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捨てたほうがいいものがあるのに、いつまでも執着している人の背中を押してくれるTEDのプレゼンを紹介します。
タイトルは、The Unstoppable Power of Letting Go(手放すことの止まらないパワー)。プレゼンターは、ジャーナリストの ジル・シェラー・マレー(Jill Sherer Murray)さんです。
let go は つかんでいるものを放すこと、捨てること。
ジルさんが手放したものは、12年もつきあっているのに、結婚しようとしない恋人との関係です。
手放すことのパワー、TEDの説明
Letting go can make you unstoppable.
Jill recounts her story of love, loss and new life. Through the challenges of an uncommitted boyfriend, her fear of letting go, and becoming comfortable with the ramifications of letting go.
Jill shares the 5 Steps she took to change what didn’t work and make welcome what she desired in her life and relationships.
手放せば、もう止まりません。
ジルは自分の恋愛と喪失、新しい人生について語ります。結婚したがらない恋人、失う恐怖、手放したあとの結果を受け入れること。
ジル・シェラーは、自身がうまくいかないことを変え、人生に求めていたものと人間関係を迎え入れた5つのステップをシェアします。
動画の長さは11分30秒。日本語の字幕はありません。動画のあとに抄訳を書きます。
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
ジルさん、すごくゆっくり話しているのでわかりやすいです。ユーモアがあっていいですね。
手放すと自由になれる
何かを手放すと、前に進めます。これは私の経験から言えることです。私は、恋人との関係を捨てて、人生を取り戻しました。
誰でも手放せば、最良の変化が起きます。
41歳のとき、うまくいかない関係を捨てようかどうか悩んでいました。
そのときまで、私は未来についてあまり考えたことがありませんでした。その瞬間から、次の瞬間へ、まるで犬のように暮らしていたのです。ボールを追いかけ、地面に落ちているものならなんでも食べました。それでよかったのです。
仕事や友だちに恵まれ、素敵なアパートに、かわいい本物の犬と住み、素敵な恋人もいました。
といっても、ヘクター(恋人の名前)は、結婚に乗り気ではありませんでした。12年付き合っていましたが、一緒に住んでさえいなかったのです。それでも、彼は、ときには、私に希望を与えてくれていました。
こんな状態でいることが、ふつうになりつつあったのです。彼は二枚目で、頭がよく信頼できる人で、私のことを思いやってくれる繊細さもありました。完璧な関係ではなかったけれど、まあうまくいっていたのです。理論上は。
あるとき、決定的なことが起こるまで。
彼と別れる決断をした
不動産関係の仕事をしている友だちが、シカゴ近辺で手に入るコンドミニアムのことを教えてくれました。ヘクターと住む物件があれば、彼もその気になるかもしれない、と私が思っていたことを友人は知っていたのです。
でも、最初にこの話を聞いたときは、「まだその時期じゃない(Not yet)」と思いました。
この言葉、ヘクターの好きな言葉です。
「結婚したいんだけど」と言えば、「まだその時期じゃない」、
「一緒に住みましょうよ」と言えば、「まだその時期じゃない」。
いつもこう言われていたのですが、「コンドミニアムを一緒に見に行こう」とさそったら、驚くことに、彼は「いいよ」と言ったのです。
私はうれしくて早めに現場につきました。ヘクターはと言えば? 12時15分、12時半、12時45分、1時。現れません。
あとで彼から、都合が悪くなったと電話がありました。そこで、別の日に物件を見ることにしたら、その時も現れなかったのです。
そのとき、私は気づきました。12年たって、別れるべきなのだと。
別れるのはとても怖かった
41歳で、ヘクターと別れることは、彼やほかの人と結婚するチャンスを失うことを意味します。もうそんなに結婚のチャンスはありません。
結婚はしないけど、休暇や誕生日を過ごすにはいい男性とつきあい続けるか、彼と別れて1人になるか。
愛していた人と別れるのは簡単なことではありませんでした。自分のひらめきがひきおこした状況をのりこえなければならない、そう思ったとき、とてもつらくなりました。
彼は、ほかの人と結婚して、もう2度と自分のものにはならないかもしれない。私は間違いをしてしまったという事実をかかえたまま生きなければなりません。
たくさん泣いて、たくさんピザを食べ、たくさんジョニ・ミッチェルの歌を聞きました。さんざん泣いたあとに、とうとう振り切れました。
ひとりで年老いて死ぬという恐怖を手放したのです。
その瞬間、自分が本当にもとめていたことに気づきました。恋人でいるだけではいやなのだと。
何もかも捨てて引っ越した
ヘクターが現れなかったことは、贈り物だったのです。それが私を自由にしてくれたから。
だって、12年も「ヘクターとの結婚」というボールを追いかけていたのですから。もう前に進むときが来ていました。
ペンシルバニアのニュー・ホープで、新しい人生を始めるために、すべてを手放しました。ヘクターは、「行かないで、僕たち、結婚するんだろ」と言いました。
私:「12年もチャンスがあったのよ」
彼:「じゃあ、あそびに行くよ」
私:「まだその時期じゃないわ」
別れるのは、大変だったでしょうか? もちろんです。
では、別れた価値はあったのでしょうか?
