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貯金をしたいけど、なかなかできない。
そんな悩みのある人におすすめのTEDトークを紹介します。
タイトルは、3 psychological tricks to help you save money(貯金するのを助ける3つの心理的なトリック)。
邦題は『貯金するための3つの心理的なコツ』
プレゼンターは、行動科学者で、人々が貯金できるようサポートしている、Wendy De La Rosa(ウエンディ・デ・ラ・ローサ)さんです。
貯金を促すトリック:TEDの説明
We all want to save more money — but overall, people today are doing less and less of it. Behavioral scientist Wendy De La Rosa studies how everyday people make decisions to improve their financial well-being. What she’s found can help you painlessly make the commitment to save more and spend less.
誰もが貯金したいと思っています。ですが、全体的に見ると、いまの人たちは、どんどん貯金しなくなっています。
行動科学者のウエンディ・デ・ラ・ローサは、人々が、日々、どんな決断をすれば、経済的に幸せになれるか研究しています。
彼女の発見は、さして苦労せず、もっと貯金し、使うほうを減らすのを助けてくれるでしょう。
2019年の1月の配信。長さは5分37秒。日本語の字幕もあります。
☆トランスクリプションはこちら⇒Wendy De La Rosa: 3 psychological tricks to help you save money | TED Talk
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
The Way We Workというビデオシリーズの1つです。
このシリーズは、働き方を向上させるために、現実的なアドバイスを専門家がする、という趣向で、すべて5分前後の短い動画です。
なかなか貯金できない
貯金は大事だからするべきである、と皆思っているけれど、貯金額は減ってきています。
やるべきことはわかっています。問題は、どうやって貯金するか、です。
その点についてお教えしますね。
貯金しやすい環境にすればよい
貯金できるかどうかに、頭のよさや意志の強さは関係ありません。
いくら貯金できるかは、環境的な要因で決まります。
例をあげましょう。
あるグループには月々の収入を見せ、別のグループには週ごとに収入を見せたら、週ごとに収入を見ていたグループのほうが、1ヶ月を通じて、より上手にやりくりしました。
収入の金額は変わっていません。金額を把握する環境を変えただけです。
環境的な要因が、影響を及ぼすのです。
預金口座の開設の仕方や、老後の資金の貯め方など、皆さんがすでにご存知の方法をお話しするつもりはありません。
これからお伝えするのは、お金を貯めたいという意図と、実際に貯めるという行動のギャップをつなげる方法です。
1.先にコミットする
まず、前もって決めましょう(プレコミットメントの利用)。
人には、2種類のセルフイメージがあります。
現在の自分と未来の自分です。
未来の自分は、完璧です。
(いまの自分はできないが)将来の自分は、老後資金を貯めるし、ダイエットもできるし、もっと両親に電話をできる、と考えています。
ですが、未来の自分は、いまの自分と同じなのだ、ということを忘れています。
さて、貯金をする最適なタイミングは、税金の還付金が戻ってきたときです。
そこで、こんな実験をしました。
あるグループには、確定申告をする前の2月初旬にメッセージを送り、「税金が戻ってきたら、そのうちの何%貯金したいですか?」とたずねました。
この時点では、お金が戻ってくるかどうかもわからないので、答えるのは難しい質問です。
べつのグループには、実際に、還付金が戻ってきてから、何%貯金したいかたずねました。
お金が戻ってきてからたずねられたグループは、還付金の17%を貯金したいと答え、2月に聞いたグループは、27%と答えました。
先にきいたグループが、27%という高い貯金額を答えたのは、未来の自分を考えていたから。
「未来の自分なら、27%ぐらい貯金できるはずだ」と思ったのです。
決める状況を変えれば、貯金という行動も変わります。
これを利用しましょう。
いまの自分にはむずかしいけれど、未来の自分ならできることを考えてください。
前もって貯金額を決めるアプリを使います。
ポイントは、決めたことを守ることです。
2.節目を利用する
変化する時期をうまく使います。
高齢者がハウスシェアをするサイトを使って、実験しました。64歳の人々を2つのグループにわけて、広告を出しました。
1つのグループには、「だんだん年をとってきましたね。リタイアメントの準備はできていますか? ハウスシェアがお役に立ちます」という広告。
もう1つのグループには、「64歳から、65歳になろうとしています。リタイアメントの準備はできていますか? ハウスシェアがお役に立ちます」という広告。
