勉強した覚えがない)、ニュートン力学と量子力学の違いをものすごく簡単に(おおざっぱに)書いておきます。

ニュートン力学(古典力学)にあるのは、決定論的世界観です。(科学的に)未来はもう決まっている、と考えます。

確定しているわけです。

ですから、物体のはじめの位置(角度やら)と、速度が決まれば、それに運動方程式(運動が従う法則)をあてはめさえすれば、それがどこに行くかわかっている、と考えます。

行き先は一つであり、絶対ぶれません。例外もありません。

だから、未来を知りたかったら、いろんな情報を集めればいい、ということになります。

これに対して、量子力学では、そもそも、運動方程式をあてはめることができません。

この世界はものすごく小さい、量子(粒みたいなの)で構成されており、この量子が気ままな動きをするからです。

物理学的には、量子は確率の波として存在している、と言われます。どこにでもいる確率があるのです。

そのため、物質の位置とその運動量をばしっと決めることができません。

つまり、この世界は常に変化しているというわけです。

メル・シュワルツさんは、量子力学の考えを、心理療法に応用しているパイオニアの1人です。

こんな本を出しています。

The Possibility Principle: How Quantum Physics Can Improve the Way You Think, Live, and Love

(可能性の原則:量子物理学がどんなふうに私たちの思考や生活、愛を向上させるか?)

Kindle版もあります。アメリカのアマゾンでは評判がいいので、そのうち翻訳が出るかもしれませんね。

先のことは気にせず、とりあえず捨ててみたら?

先のことを心配しすぎて、動けないってこと、よくありますね。

不用品を捨てているときですら、そうです。

明らかにもういらない物だったり、何年も使っていない物なのに、

-これを捨てたあと、困るかもしれない

-持っておけば、あとでお金にできるチャンスが来るかもしれない

-孫が使うかもしれない

なんて思って捨てない人は多いです。あとでこれを買うお金がないと困る、という質問をいただいたこともあります⇒あとで必要になったときに買うお金がもったいなくて捨てられない、という質問の回答。

捨てたあと後悔しない捨て方を知りたい、捨てても大丈夫なものを知りたい、と考えている人もたくさんいます。

先のことを気にしすぎて、汚部屋にとどまることを選択しています。

ですが、先のことは誰にもわからないので、心配しすぎるのは、時間とエネルギーの無駄遣いです。

先のことは、先にいったときに考えることにして、いまは、いまの生活にフォーカスしたほうが、断捨離も進むし、幸福度もあがります。

*************

シュワルツさんは、不安を取り除く方法として

1)先が不確実なことを受け入れる
2)先に起こることを知りたいと思う思考を手放す

この2つをすすめています。

思考を手放すために、自分の思考について考えなさい、と言っていますね。

こうすることを「メタ認知」と言います。

メタ認知とは、何かを考えている自分をもう一段上から見て、その考えについて考えることです。

これはあらゆる困った状況で使える方法なので、ぜひやってみてください。

動画では、「ある思考から次の思考にうつるナノ秒のあいだに、潜在的パワーを持った自分が存在する」と言っていますが、人間の思考はとてつもないパワーを持っています。

思考次第で、いいほうにも悪いほうにも転ぶのです。

人の思考は、科学的事実をもねじふせます。

先ごろ死刑になった、オウム真理教の幹部であった優秀な科学者たちを見て、つくづくそう思いました。





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