新しい出会いがあった
別れて1年もしないうちに、私は、オンラインで夫のダンと知り合いました。
はじめてのデートのとき、ダンがこれまで見たこともないほどしわくちゃのシャツを着て現れ、レストランから車まで雨にぬれないために、レインハットをかぶせてくれた時、「この人だ!」と思いました。
傘って、人を遠ざけたい人のためのものだし、強風が吹くと裏返しになるし、長持ちしません。その点、レインハットは、あごの下でしっかりひもでくくれるから、ずっと個人的なものです。
4回デートしたら、愛が生まれ、なぜ、自分がこんなに長い間待たなければならなかったのかわかりました。
ダンは、ハンサムで、賢くて、魂のこもった人で、親切です。彼といると、何でもできそうな、そして、何にでもなれそうな気になります。2人一緒に。
1年後、彼と結婚しました。
時間は戻らない
私が50歳のとき、ヘクターは、がんで亡くなりました。私は長い間、とても悲しみましたが、彼の死は、私が41歳のとき、自分にした約束を思い出させてくれました。
つまり、決して、いつまでも時間があると思ってはいけない、ということです。
私は、自分が本当に求めていることや、大事なことのためのスペースを作るために、手放すことに決めたのです。
私がいまでも心がけている、5つの手放すべきものを紹介します。
1.物ごとを個人的に受け取ることをやめる
なぜ、ヘクターは、私を、結婚するほどは愛していなかったのか、そう考えることにずいぶん時間を費やしました。
けれども、それは単に、彼がコミットできなかっただけで、私とは関係なく、彼の家族との関係のせいであったと気づきました。
それは彼の事情で、私に問題があったわけじゃないとわかったら、ずっと気持ちが楽になりました。
もし人々が、あなたの求めているものをくれなかったり、不愉快な行動をしたりするなら、それは、たいていの場合、その人たちの問題で、あなたの問題ではありません。
2.他人がどう思うか考えるのはやめる
夫になる人と数ヶ月デートしたあと、彼を両親に引き合わせました。
母は、「とてもハンサムな人ね」と言いました。「ほら、テッド・バンディ(アメリカのシリアルキラー)ってハンサムよね」とも。
この言葉に影響をうけてしまうこともできたのですが、つまり、夜中に夫から刺されることを想像したりもできたのですが、そうするかわりに、私は、母に問題があると思うことにしました。
何に対しても、10%の人は、それを憎み、80%の人は、どうでもよく、10%の人は、熱狂的なファンになります。
ファンになってもらえれば幸いですが、誰かがファンじゃなくても、それはそれでいいのです。
3.自分以外のものになろうとするのをやめる
私は、声が大きく、存在感を示す性格で、自分でこの性格を「ザ・ビッグ」と呼んでいます。
この性格をとても好きな人もいますが、逃げ出す人もいます。
ですが、これが私なのです。ビッグになりすぎないように努力しましたが、どんなに努力しても、変わりません。
自分のことで、どうしても変えられないこともあり、それはいいことなのです。
4.完璧にしようとすることをやめる
完璧でなければならない、と思うことをやめます。
数年前、シェープ・マガジンにコラムを書いたら、たくさんの人からメールをもらいました。
中に、どうしたら、自分はもっとよくなれるか書いてきたティーンエイジャーの女の子のメールがありました。
彼女のボーイフレンドは、彼女の服をはぎとり、体について、いろいろと批判したのです。
これ、本当の話です。
「彼とはすぐに別れなさい。もう2度と、誰かのせいで、自分で自分のことを悪く思ってはだめよ」。こう返事をしました。
人が、完璧になりたい、と思うのは、体重についてだけではありません。家をきれいに保つことや、犬の毛づくろい、子供を健康にしたり、上司を喜ばせたり、あらゆることで、完璧じゃないといけないと思うものです。
若さを保ちたいとがんばる人もいます。
ですが、完璧な人と友だちになりたいと思う人なんていません。
5.「まだその時期じゃない」と思うのをやめる
最後に、私の好きな手放しごとを紹介します。
それは、「まだその時期じゃない」と思うのをやめること。
シカゴから出るのを決めたとき、私の人生はそこそこよいものでした。ただ、それだけではいやだったのです。
もし何かやりたいことがあるなら、プランを立てて、行動してください。待ってはいけません。
いまでもヘクターのことを考えると悲しくなります。ですが、彼に電話をかけることができないからこそ、毎日が愛おしいと思えるのです。
それがなんであれ、すぐにやりましょう。
//// 抄訳ここまで ////
単語の説明
have skin in the game 自分の能力や財産をつぎ込む、投資する
epiphany 悟り、ひらめき、直感による把握
take ~ for granted ~があるのは当たり前のことだと思う
chalk up to ~のせいにする、~の勘定につける
big personality 外交的で、声が大きく、たいてい体も大きく、自分の意見をはっきりいう、よくも悪くも存在感の大きい人柄
Let go for it やるなら早くやれ。
手放すことをすすめるほかのプレゼン
ミニマリズム~何もしない時間、何もないスペースを作ってより充実した人生を
『フランス人は10着しか服を持たない』の著者、ジェニファー・L・スコットに学ぶ「10着のワードローブ」(TED)
捨てる生活が夢を叶える。ミニマリストに学ぶ手放す技術(TED)
ガラクタを全て売り払い、借金を返し、旅に出て、自由に生きている男の話(TED)
ガラクタ問題の解決法。「ぐしゃぐしゃ」から「スッキリ」へ変えるには?(TED)
手放さないと何も変わらない
人間は失う恐怖があるので、それがなんであれ、手放すのは怖いものです。
けれども、手放さないと現状は変わりません。
23年前にカナダに来た時、日本にあったいろいろなものを捨ててきました。
べつに、ずっと日本にいることだってできたし、今となっては、日本にいたほうが絶対楽だったなと思います。
けれども、自分がいま手にしているものは、それまで持っていたものを捨てたからこそ手に入ったのです。
何か求めているものがあるなら、ずっと執着している何かをばさっと捨てる必要があります。
そうすると、ちゃんと新しいものが入ってきます。
捨てたからといって、何もかもなくして路頭に迷うことはないので、安心してください。
それにゼロになりたいと思っても、そんなに簡単にはなれません。