このグループに向けた広告では、変化が起きていることを強調しましたが、そうしただけで、広告のクリック率や、サイトに登録する率があがりました。
これは、心理学で、『フレッシュスタート効果』と呼ばれる現象です。
新しい年、新しい季節の始まりは、行動するモチベーションがあがります。
そこで今すぐ、次の誕生日の前日に、(専門家との)ミーティングのリクエストと書き込みましょう。
お金に関して、一番やりたいことを考え、やりとげるのです。
3.日々の小さな支出をコントロール
最後のポイントは、小さな支出の管理です。
複数のリサーチの結果、人々が一番後悔している買い物は、銀行の手数料をのぞけば、外食に使うお金でした。
毎日のように外食にお金をつかうと、つもりつもって大きな出費になります。
あっちでコーヒー、こっちでブリトー。出費が重なって、貯金できなくなります。
ニューヨーク市に住んでいたとき、支出を見直したら、ライドシェア(Uberなどの配車サービス)のアプリに2000ドルも使っていました。
家賃よりも多い金額だったので、変えようとしたものの、翌月も、2000ドル使ってしまいました。
情報を得るだけでは、私の行動は変わりませんでした。
環境を変える必要があったのです。
4000ドルも使ったあと、2つのことをしました。
1)カード情報を削除
まず、アプリに登録していたクレジットカードの情報を削除しました。
その代わり、月300ドルしか使えないデビットカードを登録しました。
それ以上使うなら、新しいカードを登録しなければならず、手間がかかります。
クリックや、行動を妨げるものがあれば、自分の行動は変わります。
2)使用する回数を制限
私たちは機械ではないし、そろばんを持ち歩いて、いちいち、使った金額と残りの金額を比較することもできません。
でも、脳は、自分がしたことを数え上げるのは得意です。
そこで、リミットを決めました。
ライドシェアの利用を、週3回までにしたのです。
ライドシェアの費用をコントロールできたのは、環境を変えたからです。
環境を変えて、自分がよくお金をつかっているものを使わなくてすむようにしてください。
最後に1つ覚えておいてほしいことがあります。
人間は、貯金やお金を使うとき、予算をたてるとき、不合理なことをしてしまいます。
けれども、そうする自覚があるし、特定の環境のもとで、どんな行動をするか、予測も立てられます。
貯金に関しても、そうしましょう。
未来の自分を助けるために環境を変えましょう。
//// 抄訳ここまで ////
単語の意味
harness (自然のちからを)利用する
get a handle on ~を把握する、~を管理する
death by a thousand cuts 直訳:1000の傷による死。小さなことがつもりつもって、長い時間をかけて、死や破滅に至らせること。
ride sharing ライドシェアリング、一般人が、有償で自分の車に他人を乗せて、希望の場所に送り届けるサービス。車を呼ぶのもお金を払うのもモバイルのアプリで完結する。
in the hole 借金して、赤字で
貯金に役立つほかのプレゼン
あなたの言葉がお金をためる能力に影響を与えている?(TED)
貯金できない人がうまくお金を貯める秘訣は、行動経済学にあり(TED)
自分で環境を変える
貯金をするのに、知能も意志も関係ない。そういう環境を作ればいいのだ、というプレゼンを紹介しました。
実際、そうだと思います。
「もっと貯金したいなあ」、「クレジットカードの使いすぎをやめたい」、「服を買うのをちょっと控えよう」と思うだけでは、何も変わりません。
繰り返します。
何も変わりません。
何か実現したいことがあったら、「やりたいなあ」で終わらせず、どうやったら、自分はそういう行動を取るだろう、と考えて、そういう行動をするしかなくなる状態を作ることが重要です。
プレゼンにデてきた、3つの戦略について、具体的にできることをもう少し紹介します。
プレコミットメント(将来の自分は今よりすごい、もっとできる、と思う心理的傾向)
・貯金する分が自動的に引き落とされるように設定をする(お金が入ったら、すぐに落ちるようにするとより効果的)
・家族や友達、あるいはネット上で、「私はこれだけ貯金する」と宣言する(時々経過を報告するとより効果的)
フレッシュスタート効果
・30日間チャレンジの利用⇒人生を変えたいあなたに。30日間チャレンジのアイデア88選。
・毎週日曜(または月曜)にその週の予算を決める
・子供の新学年、新学期は、洋服や小物を買うのではなく、貯金計画を立てる
日々の小さな出費の管理
・クレジットカードを持ち歩かない(カードを使いたいならプリペイドカードかデビットカードを利用する)
・カードを使うたびに通知する機能をつかう
・買わない挑戦⇒誰でもできる『買わない挑戦』の始め方。自分ルールで楽しく実践。
・支出を記録して、自分が無駄遣いするものを把握し、予算を決める
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環境を変えると貯金できる話は、そのまま、片付けや断捨離にも応用できます。
未来の自分を過大評価する心理を知れば、「(いまは使ってないけど)いつかひまなときが来たら、読む、やる、使う」といった幻想を抱かずにすみます。
「いつかやせたら着よう」「いつかメルカリで売ってお小遣いを作ろう」と思って、とってある服も、今すぐ、捨てられますね。