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もっと自信を持ちたい人におすすめのTEDトークを紹介します。
タイトルは、3 habits that kill your confidence(自信を殺す3つの習慣)
リーダーシップのコンサルタントの Shadé Zahrai (シャデ・ザーライ)さんの講演です。名前の読み方、間違ってるかもしれません。
自信を失わせる3つの考え方のくせと、そうしない方法を教えてくれるプレゼンです。
自信を失わせる思考パターン
収録は2022年の10月。長さは11分25秒。英語字幕あり。動画のあとに抄訳を書きます。
ザーライさんは、元、弁護士のせいか、説得力のある話し方をしますね。
生まれたときはみな自信がある
人は生まれながらにして自己不信を感じているわけではありません。
12ヶ月の赤ん坊は歩けるようになるため、何度転んでも、起き上がり、途中であきらめたりしませんよね。大人とは違います。
自分とほかの赤ん坊を比べることもありません。ただ努力し続けるだけ。
人は成長するにつれて、自信喪失につながる考え方をするようになります。
親に過度に高い基準を押し付けられたり、他人と比べたり、恥ずかしい気持ちになったり、いじめられたり、学校で成績が悪かったり、有害な家族関係が育ったりすることが、原因として考えられます。
この思考パターンを何度も繰り返していると、自信を失わせる信念が生まれ、潜在的な能力を発揮できなくなるんです。
きょうは、自己不信が生まれる背景や、自己不信が、いかに人生や貢献する喜びを奪ってしまうか話したいわけではありません。
今日、お話しするのは、もっとずっと実践的なことです。
仕事と博士課程の研究を通じて、私たちは、多くの人が気づいていない、普遍的で明らかな3つの自己不信の落とし穴を発見しました。この落とし穴を紹介するだけでなく、この穴から抜け出し、穴を回避する方法もお話しします。
自己不信に陥らせる思考パターンから自由になり、自分が求めているものに、より意識を向ける方法です。
なかなか起業できないマルコ
1つ目の落とし穴の話に入るまえに、マルコというとても才能のあるソフトウェアのエンジニアの話をします。
彼の能力のおかげで、大手のテクノロジー企業は何十億も利益を得ました。
マルコは、キャリアに行き詰まり、スタートアップを立ち上げ、世界規模の問題を解決したいと望むようになりました。
彼はリサーチをし、興味をもってくれる人たちを見つけ、詳細なビジネスプランを用意しました。
ところが、何ヶ月も準備したのに、なかなか起業しませんでした。
自他ともに認めるスキルがあるのに、やろうとするたびに、自分に対する疑念を感じてしまうのです。
落とし穴1:始めることができない
彼は、最初の落とし穴に落ちていました。すなわちそれは、「始めることができないこと」(Failure to launch)です。
人々に、リサーチ、学習、準備を永遠に続けさせてしまう落とし穴です。
何冊も本を読み、ポッドキャストを聞き、ネットで調べ、講座を受け、さらなる資格を取得しても、自分はまだ準備ができていないと思ってしまいます。
どこまでも知りたいという「情報マニア(infomania)」になります。
フェファーとサットンがハーバードビジネスレビューで「わかっているのに実行できない罠(The Knowing-Doing Trap)」と呼んでいるものに、引きとどめます。
やるべきことはわかっているのに、行動に移せません。
スタートできない理由
なぜ人は、「スタートできない落とし穴」にはまるのでしょうか?
リサーチによれば、反芻(はんすう)と考え過ぎがそうさせます。それは、先延ばしと停滞につながります。
考えすぎるのは、私たちの原始的な自己保存本能が原因です。
この状態では、最悪のシナリオに固執します。「うまくいかないことは何か? 足りないものは何か?」と。
「もし、こんなことが起きたら?」と何度も考えます。
もし失敗したら、資格が十分でなかったら? 何か忘れていることがあったら?
この状態は、人を麻痺させます。
考え過ぎが、自己不信を生み、自信を殺し、自己批判を生みます。
他の人は、どうしてあんなに先まで進んでいるんだろう? なぜ、自分はスタートできないのだろう? いったい自分のどこが悪いのだろう? と考えてしまうのです。
落とし穴2:足踏み
2つ目の落とし穴は、わかりやすいもので、足踏み(Treading water 立ち泳ぎ)です。
才能のある学者から連絡をもらったことがあります。あと1年で終わるのに博士課程からドロップアウトする誘惑にかられたからです。
彼は、2回めの修士課程の途中でも、1度、ドロップアウトしていました。
始めたことをやり遂げないパターンにはまっていたのです。
才能があるのに、コミットし続けることができませんでした。
彼のようにとても能力のある人が、途中でやめてしまうのはなぜでしょうか?
自己不信が、ためらいを生みます。正しい選択をしたかどうか確信が持てないのです。
これを選ぶべきだったのか? 間違った選択だったかもしれない。ほかのことをしたほうがよかったかもしれない、と。
興味を失い、ほかのものがよく見え、今やっていることに飽きます。
飽きると、仕事をしても、ドーパミンは出ません。
だから最後までやる代わりに、新しいエキサイティングなことをするほうが、やりがいがあると感じてしまうのです。
このサイクルが習慣になると、足踏みする落とし穴にはまり続けます。
幸い、この状態の解毒剤があります。これについては、3つ目の落とし穴である、目的地への執着(destination obsession)の説明をしてから紹介しますね。
落とし穴3:目的地への執着
こんな体験はありませんか?
わくわくするようなゴールを設定し、達成するためにあらゆる努力と自制心を注ぎこみ、達成すると一瞬の喜びを感じるだけで、その後は満たされず、すぐにまた新しいゴールを設定する。
この状態をほっておくと、ゴールへの執着が生まれ、短時間しか続かない達成した喜びを延々と追い求めるようになります。
「もっとやらなければならないといつも感じています」「今日やった以上のことをやるべきでした」。こんなふうに。
目的地への執着という落とし穴は、「決して、自分は十分やっていない」という考えを強化します。
休憩を取ることに罪悪感を感じさせるほどまでに。
そこに到着しさえすれば、ようやく幸せになり、自分に価値があると思わせてしまうのです。
しかし、「そこ」は、いつも、手の届かないところにあります。
目的地への執着が生むもの
たくさんの研究で明らかになっていますが、オリンピックの個人競技では、銅メダルを取った人のほうが、銀メダルをとった人より幸せで満足するものです。
銅メダリストは、自分を下の人と比べるからです。
「もう少しで、表彰台にあがりそこねるところだった。メダルを獲得できてとてもうれしい」。
一方、銀メダリストは、上の人と自分を比べます。
「もう少しで金メダルが取れるところだったのに」。
目的地への執着という落とし穴の中にはまっていると、周りの人と自分を比較しがちです。
これは、上向きの反事実的思考(upward counterfactual thinking)と呼ばれています。
上を見て、インスピレーションを得る代わりに、自信のなさから、自分はまだまだだ、と思ってしまうのです。
自分は何らかの点で不足しているから、常に追いつこうと努力します。
この精神的なプレッシャーは、ウェルビーイングに悪いだけでなく、長期的にみて、必ずしも最適なパフォーマンスを実現させてはくれません。
さて、3つの落とし穴がわかったところで、穴から抜け出す方法や、穴を回避する方法を紹介しますね。
自分で自分にしている言葉を変える
まず、最初のマインドセット、「始めることができないこと」からいきましょう。
マルコやほかの大勢の人のようなら、自分の中で語っていること(narrative ナラティブ *記事の最後で説明します*)をシフトすることが役立ちます。
先延ばしは、よく怠惰と解されますが、この2つは違います。
先延ばしは、失敗や拒絶、批判から生じる痛みを回避するために行われます。
UCLAの心理学者たちは、拒絶や失敗から受ける痛みは、肉体的な痛みを感じるときと同じ脳の部分を活性化することを発見しました。
痛いんです。だから、心も体もそれを避けようとするのは当然です。
痛みを避けることは、心の中のおしゃべりとして現れます。
だから、語り方を変えれば、避けなくてもすみます。
今度、「こんなこと、私にはできない」と思ったら、「どうやったら実現できるだろう」という言い変えてください。
「これをやるべきだ」や「あれをやらねばならない」という言葉は、「これをやろう」「あれをやることにする」という言葉に変えましょう。
力を失わせる思考と闘う代わりに、自分でコントロールできると感じられる、力の出る言葉にするのです。
「なぜ?」から、「何を?」に変えましょう。
「なぜ、私はやる気がでないのか?」と思う代わりに、「これをやることを楽しめるようにするには、何ができるだろうか?」と考えましょう。
すぐに行動する
この認知的なリフレーミング(物事を見る枠組みを変えること)は、自分の感じ方に大きな影響を与えられると研究からわかっています。
考え過ぎるのではなく、行動をするほうに思考の向きが変われば、行動志向になり、よりよいパフォーマンスにつながり、失敗にもうまく対処できるようになります。
だから、リフレーミングしたあとすぐに行動を起こすことが重要です。
神経画像研究から、脳は、瞬時に、それがわくわくすることか、恐ろしいことが判断するとわかっています。
これは、感情評価(emotional appraisal)と呼ばれます。
即座に行動を起こすと、たとえそれが小さくて、混乱していて、不完全な行動でも、考え過ぎをかわすことができます。
実際にスタートすると、スタートできない落とし穴から抜け出せるのです。
意義を見出す
2番めの落とし穴である、足踏みは、意味の欠如から来ます。
なぜ、そうするのかわかっていないと、コミットするより、怖気づくほうがずっと簡単です。特に、障害があったり、べつの新しくて刺激的なものに出会ったときは。
先にお話しした才能のある学者は、博士課程をドロップアウトし、問題をかかえた移民の若者を支援する慈善団体を設立しました。これは、彼がすごくやりたかったことであり、100%コミットし続けました。
何千人もの若者を助け、元気づけ、彼らの人生を変えたのです。
なぜそうするか、明確に見極めたおかげで、彼は足踏みという落とし穴から抜け出すことができました。
もしこの状態で停滞しているなら、今自分がしていることを、なぜしているのか、振り返る時間を取ってください。
全体像は何か? どうやったら後ろに下がって、意味を見つけられるか? 誰のためにやっているのか? どうやって違いを生み出しているのか?
「今、私がやっていることは、私が目指していることは、いったい何のためか?」という核心を突く質問を自分に問いかけてください。
避けられない障害に出会ったら、何のためにしているのか思い出してくださいね。
達成が自分を定義するわけではない
最後に、達成することへの執着ですが、この不健全で、疑いにかられた行動に気づいたら、自分は、自分の達成したことではないことに気づいてください。
達成したことが、あなたの価値を決めるわけではありません。どんどん達成しつづけても、長続きする満足感は得られません。
達成することにこだわっている人は、自制心があるはずです。
その自制心を、休憩を取ることに向けてください。
人は予定に入れたことを優先的にするので、目的のある休憩をスケジュールに入れましょう。
たとえば、瞑想やハイヤーセルフ(高次元の自分自身)とつながること、家族とともに過ごすこと、運動をすること、これまでやってきたこと振り返ることです。
もし、今の自分の現実を他人のそれと比較して、自分は不十分であると感じているなら、考え方を変えましょう。
「この人が成功してうれしい。この人がしてきたことから、自分は何を学べるだろうか?」と。
落とし穴にはまらない習慣を作る
3つの落とし穴はすべて、自己不信によって深くなります。
落とし穴にはまる習慣をコントロールできないと、自分が誰であるのか、何に価値を感じているのかわからなくなります。
赤ん坊は自己不信をもっていないことを思い出してください。
それは成長するにつれて、学ぶことなのです。ということは、捨て去る(unlearn)こともできます。
新しい健全な習慣を作り、脳の神経回路を書き換えることができます。
ウィル・デュラントは、こう書いています。
「私たちは、自分が繰り返し行っていることそのものである。だから優秀さとは、行為ではなく習慣なのだ」。
だから、自分で気づくことを心がけてください。
自信を失わせる落とし穴にはまったサインに気づき、穴から抜け出す行動をしましょう。そして、穴にはまらないように。
そうすれば、自分の中にある本当の自分という美を取り出すことができます。
//// 抄訳ここまで ////
フェファーとサットンの著書です。
自信に関するTEDトーク
なぜセルフ・エフィカシー(自己効力感)が重要なのか?(TED) ← おすすめ。
ナラティブを変える
今月、ずっと自信に関するTEDトークを紹介しています。
たまに、「たっぷりあるマインドがいいのはわかったけれど、たっぷりあるマインドになれません、どうしても人と自分を比べて、劣等感を感じてしまいます」という相談メールをもらいます。
それもかなり強烈で、他の考えをよせつけないトーンのメールです。
*たっぷりあるマインドがわからないときはこちらをどうぞ⇒「足りている」「充分」と思うと、本当に心身・経済ともに豊かになれるのか?←質問の回答。
そのような場合は、たっぷりあるマインドに、なる・ならないではなくて、そのマインドセット(思考パターン)を採用すると考えてください。
服を着替えるような感じです。
いつもは、自分から自信をなくす行動や思考パターンをしているなら、それとは違う考え方や行動を試してみよう、と考えて、それを実践すればいいのです。
そのために必要なのは、視点を変えることだけです。
今回の動画で言えば、ナラティブ(narrative)を変えればいいんです。
narrativeは、日本語に訳しにくいんですが、物語、話、説明です。自分が外的状況に対して、心の中(脳内)で説明している語りがナラティブです。
朝、ゴミ出しに行ったとき、隣の奥さん(子供が同い年でママ友でもある)に会ったから、「おはよう」と言ったけど、返事がなかったとします。
そのとき、頭の中で、「おはようと言ったのに、無視された。失礼な人ね」とか、「なぜ、挨拶しなかったんだろう。私、何か、悪いことした? もしかして、嫌われてる?」とか、いろいろ言いますよね?
ほかのことで頭がいっぱいで、隣の奥さんについては、とくに何も語らない可能性もありますが。
これがナラティブです。
そのナラティブは、たいてい自分中心で、「隣の奥さん、何かあったのかな? 体調悪いのかしら」的な語りはあまりしないと思います。
このナラティブが、現実をつらいものにすれば、楽しいものにします。
自信を失うかどうかも、ナラティブにかかっているので、いつものクセで被害妄想的なナラティブをしてしまったあとに、振り返って、「でもこういう考え方もできるよね?」と新しいべつのナラティブを作ってください。
どんなナラティブを作ったらいいのか、そのヒントは筆子ジャーナルに山のように書いているので、ぜひ過去記事を参考にしてください。
そうやって、自分のためになるナラティブをするようになると、たっぷりあるマインドでいられる時間も増えます。
「たっぷりあるマインドになれないよ~」と悲痛な叫びをあげる人は、ナラティブを変える努力をしたかどうか、振り返ってください。たぶん、してないと思います。